攝大乘論:攝大乘論本彼修差別分第六/無著/三藏法師玄奘譯
攝大乘論本卷下
無著菩薩造
`三藏法師玄奘奉 詔譯
■彼修差別分第六
■增上戒學分第七
■增上心學分第八
■增上慧學分第九
■果斷分第十
■彼果智分第十一
■彼修差別分第六
如是已說彼‘入因果。
(※「入」字宋元宮本俱作「人」字)
彼修差別云何可見。由菩薩十地。何等爲十。一極喜地。二離垢地。三
發光地。四焰慧地。五極難勝地。六現前地。七遠行地。八不動地。九善慧地。十法雲地。
◎
是の如く已に彼れに入る因果を說けり。(※「入」字宋元宮本俱作「人」字)
彼の修〔行〕の差別を云何んが見る可きや。
菩薩の十地に由る。
何等をか十と爲すや。
一には極喜‐地、
二には離垢‐地、
三には發光‐地、
四には焰慧‐地、
五には極‐難勝‐地、
六には現前‐地、
七には遠行‐地、
八には不動‐地、
九には善慧‐地、
十には法雲‐地なり。
如是諸地安立爲十。云何可見。爲欲對治十種無明所治障故。所以者何。以於十相所知法界有十無明所治障住。
◎
是の如く諸地を安立して十と爲すをば、
云何んが見る可きや。
十種の無明‐所治の障りを對治せんと欲するが爲の故なり。
所以は〔=者〕何ん、
十相の所知の法界に於て十の無明‐所治の障り住することあるを以てなり。
云何十相所知法界。謂初地中由遍行義。第二地中由最勝義。第三
地中由勝流義。第四地中由無攝受義。第五地中由相續無差別義。
◎
云何んが十相の所知の法界なりや。
謂はく、初地の中には遍行の義に由り、
第二地の中には最勝なる義に由り、
第三地の中には勝流の義に由り、
第四地の中には攝受する無き義に由り、
第五地の中には相續、差別無き義に由り、
第六地中由無雜染淸淨義。第七地中由種‘種法無差別義。
(※「種」字三本宮本无)
第八地中由不增不減義。相自在依止義。土自在依止義。第九地中由智自在依止義。第十
地中由業自在依止義。陀羅尼門三摩地門自在依止義。
◎
第六地の中には雜染・淸淨無き義に由り、
第七地の中には種種なる法、差別無き義に由り、(※「種」字三本宮本无)
第八地の中には增さず・減らざる義、
相‐自在の依止〔する所〕の義、
土‐自在の依止〔する所〕の義に由り、
第九地の中には智‐自在の依止〔する所〕の義に由り、
第十地の中には業‐自在の依止〔する所〕の義、
陀ダ羅ラ尼ニ門・三摩地門‐自在の依止〔する所〕の義に由る。
此中有三頌
遍行最勝義 及與勝流義
如是無攝義 相續無別義
無雜染淨義 種種無別義
不增不減義 四自在依義
法界中有十 不染汚無明
治此所治障 故安立十地
◎
此の中、三頌有り、
≪遍行と最勝なるとの義と、
及與び勝流の義と、
是の如く攝〔受〕する無き義と、
相續〔差〕別無き義と、≫
雜染・〔淸〕淨無き義と、
種種〔なる法‐差〕別無き義と、
增さず、減らざる義と、
四の自在の依〔止する所〕に義との、≫
≪〔十相の〕法界の中に十の、
不染汙〔=汚〕の無明有り、
此の所治の障りを治するが
故に、十地を安立す。≫
復次應知。如是無明於聲聞等非染汚。於諸菩薩是染汚。
◎
復、次に、
應に知るべし是の如き無明は、
聲聞等に於ては染汙〔=汚〕に非らざるも、
諸の菩薩に汙ては是れ染汙〔=汚〕なりと。
復次何故初地說名極喜。由此最初得能成辦自他義利勝功能故。
何故二地說名離垢。由極遠離犯戒垢故。
◎
復、次に何故に初地をば說いて極喜と名づくるや。
