攝大乘論:攝大乘論本彼果智分第十一/無著/三藏法師玄奘譯



■`攝大乘論本彼果智分第十一


如是已說彼果斷殊勝。彼果智殊勝云何可見。謂由三種佛身應知彼果智殊勝。一由

自性身。二由受用身。三由變化身。

是の如く已に彼の果の斷の殊勝なることを說けり。

彼の果の智の殊勝なることをば云何んが見る可きや。

謂はく、

三種の佛身に由つて應に彼の果の智の殊勝なることを知るべし。

一には自性身に由り、

二には受用身に由り、

三には變化身に由る。


此中自性身者。謂諸如來法身。一切法自在轉所依

止故。受用身者。謂依法身種種諸佛衆會所顯淸淨佛土。大乘法樂爲所受故。變化身者。

亦依法身從覩史多天宮現沒。受生受欲踰城出家。往外道所修諸苦行。證大菩提轉大法輪。入大涅槃故

此の中、自性身とは〔=者〕

謂はく、

諸の如來の法身なり、

一切の法、自在に轉ずる所依止なるが故なり。

受用身とは〔=者〕

謂はく、

法身に依る、種種なる諸佛の衆會に顯らはるる所〔=所顯〕にして、

淸淨なる佛土にて大乘の法樂を所受と爲すが故なり。

變化身とは〔=者〕、

亦、法身に依る、

覩ト史シ多タ天宮從り現に沒して、生を受け欲を受け、城を踰〔超〕えて出家し、

外道の所に往き、諸の苦行を修し、

大菩提を證し、大法輪を轉じ、大涅槃に入るが故なり。


此中說一嗢‘拕南頌(※「拕」字三本俱作「柁」字、宮本作「棺」字)

 相證得自在  依止及攝持

 差別德甚深  念業明諸佛

此の中に一の嗢‘柁〔=拕〕南、頌を說かく、(※「拕」字三本俱作「柁」字、宮本作「棺」字)

≪相と證得と自在と、

  依止と及び攝持と、

 差別と德と甚深と、

  念と業と諸佛を明かすなり。≫


諸佛法身以何爲相。應知法身略有五相。

諸佛の法身は何を以て相と爲すや。

應に知るべし、法身に略して五相有りと。


一轉‘依爲相。

(※依爲相謂明本作夾註)

謂轉滅一切障雜染分依他起‘性故。

(※「性」字下明本有「相謂」二字)

轉得解脫一切障於法自在。轉現前淸淨分依他起性故。

一には轉依を相と爲す、(※依爲相謂明本作夾註)

謂はく、

一切の障りの雜染分の依他起性を轉滅するが故に、(※「性」字下明本有「相謂」二字)

