アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -40 //沙羅。だから/その唐突な/あなたの目覚めに/ふれていたのだ//06





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





謂く、

   ふれそうな距離に

   沙羅。その

   沙羅。そこに

   息をはき


   ぬらす。わずかに

   わずかな息の

   わずかなしめりに

   そのうるおいに

謂く、

   あやうすぎた距離に

      咬んでいた

    知ってる?

     だれにもたやすい

   沙羅。その

      耳を

    狂気は

     定義は

   沙羅。そこに

      その尖端。狂気

    おどろくほど近い

     狂気の

   体温を放ち


   ぬらす。かすかに

      舐めていた

    知ってる?

     不可能だった

   湿度。肌の

      歯を

    狂気は

     定義は

   わずかなしめりに

      その末端。狂気

    すでにくちびるに

     それ以外の

   この肌をさえ褐色の、しかも狂暴な沙羅。まなざしにはいつも軽蔑のいろがある。昏い。まなざしは、ほほ笑んでさえも。鼻を舐めた。温度。しめりけのある、不快と心地よさのあやういあわい。はげしい口臭とともに、沙羅。舐める。くちびるが、舌が、鼻をラン。いとしいラン、彼女をいつでも被虐者にしてしまった、加害の認識もないハン。ランの母親。花粉。そのふしだらなまでのあざやかさに汚れた

   もっと、ぼくを

      壊されたいんだ

くちびる。

   汚して。きみの

      ぶちのめさるぇ

鼻先も。

   花束で

      ぼろぼにさるぇ

頬も。狂気の

   ぶって。もっと

      壊されたいんだ

ハン。わたしにも、ランにも、狂気は親しい。おもわず笑いかけてしまったものだった。はじめてハンの食事を見たときに、わたしは。不謹慎とは想いながらも。そのささやかな、須臾の頬のゆるみ。ラン、たぶん、彼女は見なかった。傷つきやすいラン。あまりにも、もう傷ついていたから。雨にぬれたブーゲンビリア。その色葉にしずくがこぼれてすらもこころをいためるしかなかったラン。そこでも?だからランは、ひとり深い軽蔑と嫌悪に傷ついていたのだろうか?わたしとほとんど並んだ、あやうい背後で。レ・ハンが云った。いつだったか、ランの宏大な家屋を訪れたときに、不穏な、邪気のないレ・ハン。——よく、生きてられるね?

「いや…快適。じゃ、ないけど、」

え?と、かるくおどろくレ・ハンの、その至近の双渺。ことばを返しながら、その場違いらしい「もう、…」気配にわたしは、ほほ笑んだ。それは「馴れた、…かな?」むしろ、レ・ハン。その、官能的で陰湿な体臭がみじめなほどに匂った。

「なんの話?」

笑みにおくれて、そんなひとことでわたしをそこに置き去りにする。

「なに?」

「奧さん」

双渺は、もはや「あんなかんじで、よく」わたしの頬の「生きてられる…」かたわらを「…ね?」とおりすぎ、「…じゃない?」見ていた。ブーゲンビリアの葉翳りを、ななめに横切っていたランを。匂い。乾いた土の。

   ね?すこし

      ひわいな。ひわいすぎた

匂い。乾いた樹木の。

   ささやくふりして

      かたち。ほら

匂い。乾いた幹の。

   舐めてみて

      耳たぶ。その

しかも匂い。うるおいのある花。厖大な

   ね?すこし

      エロっちい。エロっちすぎた

葉と葉ゞのむれ。ひそむ

   つぶやくふりして

       かたち。ほら

たぶん、こまやかな

   舐めてみて

      鼻の孔。その

虫たちさえも。

   ね?すこし

      きたならしい。クソきたなすぎた

匂った。それらは。レ・ハンのやさしくもの思わし気な、…なにも想ってなどいないくせに。まなざしのなか、暇をもてあまし、あるいはかすかで執拗な不安をも持てあましていたランが用もなく、廃屋のほうに歩いてゆき、ひかりの

   やばっ

      見えるよ!

綺羅。そして

   いま、ぼくは

      きみが

翳り。ゆれて

   ひかりを知った

      見え

這う。色彩。「お母さん、殺しかけたんでしょ?」え?ラン。大切な

   え?え?え?

