アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -27 //まだ知らない/あなたも、まだ/沙羅。だからその/空。あの色を//06





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





謂く、

   なにを、沙羅

   なにをもとめて

   沙羅。それを

   ゆびさきに


   確認し

   沙羅。それを

   いたぶりつづけて

   あま咬みを、沙羅

謂く、

   なにを、沙羅

      なかでも

    あたたかい?

     そこでも

   なにをもとめて

      硬くなる?

    ここちいい?

     萎えたまま?

   なぶりつづけて

      そとでも

    さわってたい?

     あそこでも

   あま咬みを、沙羅

と、沙羅が、勝手にそれをもてあそんでいることは知っている。すでに。飢えているのではない。沙羅は。たぶん。すくなくとも、まだ。あるいは、もてあそびつづけた挙句は知らない。のばされていた手のひら、…甲?すでにふれ、それに、だから、ただ眼の前にあるがままにそのくちびるの行為。を、はじめたにちがいないと、嘲弄。わたしは、嘲弄。沙羅のくちびるが嘲弄。沙羅。嘲弄していた。笑った?息。それとも、沙羅。真摯な求愛?好きよ。…と?ただ、あなただけ。…ちがう。と?それは、好き。ほしいの。嘲弄。たしかに、しかもレ・ハンのそれとはただ、あなただけが、…と?ほしいの。完全にちがう。レ・ハンのはしっかりとぜんぶ、ほしいの。たしかに意識として意識された好きよ。ただ、あなたのだけが。沙羅。意識そのものの差異。まじりあわない、だから好き。ほしいの。いわば容赦なき他人。たぶん、ただ、あなただけが、ほしいの。意図されない、…おなじ?ぜんぶ、ほしいの。なんら似たところのないそれら

   ささやいて

      聞いていた

好きよ。ただ、

   咬み、いま

      閉じて、目を

あなたのが。嘲弄。ゆびは

   咬みちぎるように

      閉じて、かた

好き。ほしいの。そして

   ささ

      かたくなに

ちいさな、やわらかなあなたのだけが、ほしいの。手のひらは執拗に、心地よさをぜんぶ、ほしいの。感じさせる妥当さをいっさい欠いたいたたまれない手つき。好きよ。ただ、あなたのが。ラン。彼女もそうだった。あの好き。ほしいの。いたたまれない、あなたのだけが精子検査。精子採取。わたしたちのあなたが、ほしいの。不妊治療に、なんども、なんどか?ぜんぶ、ほしいの。繰り返された、しかし、手。その手のひら。もっとちいさな、好きよ。ただあなただけがおなじようなあたたかさ。やわらかさ。やわらかく好き。ほしいの。垂れたままのそれ。しかし

   ささやいて

      傷いんです

鮮明に滾った血の

   咬み、いま

      爪の

高揚をせめてただ、

   咬みちぎるように

      爪の付け根が

あなたのだけが、その須臾にだけでも

   ささ

      思い出したように

送り込もうと、自分で、と、ぜんぶ、ほしいの。あたりまえのこととして採取室の前でランと好きよ。ただ、あなたが別れ、ひとりになったわたしは自分で好き。ほしいの。努力しながら、何分?ただ、あなたぶん、じぶんが思っていたよりはるかに短かった。もしもぜんぶ、ほぎりぎり秒の単位で、分の閾を越えていなかったなら好きよ。ただ、あ笑う。だが、焦燥したわたしはすべりがよすぎる引き戸をあけると好き。あなたが、いとしさに好き。胸がつまった。もうその一瞬だけで

   好きよ

      気絶しそうなくらい

吐きそうだったくらいに。

   好きなの

      ケツが

そこ。戸にもたれるほどの

   好きよ

      燃えそうなくらい

至近。ランが待っていた。待合いまで移動していなかった。立っていた。すがるように。ドアに手を、ふれかけて。ほかの患者。すこしはなれたそこ、眼。眼。眼。ソファに座り、椅子に身を投げ、彼女たちの呼び出しを待つ。ナース。通り過ぎ、雜然。しずかな。閑散。やや。とはいえ、ひと眼。眼。ひと。眼のむれ。不審。ぶしつけ。それら容赦なさの散乱のなかに、

