海の、海/むこう。ひがし/海。そのむこうに/死んだらしいね?……詩
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
海の、海
むこう。ひがし
海。そのむこうに
死んだらしいね?
豚が海辺で椿を咥えた。空には上弦。在り明けの月。謂く、
海の、海
かれらは
花。しろい
しかも、ひたすらに
むこう。ひがし
影のないまま
ハイビスカス
弔うのだろう
海。そのむこうに
しかも、ひたすらに
咬みちぎってしま
わたしたちは
死んだらしいね?
悲惨だったかね
あり得なかったかね
赦し難いかね
おどろいたかね
死んだらしいね?
笑おう。上手に
ぎ。ぎってしまいたいくらい
わたしたちは
海。そのむこうに
顔の弔いに
ハイビスカス
色彩のないまま
むこう。ひがし
かれらは
なぜ?いま、笑った?
しかも、ひたすらに
海の、海
砂のうえに蔦が。蔦が這った。謂く、
偉大ならしい
男が殺され
埋葬ならしい
花々が殺され
砂のうえに花が。むらさきの花が。謂く、
海の、海
むこう。ひがし
海。そのむこうに
死んだらしいね?
偉大ならしい
埋めようか
退屈なまでに
活かし焼き
殺され、男が
花も
うつくしくあれ
花も
埋葬ならしい
生き埋めに
卑屈なまでに
燃やそうか
殺され、花々が
死んだらしいね?
海。そのむこうに
むこう。ひがし
海の、海
獏が猪と密談してみた。海辺で。謂く、
だれ?だれが
どうせまた
涙を
屍。しろ。しろい花が
花たち。殺された
しろいでしょう?
わたしたちは
投げつけられ
花たちを、だれが
花。それら無数の死屍は
蕊。その蕊
しろく、屍に
葬るのだろう?
獏は猪とココナッツの樹木が咲かせた花の花散る翳りに思わず…ん?謂く、
だれ?だれが
花たち。殺された
花たちを、だれが
葬るのだろう?
焰が。炎
胡蝶蘭が
逃げて。逃げ
翳りにゆらいだ
もうすぐ。夜は
そっと、ひそかに
蝶たち。もうすぐ
ふいに、かすかに
すみやかに。朝は
翳って笑った
焰が。炎
蜜蜂が
逃げて。逃げ
葬るのだろう?
花たちを、だれが
花たち。殺された
だれ?だれが
豚は頭を抱えた。月見草をなじった。謂く、
花を殺した
そして流した
海の波間に
そんな夢さえ見ようとしていた
豚の頭上のななめに下弦の在り明けの月。謂く、
花を殺した
花たちのために
悼んであげる
つぶし
そして流した
海。こっち
ぼくが。ほら
花。にぎり
海の波間に
海の岸
花。血を吐く花
こちらの岸辺に
そんな夢さえ見ようとしていた
葬られ
忘れ去られた花々を埋葬するために
忘れ去りつつ花々を埋葬するために
葬られ
そんな夢さえ見ようとしていた
こちらの岸辺に
花。引きちぎれ、花
海の岸
海の波間に
花。にぎり
ぼくが。ほら
海。こっち
そして流した
つぶし
弔ってあげる
花たちのために
花を殺した
2022.07.18.
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