      マジ?くそマジ?

ひと、と、そう

   え?え?え?

      くそ?マジくそ?

云ったのだった。逢いに

   え?え?え?

      は?

行きます。大切な

   え?え?え?

      マジ?くそマジ?

ひとに。その朝、わたしの

   え?え?え?

      くそ?マジく

正面、悩みのないあかるい笑みに、ランは。ベトナム語だったか、英語だったか。忘れた。日本語であるはずはない。話せないから。結婚のために役所をふたり、右往左往していた時期。小雨が降っていた。母とは、ひとことも告げなかった。ただ、大切なひと、と。それだけ。まだダナン市の地理など知らなかった。どこに行っても海に出るという印象しかない。ハンがかくまわれた遠戚の家は、いま想えば内陸の、工業団地のちかくのどこかなのだが、だから

   愛とは

      唐突に

ランの運転するバイクの

   事象なのだろうか

      返り見た。きみに

うしろに

   概念なのだろうか?

      唐突な

乗った。たわむれにランの、豊満だったからだに…おとなし。しがみついて…て、いていて。やりなが。おとなしくしていて、わたしの、…たぶ。ベイビーちゃん。と?たぶん、そんな意味。ベトナム語。笑う。聞き取れたのは、流れ去る風にかろうじてべーべ。ベイビー。ベトナム語発音の

   べ。べ。べ

      えー。え。べ。え

断片。道路の

   べ。べ。べ

      えー。え。え。べ

周囲、ひろがるのは

   べ。べ。べ

      べえー。え。べ。え

宏大な更地。再開発を待つ。とり残さえたふるい家屋。そのくすみ。禿げたペンキ。錆びたトタン屋根。散乱した、衛生感のない露店。…わたしたちはハンを引き取った親族一家を尋ねたのだが、彼等はわたしたちの結婚式には来なかった。あるいは、ランは呼びもしなかったのだろうか。そのふるい家屋の、奧の離れにハンを見た。花を喰う、ハンを。まなざしに、床にひざまづき花を貪るハンがふれた須臾、息を呑んだ。ありえないものを、いまはじめて見る気配に。ランが。花。そのときの

   目舞いが

      なすって

花は、…あの花。

   もう、まなざしが

      なすりつけて

なんだったのだろう?

   昏むくらいに

      あれ?

百合?

   目舞いが

      蝶が燃えました

菊?それとも

   もう、一秒も

      なすって

なにか、別の?もっとあざやかな?花は…あの

   耐えられないくらいに

      なすりつけて

花。なんだったろう?記憶には

   目舞いが

      あれ?

ない。想起はいつか、しろい百合の花だったとわたしに思い込ませている。ふさわしいのは、かろうじて百合、と。なぜ?うつくしく、しかも赦し難いまでに臭い花。狂気の散乱。わたしの周囲にも狂気ならあふれかえっていた。狂気こそがわたしを育てたとも言えた。母…と、そう戸籍には記録された女。彼女は赦し難い

   愛が、ふれた

      とけないで

狂人だった。切り

   あのとき、たしかに

      とろけないで

裂き、切りひらき

   愛。ただ

      みんな見てんじゃん

本来あるべき場所から

   愛だけが

      溶解しないで

わたしを

   愛が、ふれた

      液化しないで

引きちぎり、そして

   あのとき、もう

      しかも原子核崩壊し

奪い取った女。または、もっとありふれた狂気。歌舞伎町にあふれかえったさまざまなそれら。狂った男たち。狂った女たち。そしてベトナム。ユエン、ハン、タオも?思うに精神疾患という呼び名、それはそれ自体まったき狂気にすぎない。眼の前、或るすさまじい事象に対し、なんとか無害化をしかける。無毒化をはかる。しかも、なにもできない。しかし、敗退の事実には気づかなかったふりをした。さまざまな名をつけて、なんでもないのだと独り語散てみる。そんな留保なき

   肩越しに

      やあ。や

狂気。狂気は、もしくは

   こんにちゔぁ

      お元気?

精神そのものは、

   顎をのっけて

      やあ。や

本質的に

   こんにちゔぅ

      お便器?

