攝大乘論:攝大乘論本彼入因果分第五/無著/三藏法師玄奘譯



■`攝大乘論本彼入因果分第五


如是已說入所知相。彼入因果云何可見。謂由施戒忍精進靜慮般若六種波羅蜜多。

是の如く已に所知相に入る〔=入所知相〕ことを說けり。

彼れに入る因果をば、云何んが見る可きや。

謂はく、施・戒・忍・精進・靜慮・般若の六(種)‐波羅蜜多に由る。


云何由六波羅蜜多得入唯識。復云何六波羅蜜多成彼入果。謂此菩薩不著財位。不犯

尸羅。於苦無動。於修無懈。於如是等散動因中。不現行時心專一境。便能如理簡擇諸法得入唯識。

云何んが六‐波羅蜜多に由つて唯‐識に入ることを得るや。

復、云何んが六‐波羅蜜多は彼れに入る果を成ずるや。

謂はく、此の菩薩は財位に〔執〕著せず、

尸羅を犯さず、

苦に於て動ずること無く、

修〔行〕に於て懈〔怠〕すること無く、

是の如く等の散動の因の中に於て、

現行せざる時、心、一境に專らにして、

便ち能く如理に諸法を簡擇し、唯‐識に入ることを得。


菩薩依六波羅蜜多入唯識已。證得六種淸淨增上意樂所攝波羅蜜多。是

故於此設離六種波羅蜜多現起加行。由於聖敎得勝解故。及由愛重隨喜欣樂諸作意

故。恒常無間相應方便修習六種波羅蜜多速得圓滿

菩薩は〔加行時世間の〕六‐波羅蜜多に依つて唯‐識に入り已つて、

六種の淸淨なる增上‐意樂に攝する所〔=所攝〕の波羅蜜多を證得す。

是の故に此こに於て設ひ、六種の波羅蜜多を離るるも、

現に加行を起こし、

聖敎に〔=於〕由りて勝解を得るが故に、

及び、

愛重・隨喜・欣樂の諸の作意に由るが故に、

恒に常に無間に相應し方便して六種の波羅蜜多を修習すること

速かに圓滿なることを得るなり。


此中有三頌

 已圓滿白法  及得利疾忍

 菩薩於自乘  甚深廣大敎

 等覺唯分別  得無分別智

 悕求勝解淨  故意樂淸淨

 前及此法流  皆得見諸佛

 了知菩提近  以無難得故

此の中に三頌有り、

≪已に白法を圓滿し、

  及び利疾の忍を得たる、

 菩薩は自乘の

  甚深・廣大なる敎しへに於て、≫

≪等しく『唯、分別のみなり』と覺り、

  無‐分別智を得、

 悕求・勝解、〔淸〕淨なり、

  故に意樂、淸淨なり、≫

≪前及び此の法流にて、

  皆、諸佛を見ることを得、

 菩提、近づけるを了知す、

  得難きこと無きを以ての故なり。≫


由此三頌總顯淸淨增上意樂。有七種相。謂資糧故。堪忍故。所緣故。作意故。自體故。

瑞相故。勝利故。如其次第諸句伽他應知顯示。

此の三頌に由りて總じて淸淨なる增上‐意樂を顯らはす七種の相有り。

謂はく、

(1)資糧なるが故に、

(2)堪忍するが故に、

(3)所緣なるが故に、

(4)作意なるが故に、

(5)自體なるが故に、

(6)瑞相なるが故に、

(7)勝利なるが故なり。

其の次第の如く諸句の伽他に應に知るべし、顯示すと。


何因緣故波羅蜜多唯有六數。成立對治所治障故。證諸佛法所依處故。隨順成熟諸有情故。

何の因緣の故に波羅蜜多に唯、六數(有)なるのみなりや。

(1)所治の障を對治することを成立するが故に、

(2)諸佛の法の所依處を證ずるが故に、

(3)隨順して諸の有情を成就するが故なり。

爲欲對治不發趣因故。立施戒波羅蜜多。不發趣因。謂著財位及著室家。

發趣せざる因を對治せんと欲するが爲の故に、施と戒との波羅蜜多を立つ。

發趣せざる因とは、謂はく、

財位に〔執〕著し及び室家に〔執〕著するなり。


