攝大乘論:攝大乘論本所知相分第三-02/無著/三藏法師玄奘譯
復次有能遍計有所遍計。遍計所執自性乃成。此中何者能遍計。何者所遍計。何者遍計
所執自性。當知意識是能遍計。有分別故。所以者何。由此意識用自名言熏習爲種子。及
用一切識名言熏習爲種子。是‘故意識無邊行相分別而轉。
(※故字宮本作爲字)
普於一切分別計度故名遍計。
◎
復、次に、
能遍計有り、所遍計有りて遍計所執の自性、乃ち成ず、
此の中、何者か能遍計、
何者か所遍計、
何者か遍計所執の自性なりや。
當に知るべし、意識は是れ能遍計なり、
分別有るが故なり、と。
所以は 〔=者〕何ん。
此の意識は、
自らの名言‐熏習を用つて種子と爲し、
及び一切の識の名言‐熏習を以て種子と爲すに由る、
是の故に意識は無邊なる行相にて、
分別して〔=而〕轉じ、(※故字宮本作爲字)
普く一切に於て分別し、計度するが故に
〔能〕遍計と名づく。
又依他起自性名所遍計。又若由此相令依他起自性成所遍計。此中是名遍計所執
自性。由此相者是如此義。
◎
又、依他起の自性を所遍計と名づけ、
又、若しくは此の相に由つて依他起の自性をして所遍計を成ぜしむ、
此の中、是れを名遍計所執の自性と名づく、
此の相に由るとは〔=者〕是れ此の如きの義なり。
復次云何遍計能計度。緣何境界。取何相貌。由何執著。由何
起語。由何言說。何所增益。謂緣名爲境。於依他起自性中取彼相貌。由見執著。由尋起語。
由見聞等四種言說而起言說。於無義中增益爲有。‘由此遍計能遍計度。
(※由字宮本作中字)
◎
復、次に云何んが遍計、能く〔遍く〕計度するや、
何なる境界を緣じ、
何なる相貌を取り、
何に由つて執著し、
何に由つて語を起こし、
何に由つて言說し、
何んが增益する所〔=所增益〕なりや。
謂はく、名を緣じて境と爲し、
依他起の自性の中に於て彼の相貌を取り、
見に由つて執著し、
尋に由つて語を起こし、
見聞等の四種の言說に由つて〔=而〕言說を起こし、
無義の中に於て增益して有りと爲し、
此の遍計に由つて能く遍く計度す。(※由字宮本作中字)
復次此三自性爲異爲不異。應言非異非不異。謂依他起自性由異門故。成依他起。即
此自性由異門故。成遍計所執。即此自性由異門故。成圓成實。
◎
復、次に、
此の三自性は異なりと爲んや、異ならずと爲んや。
應に異なるに非らず、異ならざるに非らずと言ふべし、
謂はく、
依他起の自性は異門に由るが故に依他起を成じ、
即ち此の自性は異門に由るが故に遍計所執を成じ、
即ち此の自性は異門に由るが故に圓成實を成ず。
由何異門此依他起成依他起。依他熏習種子起故。
◎
何なる異門に由つて此の依他起は依他起を成ずるや。
他の熏習の種子に依つて起こるが故なり。
由何異門即此自
性成遍計所執。由是遍計所緣相故。又是遍計所遍計故。
◎
何なる異門に由つて即ち此の自性は遍計所執を成ずるや。
是れ遍計の所緣の相なるに由るが故に、
又、是れ遍計所遍計なるが故なり。
由何異門即此自性成圓成實。
如所遍計畢竟不如是有故。
◎
何なる異門に由つて(即ち)此の自性は圓成實を成ずるや。
所遍計の如く、畢竟して是の如く有らざるが故なり。
此三自性各有幾種。謂依他起略有二種。一者依他熏習種子而生起故。二者依他雜染
淸淨性不成故。由此二種依他別故。名依他起。
◎
此の三自性に各、幾種有りや。