此れは最初に能く自他の義利の勝れたる功德〔=能〕を成辦することを
得るに由るが故なり。
何故に二地をば說いて離垢と名づくるや。
極めて犯戒の垢れを遠離するに由るが故なり。
何故三地說名發光。由無退轉等持等至所依止故。大法光明所依
止故。何故四地說名焰慧。由諸菩提分法焚滅一切障故。
◎
何故に三地をば說いて發光と名づくるや。
退轉すること無き、等持・等至の依止する所〔=所依止〕なるに由るが故に、
大法の光明の依止する所〔=所依止〕なるが故なり。
何故に四地をば說いて焰慧と名づくるや。
諸の菩提‐分法にて一切の障りを焚滅するに由るが故なり。
何故五地名極難勝。由眞諦智與世間智更互相違。合此難合令相應故。何
故六地說名現前。由緣起智爲所依止。能令般若波羅蜜多現在前故。
◎
何故に五地をば〔說いて〕極難勝と名づくるや。
眞諦智と世間智と〔=與〕、更互に相違し、
此の合し難きを合し、相應せしむる〔=令〕に由るが故なり。
何故に六地をば說いて現前と名づくるや。
緣起智を所依止と爲し、
能く般若‐波羅蜜多をして現在前せしむるに由るが故なり。
何故七地說名遠行。至功用行最後邊故。何故八地說名不動。由一切相有功用行不能動故。
◎
何故に七地をば說いて遠行と名づくるや。
功用の行、最後邊に至るが故なり。
何故に八地をば說いて不動と名づくるや。
一切相〔及び〕有‐功用の行、動ずること能はざるに由るが故なり。
何故九地說名善慧。由得最勝無礙智故。何故十地說名法雲。由得總緣一切法智。含藏一切陀羅
尼門三摩地門。譬如大雲能覆如空廣大障故。又於法身能圓滿故。
◎
何故に九地をば說いて善慧と名づくるや。
最勝なる無礙智を得るに由るが故なり。
何故に十地をば說いて法雲と名づくるや。
總じて一切法を緣ずる智の一切‐陀羅尼門・三摩地門を含藏するを得るに由る、
譬へば大いなる雲の如し、
能く空の如き廣大なる障りを覆ふが故に、
又、法身に於て能く圓滿するが故なり。
得此諸地云何可見。由四種相。一得勝解。謂得諸地深信解故。二得正‘行。
(※「行」字三本宮本俱作「得」字)
謂得諸地相應十種正法行故。三得通達。謂於初地達法界時。遍能通達一切地故。四得成滿。謂修諸
地到究竟故。
◎
此の諸地を得ることば云何んが見る可きや。
四種の相に由る、
一には勝解を得、
謂はく、
諸地にて深く信解することを得るが故なり。
二には正行を得、(※「行」字三本宮本俱作「得」字)
謂はく、
諸地に相應する十種の正法行を得るが故なり。
三には通達することを得、
謂はく、
初地に於て法界に〔通〕達する時、
遍く能く一切地に通達するが故なり。
四には〔果〕成滿を得、
謂はく、
諸地を修し究竟に到るが故なり。
修此諸地云何可見。謂諸菩薩於地地中修奢摩他毘鉢舍那。由五‘相修。
(※「相」字三本宮本俱作「根」)
何等爲五。謂集總修。無相修。無功用修。熾盛修。無喜足修。
◎
此の諸地を修することをば云何んが見る可きや。
謂はく、
諸の菩薩は地地の中に於て
奢シヤ摩マ他タ毗〔=毘〕ビ鉢バ舍シヤ那ナを修するに
五相の修〔行〕に由る。(※「相」字三本宮本俱作「根」)
何等をか五と爲すや。
謂はく、
(1)集總‐修、
(2)無相‐修、
(3)無功用‐修、
(4)熾盛‐修、
(5)無喜足‐修なり。
如是五修令諸菩薩成辦五果。謂念念中銷融一切麁重依止。離種種相得