爲欲對治。雖已發趣復退還因故。立忍進波羅蜜多。退還因者。謂處生死有情違犯所生衆苦。及於

長時善品加行所生疲怠。

對治せんと欲するが爲に、

已に發趣すと雖も復、因を退還するが故に、忍(・進)‐波羅蜜多を立つ。

因を退還すとは〔=者〕、謂はく、

生死に處する有情の違犯より生ずる所〔=所生〕の衆苦、

及び長時に於ける善品の加行より生ずる所〔=所生〕の疲怠なり。


爲欲對治。雖已發趣不復退還而失壞因故。立定慧波羅蜜多。

失壞因者。謂諸散動及邪惡慧。

對治せんと欲するが爲に、

已に發趣し復、退還せずと雖も而も

因を失壞するが故に定と慧との波羅蜜多を立つ。

因を失壞すとは〔=者〕、謂はく、

諸の散動及び邪惡なる慧なり。


如是成立對治所治障故。唯立六數。

是の如く所治の障を對治することを成立するが故に唯、

六數を立つるのみなり。


又前四波羅蜜多是不散動因。次一波羅蜜多不散動成就。此不散動爲依止故。如實等覺諸法眞

義。便能證得一切佛法。如是證諸佛法所依處故。唯立六數。

又、前‐四‐波羅蜜多は是れ散動せざる因なり、

次の一‐波羅蜜多は散動せざること成就し、

此の散動せざるを依止と爲すが故に、

如實に諸法の眞義を等覺し、便ち能く一切の佛法を證得す。

是の如く諸の佛法の所依‐處を證するが故に、

唯、六數を立つるのみなり。


由施波羅蜜多故。於諸有情能正攝受。由戒波羅蜜多故。於諸有情能不毀害。由忍

波羅蜜多故。雖遭毀害而能忍受。由精進波羅蜜多故。能助經營彼所應作。即由如是攝

利因緣。令諸有情於成熟事有所堪任。從此已後心未定者令其得定。心已定者令得解

脫。於開悟時彼得成熟。如是隨順成熟一切有情。唯立六數應如是知。

施‐波羅蜜多に由るが故に諸の有情に於て能く正に攝受し、

戒‐波羅蜜多に由るが故に諸の有情に於て能く毀害せず、

忍‐波羅蜜多に由るが故に毀害に遭ふと雖も而も能く忍受し、

精進‐波羅蜜多に由るが故に能く助けて彼の應に作すべき所〔=所應作〕經營し、

即ち是の如き攝利の因緣に由つて諸の有情をして事を成熟するに於て、

堪任する所〔=所堪任〕有らしめ、

此れ從り已後、心、未だ定ならざる者をば其をして定を得せしめ〔=令〕、

心已に定なる者には解脫を得たせしめ〔=令〕、

開悟する時に於て彼れ、成熟することを得。

是の如く隨順して一切有情を成就するに唯、

六數を立つるのみ。

應に是の如く知るべし。


此六種相云何可見。由六種最勝故。

此の六種の相をば云何んが見る可きや。

六種に最勝に由るが故なり。


一由所依最勝。謂菩提心爲所依故。二由事最勝。謂具足現行故。三由處最勝。謂一切有情利

益安樂事爲依處故。

一には所依‐最勝なるに由る、謂はく、

菩提心を所依と爲すが故なり。

二には事‐最勝なるに由る、謂はく、

〔内外の事〕具足して現行するが故なり。

三には處‐最勝なるに由る、謂はく、

一切有情を利益し安樂にする事を依處と爲すが故なり。


四由方便善巧最勝。謂無分別智所攝受故。五由迴向最勝。謂迴向無上正等菩提故。六由淸淨最勝。謂煩惱所

知二障無障所‘集起故。

(※「集」字三本宮本俱作「習」字)

四には方便‐善巧‐最勝なるに由る、謂はく、

無分別智に攝受せらるる〔=所攝受〕が故なり。

五には廻〔=迴〕向‐最勝に由る、謂はく、無上‐正等‐菩提に廻〔=迴〕向するが故なり。

六には淸淨‐最勝なるに由る、謂はく、

煩惱‐所知の二障は、障りより集起する所〔=所集起〕無きが故なり。(※「集」字三本宮本俱作「習」字)