謂はく、
依他起に略して二種有り、
一には〔=者〕他の熏習の種子に依つて〔=而〕生起するが故に、
二には〔=者〕他の雜染と淸淨との性に依つて成ぜざるが故なり、
此の二種の依他の別に由つて(故)依他起と名づく。
遍計所執亦有二種。一者自性遍計執故。二者差別遍計執故。由此故名遍計所
執。圓成實性亦有二種。一者自性圓成實故。二者淸淨圓成實故。由此故成圓成實性。
◎
遍計所執にも亦、二種有り、
一には〔=者〕自性をば遍く計執するが故に、
二には〔=者〕差別をば遍く計執するが故なり、
此れに由るが故に遍計所執と名づく。
圓成實性にも亦、二種有り、
一には〔=者〕自性圓成實なるが故に、
二いは〔=者〕淸淨圓成實なるが故なり、
此れに依るが故に圓成實性を成ず。
復次遍計有四種。一自性遍計。二差別遍計。三有覺遍計。四無覺遍計。有覺者。謂善名言。
無覺者。謂不善名言。
◎
復、次に、
遍計に四種有り。
一には自性遍計、
二には差別遍計、
三には有覺遍計、
四には無覺遍計なり。
有覺とは〔=者〕謂はく、名言を善くするなり。
無覺とは〔=者〕謂はく、名言を善くせざるなり。
如是遍計復有五種。一依名遍計義自性。謂如是名有如是義。二依
義遍計名自性。謂如是義有如是名。三依名 遍計名自性。謂遍計度未了義名。四依義遍
計義自性。謂遍計度未了名義。五依二遍計二自性。謂遍計度此名此義如是體性。
◎
是に如き遍計に復、五種有り、
一には名に依つて義の自性を遍計す、
謂はく、是の如き名に是の如き義有りと。
二には義に依つて名の自性を遍計す、
謂はく、是の如き義に是の如き名有りと。
三には名に依つて名の自性を遍計す、
謂はく、遍く、未だ了せざる義の名を計度するなり。
四には義に依つて義の自性を遍計す、
謂はく、遍く、未だ了せざる名の義を計度するなり。
五には二に依つて二の自性を遍計す、
謂はく、遍く此の名、此の義の是の如きの體性を計度するなり。
復次總攝一切分別略有十種。
◎
復、次に、
一切の分別を總攝するに略して十種有り。
一根本分別謂阿賴耶識。二緣相分別。謂色等識。三顯
相分別。謂眼識等幷所依識。四緣相變異分別。謂老等變異。樂受等變異。貪等變異。逼害
時節代謝等變異。㮈落迦等諸趣變異。及欲界等諸界變異。五顯相變異分別。謂即如
前所說變異所有變異。
◎
一には根本分別、謂はく阿賴耶識なり。
二には緣相分別、謂はく色等の識なり。
三には顯相分別、謂はく眼識等並〔=幷〕に所依の識なり。
四には緣相‐變異‐分別、謂はく
老等の變異、
樂受等の變異、
貪等の變異、
逼害・時節・代謝等の變異、
㮈ナ落ラ迦カ等の諸趣の變異、及び
欲界等の諸界の變異なり。
五には顯相‐變異‐分別、謂はく即ち前に說きたる所〔=所說〕の
〔老等の〕變異の如きあらゆる〔=所有〕變異なり。
六他‘引分別。
(※引字三本俱作別字)
謂聞非正法類及聞正法類分別。七不如理分別。謂諸外道聞非正法類分別。八如理分別。謂
正法中聞正法類分別。九執著分別。謂不如理作意類。薩迦耶見爲本。六十二見趣
相應分別。
◎
六には他引分別、(※引字三本俱作別字)
謂はく、非‐正法の類を聞き及び正法の類を聞いて分別するなり。
七には不如理なる分別、
謂はく、諸の外道、非‐正法の類を聞いて分別するなり。
八には如理なる分別、