   いとしさが、いま

      滑稽なくらい

ラン。無理やり

   例えば、さ。プノンペンの

      ぼくたちは

笑んだ。ランが

   アスファルトの罅割れに

      追い詰められ

なぜ?来い、と、

   そそぎさえすれば

      莫迦げたくらい

Come inささやかれたのを、——驚き。いまさらにひらいた眼の前のドアへの、それ。そんな須臾。Why…まばたき、いたましい…ん?やさしさ。…なに?引いた。その手を。閉めた。ドアを。わたしは。ふたりになった。ごくごく当然の倫理として、ただひとりだけであるべき場所で、ランはなされるがままにまかせた。わたしのその羽交い絞めにした腕に。脱力のまま揉みしだかれ、焦燥されていた。他人の情熱に。ランはとおく煽られつづけ、ただ醒めて。醒めきれもせず。溺れもできずに。だから、そしてただ、いつくしむだけ。憐れむにも似て。ラン。やつれはじめた

   カトレアが

      ささやき

肉体。脱がされたともなく

   日影にそっと

      羽虫たちは

乱されるだけ乱された

   その色彩を

      葉翳りに

着衣。その乱れに

   やつれさせ

      ささやきはじ

肌。だから立ったままいたぶられ、せめたてられ、やがてランはひざまづいた。わたしの引き下げたそれをさらにずりおろすと、むしろなだめる手つ。その頬。指。手のひら。と、唇。舌。と、歯。そんなことをする女ではなかった。ランは。わたしは愚かしいほどに必死だった。ランは、あるいは、それ以上に。冷静すぎてさえ見えた、ななめのやさしく逸らされたまなざしに。慣れない粘膜と手のひら。それらがなんとかしようとし、何分も。ふたりで何分も、必死に、苛立ち。間歇的な、わたしの苛立ち。その耐えられなくなるたびにさら脱がされ、乱され、ひとり、ランだけがもう、なにも身につけていないにひとしかった。犠牲者はただ、ランだった。まるで犠牲者のようにふるまうわたしの苛立ちに、わたしは苛立った。口蓋がようやく目覚めかけさせたもの。側頭を捉まれたランの目のまえでじぶんでなぶり、鼻にこすれそうな至近に、息。暴力的に、息。強引に、わたしが故意のあらい息を立て、そうやってやっと採取カップは透明をよごす白濁を知った。つつみこんでいたラン。その両手のなかで。カップごと、つかんだ。その手を。わたしは。ラン。爪。かすかなふるえ。感情の?肉体的な疲労の?指先。カップを支えつづけたそれ。匂いのあるあたたかみがランにつたわるのを、わたしは

   傷みが

      匂う

羞じた。もちろん

   ふと、こめかみに

      汗?鼻に

知っていた。何度かは、

   痒みが

      きみの、すこしの

ランも。わたしたちの

   ふと、喉のあさい粘膜に

      すこしの

ベッドで。温度。臭気。…とはいえ。赤裸々な恥辱。やがて、なぜか疲れきった顔をつくってランの眼を見たときに、顎。ひざまづいたまま、突き出されていたそれ。うかがうように。なめらかに。そして荒らぶりのない、なんらとがめだてもしない、やさしいだけの目。あわててふたたび見なおしたくちびるは、かすかにひらかれていた。赦し?むしろ祈るように、——ありがとう、と。Cám ơn、ふと、そのいつくしみの笑みがささやいたとき、カップに蓋をしかけたランのくちびるをむりやりうばった。押し倒す。つめたい

   ちぎられた

      羽根は?

床に、ランの

   蜘蛛たちが

      わたしたちの

背中を傷めつけ、肌を

   失語。いっせいに

      羽根は?