前例がない。そう思う。だから狂人へのいわゆる治療とは、すなわちモルモットへの生体実験に変わらない。たとえ善意のみに支えられていたとしても。狂気は、精神は、考えられているよりももっとすさまじい事象であるはずだ。だから、本質的に未曽有で、孤立したそれ。無慈悲なまでに。前例のない事象を見、癒そうと、つまり前例のなさを破壊しようとするものは、ただ戦慄と不安のなかに揺れ動かざるを得ない。逆に、だから

   第十一次元の

      かゆっ…て

わかる気がする。しばしば

   夢を見た

      超ひもが、垂直に

非難される、精神医療機関による藥づけも。如何なる同情も容認もしないまま、慥かに、それ以外にすべなど、と。癒す彼らがまともな精神を維持しようとすれば、眼の前の未曽有の赤裸々に対しては、鈍化し、無能にし、なにもわからなくしてやるほかない。生きながら埋葬すること。やさしく、しかも

   第十一次元に

      かかかいっ…て

強烈に。沙羅に、あるいは

   夢を見た

      超ひもが、彎曲を

惹かれたのはその狂気が実はなつかしかったからなのだろうか?あるいは奔放なその肉体が、どこかランを思い出させたからだろうか?やつれとがいまだ翳らせていなかったころの。もっとも、ふたつの肉体はまったく差異した。ランのうつくしさの全盛がいつだったのか、わたしにはわからない。二十代後半にさしかかっていた。はじめて見たランは。アカウンターの、冷静なまなざしを、いつ?それがいつか剝ぎ取られて、いつ?崩壊し、裸形をさらし、そして素肌に顔を埋め、ラン。あのラン以降のランしか、わたしは知らない。十五歳のランにはもっと、あやふやな魅力があったのかもしれない。十八歳のランにはあきらかな女性の、しかも猶も未熟な美しさがあったかもしれない。二十歳をすぎたランには、上手に女性を擬態し慣れた、洗練のうつくさがあったかもしれない。やがてそれにも飽き始めた倦怠の、ただみちあふれたやわらかさと、そしてしみこむあたたかさ。それが、わたしの抱いたラン。ふしだらにも想えた

   発情したよ

      見ないで

肉体の柔和な

   蝶々さえ、いま

      きみに

いぶき。矛盾した、

   欲情したよ

      恋しちゃうじゃん

はじめて知るものへの怯えの

   青虫も、いま

      見な

硬直。はじめて腕に、抱かれたときに。不可解だった。ランが、いまだ誰も知らなかったというあきらかな事実に。こなれない四肢。鳩尾ち。胸元。腹部。だからとまどい。焦燥。必死の矜持。赤裸々な恐怖。どうしようもない、不穏。うつくしいランがそのうつくさの自然に、何人もの男たちからの求愛を転がすなど容易かったはずだった。ありえなく想えた稀有に、そのときはただ、僥倖を感じた。もう、わたしはたしかにランを愛していた。発情もなく、奉仕者としてのみその肉体の幸福を願った。充足を。恍惚を。くちびるも、ゆびさきも、ふれる肌もつかまれた髪も、それらすべてがしあわせであってほしかった。沙羅。それはむしろ精悍な肉体。腰、その鞏固な放埓。けものじみた健康。くらべれば、たしかにランのあのころの芳醇は、いつこわれてもおかしくない、あやうい、あくまで

   ぶって。ぼくの

      花のような

不健全なものだった。あるいは清雪の

   頬を

      きみのお尻で、さ

うつくさにも似て?似たところなど、なにもないままに。いま、…ね?と。沙羅が額にくちびるを押し付けたまま、「喰った。…獏が」とでも?そして声を、鼻孔にだけたて、「太陽を、…しかも」笑った。「波のしたの、いちばん深いところで」とでも?沙羅。るぃんじゃざぃいっ…

   みずみずしい

      あ。あ。あ。そ

と?何語?彼女はなにか伝えようとしている。だから、そこに、言葉。すくなくとも彼女には明晰だった言葉を、そこに、言葉。吐く。吐いた。吐きつづけ、「燃えてるから。…さ。だからほら」ユエン。そのひぃいんだばふっう

   空には、むしろ

      そこそこそこ

太り過ぎた体躯。沙羅の樹木のしたで「…莫迦。波が、無造作に、」とぉいんてぇいっ

   色彩をなくした

      しゃぶって。てか

息をあららげながら「ね?…燃えてっから。あんたの」ひゅいらぁあ!