若施是波羅蜜多耶。設波羅蜜多是施耶。有施非波羅蜜多。應作

四句。如於其施。如是於餘波羅蜜多亦作四句。如應當知。

若しくは〔布〕施は是れ波羅蜜多なりや〔=耶〕、

設〔若〕しくは波羅蜜多は是れ〔布〕施なりや〔=耶〕。

〔布〕施なるも波羅蜜多に非らざる有り。

應に四句を作るべし。

其の〔布〕施に於けるが如く、

是の如く餘の波羅蜜多に於ても亦、四句を作ること、

應ずるが如く當に知るべし。


何因緣故如是六種波羅蜜多此次第說。謂前波羅蜜多隨順生後波羅蜜多故。

何の因緣の故に是の如き六種の波羅蜜多をば此の次第に說くや。

謂はく、

前の波羅蜜多は隨順して後の波羅蜜多を生ずるが故なり。


復次此諸波羅蜜多訓釋名言云何可見。於諸世間聲聞獨覺施等善根。最爲殊勝能到

彼岸。是故通稱波羅蜜多。

復、次に此の諸の波羅蜜多の訓釋・名言をば云何んが見る可きや。

諸の世間の聲聞・獨覺に於ては、

〔菩薩の〕施等の善根を最も殊勝なりと爲し能く彼岸に到る、

是の故に通じて波羅蜜多と稱す。


又能破裂慳悋貧窮。及能引得廣大財位福德資糧。故名爲施。

又、能く慳悋・貧窮を破裂し、及び

能く廣大なる財位・福德の資糧を引得するが故に、

名づけて〔布〕施と爲す。


又能息滅惡戒惡趣。及能取得善趣等持。故名爲戒。

又、能く惡戒・惡趣を息滅し及び、

能く善趣・等持を取得するが故に

名づけて戒と爲す。


又能滅盡忿怒怨讐。及能善住自他安隱故名爲忍。

又、能く忿怒・怨讐を滅盡し及び、

能く善く自他、安隱に住するが故に

名づけて忍と爲す。


又能遠離所有懈怠惡不善法。及能出生無量善法令其增長故名精進。

又、能くあらゆる〔=所有〕懈怠・惡・不善の法を遠離し及び、

能く無量なる善法を出生し、

其れをして增長せしむる〔=令〕が故に精進と名づく。


又能消除所有散動。及能引得内心安住故名靜慮。

又、能くあらゆる〔=所有〕散動を消除し及び、

能く内心の安住を引得するが故に靜慮と名づく。


又能除遣一切見趣諸邪惡慧。及能眞實品別知法。故名爲慧。

又、能く一切の見趣・諸の邪惡なる慧を除遣し及び、

能く眞實に品別に法を知るが故に

名づけて慧と爲す。


云何應知修習如是波羅蜜多。應知此修略有五種。一現起加行修。二勝解修。三作意

修。四方便善巧修。五成所作事修。

云何んが應に是の如き波羅蜜多を修習することを知るべきや。

應に知るべし、此の修に略して五種有りと。

一には現に加行を起こす修〔=現起‐加行‐修〕、

二には勝解‐修、

三には作意‐修、

四には方便‐善巧‐修、

五には所作の事を成ずる修〔=成‐所作事‐修〕なり。


此中四修如前已說。成所作事修者。謂諸如來任運佛

事無有休息。於其圓滿波羅蜜多。復更修習六到彼岸。

此の中、四修は前に已に說けるが如し。

所作の事を成ずる修〔=成‐所作事‐修〕とは〔=者〕謂はく、

諸の如來‐任運に佛事をば休息すること有ること無く、

其の圓滿なる波羅蜜多に於て復、

更らに六‐到‐彼岸を修習するなり。


又作意修者。謂修六種意樂所攝愛重隨喜欣樂作意。一廣大意樂。二長時

意樂。三歡喜意樂。四荷恩意樂。五大志意樂。六純善意樂。

又、作意‐修とは〔=者〕謂はく、

六種の意樂に攝する所〔=所攝〕の愛重・隨喜・欣樂の作意を修するなり。

〔六種の意樂とは〕一には廣大なる意樂、

二には長時の意樂、

三には歡喜の意樂、

四には荷恩の意樂、

五には大志の意樂、

六には純善たる意樂なり。


若諸菩薩乃至若干無數大劫。現證無上正等菩提。經爾所時一一刹那。

假使頓捨一切身命。以殑伽河沙等世界盛滿七寶。奉施如來乃至安坐妙菩提座。如是

菩薩布施意樂猶無厭足。經爾所時一一刹那。假使三千大千世界滿中熾火。於四威儀

常乏一切資生衆具。戒忍精進靜慮般若心恒現行。乃至安坐妙菩提座。如是菩薩所

有戒忍精進靜慮般若意樂猶無厭足。是名菩薩廣大意樂。

若し諸の菩薩、乃至、若干の無數大劫にして無上‐正等‐菩提を現證せんに、

そこばく〔=爾所〕の時を經る一一の刹那に

假使ひ頓みに一切の身命を捨て

殑ガウ伽カ河沙に等しき世界を以て七寶を盛滿し

如來に奉施し、乃至、妙‐菩提‐座に安坐するも、

是の如き菩薩の布施の意樂は猶、厭足無く、

そこばく〔=爾所〕の時を經る一一の刹那に

假使ひ三千大千世界の中に滿つる熾火〔あり〕、

四‐威儀に於て常に一切資生の衆具に乏しくして

戒・忍・精進・靜慮・般若の心、恒に現行し、

乃至、妙‐菩提‐座に安坐するも、

是の如き菩薩の所有の戒・忍・精進・靜慮・般若の意樂は猶、

厭足無し、

是れを菩薩の廣大なる意樂と名づく。


又諸菩薩即於此中無厭意樂。乃至安坐妙菩提座常無間息。是名菩薩長時意樂。

又、諸の菩薩は即ち此の中に於て厭〔足〕無き意樂にして

乃至、妙‐菩提‐座に安在し常に間息無し。

是れを菩薩の長時の意樂と名づく。


又諸菩薩以其六種波羅蜜多饒益有情。由此所作深生歡喜。蒙益有情所不能及。是名菩薩歡喜意樂。

(又、諸の菩薩は其の六種の波羅蜜多を以て有情を饒益し、

 由此の所作に由り深く歡喜を生じ、

 益を蒙り、それ有情の及び能はざる所〔=所不能及〕なり。

 是れを菩薩の歡喜の意樂と名づく。)