一切の障りを解脫し法に於て自在なることを轉得し、

現前の淸淨分の依他起性を轉ずるが故なり。


二白法所成爲相。謂六波羅蜜多圓滿得十自在故。此中壽自在心自在

衆具自在。由施波羅蜜多圓滿故。業自在生自在。由戒波羅蜜多圓滿故。勝解自在。由忍

波羅蜜多圓滿故。願自在。由精進波羅蜜多圓滿故。神力自在五通所攝。由靜慮波羅蜜

多圓滿故。智自在法自在。由般若波羅蜜多圓滿故。

二には白法より成る所〔=所成〕を相と爲す、

謂はく、

六波羅蜜多、圓滿して十‐自在を得るが故なり。

此の中、

(1)壽自在、(2)心自在、(3)衆具自在は、

施‐波羅蜜多、圓滿するに由るが故に、

(4)業自在、(5)生自在は戒‐波羅蜜多、圓滿するに由るが故に、

(6)勝解自在は忍‐波羅蜜多、圓滿するに由るが故に、

(7)願自在は精進‐波羅蜜多、圓滿するに由るが故に、

(8)神力自在の五通‐所攝は靜慮‐波羅蜜多、圓滿するに由るが故に、

(9)智自在、(10)法自在は般若‐波羅蜜多、圓滿するに由るが由故なり。


三無二爲相。謂有無無二爲相。由一切法無所有故。空所顯相是實有故。有爲無

爲無二爲相。由業煩惱非所爲故。自在示現有爲相故。異性一性無二爲相。由一切佛所

依無差別故。無量相續現等覺故。

三には無二を相と爲す、

謂はく、

有無、二無きを相と爲す、

一切の法〔遍計所執性は〕あること〔=所有〕無きに由るが故に、

空‐所顯の〔圓成實性の〕相は是れ實有なるが故なり。

有爲無爲、二無きを相と爲す、

業煩惱の爲〔つくる〕所〔所爲〕に非らざるに由るが故に、

自在に示現する有爲相なるが故なり。

異性一性、二無きを相と爲す、

一切の佛の所依、差別無き〔=一切佛の所依は無差別〕に由るが故に、

無量なる相續をば現に等覺するが故なり。


此中有二頌

 我執不有故  於中無別依

 隨前能證別  故施設有異

 種姓異非虛  圓滿無初故

 無垢依無別  故非一非多

此の中に二頌有り、

≪我執、有らざるが故に、

  中に於て別の〔所〕依無からん、

 前の能證の別に隨ふ、

  故に異なり有りと施設す。≫

≪種姓の異なり、虛〔妄〕に非らず、

  圓滿にして初め無きが故に、

 無垢の〔所〕依は別無し、

  故に〔佛〕は一に非らず、多に非らず。≫


四常住爲相。謂眞如淸淨相故。本願所引故。所應作事無竟期故。

四には常住を相と爲す。

謂はく、

眞如、淸淨の相なるが故に、

本願より引く所〔=所引〕なるが故に、

應に作すべき所〔=所應作〕の事は、竟期無きが故なり。


五不可思議爲相。謂眞如淸淨自内證故。無有世間喩能喩故。非諸尋思所行處故。

五には不可思議を相と爲す、

謂はく、

眞如‐淸淨をば自ら内に證〔さとる〕が故に、

世間の喩への能く喩ふもの有ること無きが故に、

諸の尋思・所行の處に非らざるが故なり。


復次云何如是法身最初證得。謂緣總相大乘法境無分別智及後得智五相善修。於一

切地善集資糧。金剛喩定破滅微細難破障故。此定無間離一切障故得轉依。

復、次に云何んが是の如き法身をば最初に證得するや。

謂はく、

總相大乘の法境を緣ずる無分別智、及び後得智は五相にして善く修し、

一切地に於て善く資糧を集め、

金剛喩定にて微細にして破し難き障りを破滅するが故に、

此の定の無間に一切の障りを離るが故に、

轉依を得るなり。


‘復次法身由幾自在而得自在。

(※「復」字明本作「得」字)

略由五種。一由佛土自身相好無邊音聲無見頂相自在。由轉色蘊依故。二由無罪無量廣大樂住

自在。由轉受蘊依故。三由辯說一切名身句身文身。自在由轉想蘊依故。四由現化變易引

攝大衆引攝白法自在。由轉行蘊依故。五由圓鏡平等觀察成所作智自在。由轉識蘊依故。

復、次に、

法身は幾ばくの自在の由つて(而)自在を得るや。(※「復」字明本作「得」字)

略して五種に由る。

一には佛土と、自身と、相好と、無邊の音聲と、無見頂相との自在に由る、

色蘊の依を轉ずるに由るが故なり。

二には無罪・無量・廣大なる樂住の自在に由る、

受蘊の依を轉ずるに由るが故なり。

三には一切の名身・句身・文身の辯說する自在に由る、

想蘊の依を轉ずるに由るが故なり。

四には現化と、變易と、大衆を引攝すると、白法を引攝するとの自在に由る、

行蘊の依を轉ずるに由るが故なり。

五には圓鏡と、平等と、觀察と、成所作との智の自在に由る、

識蘊の依を轉ずるに由るが故なり。


復次法身由幾種處。應知依止略由三處。一由種種佛住依止。

復、次に、

法身は幾種の處に由るや。

應に知るべし、依止に略して三處由りと。

一には種種なる佛住の依止に由る、


此中有二頌

 諸佛證得五性喜  皆由等‘證自界故(※「證」字三本宮本俱作「種」字)

 離喜都由不證此  故求喜者應等證

 由能無量及事成  法味義德倶圓滿

 得喜最勝無過失  諸佛見常無盡故

此の中に二頌有り、

≪諸佛は五性喜を證得す、

  皆、等しく自界を證するに由るが故なり、(※「證」字三本宮本俱作「種」字)

