アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson；流波 rūpa -56 //ふるえていた/なぜ？沙羅/それら、すこしした/冷酷。睫毛の//04

以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。

謂く、

　　　あまりにかすかな

　　　紫陽花がぼくを

　　　咬んだから

　　　つぶした。踏み

　　　なめらかすぎた

　　　紫陽花がぼくを

　　　舐めたから

　　　つぶした。踏み

謂く、

　　　あまりにかすかな

　　　　　　ふみつぶされた

　　　　なにがいいですか？

　　　　　人間がいいよ

　　　紫陽花がぼくを

　　　　　　花弁を見た

　　　　生まれ変わったら

　　　　　ぶっ壊し

　　　咬んだから

　　　　　　あしもとに

　　　　おれ、あれかな

　　　　　ぶっ壊すだけさ

　　　つぶした。踏み

　　　なめらかすぎた

　　　　　　ふみつぶされた

　　　　なにがいいですか？

　　　　　人間がいいよ

　　　紫陽花がぼくを

　　　　　　悲惨を見た

　　　　地獄に落ちたら

　　　　　ぶっ殺し

　　　舐めたから

　　　　　　紫陽花に

　　　　おれ、あれかな

　　　　　ぶっ殺すだけ

　　　つ

ふいにひびいた濁音の悲鳴に醒める。わたしは、…なに？醒める。醒めから？なにから？なに？なにかから。だから、存在さえしなかったなにかから。意識はだから、眠りもまどろみも知らずただ醒め、醒めて醒めたうえにも醒め、醒めるしかなくそれら、沙羅。その悲鳴。沙羅の喉があげた濁音だった。空白の、数秒に…なぜ？たちあがって締めた。わたしは。鏡に、眼に、確認しながら、なに？わたしの頸を。その手のひらに、だから十二歳のわたしは頸をひらく。シャワールーム。そのドア。閉められはしなかった。沙羅。ふしだら。いつもはん開きの、蹴り開けたわたしは試みた。…傷み？悩み？そんな翳りに綺羅めく昏み。それらの陰湿な触感などなく、こころみ。ただ純粋な試み。興味？十二歳の明晰な意識はだから救おうと？あるいは、そこに死にかけている沙羅を？だから緊急の沙羅。ただ一度の絶叫。たたきつけたドアが騒音。飛沫。床に撥ね、撥ねつづけてシャワー・ノズルも静寂。なに？もはやただの沙羅。床に飛沫をしぶかすノイズがしかも試みる。殺せる？自分でじぶんが、…と、ね？殺せる？と。頸をしめて。だれか他人をそこに殺すように、擬態。わたしは、自分をたたきつけられて、壁に鳴ったドアのむこうに、——うすいプラスティック。

　　　ほら

　　　　　　いつでも、きみの

バスルームにありがちな

　　　やっちゃえ

　　　　　　こころには

無難な

　　　ぶっこ。こ。こ

　　　　　　愛。せきららな

色彩。無難な

　　　ぶっこ。こ。こ

　　　　　　愛。ふしだらな

うすさ。

　　　やっちゃえ

　　　　　　こころには

沙羅。

　　　ほら

　　　　　　いつでも、きみの

立ちつくして、そこに沙羅はそのなめらかな背すじの形態できる？死ねる？死ぬ、できる？絞殺。つまる。息が、ほんと？そしてやがてはできる？死ねる？死ぬ、できる？唐突な、背後にふいに咬みつかれた。そんな発熱の実感。だからしめられてゆく頸のそのできる？死ねる？死ぬ、できる？窒息の、できる？…いのち。ふるえる