謂はく、正法中にて正法の類を聞き分別するなり。
九には執著分別、
謂はく不如理なる作意の類の薩迦耶見を本と爲す
六十二見趣と相應する分別なり。
十散動分別。謂諸菩薩十種分別。一無相散動。二有相散動。三增益散動。四
損減散動。五一性散動。六異性散動。七自性散動。八差別散動。九如名取義散動。十如義
取名散動。爲對治此十種散動。一切般若波羅蜜多中說無分別智。如是所治能治應知。
具攝般若波羅蜜多義。
◎
十には散動分別、謂はく、諸の菩薩の十種の分別なり、
一には無相散動、
二には有相散動、
三には增益散動、
四には損減散動、
五には一性散動、
六には異性散動、
七には自性散動、
八には差別散動、
九には名の如く義を取る散動〔=如名取義散動〕、
十には義の如く名を取る散動〔=如義取名散動〕なり。
此の十種の散動を對治せんが爲に、
一切般若波羅蜜多〔經〕の中に無分別智を說く、
是の如き所治・能治は應に知るべし、
具さに般若波羅蜜多の義に攝すと。
若由異門依他起自性有三自性。云何三自
性不成無差別。若由異門成依他起。不即由此成遍計所執及圓成實。
◎
若し異門に由れば依他起の自性に三の自性有り。
云何んが三の自性は無差別を成ぜざるや。
若し異門に由れば依他起を成ずるも、
即ち此れに由つて遍計所執及び圓成實を成ぜず。
若由異門成遍計所執。不即由此成依他起及圓成實。若由異
門成圓成實不即由此成依他起及遍計所執。
◎
若し異門に由れば遍計所執を成ずるも、
即ち此れに由つて依他起及び圓成實を成ぜず。
若し異門に由れば圓成實を成ずるも、
即ち此れに由つて依他起及び遍計所執を成ぜざるなり。
復次云何得知。如依他起自性遍計所執自性。顯現而非稱體。由名前覺無稱體相違故。
由名有衆多多體相違故。由名不決定雜體相違故。
◎
復、次に云何んが依他起の自性・遍計所執の自性の如きは
顯現するも而も稱體に非らざることを知るを得るや。
名の、前に覺無きに、稱體なれ相違するに由るが故に、
名、衆多有らんに多體なれば相違するに由るが故に、
名、決定せざるに雜體なれば相違するに由るが故なり。
此中有二頌
由名前覺無 多名不決定
成稱體多體 雜體相違故
法無而可得 無染而有淨
應知如幻等 亦復似虛空
◎
此の中に二頌有り、
≪名の前に覺無きと、
多名と決定せざるとに由つて
成ず、稱體・多體・
雜體ならば相違するが故なり≫
≪法無きに而も得可く、
無染なるに而も〔淸〕淨有りや、
應に知るべし、幻等の如く
亦、復、虛空に似たりと。≫
復次何故如所顯現實無所有。而依他起自性非一切一切都無所有。此若無者。圓成
‘實自性亦無所有。
(※實字宋本作起字)
此若無者。則一切皆無。若依他起及圓成實自性無有。應成無有染
淨過失。既現可得雜染淸淨。是故不應一切皆無。
◎
復、次に、
何故に顯現する所〔=所顯現〕の如きは
實にはあること〔=所有〕無きに、而も
依他起の自性は一切一切都べてあること〔=所有〕無きに非らざるや。
此れ若し無ければ〔=者〕
圓成實の自性も亦、あること〔=所有〕無く、(※實字宋本作起字)
此れ若し無ければ〔=者〕則ち、一切皆無く、
若しくは依他起及び圓成實の自性、有ること無く、
應に染淨有ること無き過失を成ずべし。
既に現に雜染と淸淨とを得可し、
是の故に應に一切皆、無かるべからず。
此中有頌
若無依他起 圓成實亦無