 〔聲聞等は〕喜を離る都べて此れを證せざるに由る、

  故に喜を求むる者は應に等しく證すべし。≫

≪〔功〕能、無量なると及び、事、成ずると、

  法味と、義と德と倶に圓滿なるとに由りて、

 喜の最勝にして過失無きを得、

  諸佛は〔前の四喜は〕常に盡くること無しと見たまへるが故なり。≫


二由種種受用身依止。但爲成熟諸菩薩故。

三由種種變化身依止。多爲成熟聲聞等故。

二には種種なる受用身の依止に由る、

但、諸の〔大地に入れる〕菩薩を成熟せんが爲のみなるが故なり。

三には種種なる變化身の依止に由る、

多く聲聞等を成熟せんが爲の故なり。


應知法身由幾佛法之所攝持。略由六種。一由淸淨。謂轉阿賴耶識得法身故。二由異熟。

謂轉色根得異熟智故。三由安住。謂轉欲行等住得無量智住故。

應に、法身は幾ばくの佛法に由つて〔=之〕攝持せらる〔=所攝持〕と知るべきや。

略して六種に由る。

一には淸淨に由る、

謂はく、

〔有漏の〕阿賴耶識を轉じて〔無漏の〕法身〔淸淨なる〕を得るが故なり。

二には異熟〔果〕に由る、

謂はく、

色根を轉じて異熟智を得るが故なり。

三には安住に由る、

謂はく、

欲行等の住を轉じて無量智の住を得るが故なり。


四由自在。謂轉種種攝受業自在。得一切世界無礙神通智自在故。

五由言說。謂轉一切見聞覺知言說戲論得令一切有情心喜。辯說智自在故。六由拔濟。

謂轉拔濟一切災橫過失。得拔濟一切有情一切災橫過失智故。應知法身由此所說六

種佛法之所攝持。

四には自在に由る、

謂はく、

種種なる攝受業の自在を轉じて、一切世界‐無礙‐神通智の自在を得るが故なり。

五には言說に由る、

謂はく、

一切〔世間〕の見聞・覺知・言說・戲論を轉じて、

一切‐有情の心をして喜ばしむ〔=令〕る辯說智の自在を得るが故なり。

六には拔濟に由る、

謂はく、一切〔世間〕の災橫・過失を拔濟することを轉じて、

一切‐有情の一切の災橫・過失を拔濟する智を得るが故なり。

應に知るべし、

法身は此の所說の六種の佛法に由つて〔=之〕攝持せらるる〔=所攝持〕なりと。


諸佛法身當言有異當言無異。依止意樂業無別故。當言無異。無量依身現等覺故。當

言有異。如說佛法身受用身亦爾。意樂及業無差別故。當言無異。不由依止無差別故。

無量依止差別轉故。應知變化身如受用身說。

諸佛の法身は當に異なり有りと言ふべきや、

當に異なり無しと言ふべきや。

依止・意樂・〔作〕業、別無きが故に當に異なり無しと言ふべく、

無量なる依身、現に等覺するが故に當に異なり有りと言ふべし。

佛の法身を說くが如く、受用身も亦、爾なり、

意樂及び業、差別無きが故に當に異なり無しと言ふべし、

依止〔の身〕差別無きに由らざるが故に、

無量なる依止、差別して轉ずるが故に、

應に知るべし、變化身は受用身の說の如しと。


應知。法身幾德相應。謂最淸淨四無量。解脫勝處遍處無諍願‘智。

(※「智」字三本宮本俱无)

四無礙解六神通。三十二大士相八十隨好。四一切相淸淨。十力四無畏。三不護三念住。拔除習氣無忘失

法。大悲十八不共佛法。一切相妙智等功德相應。

應に、法身は幾ばくの德と相應すと知るべきや。

謂はく、

最も淸淨なる四無量、

〔八〕解脫、

〔八〕勝處、

〔十〕遍處、

無諍、

願智、(※「智」字三本宮本俱无)

四‐無礙解、

六‐神通、

三十二の大士の相、

八十隨好、

四の一切相の淸淨、

十‐力、

四‐無畏、

三‐不護、

三‐念住、

習氣を拔除すること、

忘失すること無き法、

大悲、

十八の不共佛法、

一切相の妙智等の功德と相應するなり。


此中有多頌

此の中に多くの頌有り、


 憐愍諸有情  起和合遠離

 常不捨利樂  四意樂歸禮

 解脫一切障  牟尼勝世間

 智周遍所知  心解脫歸禮

 能滅諸有情  一切惑無餘

 害煩惱有染  常哀愍歸禮

 無功用無著  無礙常寂定

 於一切問難  能解釋歸禮

 於所依能依  所說言及智

 能說無礙慧  常善說歸禮

 爲彼諸有情  故現知言行

 往來及出離  善敎者歸禮

 諸衆生見尊  皆審知善士

 暫見便深信  開‘導者歸禮(※「導」字三本宮本俱作「道」字)

 攝受住持捨  現化及變易

 等持智自在  隨證得歸禮

 方便歸依淨  及大乘出離

 於此誑衆生  摧魔者歸禮

 能說智及斷  出離能障礙

 自他利非餘  外道伏歸禮

 處衆能伏說  迷離二雜染

 無護無忘失  攝御衆歸禮

 遍一切行住  無非圓智事

 一切時遍知  實義者歸禮

 諸有情利樂  所作不過時

 所作常無虛  無忘失歸禮

 晝夜常六返  觀一切世間

 與大悲相應  利樂意歸禮

 由行及由證  由智及由業

 於一切二乘  最勝者歸禮

 由三身至得  具相大菩提

 一切處他疑  皆能斷歸禮

≪諸の有情を憐愍し、

  和合と遠離と、

 常に捨てざると利樂との、

  四の意樂を起こすに歸禮す。≫

≪一切の障りを解脫し、

  牟ム尼ニは世間に勝れたり、

 智は所知に周遍し、

  心、解脫するに歸禮す。≫

≪能く諸の有情の、

  一切の惑を滅して餘すこと無く、

 煩惱を害し、染〔汙〕有る〔もの〕をも、

  常に哀愍するに歸禮す。≫

≪無功用なり、無著なり、

  無礙なり、常に寂定にして、

 一切の問難に汙て、

  能く解釋するに歸禮す。≫

≪所依と能依との

  所說、言、及び智の

 能說に於て、無礙慧にして、

  常に善く說きたまふに歸禮す。≫

≪彼の諸の有情の爲に、

  故〔ことさら〕に現じ、言と行と、

 往と來と、及び出離とを知り、

  善く敎ふる者に歸禮す。≫

≪諸の衆生、尊なりと見、

  皆、審らかに善士なりと知り、

 暫らく見て便ち深く信ずる〔所の〕、

  開導者に歸禮す。≫(※「導」字三本宮本俱作「道」字)

