アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -24 //まだ知らない/あなたも、まだ/沙羅。だからその/空。あの色を//03





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





謂く、

   まどろみ

   沙羅。いちども

   須臾にも

   愛されず


   停滞

   沙羅。いちども

   未来にも

   愛されず

だいじょぶ。いま、蔦がそっと背骨に巻きつく。謂く、

   ふと、気付いた

      接近。あやうく

    毛穴。に、さ。さっき

     ふれそう。ふれ

   沙羅。いちども

      知らずに、いつも

    知ってる?

     咬みつきそう。咬み

   わたしにも

      接近。あやうく

    狂気がいぶいた

     ふれあい、さ。そう。ふれ

   愛されずに息づかう沙羅の呼吸を聞く。こう考えてみる。もっとも卑劣ないきものの愚劣な生き方はなんだろうと。ひとをだましてしかも悪びれない?ただし彼にその卑劣さへの自覚がないとしたら、愚劣であっても卑劣とは言えないのではないか。なら、卑劣ないきもののその明確な定義とは、ちゃんとじぶんの卑劣を知り、知りつくしながらも卑劣でありつづけている愚劣をこそ言うのではないか。もっとも、しょせん言葉あそびにすぎない。語の定義をもてあそび、しかも知的ぶってみせただけ。一般的に言われる知的なひとという人種。彼等が恥も知らずその知的生涯を費やす営み。その容赦なき卑劣な愚劣さはさておき、たしかにわたしはひたすらに卑劣で愚かしかった。まさにその時には。あの妻。その宏大な持ち家にひとり放置されたラン。彼女にいま間違いなく必要なのは夫だった。彼がそばに寄り添うことだった。彼になし得ることがなにもなく、事実として無能そのものだったとしても。

ときに傷んだ自分を、その無意味をも知りながら抱きしめてくれるべき無謀な夫は、彼自身の不穏な友人が世話したホテルに女を連れこんでいた。彼は自分を捨てたわけではない。彼女はまだ愛されていると思っていた。事実そうだった。…ここで、愛するという語の定義に奔走する迂回はしないでおく。週の大半、彼は自分だけのそばにいた。そしてときに、たしかに意味もなく抱きしめてくれもした。つまり、わたしは卑劣かつ愚劣というその見本そのものだった。

まさか沙羅を愛してるわけではなかった。わずかな共感さえ。知らなかった。そのほんとうの名前さえ。わたしは。だから、勝手につけた呼び名に、そしてまともな知性もないらしい沙羅。煽情的ないきもの。煽情的なだけのいきもの。そのSa…La。ひびき。さ。そして、ら。さら。Sa…La。サー。…ら。ひびき。耳にささやかれたひびきを、沙羅がじぶんの名と認識しているのかさえ

   なにも

      その花に

わたしには

   なにもなかった

      自生した

あるいは

   その名前など

      その花に

たとえば

   なにも

      名前など

あなた、…と?

   必要さえも

      なにもな

Sa…La、そうささやかれるたびに、沙羅はあなた、と

   Em

      ハニー。ん…

つぶやかれたと

   Em ơi

      ちゅっ。ハニー

思っていたのかもしれない。未知の異国語で。または、いとしいひと、と?かわいいひと、と?それでなければ、たとえばベイベー、と?その日本語訳、ベイビー、と?または更なる日本語訳、ベイベェ、と?もしくは淫売。糞女。売女。あばずれ。なに?しかも海。そこに、だから窓の向こうに海はただ綺羅の生滅をのみをきざした。須臾にも。すでにも。とめどもなく無数に、かずかぎりなく。たしかにそこにありながら決して細部の詳細をさらさないそれ。容赦なくあきらかで、かつ、留保なく捉え難い、だから見ていた。むしろまなざしは、不穏。おおきな、しかししずかな、かすかな、すさまじい、綺羅ら。それらの息づきを。かろうじて。ひかり。

それはあきらかに空のほうにあり、しょせんは反映にすぎない。その、海の綺羅ら。にもかかわずひかりを、ありえないほどに増殖させ、誇張し、肥大化し、もはやただ光源そのものとしてみなもは存在していて、…逸らした。目を。わたしは思わずレ・ハン。彼が紹介したのだった。沙羅を。あの、

   なんですか?

      失せた!