法苑樂。能正了知周遍無量無分限相大法光明。順淸淨分無所分別無相現行。爲令
法身圓滿成辦。能正攝受後後勝因。由增勝故。說十地中別修十種波羅蜜多。於前六地
所修六種波羅蜜多。如先已說。
◎
是の如き五修は諸の菩薩をして五果を成辦せしむ。
謂はく、
(1)念念の中に一切の麁重の依止を銷融し、
(2)種種なる相を離れ、法苑の樂を得、
(3)能く正に周遍し、無量・無分限なる相の大法光明を了知し、
(4)淸淨分に順じ、分別する所〔=所分別〕無く、無相‐現行し、
(5)法身をして圓滿し、成辦せしめ〔=令〕んが爲に、
(5儘)能く正に後後の勝因を攝受す。
增〔ますます〕勝るるに由るが故に、
十地の中、別〔別〕に十種の波羅蜜多(の修)を說く。
前六地に於て修する所〔=所修〕の六種の波羅蜜多は、
先きに已に說けるが如し。
後四地中所修四者。一方便善巧波羅蜜多。謂以前六波羅蜜多所集善根。共諸有情迴求無上正等
菩提故。
◎
後の四地の中にて修する所〔=所修〕の四とは〔=者〕、
一には方便‐善巧‐波羅蜜多、
謂はく、
前の六‐波羅蜜多より集まる所〔=所集善〕の根を以て
諸の有情と共にし、無上‐正等‐菩提を廻〔=迴〕求するが故なり。
二願波羅蜜多。謂發種種微妙大願。引攝當來波羅蜜多殊勝衆緣故。
◎
二には願‐波羅蜜多、
謂はく、
種種‐微妙なる大願を發こし、
當來の波羅蜜多の殊勝なる衆の緣を引攝するが故なり。
三力波羅蜜多。謂由思擇修習二力。令前六種波羅蜜多無間現行故。
◎
三には力‐波羅蜜多、
謂はく、
思擇と修習との二力に由りて、
前の六種の波羅蜜多をして無間に現行せしむる〔=令〕が故なり。
四智波羅蜜多。謂由前六波羅蜜多成立妙智。受用法樂成熟有情故。
◎
四には智‐波羅蜜多、
謂はく、前の六波羅蜜多に由りて妙智を成立し、
法樂を受用し有情を成熟するが故なり。
又此四種波羅蜜多。應知般若波羅蜜多無分別智後得智攝又於一切地中非不修習一
切波羅蜜多。如是法門是波羅蜜多藏之所攝。
◎
又、此の四種の波羅蜜多は應に知るべし、
般若‐波羅蜜多の無分別智・後得智の攝なりと。
又、一切地の中に於て一切の波羅蜜多を修習せざるには非らず。
是の如き法門は是れ、
波羅蜜多‐藏に〔=之〕攝めらるる〔=所攝〕なり。
復次凡經幾時修行諸地可得圓滿。有五補特伽羅經三無數大劫。
◎
復、次に、
凡そ幾時を經て諸地を修行すること圓滿するを得可きや。
五〔種の〕補特伽羅有り、
三無數大劫を經るなり。
謂勝解行補特伽羅。經初無數大劫修行圓滿。淸淨增上意樂行
補特伽羅。及有相行無相行補特伽羅。於前六地及第七地經第二無數大劫修行圓滿。
即此無功用行補特伽羅。從此已上至第十地。經第三無數大劫修行圓滿。
◎
謂はく、
(1)勝解行の補特伽羅は、初の無數大劫を經て修行‐圓滿し、
淸淨‐增上‐意樂行の補特伽羅及び、
(2)有相行
(3)(4)無相行の補特伽羅は、前六地及び第七地に於て第二無數大劫を經て修行‐圓滿し
即ち此の(4)(5)無功用行の補特伽羅は此れ從り已上、第十地に至り、
第三無數大劫を經て修行‐圓滿す。
此中有頌
淸淨增上力 堅固心昇進
名菩薩初修 無數三大劫
◎
此の中、頌有り、
≪淸淨と增上との力、
堅固心にして昇進するを、
菩薩の初修と名づく、
無數三大劫なり。≫
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