≪攝受し住持し捨すると、

  現化し及び變易すると、

 等持と智と自在にして、

  隨つて證得するに歸禮す。≫

≪方便と、歸依と、淨と、

  及び大乘の出離と、

 此れに於て〔魔は〕衆生を誑らかす、

  〔此の〕魔を摧〔碎〕く者に歸禮す。≫

≪能く智と及び斷と、

  出離と能く障礙するとを說く、

 〔是れ〕自他〔二〕利にして、餘の

  外道の伏する〔所に〕非らざるに歸禮す。≫

≪〔大〕衆に處して能く〔他の〕說を伏し、

  〔愛恚の〕二の雜染を遠〔=迷〕離し、

 無護・無忘失にして、

  衆を攝御するに歸禮す。≫

≪遍く一切に行住し、

  圓智の事に非らざる無く、

 一切時に遍く知る、

  實義者に歸禮す。≫

≪諸の有情の、利樂の

  所作、時を過〔あやま〕たず、

 所作、常に虛し〔く、果無〕きこと無く、

  忘失すること無きに歸禮す。≫

≪晝夜、常に六返に、

  一切の世間を觀じ、

 大悲と〔=與〕相應する、

  利樂の意に歸禮す。≫

≪行に由り、及び證に由り、

  智に由り、及び業に由り、

 一切、二乘に於て、

  最も勝れたる者に歸禮す。≫

≪三身に由り、

  〔一切の〕相を具へたる大菩提を得るに至り、

 一切處の他疑〔を斷ずる〕に〔於て〕、

  最も勝れたる者に歸禮す〔=皆能斷歸禮

 一切處の他疑を、

  皆能く斷ずるものに歸禮す。〕≫


諸佛法身與如是等功德相應。復與所餘自性因果業相應。轉功德相應。是故應知諸佛

法身無上功德。

諸佛の法身と是の如き等の功德と〔=與〕相應し、

復、その餘〔=所餘〕の自性・因果・業と相應し、

轉ずる功德と相應す。

是の故に應に知るべし、

諸佛の法身は無上なる功德なりと。


此中有二頌

 尊成實勝義  一切地皆出

 至諸衆生上  解脫諸有情

 無盡無等德  相應現世間

 及衆會可見  非見人天等

此の中に二頌有り、

≪〔世〕尊は成實・勝義にして、

  一切地に皆、出づ、

 諸の衆生の上に至り、

  諸の有情を解脫す。≫

≪無盡・無等の德と

  相應して、現に世間〔のもの〕

 及び衆會、見る可く、

  見るに非らざるは人天等なり。≫


復次諸佛法身甚深最甚深。此甚深相云何可見。

復、次に、

諸佛の法身は甚深なり、最も甚深なり、

此に甚深なる相を云何んが見る可きや。


此中有多頌。

此の中に多くの頌有り、


 佛無生爲生  亦無住爲住

 諸事無功用  第四食爲食

 無異亦無量  無數量一業

 不堅業堅業  諸佛具三身

 現等覺非有  一切覺非無

 一一念無量  有非有所顯

 非染非離染  由欲得出離

 了知欲無欲  悟入欲法性

 諸佛過諸蘊  安住諸蘊中

 與彼非一異  不捨而善寂

 諸佛事相雜  猶如大海水

 我已現當作  他利無是思

 衆生罪不現  如月於破器

 遍滿諸世間  由法光如日

 或現等正覺  或涅槃如火

 此未曾非有  諸佛身常故

 佛於非聖法  人趣及惡趣

 非梵行法中  最勝自體住

 佛一切處行  亦不行一處

 於一切身現  非六根所行

 煩惱伏不滅  如毒呪所害

 由惑至惑盡  證佛一切智

 煩惱成覺分  生死爲涅槃

 具大方便故  諸佛不思議

≪佛は無生を生と爲し、

  亦、無住を住と爲し、

 諸事、無功用にして、

  第四食を食と爲したまふ。≫

≪無異、亦、無量なり、

  無數量なるも一業なり、

 不堅業・堅業にして、

  諸佛は三身を具へたまふ。≫

≪等覺を現ずるに〔人法〕は有に非らず、

  一切覺は無に非らず、

 一一の念に無量にして、

  有・非有に顯らはさる〔=所顯〕。≫

≪染に非らず、離染に非らず、

  欲に由つて出離を得、

 欲・無欲を了知し、

  欲の法性に悟入したまふ。≫

≪諸佛は諸蘊を過〔こえ〕、

  諸蘊の中に安住し、

 彼れと〔=與〕一なるにも異なれるにも非らず、

  捨てずして而も善寂なり。≫

≪諸佛の事、相ひ雜はること、

  猶し大海の水の如し、

 我れ已に現に當に作すべきも、

  他利〔に於て〕是の思無し。≫

≪衆生、罪〔ありて〕現ぜざること、

  月の破器に於けるが如し、

 〔佛は〕諸の世間に遍滿し、

  法光、日に如くなるに由る。≫

≪或は等正覺を現じ、

  或は涅槃〔を現〕ずること火の如し、

 此れ未だ曾て有らざるに非らず、

  諸佛の身は常〔住〕なるが故なり。≫

≪佛は非聖法・

  人趣・及び惡趣・

 非梵行の法の中に於て、

  最勝なる自體にして住したまふ。≫

≪佛は一切處に行じ、

  亦、一處にも行ぜず、