又諸菩薩以其六種波羅蜜多饒益有情。見彼於己有大恩德。不見自身於彼有恩。是名菩薩荷恩意樂。

又、諸の菩薩は其の六種の波羅蜜多を以て有情を饒益し、

彼れは己れに於て大恩德ありと見るも、

自身は彼れに於て恩有りと見ず、

是れを菩薩の荷恩の意樂と名づく。


又諸菩薩即以如是六到彼岸所集善根。深心迴施一切有情。令得可愛勝果異熟。是名菩薩大志意樂。

又、

諸の菩薩は即ち是の如き六‐到‐彼岸より集まる所〔=所集〕の善根を以て

深心にして一切の有情を廻〔=迴〕施して、

愛す可き〔=可愛〕勝れたる果‐異熟を得せしむ〔=令〕、

是れを菩薩の大志の意樂と名づく。


又諸菩薩復以如是六到彼岸所集善根。共諸有情迴求無上正等菩提。

是名菩薩純善意樂。如是菩薩修此六種意樂所攝愛重作意。

又、諸の菩薩は復、是の如き六‐到‐彼岸より集まる所〔=所集〕の善根を以て、

諸の有情と共にし、無上‐正等‐菩提を廻〔=迴〕求す、

是れを菩薩の純善なる意樂と名づく。

是の如く菩薩は此の六種の意樂に攝すり所〔=所攝〕の愛重の作意を修す、


又諸菩薩於餘菩薩六種意樂修習相應無量善根。深心隨喜。如是菩薩修此六種意樂所攝隨喜意樂。

又、諸の菩薩は餘の菩薩の六種の意樂の修習と相應する無量なる善根に於て、

深心に隨喜す。

是の如く菩薩は此の六種の意樂に攝する所〔=所攝〕の隨喜の意樂を修す。


又諸菩薩深心欣樂一切有情六種意樂所攝六種到彼岸修。亦願自身與此六種到彼岸修恒不相

離。乃至安坐妙菩提座。如是菩薩修此六種意樂所攝欣樂作意。

又、諸の菩薩は深心に一切の有情の六種の意樂に攝する所〔=所攝〕の

六種の到‐彼岸の修〔行〕を欣樂し、

亦、自身、與此の六種の到‐彼岸の修〔行〕と〔=與〕

恒に相ひ離れざらんことを願ひ、

乃至、妙‐菩提‐座に安坐す。

是の如く菩薩は此の六種の意樂に攝する所〔=所攝〕の欣樂の作意を修す。


若有聞此菩薩六種意樂所攝作意修已。但當能起一念信心。尚當發生無量福聚。諸惡業障亦當消滅。

何況菩薩。

若し此の菩薩の六種の意樂に攝する所〔=所攝〕の作意の修〔行〕を聞き已つて、

但、當に能く一念の信心を起こすべきのみなるあるすら尚、

當に無量なる福聚を發生すべく諸の惡しき業障も亦當に消滅すべし、

何〔如何〕に況んや、菩薩をや。


此諸波羅蜜多差別云何可見。應知一一各有三品。施三品者。一法施。二財

施。三無畏施。戒三品者。一律儀戒。二攝善法戒。三饒益有情戒。忍三品者。一耐怨害忍。二

安受苦忍。三諦察法忍。精進三品者。一被甲精進。二加行精進。三無怯弱無退轉無喜足

精進。靜慮三品者。一安住靜慮。二引發靜慮。三成所作事靜慮。慧三品者。一無分別加

行慧。二無分別慧。三無分別後得慧。

此の諸の波羅蜜多の差別をば云何んが見る可きや。

應に知るべし、一一各に三品有りと。

〔布〕施の三品とは〔=者〕一に法施、

二には財施、

三には無畏施なり。

戒の三品とは〔=者〕、

一には律儀‐戒、

二には攝‐善法‐戒、

三には饒益‐有情‐戒なり。

忍の三品とは〔=者〕、

一には耐‐怨害‐忍、

二には安受‐苦‐忍、

三には諦察‐法‐忍なり。

精進の三品とは〔=者〕、

一には被甲‐精進、

二には加行‐精進、

三には無怯弱‐無退轉‐無喜足‐精進なり。

靜慮の三品とは〔=者〕、

一には安住‐靜慮、