   鳥たちの沈黙。それこそが

      かいーじゃん。か

ふいの折檻にのけぞりかえって、ユエン。わめいたユエンとおなじ、あの「狂った肛門の底でさぁ」どひばっ

   似合いませんか?

      かかいーじゃん。か

ランの弟さえ。なぐさみものにされていたユエン。鼻血。ユエン。弟。彼に会ったことはない。ランのくちから彼の名、ハイ、と、はただいちどだけなつかしげにこぼれた。しかし、…いるの?

   壊されるために

      生まれました

なに?

   狂いました

      汚れるために

弟。いちどきり。たぶん穢いひびきだから。それは。穢いものは、存在してはならない。わたしとランという、彼女にとってはただうつくしく清純で、なにより幸福であるべき地平に、ぜったいに存在してはならない。レ・ハンは云った。弟さん、やばかったらしいよ、と、「弟?」

   生きろ!

      繁殖します

そうとう、やばかったって、…だから

「だれ?…ランの、」

   素敵だ!

      葉翳りに

魔物が来て喰っちゃったって。そう、ランが

「ランの?」

   きみは素敵だ!

      むし。むし。むしし

彼女、いまさっき、眞顔でそんなこと、

「知らないな…そんな、」

   素晴らしいんだ!

      増殖します

言って、さ。なんか

「兄弟いたんだ。…おれには」

   生きろ!

      花翳り

すっげぇ深刻な顔して

「言わないから。…って、なんで?」

   死んでも生き

      しむ。しむ。しし

笑った。レ・ハンは。あざけりが匂う。ランへの、そしてわたしへの。迷いなき辛辣な侮辱。だが、レ・ハンのくちびるには心地よく響く。屈辱の笑い声は。なぜなら、レ・ハンの不遜で冒瀆的なうつくしさに、あまりにもよく似合っていたから。「憎めばいい」と。「憎んで、それでお前の」淡々と。彼は。仮りの「気が、それで、すこし」父親。雅文。「すこしは、楽に」

「莫迦なの?」

せせら笑う。故意のわたしの、だから卑屈で引き攣った、笑い。

雅文の眼に、そのとき、あるいはただ痛ましくのみ見えていたかもしれないもの。「赦してあげろとは言わない。おれは、…お前の、の、好きなように、の、好きな感情で、…から、好きな」

「殺していいの?」

「それは、」

「じゃ、いま、殺しても」

「ダメだろ」見逃さなかった。わたしは。その諫めの言葉。くちびるにもれるまえ、須臾の懊悩があった。雅文の、うすい…おれを、くちびる。殺し「絶対に、それだけは」人殺しにしたいの?「だめ」

「なぜ?」

「おまえ自身を」なんで?「殺してしまうだろうが」宮島の方言を、いまだ雅文は話せない。葉子もそうだった。死ぬまでそうだった。わたしも。生まれ育ちながら、なぜか。小学校で方言を使おうとしたときに、わたしはどもった。極度にどもった。舌を咬みそうだった。より、喉と方言はとおざかった。十六歳の時、実家を捨てた。一度も

   ささやこうか

      くさ。くっ

帰らなかった。島は、

   やさしい声で

      誰?いま

観光番組のブラウン管か、液晶画面かの

   吐息しようか

      くさ。くっ

表面にだけ

   やさしい息で

      どこ?いま

見た。発光体の色彩。いまや、本当に声をたててわらっていたわたしを雅文はようやく上目に、腕には葉子。かろうじて抱きとめられた、赦し難い他人。…母。「…ね?」だれ?「いちどでも、おれを愛した瞬間って、ある?」雅文の手のひらは「…あんたってさ、」罵詈雑言らしきを「おれを、」わめく葉子のかたむいた側頭部を撫ぜつづけていた。ことさらにやさしく、しかも押さえつけるように。沙羅は、わたしのそれにはふれない。その九月二十一日の朝、くちびるがわたしの鼻に飽きて、眉間にうつりはじめ、…ね。と。わたしは…あたたかみ。ささやく、その沙羅に「なに見てる?」

くちびる。あるいは、

   語った。ときに

      ひびく

「いま、お前」

舌のさき。ことば

   なつかしそうに

      ひびき

「見えてる?…なに」

だから沙羅の首筋に

   生活。東京の

      なだめるように

「見えてる?…おまえ」

そっと、しかも聞き取られないように

   渋谷区。そして

      なりひびく

「生きてる?」

あたたかさはゆっくりと

   本邸のあった

      尺八の

「なんで?」

移動を、沙羅

   麻布台。そして

      ピアニシモ

「死にたい?」

ささやき。わたしは

   彼が好きだった

      ひびく

「死にたくさえない?」

沙羅が理解できない日本語の

   芝のあたり。なぜ?