 一切〔處〕に於て身を現じたまふも、

  六根の所行には非らず。≫

≪煩惱を伏するも滅せず、

  毒呪の所害の如し、

 惑〔あり、その〕惑盡くるに至るに由り、

  佛の一切智を證したまふ。≫

≪煩惱は覺分と成り、

  生死は涅槃と爲り、

 大方便を具へたまふが故に、

  諸佛は不思議なり。≫


應知如是所說甚深有十二種。謂生住業住甚深。安立數業甚深。現等覺甚深。離欲甚深。

斷蘊甚深。成熟甚深。顯現甚深。示現等覺涅槃甚深。住甚深。顯示自體甚深。斷煩惱甚

深。不可思議甚深。

應に知るべし、是の如く說く所〔=所說〕の甚深に十二種有りと。

謂はく、

(1)生住業住の甚深、

(2)安立數業の甚深、

(3)等覺を現ずる甚深、

(4)欲を離るる甚深、

(5)蘊を斷ずる甚深、

(6)成熟する甚深、

(7)顯現する甚深、

(8)等覺涅槃を示現する甚深、

(9)住の甚深、

(10)自體を顯示する甚深、

(11)煩惱を斷ずる甚深、

(12)不可思議なる甚深なり。


若諸菩薩念佛法身。由幾種念應修此念。略說菩薩念佛法身。由七種

念應修此念。

若しくは諸の菩薩は佛の法身を念ず、

幾種の念に由つて應に此の念を修すべきや。

略して菩薩の、佛の法身を念ずるを說かば、

七種の念に由つて應に此の念を修すべし。


一者諸佛於一切法得自在轉。應修此念。於一切世界得無礙通故。

一には〔=者〕諸佛は一切の法に於て自在に轉ずることを得たまふ、

應に此の念を修すべし、

一切の世界に於て無礙〔神〕通を得たまふが故なりと。


此中有頌

 有情界周遍  具障而闕因

 二種決定轉  諸佛無自在

此の中に頌有り、

≪有情界に周遍したまふも

  障りを具へ而も因を闕き、

 二種、決定して轉ず、

  諸佛には自在無し。≫


二者如來其身常住。應修此念。眞如無間解脫垢故。三者如來最勝無罪。應修此念。一

切煩惱及所知障並離繫故。

二には〔=者〕如來は其の〔法〕身、常住なり、

應に此の念を修すべし、

眞如〔の理〕は無間に〔一切障〕垢を解脫するが故なりと。

三には〔=者〕如來は最勝・無罪なり、

應に此の念を修すべし、

一切の煩惱〔障〕及び所知障をば、並らびに離繫したまふが故なりと。


四者如來無有功用。應修此念。不作功用一切佛事無休

息故。五者如來受大富樂。應修此念。淸淨佛土大富樂故。

四には〔=者〕如來には功用有ること無し、

應に此の念を修すべし、

功用を作さずして一切の佛事、休息すること無きが故なりと。

五には〔=者〕如來は大富樂を受けたまふ、

應に此の念を修すべし、

淸淨なる佛土は大富樂なるが故なりと。


六者如來離諸染汚。應修此念。生在世間一切世法不能染故。七者如來能

成大事。應修此念。示現等覺般涅槃等。一切有情未成熟者能令成熟。已成熟者令解脫故。

六には〔=者〕如來は諸の染汙〔=汚〕を離れたまふ、

應に此の念を修すべし、

世間に生在したまふも、一切の世法、染〔汙〕すること能はざるが故なりと。

七には〔=者〕如來は能く大事を成じたまふ、

應に此の念を修すべし、

等覺‐般‐涅槃等を示現し、

一切有情にして未だ成熟せざる者をば能く成熟せしめ〔=令〕、

已に成熟せる者をば解脫せしめ〔=令〕たまふが故なり。


此中有二頌

 圓滿屬自心  具常住淸淨

 無功用能施  有情大法樂

 遍行無依止  平等利多生

 一切佛智者  應修一切念

此の中に二の頌有り、

≪圓滿は(1)自心に屬すと、

  (2)常住と(3)淸淨とを具ふと〔=具常住淸淨〕、

 (4)無功用なると、(5)能く

  有情に大法樂を施すと、

 (6)遍く〔世間に〕行くも、依止無きと、

  (7)平等に多生を利するとにして、

 一切の佛〔にある〕なり、智者は

  應に一切の念を修すべし。≫


復次諸佛淸淨佛土相云何。應知如菩薩藏百千契經序品中說。謂薄伽梵住最勝光曜

七寶莊嚴。放大光明普照一切無邊世界。無量方所妙飾間列。周圓無際其量難測。超過

三界所行之處。勝出世間善根所起。

復、次に諸佛の淸淨なる佛土の相をば云何んが應に知るべきや。

菩薩藏百千契經の序品の中に說きたまへるが如し、

謂はく、

『薄伽梵、

 (1)(住‐)最勝なる光曜の七寶の莊嚴より大光明を放ち、普く一切無邊の世界を照らし、

 (2)無量の方所、妙飾‐間列して、

 (3)周圓、際まり無く其の量、測り難く、

 (4)三界所行の〔=之〕處を超過し、

 (5)勝れたる出世間の善根の起こす所〔=所起〕にして、


最極自在淨識爲相。如來所‘都諸大菩薩衆所雲集。

(※「都」字三本宮本俱作「覩」字)