二には引發‐靜慮、

三には成‐所作事‐靜慮なり。

慧の三品とは〔=者〕、

一には無分別‐加行‐慧、

二には無分別‐慧、

三には無分別‐後得‐慧なり。


如是相攝云何可見。由此能攝一切善法。是其相故。是隨順故。是等流故。

是の如き相攝をば、云何んが見る可きや。

此れに由つて能く一切の善法を攝す、

是れ其の〔體〕相なるが故に、

是れ隨順するが故に、

是れ等流なるが故なり。


如是所治攝諸

雜染云何可見。是此相故。是此因故。是此果故。

是の如き所治に、諸の雜染を攝す、

云何んが見る可きや。

是れ此の相なるが故に、

是れ此の因なるが故に、

是れ此の果なるが故なり。


如是六種波羅蜜多所得勝利云何可見。謂 諸菩薩流轉生死富貴攝故。大生攝故。大

朋大屬之所攝故。廣大事業加行成就之所攝故。無諸惱害‘性薄塵垢之所攝故。

(※「性」字明本作「此」字)

善知一切‘工論明處之所攝故。

(※「工」字三本宮本俱作「功」字)

勝生無罪。乃至安坐妙菩提座。常能現作一切有情一切義利。是名勝利。

是の如き六種の波羅蜜多より得る所〔=所得〕の勝利を、

云何んが見る可きや。

謂はく、

諸の菩薩、生死に流轉し、富貴の攝なるが故に、

大生の攝なるが故に、

大朋大屬の〔=之〕所攝なるが故に、

(廣)大事業の加行、成就するの〔=之〕所攝なるが故に、

諸の惱害無く性〔ひととなり〕塵垢、薄きの〔=之〕所攝なるが故に、(※「性」字明本作「此」字)

善く一切の工論明處を知るの〔=之〕所攝なるが故なり。(※「工」字三本宮本俱作「功」字)

勝れたる生にして罪無く、

乃至、妙‐菩提‐座に安坐し、

常に能く一切の有情の一切の義利を現作す、

是れを勝利と名づく。


如是六種波羅蜜多互相決擇。云何可見。世尊於此一切六種波羅蜜多。或有處所以施

聲說。或有處所以戒聲說。或有處所以忍聲說。或有處所以勤聲說。或有處所以定聲說。

或有處所以慧聲說。

是の如き六種の波羅蜜多は、互に相ひ決擇す、

云何んが見る可きや。

世尊は此の一切の六種の波羅蜜多に於て、

或は有る處所には施聲を以て說きたまひ、

或は有る處所には戒聲を以て說きたまひ、

或は有る處所には忍聲を以て說きたまひ、

或は有る處所には勤聲を以て說きたまひ、

或は有る處所には定聲を以て說きたまひ、

或は有る處所には慧聲を以て說きたまへり。


如是所說有何意趣。謂於一切波羅蜜多修加行中。皆有一切波羅

蜜多。互相助成如是意趣。

是の如き所說に、何なる意趣有りや。

謂はく、

一切の波羅蜜多の修の加行の中に於て皆、

一切の波羅蜜多有りて互に相ひ助成す、

是の如き意趣なり。


此中有一嗢‘拕南頌

(※「拕」字三本宮本俱作「柁」字)

 數相及次第  訓詞修差別

 攝所治功德  互決‘擇應知(※「擇」字三本宮本俱作「攝」字)

攝大乘論本卷中

此の中に一の嗢ウ柁〔=拕〕ダ南ナン頌あり、(※「拕」字三本宮本俱作「柁」字)

≪數と相と及び次第と、

  訓詞と修と差別と、

 攝と所治と功德と、

  互に決擇するとを應に知るべし≫(※「擇」字三本宮本俱作「攝」字)

攝大乘論本卷中








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

0コメント

  • 1000 / 1000