一切種若無 恒時無染淨
◎
此の中に頌有り、
≪若し依他起無ければ
圓成實も亦、無く
一切種若し無ければ、
恒時〔つね〕に染淨無けん。≫
諸佛世尊於大乘中說方廣敎。
◎
諸佛世尊は大乘の中に於て方廣敎を說きたまへり。
彼敎中言。云何應知遍計所執自性。應知異門說無所有。
◎
彼の敎しへの中に言はく、
云何んが應に遍計所執の自性を知るべきや、
應に知るべし、
異門にあること〔=所有〕無しと說く。
云何應知依他起自性。應知譬如幻炎夢‘像光影谷響水月變化。
(※像字三本宮本俱作影字)
◎
云何んが應に依他起の自性を知るべきや、
應に知るべし、
譬へば幻・炎・夢・像・光影・谷響・水月・變化の如しと。(※像字三本宮本俱作影字)
云何應知圓成實自性。應知宣說四淸淨法。
◎
云何んが應に圓成實の自性を知るべきや、
應に知るべし、四の淸淨法なりと宣說す、と。
何等名爲四淸淨法。一者自性淸淨。謂眞如空實際無相勝義法界。
二者離垢淸淨。謂即此離一切障垢。三者得此道淸淨。謂一切菩提分法波羅蜜多等。四
者生此境淸淨。謂諸大乘妙正法敎由此法敎淸淨緣故。非遍計所執自性。最淨法界等
流性故。非依他起自性。如是四法總攝一切淸淨法盡。
◎
何等をか名づけて四の淸淨法と爲すや。
一には〔=者〕自性淸淨、
謂はく、
眞如・空・實際・無相・勝義・法界なり。
二には〔=者〕離垢淸淨、謂はく即ち此れは一切の障垢を離る、
三には〔=者〕此の道を得る淸淨、
謂はく、
一切の〔三十七の〕菩提分法〔六〕波羅蜜多等なり、
四には〔=者〕此れを生ずる境の淸淨、
謂はく諸の大乘妙正法敎なり、
此の法敎の淸淨の緣に由るが故に
遍計所執の自性に非らず、
最も淨き法界より等流せる性なるが故に
依他起の自性に非らず、
是の如き四法に總じて一切の淸淨なる法を攝め盡くす。
此中有二頌
幻等說於生 說無計所執
若說四淸淨 是謂圓成實
自性與離垢 淸淨道所緣
一切淸淨法 皆四相所攝
◎
此の中に二頌有り、
≪幻等にて生を〔=於〕說き、
無〔遍〕計所執無しと說く
若しくは四の淸淨を說いて、
是れを圓成實なりと謂ふ。≫
≪(1)自性と(2)離垢と〔=與〕
(3)淸淨の道と(4)所緣とにして、
一切の淸淨なる法は、
皆、四相に攝むる所〔=所攝〕なり≫
復次何緣。如經所說。於依他起自性說幻等喩。於依他起自性爲除他虛妄疑故。
◎
復、次に、
何に緣つて經に說く所〔=所說〕の如く
依他起の自性に於て幻等の喩へを說くや。
依他起の自性に於て
他の虛妄の疑ひを除かんが爲の故なり。
他復云何。於依他起自性有虛妄疑。由他於此有如是疑。
◎
(他)復、云何んが依他起の自性に於て虛妄の疑ひ有りや。
他のもの、此れに於て是の如き疑ひ有るに由る。
云何實無有義而成所行境界。爲除此疑說幻事喩。
云何無義心心法轉。爲除此疑說陽炎喩。云何無義有愛非愛受用差別。爲
除此疑說所夢喩。云何無義淨不淨業愛非愛果差別而生。爲除此疑說影像喩。云何
‘無義種種識轉。
(※無字宮本无)
爲除此疑說光影喩。云何無義種種戲論言說而轉。爲除此疑說谷響
喩。云何無義而有實取諸三摩地所行境轉。爲除此疑說水月喩。云何無義有諸菩薩無
顚倒心。爲辦有情諸利樂事故思受生。爲除此疑說變化喩。
◎
云何んが實に義有ること無きに而も所行の境界を成ずるやと、
此の疑ひを除かん爲に幻事の喩へを說けり。