うつくしい男。不穏な

   ちょっと。や

      いま、きみに

親しすぎる

   やめて。ぼくの

      言葉など、消え

友人。夢のような

   顎、咬まないで

      失せた!

レ・ハン。モーツァルトの音楽。それが唐突に血肉化したような。しかも嘲笑的な。しかし精悍な、レ・ハン。肉体。長い首。うとましいほどの霑い。双渺の。くちびる。不遜な。まなざしを射貫くのだった。その、曖昧で鮮烈な口元のゆがみは、直視にたえない盗み見の須臾に、…ね、と。なまりのない日本語で、雅雪は、と、…さ。

   きみのこころに

      そろそろです

ね?「なに?」やさしい、ひとでしょう?

   雪がふった日

      そろそろ

ちがう?かわ「レ・ハンには、…ね?」い。かわいそうなひと、見たら、

   ぼくたちは

      蕾が

ね?「だから、…」んー。放っと

   死んだ。き

      吹っ飛ぶぞ

放っとけな「なに?」…ね?

   きみのこころに

      爆発するぞ

ない、さ。って「だから、さ」かわい

   雨がふった日

      そろそろです

ん?かわいがって、さ。あ「…ん?」あ。

   ぼくたちは

      そろそろ

げてほしいひとが、…と、「ひとり、いる」そしてレ・ハンは笑みを。やがて、ようやくななめに逸らしかけていた眼をかたむけると「…あげる」云った。ほのめかすように。たぶらかすように。わたしをだけ見、…ね?「これ。…ね?ほら」ささやく。やや鼻にかかった、ささやき。故意に甘ったれた、ささ「…鍵」あまりにもやさしく、いたましい、その「あげる。…」ささやき。

笑いかけたレ・ハンを見ていた。不可解だった。不遜なまでに。容赦なく。あいまいで、なにをも「だから、」かたりかけない「もらってよ」笑み。

「どこの鍵?」

ホテルの。…とは、その時にはレ・ハンは語らなかった。笑みだけ。蠱惑的な。なにも、言葉など。無言に、しかしゆれそうになっていたくちびる。ひかり。射し込んだ、やわらかな。だから、白濁。空間を舐めたななめの白濁の帯びをだけ、追っていた。わたしのまなざしだけが。

それから一週間以上たった。鍵など忘れられていた。平日のいつかの朝だった。レ・ハンはホテルに、わたしを案内した。その間、沙羅がホテルで何をしていたのか、…べつの誰かのものだったのか、誰のものだったのか、誰のものでもなかったのか、そもそもずっとここにいたのかどうか、それさえわたしは

   聞いていたいよ

      好きっ

知らない。そこに

   そっと、そこに

      好きなんだ。その

見ていた。沙羅を

   あなたの

      うなじの触手

わたしは、そして

   息づかう

      好きっ

すでに、それは

   ノイズ。ひたすらに

      好きなんだ。その

しかも

   かすかな

      足首の肛門

窓。朝の、九月二十一日の、あわい。まだ鮮烈ではないから。だからほのかな光源。海。綺羅めき。すべるように、ふとそらされたまなざしが、落ち着くさきと言えば沙羅いがいにはなかった。まばたいた。ひたいに顔をちかづけたときに、沙羅。そう名づけられただれか。睫毛は、ふるえた。いちどだけのまばたきに、まどろみ。まなざし。ひらかれてはいた。だからもう見出されているにちがいなかった。慥かに、なにかが。すくなくとも、なにかは。なら、なに?それをほのめかすきざしもなく、しかし近づけられた顔。わたしの。くちびるは、なにを?口づけ?たとえば、ささやかな。知性のない

   茫然と、その

      鼻孔

褐色。うつくしい

   見ていた

      きみは、きみの

けだもの。その

   わたしたちは

      鼻孔に

ひたいに。けものの

   ほら、いま

      親指。ぶちこみ

頭蓋。そのかたちを、

   硫黄の雨が

      耳孔

くちびるは知らされ、なに?

   雨がふります

      きみは、きみの

なにを?

   硫黄のかおりに

      耳孔に

なにを求めてくちびるが

   茫然と、その

      睾丸。ぶちこみ

ふと、近づけられたのか、——知った。わたしは。わたしがなんらその答えをもっていなかった事実を。沙羅。まどろみから醒めない。たとえ醒めたとして、覚醒?なに?それがいったい、…目醒め。たんに沙羅の、沙羅のためだけの目醒め。あくまで固有。沙羅だけの。けものは群れない。狂人は理解しようがない。狂気したけものは赤裸々な異端にすぎない。きわだつ。留保なききわだち。共有など。だから、未分の渾沌。渾沌がいわばかたちのまどろみだったなら、沙羅の瞳孔の目醒めはべつの、またあらたなまどろみをさらす。それだけ。沙羅。そのこころに

   孤独を、ね?