無量天龍藥‘叉健達縛阿素洛掲路荼緊捺洛莫呼洛伽人非人等常所翼從。

(※「叉」字宮本作「又」字)

廣大法味喜樂所持。

 (6)最極自在の淨識を相と爲し、

 (7)如來の都する所〔=所都〕、(※「都」字三本宮本俱作「覩」字)

 (8)諸の大菩薩衆の雲集する所〔=所雲集〕、

 (9)無量の天・龍・藥ヤ叉シヤ・

 健ケン達ダツ縛バ・

 阿ア素ソ洛ラ・

 掲カ路ロ荼ダ・

 緊キン捺ナ洛ラ・

 莫マ呼コ洛ラ伽カ・

 人非人等の常に翼從する所〔=所翼從〕にして、(※「叉」字宮本作「又」字)

 (10)廣大なる法味・喜樂〔食に〕持たれ〔=所持〕、


作諸衆生一切義利。蠲除一切煩惱災橫。遠離衆魔。過諸莊嚴如來莊嚴之所依處。大念慧行以爲遊路。

 (11)諸の衆生の〔爲に〕一切の義利を作し、

 (12)一切の煩惱〔より作る所の〕災橫を蠲除〔けん‐じよ〕し、

 (13)衆魔を遠離し、

 (14)諸の〔菩薩の〕莊嚴を過えたる如來莊嚴の〔=之〕所依處にして

 (15)大念慧行を以て遊路と爲し、


大止妙觀以爲所乘。大空無相無願解脫爲所入門。無量功德衆所莊嚴。大寶花王之所建立。大宮殿

中。

 (16)大止妙觀を以て所乘と爲し、

 (17)大いなる空〔=大空〕・無相・無願の〔三〕解脫を所入の門と爲し、

 (18)無量なる功德衆の莊嚴する所〔=所莊嚴〕、

 大寶〔紅蓮〕華王〔衆〕の〔=之〕建立する所〔=所建立〕の

 〔十八圓滿の〕大宮殿の中に住したまひき』と。


如是現示淸淨佛土。顯色圓滿。形色圓滿。分量圓滿。方所圓滿。因圓滿。果圓滿。‘主圓滿。

(※「主」字宋元本俱作「立」字)

輔翼圓滿。眷屬圓滿。‘住持圓滿。

(※「住」字三本宮本俱作「任」字)

事業圓滿。攝益圓滿。無畏圓滿。住處圓滿。路圓滿。乘圓滿。門圓滿。依持圓滿。

是の如く淸淨なる佛土を現示せり、

(1)顯色圓滿、

(2)形色圓滿、

(3)分量圓滿、

(4)方所圓滿、

(5)因圓滿、

(6)果圓滿、

(7)主圓滿、(※「主」字宋元本俱作「立」字)

(8)輔翼圓滿、

(9)眷屬圓滿、

(10)住持圓滿、(※「住」字三本宮本俱作「任」字)

(11)事業圓滿、

(12)攝益圓滿、

(13)無畏圓滿、

(14)住處圓滿、

(15)路圓滿、

(16)乘圓滿、

(17)門圓滿、

(18)依持圓滿なり。


復次受用如是淸淨佛土。一向淨妙。一向安樂。一向無罪。一向自在。

復、次に是の如き淸淨なる佛土を受用するに、

一向に淨妙なり、

一向に安樂なり、

一向に無罪なり、

一向に自在なり。


復次應知如是諸佛法界。於一切時能作五業。一者救濟一切有情災橫爲業。於暫見時

便能救濟盲聾狂等‘諸災橫故。

(※「諸」字明本作「者」字)

復、次に、

應に知るべし、是の如き諸佛の法界は

一切の時に於て能く五業を作すと。

一には〔=者〕一切の有情の災橫を救濟するを業と爲す、

暫らく見る時に於て、便ち能く盲聾狂等の諸災の橫を救濟するが故なり。(※「諸」字明本作「者」字)


二者救濟惡趣爲業。拔諸有情出不善處置善處故。

二には〔=者〕惡趣を救濟するを業と爲す、

諸の有情を拔いて、不善處より出だし、善處に置くが故なり。

三者救濟非方便爲業。令諸外道捨非方便求解脫行。置於如來聖敎中故。

三には〔=者〕非方便の〔行〕を救濟するを業と爲す、

諸の外道をして非方便を捨て、解脫の行を求めしめ、

如來の聖敎の中に〔=於〕置くが故なり。


四者救濟薩迦耶爲業。授與能‘超三界道故。

(※「超」字三本宮本俱作「起」字)

四には〔=者〕薩サツ迦ガ耶ヤ〔見〕を救濟するを業と爲す、

能く三界を超ゆる道を授與するが故なり。(※「超」字三本宮本俱作「起」字)