塵に汚しながら。ごめんなさいと、そのベトナム語を、わたしは忘れていた。なぜだろう?どうしても、思い出せなかった。だから、わたしは。採取室を出て、角をまがったカウンター。持ち寄ったランに、ナースはあえて咎めだてはしなかった。だからというわけでもなくて、何回かの採取のたびにわたしたちは「あなたしか、もう」最初はひとりで「考えられない。わたし、」ためしたあと「もう…ね?」かならず、だから「いいかな?」ひとびとの眼はどう「見つめてても、」見ていたのだろう。ドアの「いい?」前。祈るように「いいかな。ぜんぜん」待ち、やがて「なにも…ね?」つれこまれるその「邪魔しないから、ね?ここで」同国人。そして「見つめてていいかな?」東アジアの「あなたをそっと」どこかの「いいかな?」外人の、引き込む「…ね?」焦燥した、手。閉じられた「…いい?」ドア。ながい、ながい「見つめてて、」と?その沙羅。ささやくたびに口蓋は、あまりにも不似合いな口臭をたてた。沙羅。なげかわしいほどにうつくしく、煽情的な、そしてその口臭。それだけのあり得ないみじめさ。ただの「やばっ」臭気。鼻に「…ね、ね、」なれない「時空ゆがんでない?…てか、」惡臭。赤裸々な「くさくない?…なんか」道玄坂の喫茶店。二階。だから「気のせい?」街路樹。

「レモンだと思います。…たぶん、」清雪がわたしの胸を指して「…の、うしろ、で、いま」美沙に「ぼくも、匂い、すこし」ささやいた。

「レモン?」

「レモン・ティ…」

「それ、」叫ぶように「くさってない?」と。だから美沙には見えなかった背後の女、清雪にだけは

   ね?好きにして、いいよ

      花を、花

見えていた。美沙の顔の

   ぶ。ね?わたし、きみの

      花を鉄ばさみに

よこ。やや右に

   ても。味方だか

      躊躇なく

かたむいたうしろすがたが。上品な

   ら。世界中が、ね?ぜん

      断ち切りながら

巻髪。それなりの

   ね?きみの敵に、なっ

      笑んだ。その

年配。五十代?「ここ、やばい店?」せめてもの

   ね?わたしは

      女は、やさしく

気づかいもなく美沙は、逆に「…ね?」ひとり恥を知る「うちらの豆も、さ」清雪だけが「腐ってんじゃない?」しずかに目を伏せた。「マジ?」

「安心しろよ」美沙の横に座っていたわたしは、むしろ「放射能あびた豆でも、おまえだけは」恥じらう清雪のため「腹くださねぇから」わらった。あくまでも、となりの女に横目をすべらせて。故意に、しかも明確な惡意もなく他人を愚弄しないではいられない女だった。そして、侮辱に矜持の意味を持たせた。歌舞伎町で

   しい。きみは、ただ

      一度も方言を

拾った。鏡ばりの

   そこにいるだけで

      覚えることのなかった

柱にうつっていた

   けで。…いい。きみは、そ

      くちびるが

レモン・ティの女は、美沙の

   みは、ね?すばら

      笑みかけ、その

じぶん勝手な

   こにいるだけで。…い

      逆光。ななめの

歌舞伎町流儀にはあくまでも感知しない。ただの他人。すくなくとも、洋装の頸からをしただけは落ちつかせていた。口を付けたティー・グラスにくちびるをいちど不用意にふるわせながらも。ちょうど、美沙の後頭部の向こうに。あまりにも至近の、衣擦れ。

「言えよ」わたしはささやく。美沙の後頭部に。

「なにを?」

「なんか、いま云いかけたじゃん」

「それ」と、葉子は、「あんたたち、さ、」わたしと壬生清雪を「双子?…ね、」交互に指さし、「双子でしょ」いまさらおどろいた眼に、「違う?」笑む。たしかにわたしたちは「なんかもう、なに?」似ている。たぶん「一卵性?」親子だから。

「年齢ちがいすぎだろ。」見つめていた。わたしは「…莫迦」清雪、十二歳の彼を。そして鏡には「だから。…だからだから」三十を越えたわたし。だから、「時空が、さ。ぁあ…時空が、さ。ぁあ、」九十年代。