      なに?そ

ふれるすべはない。須臾にも

   だから孤立した

      それ、なに?

いちどでも

   蝶さえ

      さっきから、そ

あったのだろうか?だれかと

   孤絶の微風を

      そこで、し

なにかとかさなりあったことなど。沙羅が。より添いあったことなど。沙羅は、しかもあたたかった。沙羅。おなじく素肌をさらしたわたしの至近、よこたわりあい、肉体。と、そして肉体。ふたつ。しずかに、放つ。それらは、温度を。ふれあいはしない。ふれは。あやうい距離。その隔たりに、しかし体温だけはすでにわたしに、

   痛いんだ!

      あーだめ

口蓋。ふいに

   痛っ!

      ぶ。ぶちこまないでくれる?

そこに

   痛いんだ!

      耳の孔に

…いま?

   燃える牙が

      巨大なみみず

ひらかれていた

   咬みついたんだ!

      ぶちこまっ…って、さ

…すでに

   ちぎるんだ!

      垂れてんじゃん

口蓋。もう

   喰いちぎるんだ!

      耳から

…とっくに

   ひきちぎるんだ!

      オメェーのくそ

ずっと

   痛いんだ!

      垂れてね?

わたしに気づかれていなかった時から、すでに。なかった。叫びは。なかった。ささやきも。ノイズさえも。ひらかれただけ。その口蓋。まさにさけび、たださけび、ひたすらさけび、まさにわめき、ただわめき、ひたすらわめき、わめきちらし、ののしるように、なじるように、糾弾するように、もはや言語にならず、たださけび、さけび、さけび、さけび、さけび、

   さようなら

      失敗

なにもなく。さけびの

   未生のままに

      ぼくらは、過失

ひびき。そんなもの

   消え失せた

      喪失

そんなものさえ

   あなた

      ぼくらは、破綻

なにも。

   さようなら

      不可能

なにも。

   未生のままに

      ぼ、破損

ラン。

   かたちさえ

      崩壊

見なかった。だからひらかれた口蓋。それだけを、見れなかった。…ら、れ、なかった。どうしても。ん?できなかった。そのん?すぐうえにん?ん?眼。見ひらかれていた。…たぶん。性急になにかを、…なに?たぶん。訴え、…なに?訴えつづけ、…なに?なすりつけるように。すりこむように。ぬりたくるように。すりこむように。…聞かなかった。耳。わたしの耳は、なに?なにも。ほんと?ランは慥かに、なにも

   あげます

      花々は

さけんでいなかったのだろうか?その

   傷みを。いま

      怯え、色彩を

ひろがりきった喉に、

   温度もなく

      うしないながらも

記憶。

   燃えあがり

      かろうじて

おぼえていた。口蓋。開口。知っていた。そこに叫ばれていたのがなにか。耳元にささやかれたよりも明確になにか。ことばなど。しょせんそんなものなど間接化に間接化をかさねただけ。ますます遠ざからせただけ。ただの誤り。逃避の手段にすぎなかったのではないか。宿る?知性が?ことばに?まさか。解析し、分別し、明確化する?まさ

   やめて

      ね、役立たず

まさか。傷み?

   行かないで

      助けてよ

なんと謂うべき?

   やめて

      ね、恥知らず

ラン。ことばのない——と、すくなくともわたしには記憶されている、その、なに?絶叫。二月?あれは、もう何年もまえの。二月。砂。ながれおちる

   とどまって!

      無理じゃね?

砂。水。

   ここにいて!

      無駄じゃね?

ながれ

   消え去らないで!

      莫迦?

水。

   立ち止まって!

      無能?

ながれる。

   振り向いて!

      駄目じゃね?

水のように、

   しがみついて!

      あほじゃね?

いのち。なが

   つかんで!

      糞じゃ

ながれ、…なぜ?ランを、なぜ、そこにまよいもなく抱きしめなかったのだろう。ただ遠まきに、…愛していた。慥かに。もはや、愛しているということば。そんなもののかけらさえ必要もないほど、ラン。ランだけを。…なぜ?