　　　死ね！

　　　　　　輪廻転生とは、思うに

手。猶も

　　　蘇れ！

　　　　　　絶望の、もっとも苛烈な

頸を

　　　生きろ！

　　　　　　表

しめつけようと、力の、しかも猶も不足。不足するしかない力に、…なぜ？叩きつけられたドア。息。わたしの。なに？それ。うつくしい背すじ。濡れた。たしかに。そして沙羅の腰をふくらませる骨格。そして肉。それらのやわらかで芳醇な無言劇。その饒舌。ふり返り見た沙羅が、足元にふきあげる水流のくだけた飛沫にさらにぬれながらなぜ？死ねないの？わたしは、自分で、…と。そこには鏡。鏡にはだれ？わたし。顔をただ病的に赤らめ、だれ？それは、熱に噎せ返った情熱の、なぜ？わたし。わたしの情熱。笑った。絶叫など、なにも、かけらだになにもなかったかに沙羅。昏い眼のままに笑う沙羅。その沙羅。沙羅。その、絶望的なまでに昏い

　　　散る。そこに

　　　　　　まぶしいから

まなざし。笑んで猶も

　　　そこらに、飛沫

　　　　　　まぶしすぎるから

痛みをだけを感じさせたのは、

　　　飛沫。散り

　　　　　　火。吐きそう

…なぜ？

　　　散る。猶もやまない

　　　　　　火。吐きそう

…と？

　　　やさしい雨は

　　　　　　まぶしいから

そうやさしく

　　　六月の雨

　　　　　　まぶしす

問いただしてみるべきだったろうか。せめて、わたしは、その、眼の前にたちすくみもはや決して視線をしたには落とそうとしないハオ。ハオ・ラン。うつくしいひと。傷ついたハオ・ラン。永遠の傷。そのわななく眉に。濡れたハオ。びしょぬれのハオ。だからわたしも、そこに二十九歳のわたしは、…やさしさ。もう、不埒なまでに、どうしようもない、「知ってる。みんな」