「ねじ曲がって、さ。ぁあ、年齢違う双子がここに、って、さ。ぁあ、」清雪は、おびえたに近いいたたまれないまなざしに、そして、美沙のために笑んだ。なげかわしいほどにやさしく。そのくせ、あきらかにわずかな憐憫さえありはしない。壬生清雪の、いちどもそのくちびるを乳首にあてることがなかった、あの母親。我喜屋春奈。あるいは、壬生。壬生春奈。彼女に似ない、利発と容赦ない清冽をわたしはふと、知った。清雪に、笑みをつくったまなざしに。謂く、

   もてあそぶ沙羅は

   知っていた

   じぶんを、それが

   なぶらないことを


   やさしく、ささやか

   やわらかな、それが

   いきもののいぶき

   そのまるみ。沙羅

謂く、

   やさしく、ささやか

      ゆびさきに

    肉体。無能

     なろうか?残酷に

   やわらかな、それは

      こねくりまわして

    できそこない

     もう、残酷にしか

   いきもののいぶき

      笑う。頽廃

    欠損。肉体

     なれないから。沙羅

   そのまるみ。沙羅


   まさぐる沙羅は

   知っていた

   じぶんを、それが

   いたぶらないことを


   やさしく、ささやか

   やわらかな、それが

   いきもののいぶき

   あたたかみ。沙羅

謂く、

   やさしく、ささやか

      はなさきに

    肉体。ずぼら

     残虐であろうか?

   やわらかな、それは

      いじりたおして

    恥知らず

     残虐でしか、もう

   いきもののいぶき

      あざけ、頽廃

    のろま。肉体

     いられないから

   あたたかみ。沙羅


   褐色の肌に

   白濁をちらし

   肌がすでに

   白濁を知り


   散った匂いに

   笑みをもらし

   いちどもなかに

   白濁を知らない

謂く、

   褐色の肌に

      残骸。肉体

    もう、焼きついたから

     蹂躙された

   白濁をちらし

      沙羅。その

    神経など、沙羅

     夜が滅びて

   いちどもなかに

      引き攣る肉体

    もう、焼ききれたから

     赤裸々な朝

   白濁を知らない


   ゆびさきに沙羅は

   知っていた

   じぶんを、それが

   傷めないことを


   やさしく、ささやか

   やわらかな、それが

   いきもののいぶき

   あどけなさ。沙羅

謂く、

   やさしく、ささやか

      眼の前に

    肉体。破綻

     なろうか?苛酷に

   やわらかな、それは

      糸をひかせて

    役立たず

     もう、苛酷をしか

   いきもののいぶき

      吹き出す。頽廃

    ほら孔。肉体

     見出さないから

   あどけなさ。沙羅


   褐色の肌に

   恍惚を模倣し

   肌がすでに

   陶酔を知り


   歓喜のきざしに

   頸をそり返し

   いちどもじぶんに

   絶頂を知らない


   あざ笑うように

   沙羅。つめた息

   腹部のへこみ

   腿のくるしみ

謂く、

   褐色の肌に

      残骸。肉体

    もう、焦げついたから

     いちども沙羅は

   恍惚を模倣し

      沙羅。その

    快感など、沙羅

     ふれなかった

   いちどもじぶんに

      引き攣る肉体

    もう、燃え尽きたから

     歓喜になど

   絶頂を知らない


   あざ笑うように

   沙羅。つめた息

   腹部のへこみ

   腿のくるしみ


   絶頂を知らない

     歓喜になど

    もう、燃え尽きたから

      引き攣る肉体

   いちどもじぶんに

     ふれなかった

    快感など、沙羅

      沙羅。その

   恍惚を模倣し

     いちども沙羅は

    もう、焦げついたから

      残骸。肉体

   褐色の肌に


   めざめさせたのは

     残骸が、ほら

    滅ぼされた

      残骸に、沙羅

   他人の歓喜

     たわむれていた

    目覚めるまえに

      いじりあっていた

   だれの歓喜?

     残骸に、沙羅

    滅ぼされた

      残骸が、ほら

   擬態。沙羅









Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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