      ひびき

「生きたい?」

ひびきに

   好きだった。その

      しずかに鳴った

「生きてたい?」

その耳

   話を聞いて

      管のあたたかみ

「生まれたくもなかった?」

けものじみた

   あこがれてやるのが

      ひびく

「生きられない?」

高速の

   好きだった。わたしは

      ひびき

「死ねない?」

ノイズに他ならなかった?

   そして、いつか

      耳のななめに

「ね?…お前」

沙羅には。くちびるの

   連れて行ってやると

      鳥たちの

「いま、なに」

湿度。息の、沙羅。その

   その約束を

      ひびく

「なに見てる?」

耳に。温度。眉間は

   よろこんでやるのが

      ひびき

「見えてる?」

沙羅の耳に

   好きだった

      耳もとに

「…なに?」

ノイズ。眉毛。くすぐったさ。笑った似にた沙羅の息。その不規則を聞いた。謂く、

   恥じらいもない

   沙羅。だから

   赤裸々。破廉恥

   沙羅。だから


   その舌に

   舌にもてあそび

   その舌に

   舌をもてあまし

謂く、

   恥じらいもない

      ひかった

    肌が、ときに

     だれをも

   沙羅。だから

      ひかり、いぶき

    繊細すぎる

     救わなかった。だれをも

   赤裸々。破廉恥

      うぶ毛が

    ふるえを、ときに

     わたしたちは

   沙羅。だから


   恥辱のみ

   沙羅。だから

   赤裸々。破廉恥

   沙羅。だから


   ふれられたままに

   うつし、臭気

   肌。匂い

   沙羅の匂い

謂く、

   恥辱のみ

      さわいだ

    眉が、ときに

     だれをも

   沙羅。だから

      ひかり、さわぎ

    いたましすぎる

     癒さなかった。だれをも

   赤裸々。破廉恥

      うぶ毛が

    痙攣を、ときに

     わたしたちは

   沙羅。だから


   ためらいもない

   沙羅。だから

   赤裸々。破廉恥

   沙羅。だから


   そのひたい

   体液。にじみ

   そのひたい

   攣りあがり

謂く、

   ためらいもない

      わなないた

    睫毛が、ときに

     だれも

   沙羅。だから

      ひかり、わななき

    怯えに似た

     憩わなかった。だれも

   赤裸々。破廉恥

      うぶ毛が

    ゆらぎを、ときに

     わたしたちは

   沙羅。だから


   愚鈍のみ

   沙羅。だから

   赤裸々。破廉恥

   沙羅は、だから


   たわむれたままに

   うつし、臭気

   肌。匂い

   沙羅の匂い

謂く、

   愚鈍のみ

      翳った

    顎が、ときに

     だれをも

   沙羅。だから

      ひかり、翳り

    不穏すぎる

     導かなかった。だれをも

   赤裸々。破廉恥

      うぶ毛が

    かたむきを、ときに

     わたしたちは

   沙羅は、だから


   匂う?沙羅

   感じた?沙羅

   そこに。鼻孔に

   あなたの至近に

謂く、

   匂う?沙羅

      屠殺されそうに

    そばにいよう

     なにが、その耳

   感じた?沙羅

      ほら、沙羅

    その傷みの無限

     ささやいてる?

   そこに。鼻孔に

      澄む。空が

    無限の至近に

     いま、なに?

   あなたの至近に


   あなたのそばに

     だれが、その耳

    無限の至近に

      鳴る。海が

   そこに。鼻孔に

     ささやいてる?

    その傷みの無限

      ほら、沙羅

   感じた?沙羅

     いま、だれ?

    そばにいよう

      気絶しそうに

   咬め、沙羅









Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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