「…いいよ。もう」

雨。そそぐ。それが

「結局はぼくを」

　　　あじさいが

　　　　　　色彩。あざやか

「やめて。ハオ」

雨。それは、六月。だから

「捨てて仕舞う。捨てて」

　　　あじさいこそが

　　　　　　あじさいの上に

「なにも、いま」

うつくしい、花。ただ

「ぼくをひとり」

　　　砕いたの？

　　　　　　あじさいの中に

「言わないで。なにも」

花のようにそこに

「ひとりに残して」

　　　骨を。その

　　　　　　色彩。あざやか

「無意味だから。いま」

うつくしいハオ・ランの

「おきざりにして、そして」

　　　あなたの骨を

　　　　　　それら理不尽なあざやかのなかに

「言葉なんか」

かたわらにはもう、

「…違うよ。孤独？」

　　　あじさいが

　　　　　　あなたはふいに

「感情なんか」

みだらなまでにぬれ、ゆれた

「孤立感、とか？」

　　　あじさいこそが

　　　　　　舞い降りて

「いま、ぜんぶ、もう」

花。紫陽花の

「さびしい、とか？」

　　　つぶしたの？

　　　　　　つぶす

「無意味だから。だから」

花。花々。…色彩

「そうじゃなくて、」

　　　肉を。その

　　　　　　だいなしに

「ただ、」

青むむらさき

「…違うよ」

　　　あなたの肉を

　　　　　　つぶす

「なに？」

むらさきに、ただ

「なに？」

　　　あじさいが

　　　　　　くだく

「ハオはいま」

たえられなくて

「知らない。なにも」

　　　あじさいこそが

　　　　　　ほろぼす

「なに？なにが」

傾いた青。ほのかに

「わからない。ぼくは」

　　　吹き飛ばしたの？

　　　　　　殺す

「いま、ハオのこころに」

そっと

「いま、いまも、まだ」

　　　目を。その

　　　　　　色彩。あざやか

「なにが咬みついてるの？そこに」

赤らみを知る

「わからないんだ」

　　　あなたの目を

　　　　　　あじさいの上に

「噛み砕いたの？…その」

青。…花。それら花の翳りに砕けた春奈のすでに老いの劣化のみもはや原型の瑞々しさをも拒否した赤裸々に、たださらされていた投身の死屍。

春奈の最後の悲惨をハオ・ランはもう、返り見ようともしなかった。謂く、

　　　おれ？まるで

　　　突き落とされたような

　　　あざっ。あざやかな

　　　跳躍。そして

　　　屍。紫陽花ら

　　　死屍。きれい？

　　　きれいだったかな？

　　　むらさき屍は

　　　は？あじさいが

　　　あじさいこそが

　　　は？砕いたの？

　　　あなたの骨を

謂く、

　　　屍。紫陽花ら

　　　　　　悲惨とは

　　　　雨は、ね？

　　　　　つぶつぶ

　　　死屍。きれい？

　　　　　　かならずしも

　　　　知ってる？

　　　　　飛散。雨の

　　　あじさいこそが

　　　　　　悲惨とは

　　　　あなたを消さない

　　　　　つぶつぶ

　　　あなを砕いた

　　　なぜ？まるで

　　　させられたような

　　　いきっ。唐突な

　　　飛躍。そして

　　　屠殺。紫陽花ら

　　　惨殺。きれい？

　　　きれいだったかな？

　　　むらさき屍は

　　　は？あじさいが

　　　あじさいこそが

　　　は？燃やしたの？

　　　あなたの肉を

謂く、

　　　屠殺。紫陽花ら

　　　　　　滑稽とか？

　　　　雨は、ね？

　　　　　ごげごげ

　　　惨殺。きれい？

　　　　　　ややちがうけど

　　　　知ってる？

　　　　　苔。つち

　　　あじさいこそが

　　　　　　滑稽とか？

　　　　あなたを流さない

　　　　　ごげごげ

　　　あなたを燃やした

　　　だれ？まるで

　　　魅せられたような

　　　むぶっ。無防備な

　　　失落。そして

　　　無慚。紫陽花ら

　　　悲惨。きれい？

　　　きれいだったかな？

　　　むらさき屍は

　　　は？あじさいが

　　　あじさいこそが

　　　は？こわしたの？

　　　あなたの耳を

謂く、

　　　無慚。紫陽花ら

　　　　　　憐れさなんか

　　　　雨は、ね？

　　　　　ばわばわ

　　　悲惨。きれい？

　　　　　　すこしも

　　　　知ってる？

　　　　　泡だち。たまり水

　　　あじさいこそが

　　　　　　憐れさなんか

　　　　あなたをきよめない

　　　　　ばわばわ

　　　あなたをこわした

　　　おれ？まるで

　　　気絶したような

　　　いたっ。いたたまられな

　　　沈黙。そして

　　　指。紫陽花ら

　　　くすり指。なぜ？

　　　なぜ曲がったかな？

　　　あなたの指は

　　　は？あじさいが

　　　あじさいこそが

　　　は？つぶしたの？

　　　あなたの目を

謂く、

　　　指。紫陽花ら

　　　　　　傷いですか？

　　　　砂利は、ね？

　　　　　んー…ひー…

　　　くすり指。なぜ？

　　　　　　その死。あなたの

　　　　知ってる？

　　　　　沈黙。遺体の

　　　あじさいこそが

　　　　　　傷いですか？

　　　　あなたに散った

　　　　　んー…ひー…

　　　その目をつぶした

　　　紫陽花のうえに

　　　あじさいの中に

　　　あの色彩に

　　　あざやかのなかに

　　　ふいにひとり

　　　飛び、舞い降り

　　　あの色彩に

　　　つぶされた。つぶす

謂く、

　　　紫陽花に

　　　　　　は？ばせば？

　　　　つぶっつぶせば？

　　　　　なぜ？

　　　あの色彩に

　　　　　　つぶってば？

　　　　せば？ば。せば？

　　　　　きみを弔うのだろう

　　　ふいにひとり

　　　　　　は？ばせば？

　　　　つぶっつぶっつぶ

　　　　　なぜ？

　　　つぶされた。つぶす

　　　あの色彩

　　　つぶし、つぶす

　　　あの花に

　　　つぶされ、つぶす

　　　だ、だいなし

　　　お先なし

　　　つぶす。くだく

　　　ほ、ほろぼす