五者救濟乘爲業。拯拔欲趣餘乘菩薩及不定種性諸聲聞

等。安處令修大乘行故。於此五業應知諸佛業用平等。

五には〔=者〕乘を救濟するを業と爲す、

餘乘に趣かんと欲する菩薩、及び不定(種)性の諸の聲聞等を拯拔し、

安處して大乘の行を修せしむる〔=令〕が故なり。

此の五業に於て應に知るべし、諸佛の業用、平等なりと。


此中有頌

 因依事性行  別故許業異

 世間此力別  無故非導師

此の中に頌有り、

≪因と依と事と性と行と、

  別なるが故に〔世間の〕業、異なりと許す、

 世間の此の力、別なること、

  無きが故に導師には〔業異なることあるに〕非らず。≫


若此功德圓滿相應。諸佛法身不與聲聞獨覺乘共。以何意趣佛說一乘。

若し此の功德、圓滿に相應すれば諸佛の法身は聲聞・獨覺乘と〔=與〕共せず、

何なる意趣を以て佛は一乘を說きたまへるや。


此中有二頌

 爲引攝一類  及任持所餘

 由不定種‘性  諸佛說一乘(※「性」字宋元宮本俱作「姓」字)

 法無我解脫  等故性‘不同(※「不」字三本宮本俱作「所」字)

 得二意樂化  究竟說一乘

此の中に二頌有り、

≪一類を引攝し、

  及びその餘〔=所餘〕を任持せんが爲に、

 不定種性に由りて、(※「性」字宋元宮本俱作「姓」字)

  諸佛は一乘と說きたまへり。≫

≪法・無我・解脫、

  等しきが故に、性、同じからず、〔=不同〕(※「不」字三本宮本俱作「所」字)

 二の意樂を得、化し、

  究竟す〔るが故に〕一乘と說きたまへり。≫


如是諸佛同一法身而佛有多。何緣可見。此中有頌

 一界中無二  同時無量圓

 次第轉非理  故成有多佛

是の如く諸佛は同一法身にして、而も佛に多有り、

何に緣つて見る可きや。

此の中に頌有り、

≪一界の中に二〔佛〕無く、

  同時に無量〔の菩薩資糧を〕圓〔滿〕して、

 次第に轉ずることは理に非らず、

  故に〔同時〕多佛有ることを成ず。≫


云何應知。於法身中佛非畢竟入於涅槃。亦非畢竟不入涅槃。此中有頌

 一切障脫故  所作無竟故

 佛畢竟涅槃  畢竟不涅槃

云何んが應に、

法身の中に於て佛は畢竟して涅槃に〔=於〕入るに非らず、亦、

畢竟して涅槃に入らざるに非らずと知るべきや。

此の中に頌有り、

≪一切の障りをば〔解〕脫するが故に、

  所作、竟〔きはまり〕無きが故に、

 佛は畢竟して涅槃し、

  〔或は〕畢竟して涅槃せず。≫


何故受用身非即自性身。由六因故。

何故に受用身は即ち、自性身に非らざるや。

六因に由るが故なり。


一色身可見故。二無量佛衆會差別可見故。三隨勝

解見自性不定可見故。四別別而見自性變動可見故五菩薩聲聞及諸天等種種衆會間

雜可見故。六阿賴耶識與諸轉識轉依非理可見故。佛受用身即自性身。不應道理。

一には色身、見る可きが故に、

二には無量なる佛の衆會の差別、見る可きが故に、

三には勝解に隨つて見んに、自性〔身〕は不定なることを見る可きが故に、

四には別別にして〔=而〕見んに、自性〔身〕變動すること見る可きが故に、

五には菩薩・聲聞及び諸天等の種種なる衆會、間雜すること見る可きが故に、

六には阿賴耶識と諸の轉識と〔=與〕の轉依、非理なること見る可きが故に、

佛の受用身は即ち自性身なることは道理に應ぜざるなり。


何因變化身非即自性身。由八因故。謂諸菩薩從久遠來得不退定。於覩史多及人中生不應道理。

何に因りて變化身は即ち自性身に非らざるや。

八因に由るが故なり。

謂はく、

〔変化身即ち自性身ならば〕

(1)諸の菩薩、久遠從り來、不退定を得てんに、

覩ト史シ多タ〔天〕及び人の中に於て生ずることは道理に應ぜず。


又諸菩薩從久遠來‘常憶宿住。

(※「常憶」二字宋元宮本俱作「常懷」二字、明本作「當‘‘懷」二字(‘‘懷=懷の罒が口口))

書算數印工巧論中。及於受用欲塵行中不能正知不應道理。

又、(2)諸の菩薩の久遠從り來、常に宿住を憶せるに、

(※「常憶」二字宋元宮本俱作「常懷」二字、明本作「當‘‘懷」二字(‘‘懷=懷の罒が口口))