云何んが義無きは心心法轉ずるやと、
此の疑ひを除かん爲に陽焰〔=炎〕の喩へを說けり。
云何んが義無きに愛非愛の受用の差別有りやと、
此の疑ひを除かん爲に夢みる所〔=所夢〕の喩へを說けり。
云何んが義無きに淨・不淨の業、愛・非愛の果、差別して〔=而〕生ずるやと、
此の疑ひを除かん爲に影像の喩へを說けり。
云何んが義無きに種種なる識、轉ずるやと、(※無字宮本无)
此の疑ひを除かん爲に光影の喩へを說けり。
云何んが義無きに種種なる戲論、言說、而も轉ずるやと、
此の疑ひを除かん爲に谷響の喩へを說けり。
云何んが義無きに而も實に諸の三摩地‐所行 の境を取つて轉ずること有りやと、
此の疑ひを除かん爲に水月の喩へを說けり。
云何んが義無きに諸の菩薩有つて顚倒無き心にて
有情の諸の利樂の事を辦ぜんが爲の故に〔彼の〕生を受けんことを思ふと、
此の疑ひを除かん爲に變化の喩へを說けるなり。
世尊依何密意。於梵問經中說。如來不得生死不得涅槃。於依他起自性
中。依遍計所執自性及圓成實自性。生死涅槃無差別密意。
◎
世尊は何〔如何〕なる密意に依つて、梵問經の中に於て、
『如來は生死を得ず、涅槃を得ず』と說きたまへるや。
依他起の自性の中に於て、
遍計所執の自性及び圓成實の自性に依つて
生死・涅槃、差別無しとの密意なり。
何以故。即此依他起自性。由遍計所執分成生死。由圓成實分成涅槃故。
◎
何となれば〔=何以故〕即ち此の依他起の自性は、
遍計所執の分に由つて生死を成じ、
圓成實の分に由つて涅槃を成ずるが故なり。
阿毘達摩大乘經中。薄伽梵說法有三種。一雜染分。二淸淨分。三彼二分。
依何密意作如是說。於依他起自性中遍計所執自性是雜
染分。圓成實自性是淸淨分。即依他起是彼二分。依此密意作如是說。
◎
阿毘達摩‐大乘經中、薄伽梵、說きたまはく、
『法に三種有り、
一には雜染分、
二には淸淨分、
三には彼の二分なり。』
何の密意に依つて是の如き說を作したまへるや。
依他起の自性の中に於て
遍計所執の自性は是れ雜染分なるも、
圓成實の自性は是れ淸淨分なり、
即ち依他起は是れ彼の二分なり、
此の密意に依つて是の如き說を作したまへり。
於此義中以何喩顯。以金土藏爲喩顯示。譬如世間金土藏中三法可得。一地界二土三金。於地界中土非
實有而現可得。金是實有而不可得。火燒‘錬時土相不現金相顯現。
(※「錬」字宋元宮本俱作「練」字)
◎
此の義の中に於て何の喩へを以て顯らはすや。
金土藏を以て喩へを爲して顯示す、
譬へば世間の金土藏の中に、三法、得可きが如し、
一には地界、
二には土、
三には金なり。
地界の中に於て土は實有に非らずして而も現に得可く、
金は是れ實有にして而も得可からず、
火、燒錬する時、土相、現ぜず、金相、顯現す。
(※「錬」字宋元宮本俱作「練」字)
又此地界土顯現時虛妄顯現。金顯現時眞實顯現。是故地界是彼二分。識亦如是。無分別智火未燒時。
於此識中所有虛妄遍計所執自性顯現。所有眞實圓成實自性不顯現。
◎
又、此の地界の土、顯現する時は虛妄にして顯現し、
金、顯現する時は眞實にして顯現す、
是の故に〔彼の〕地界は是れ彼の二分なり。
識も亦、是の如く、
無分別智の火、未だ燒けざる時は此の識の中に於て
あらゆる〔=所有〕虛妄なる遍計所執の自性、顯現するも
あらゆる〔=所有〕眞實なる圓成實の自性、顯現せず。