   パフィオ。蘭

      棘だらけの

想起などしょせんその

   春蘭。蘭

      蔦が

過去なる事象に対しては完全なる

   オレシジウム。蘭

      赤い、蔦が

無効にすぎない。

   寒蘭。蘭

      棘だらけの

ふれない。

   カトレア。蘭

      花を

ちかづき得もしない。もはや

   風蘭。蘭

      しろい、花を

過去事象そのものに対する愚弄、嘲弄にすぎないのではないか。記憶。…記憶?記憶。を、もてあそび、記憶を呼び起こし、想起し、ふたたび見出し、しかもあらたにそこにそのつど呼び起こす痛み。強烈な苦痛。いたたまれなさ。もはや狂気。思う。すでにたしかに狂気している。わたしたちは、想起された記憶にさいなまれるときには。そして、あまりにも多くの時間をその懊悩についやし、ラン。もう、肉体が翳りをさらすまでに。あの子がもしもふいの血と発熱とともに流れ去りはせずに、たしかにたしかな肉体と泣き声を持ってうまれていたなら、——しあわせ?ラン。もっとすなおに、もっと赤裸々に、もっと明確に、あざやかに、これみよがしなほどにしあわせそうに…そうに?ただ、ただただ、たんにただ無造作なしあわせにだけ無造作にほほ笑んで作為もなく、…ラン。

   しあわせだから

      苛酷なひかりが

わたしも?

   いっぱい

      ほら

いまは?

   わらうんだっ

      苛酷な花に

しあわせではないの?…と、匂い。あの朝、だから九月二十一日の朝、沙羅と。ふと懊悩の、なに?息を、まどろみ。その沙羅。そのからだ。匂い。嗅いだ。嗅ぎ、嗅いで、惡臭、と?…さえ、想えてしまうくらいのみだらでふしだらで陰鬱でつややかな芳香。だから、

   やばっ

      舐めて

花のような?

   くさっ

      わたしのゆびを

まさか。

   やばっ

      いやらしく

むしろ砂糖のかたまりのなかに

   くさっ

      舐めるふりを

醗酵した花々。いきいきしたたとえば百合の、あんな野蛮な、食欲をなくさせるだけが取り柄の饐えた臭気ではなくて、もっと骨髄にまで咬みつくような、そんな。どんな?喉の奥の粘膜のうちがわに、ん?ぶあつくかつするどい牙を無数につきたてるような、そんな。ん?肛門からぶち込まれたぶっとい針だらけの棍棒で、そのまま内臓をひきずり出したような、そんな。は?わたしはそこに、思わず鼻に吸い込みかけた息をとめ、なぜ?ふいに思い出されていた臭気。…芳香?嗅ぎ取られもしないうちに、しかし、たしかに?だから、潮の匂い。嫌惡。そうあえて単純に呼んでしまうべきかもしれないあの、臭気。ひたすらなまなましく、ただなまなましいだけの、淫乱な。みじめな。下品あ。きたない。ぶざまな。それ。沙羅の肌。その匂いは似ていた。似ていない。似ていなくもない。わからない。そこに沙羅。瞳孔の焦点があわされないまま、ふと、彼女にかたむいたわたしのまなざし。そこに、ひらいた。口蓋が。ひらいていた。もう。すでに。いつか。聞いていた。耳は。喉。沙羅の。ひくい音声。その、…濁音?しかも、みじかく。謂く、

   ひえた大気

   沙羅ごのみ

   赦せなかった

   なまぬるい


   あたたかみ

   沙羅。その肌に

   うぶ毛が光った

   冷気のみ

むらさきいろの薔薇がふった。そんな夢さえも。謂く、

   赦せなかった

      え?こごえた

    綺羅。のけぞった

     ぼくらは

   なまぬるい

      だから、亞熱帯に

    頸すじには

     だから、夏のおわりに

   あたたかみが

      ぼくらは

    うぶ毛が

     え?こごえた

   赦せなかった


   赦した。肌に

   ひえきり

   ひえすぎ

   鳥肌だち


   ひりつき

   冴えきり

   冴えすぎ

   乾ききり

むらさきいろの雨がふった。そんな夢さえも。謂く、

   赦された肌に

      ほほ笑み。それにさえ

    吹き出しそう?

     しゃぶる?ゆびを

   ひえきり

      昏い目。だから

    血?どんな色?