書算數印工巧論の中、及び、欲塵を受用する(行の)中に於て

正知すること能はざることは道理に應ぜず。


又諸菩薩從久遠來已知惡說善說法敎。往外道所不應道理。

又、(3)諸の菩薩は久遠從り來、

已に惡說・善說の法敎を知れるに、外道の所に往くは道理に應ぜず。


又諸菩薩從久遠來。已能善知三乘正道。修邪苦行不應道理。

又、(4)諸の菩薩は久遠從り來、

已に(能く)善く三乘の正道を知れるに、邪しまなる苦行を修するは道理に應ぜず。


又諸菩薩捨百拘胝諸贍部洲。但於一處成等正覺轉正法輪不應道理。

又、(5)諸の菩薩は百‐拘ク胘ゲン〔=胝チ〕の諸の贍部〔せん‐ぶ〕洲を捨てて、

但、一處に於て等正覺を成じ、正法輪を轉ずることは道理に應ぜず。


若離示現成等正覺。唯以化身於所餘處施作佛事。即應但於覩史多天成等正覺。

若し(6)〔餘の贍部洲にて等覺を現成することを〕離れて、

〔唯、獨り此の贍部洲の中に於て〕等正覺を成ずるを示現し、

唯、化身を以てその餘〔=所餘〕の處に於て佛事を施作す、

即ち應に但、覩史多天に於てのみ等正覺を成ずべし、

〔化身は此の諸の四大洲に來つて佛事を施作す〕。


何不施設。遍於一切贍部洲中同時佛出。既不施設無敎無理。

(7)何ぞ遍く一切の贍部洲の中に於て同時に佛、出づと施設せざるや。

既に施設せず、敎無く、理無し。


雖有多化而不違彼無二如來出現世言。由一四洲攝世界故。如二輪王不同出世。

多くの化有りと雖も、而も

彼しこに二の如來〔同時に〕世に出現すること無き言に違はず、

一の四洲に世界を瀨地するに由るが故に、

二の輪王、同じく世に出でざるが如し。


此中有頌

 佛微細化身  多處胎平等

 爲顯一切種  成等覺而轉

此の中に頌有り、

≪佛の微細なる化身は、

  多く處胎、平等なり、

 一切種の、

  等覺を成ずることを顯らはさんが爲に、而も轉ず。≫


‘爲欲利樂一切有情。

發願修行證大菩提畢竟涅槃不應道理願行無果。成遇失故。

(※「爲欲~故」三十二字三本宮本俱无)

一切の有情を利樂せんと欲するが爲に

發願し修行し大菩提を證し、畢竟して涅槃するは道理に應ぜず、

願行、果無く過〔=遇〕失と成るが故なり。(※「爲欲~故」三十二字三本宮本俱无)


佛受用身及變化身既是無常。云何經說如來身常。此二所依法身常故。又等流身及

變化身以恒受用無休廢故。數數現化不永絕故。如常受樂如常施食。如來身常應知亦爾。

佛の受用身及び變化身は既に是れ無常なり。

云何んが經に如來の身は常〔住〕なりと說きたまへるや。

此の二の所依の法身、常〔住〕なるが故に、

又、等流身及び變化身は恒に受用して休廢無きを以ての故に、

數數、現化して永しへに絕えざるが故に、

常に樂しみを受くるが如く、

常に食を施すが如く、

如來の身も常なること應に知るべし、亦爾なりと。


由六因故。諸佛世尊所現化身非畢竟住。一所作究竟成熟有情已解脫故。二爲

令捨離不樂涅槃。爲求如來常住身故。三爲令捨離輕毀諸佛。令悟甚深正法敎故。

六因に由るが故に諸佛世尊の現じたまへる所〔=所現〕の化身は畢竟、住するに非らずと。

一には所作、究竟し、有情を成熟し已に解脫したまふが故に、

二には涅槃を樂はざることを捨離せしめ〔=令〕んが爲、

如來の常住の身を求〔めし〕むるが爲の故に、

三には諸佛を輕毀することを捨離せしめ〔=令〕、

甚深にして正しき法敎を悟らしむる〔=令〕が爲の故に、


四爲令於佛深生渇仰。恐數見者生厭怠故。

五令於自身發勤精進。知正說者難可得故。六爲

諸有情極速成熟令自精進不捨軛故。

四には爲令於佛の於て深く渇仰を生ぜしむる〔=令〕が爲、

數、見る者、厭怠を生ずるを恐るるが故に、

五には〔世尊、將に般涅槃すと知りて便ち〕

自身に於て勤めて精進することを發こさしめ〔=令〕、

正說者をば得可きこと難しと知るが故に、

六には諸の有情、極めて速かに成熟し、自ら精進して軛を捨てざらしむるが故なり。


此中有二頌

 由所作究竟  捨不樂涅槃

 離輕毀諸佛  深生於渇仰

 内自發正勤  爲極速成熟

 故許佛化身  而非畢竟住

此の中に二頌有り、

≪所作、究竟し、

  涅槃を樂はざらしむことを捨て、

 諸佛を輕毀することを離れ

  深く渇仰を〔=於〕生じ、≫

≪内、自らに正勤を發こし、

  極めて速かに成熟する爲なるに由る。

 かるが故に佛の化身は、

  而も畢竟住するに非らずと許す。≫


諸佛法身無始時來無別無量。不應爲得更作功用。此中有頌

 佛得無別無量因  有情若捨勤功用

 證得恒時不成因  斷如是因不應理

諸佛の法身は無始の時より來、無〔差〕別・無量なり、

〔爾らば〕應に得んが爲に更らに功用を作すべからず。

此の中に頌有り、

≪佛の〔頌〕得は無〔差〕別・無量にして因なり、

  有情、若し〔正〕勤功用を捨つれば、

 證得は恒時に因と成らず、

  是の如き因を斷ずるは理に應ぜず。≫


阿毘達磨大乘經中攝大乘品。我阿僧伽略釋究竟。

攝大乘論本卷下

阿毘達磨大乘經中の攝‐大乘品をば、

我れ阿ア僧ソウ伽ギヤ略釋すること究竟せり。

國譯攝大乘論本終








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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