此識若爲無分別智火所燒時。於此識中所有眞實圓成實自性顯現。所有虛妄遍計所執自性不顯現。
是故此虛妄分別識依他起自性有彼二分。如金土藏中所有地界。
◎
此の識、若し無分別智の火の爲に燒かるる〔=所燒〕時、
此の識の中に於てあらゆる〔=所有〕眞實の圓成實の自性、顯現し
あらゆる〔=所有〕虛妄なる遍計所執の自性、顯現せず。
是の故に此の虛妄なる分別識の依他起の自性には彼の二分あること、
金土藏中のあらゆる〔=所有〕地界の如し。
世尊有處說一切法常。有處說一切法無常。有處說一切法非常非無常。依何密意作如
是說。謂依他起自性由圓成實性分是常。由遍計所執性分是無常。由彼二分非常非無
常。依此密意作如是說。
◎
世尊は有る處に『一切法は常〔住〕なりと說きたまひ、
有る處には『一切法は無常なり』と說きたまひ、
有る處には『一切法は常〔住〕に非らず、無常に非らず』と說きたまへり。
何なる密意に依つて是の如き說を作すや。
謂はく、
依他起の自性は圓成實性の分に由れば是れ常〔住〕なり、
遍計所執性の分に由れば是れ無常なり、
彼の二分に由れば常に非らず、無常に非らず、
此の密意に依りて是の如き說を作す。
如常無常無二。如是苦樂無二。淨不淨無二。空不空無二。我無我無二。寂靜不寂靜無二。有自性無自性
無二。生不生無二。滅不滅無二。本來寂靜非本來寂靜無二。自性涅槃非自性涅槃無二。
生死涅槃無二亦爾。如是等差別。一切諸佛密意語言。由三自性應隨決了。如前說常無
常等門。
◎
常・無常、無二の如く、是の如く苦・樂、無二、
淨・不淨、無二、
空・不空、無二、
我・無我、無二、
寂靜・不寂靜、無二、
有‐自性・無‐自性、無二、
生、不生、無二、
滅、不滅、無二、
本來寂靜・非‐本來寂靜、無二、
自性‐涅槃、非‐自性‐涅槃、無二、
生死・涅槃、無二も亦爾なり。
是の如き等の差別の一切諸佛の密意の語言は三‐自性に由る、
よろしき〔=應〕に隨つて決了すべし、
前に說ける常・無常等の門の如しと。
此中有多頌
如法實不有 如現非一種
非法非非法 故說無二義
依一分開顯 或有或非有
依二分說言 非有非非有
如顯現非有 是故說爲無
由如是顯現 是故說爲有
自然自體無 ‘自性不堅‘住(※「自」字宋本缺。「住」字宋元宮本俱作「位」字)
如執取不有 故許無自性
由無性故成 後後所依止
無生‘滅本寂 自性般涅槃(※「滅」字宮本作「寂」字)
◎
此の中に多くの頌有り、
≪如〔若〕しくは法實にあらず〔=不有〕、
如しくは現に一種に非らず、
法に非らず非法に非らず、
故に無二の義を說く。≫
≪一分に依つて
或は有なり、或は有に非らずと開顯し、
二分に依つて說いて、
有に非らず、非有に非らずと言ふ。≫
≪如しくは現に有るに非らずと顯らはす、
是の故に說いて無なりと爲す、
是の如く顯現するに由り、
是の故に說いて有なりと爲す。≫
≪自然〔無く〕自體無く、
自性、堅く住ぜず、(※「自」字宋本缺。「住」字宋元宮本俱作「位」字)
如しくは有ならずと執取す、
故に無‐自性なりと許す。≫
≪無‐〔自〕性に由るが故に、
後後の所依止と成る、
無生〔無〕滅、本〔來〕寂〔靜〕なり、
自性、般‐涅槃なり。≫(※「滅」字宮本作「寂」字)
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