     ゆびを、根元まで

   ひえすぎ

      まどろんでさえも

    冴えすぎた肌に

     吐き、吐きかけつづけな

   鳥肌だち


   肌に傷み

      莫迦笑いにさえも

    冷えすぎた肌に

     吐き出せ。ゆびを

   冴えきり

      凶暴。目が、さ

    血?つめたいの?

     じぶんの、ゆび。だから

   冴えすぎ

      まどろんでても、さ

    飛び散りそう?

     ひと差しゆびが

   乾ききり


   ノイズ。エアコンが

   限界をすぎ

   ひびかすまま

   素肌をさらし


   その肌が

   沙羅。ぬくもりに

   焦がれはじめた

   その須臾に


   哄笑を、沙羅

   くちびるは

   哄笑をのみ

   いつでもさらした

むらさきいろの飛沫を、浴びつづけていた薔薇が、ふと。そんな夢さえも。謂く、

   その須臾に

      なぜ?沙羅

    ひえきり

     いつからだろう?

   くちびるは

      微笑。その

    ひえすぎ

     狂気。歯

   哄笑をのみ

      不快。容赦ない

    鳥肌だち

     歯と歯にも

   いつでもさらし


   褐色の肌

   引き攣り

   軋み、軋むむまま

   猶も冷やし


   その肌が

   沙羅。情熱に

   飢え、飢えを知った

   その須臾に


   嘲弄を、沙羅

   その頬は

   嘲弄にのみ

   いつでもゆらいだ

むらさきいろの花汁を、蕊に。そんな夢さえも。謂く、

   その須臾に

      なぜ?沙羅

    冴えきり

     いつ?いつの間に?

   その頬は

      微笑。その

    冴えすぎ

     破綻。毛

   嘲弄にのみ

      留保ない不穏

    渇ききり

     毛。毛。そしてうぶ毛にも

   いつでもゆらぎ


   知性のない

   笑った目

   爪がぬれた

   好き勝手に


   肌に赦した

   じぶんのゆびに

   熱を帯びた

   鳥肌がたち


   知性のない

   白痴の息

   ねじれ、わななき

   好き放題に


   肌に赦した

   じぶんの汗に

   むせかえっていた

   匂いたち

むらさきいろの薔薇がかたむく。もう、花汁にぬれまくって。そんな夢さえも。謂く、

   肌に赦した

      なに?

    焦燥を?

     感じてた?

   じぶんのゆびに

      なに?いま、な

    なぜ?わたしは

     そこで、きみは

   じぶんの汗に

      な、見てた?

    屈辱を?

     なに?

   沙羅は匂いたち


   褐色の肌が

   熱を知り

   喉をひろげた

   舌を出し


   ひとりであそんだ

   情熱。沙羅に

   充足の須臾は

   あり得ない

むらさきいろの花汁が、薔薇を。薔薇をうずめて。そんな夢さえも。謂く、

   褐色の肌が

      冷たい血

    感じてるふり

     なぜ?なぜ?

   燃えあがり

      血。絶望のみ

    擬態。陶酔

     壊れているの?あなたは

   喉をひろげた

      咬みつかせた。血

    恍惚のふり

     壊れてたの?

   舌を出し


   ひとりであそんだ

      肉。冴えた、肉

    あえいでるふり

     だれ?だれ?

   情熱。沙羅は

      肉。激昂にのみ

    擬態。痙攣

     あなたを壊したの?

   飽きることなど

      肉。凍った、肉

    忘我のふり

     壊されたの?

   膿むことさえも


   知らなかった

   沙羅。その好み

   赦せなかった

   なまぬるい


   あたたかみが

   沙羅。その肌に

   燃え立った

   情熱のみ


   ひとり求め

   渇き、冷え

   血は?いつ

   そこ。肌に


   沁みだすだろう

   傷みのはてに

   乾きのはてに

   吹き出すだろう

むらさきいろの花弁が咀嚼した。蕊を。容赦なく。そんな夢さえも。謂く、

   いつ、血は

      あの憤慨。瞋恚

    真似をしようか?

     爛れた顔

   沙羅。肌

      鼻さきで

    その眼の前で

     激昂。悲嘆?

   沁みだすだろう

      真似してみようか?

    その絶望の

     しかも奇妙に醒め焼いた顔

   吹き出すだろう










Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

0コメント

  • 1000 / 1000