攝大乘論:攝大乘論本所知依分第二-02/無著/三藏法師玄奘譯
又若略說有二緣‘起。
(※起字宮本作造字)
一者分別自性緣起。二者分別愛非愛緣起。
◎
又、若し略して說かば、二の緣起有り、(※起字宮本作造字)
一には〔=者〕自性を分別する緣起〔=分別自性緣起〕、
二には〔=者〕愛・非愛を分別すり緣起〔=分別愛非愛緣起〕なり。
此中依止阿賴耶識諸法生起是名分別自性緣起。以能分別種種自性爲緣性故。
◎
此の中、阿賴耶識に依止して諸法、生起す、
是れを自性を分別する緣起と名づく、
能く種種なる自性を分別するを以て緣性と爲すが故なり。
復有十二支緣起。是名分別愛非愛緣起。以於善趣惡趣能分別愛非愛種種自體爲緣性故。
◎
復、十二支緣起有り。
是れを愛・非愛を分別すり緣起と名づく、
善趣・惡趣に於て
能く愛・非愛の種種なる自體を分別するを以て
緣性と爲すが故なり。
於阿賴耶識中。若‘愚第一緣起。
(※愚字明本作遇字下附`同字同)
或有分別自性爲因。或有分別宿作爲因。或有分別自在變化爲因。或有分別實我爲因。或有
分別無因無緣。
◎
阿賴耶識の中に於て、若し第一の緣起に遇〔=愚〕はば、(※愚字明本作遇字下附`同字同)
或は自性を因と爲すと分別する有り、
或は宿作を因と爲すと分別する有り、
或は自在變化を因と爲すと分別する有り、
或は實我を因と爲すと分別する有り、
或は無因・無緣を分別する有り。
若`愚第二緣起。復有分別。我爲作者。我爲受者。譬如衆多生盲士夫未
曾見象。復有以象說而示之。彼諸生盲有觸象鼻。有觸其牙。有觸其耳。有觸其足。有觸其
尾。有觸脊‘‘骨(‘‘骨は月梁、今代用)。
(※‘‘骨字三本宮本俱作梁字)
◎
若し第二の緣起に愚なれば復、分別して、
我を作者と爲し、
我を受者と爲すと分別する有り。
譬へば衆多なる生盲の士夫、
未だ曾て象を見ざるに復、象を以て說いて〔=而〕
之れを示すが如し。
彼の諸の生盲にして、象の鼻を觸るるあり、
其の牙に觸るる有り、
其の耳に觸るる有り、
其の足に觸るる有り、
其の尾に觸るる有り、
脊‘‘骨に觸るる有り。(‘‘骨は月梁、今代用)。
(※‘‘骨字三本宮本俱作梁字)
諸有問言。象爲何相。或有說言象如犁柄。或說如杵。或說如箕。或說如臼。
或說如帚。或有說言象如石山。
◎
あるもの〔=諸有〕問うて言はく、
象は何なる相なりと爲すやと、
或は有るが說いて言はく、象は犁柄〔り‐へい〕の如しと。
或は說かく、杵の如しと。
或は說かく、箕の如しと。
或は說かく、臼の如しと。
或は說かく、帚の如しと。
或は有るが說いて言はく、象は石山〔しやく‐せん〕の如しと。
若不解了此二緣起。無明生盲亦復如是。或有計執自性爲因。或有計執宿作爲因。或有計執自在爲
因。或有計執實我爲因。或有計執無因無緣。或有計執我爲作者我爲受者。
◎
若し此の二の緣起を解了せざる無明の生盲も亦、復、是の如く、
或は自性を因と爲すと計執する有り、
或は宿作を因と爲すと計執する有り、
或は自在を因と爲すと計執する有り、
或は實我を因と爲すと計執する有り、
或は無因・無緣を計執する有り、
或は我を作者と爲し、我を受者と爲すと計執する有り。
阿賴耶識自性因性及果性等。如所不了象之自性。
◎
阿賴耶識の自性、因性及び果性等〔を解了せざる〕は
象の〔=之〕自性を〔解〕了せざる所の如し。
又若略說阿賴耶識用異熟識。一切種子爲其自性。能攝三界一切自體一切趣等。
◎
又、若し略して說かば、
阿賴耶識は異熟識と一切の種子とを用つて其の自性と爲し、
能く三界の一切の自體、一切の趣等を攝す。
此中五頌
外内不明了 於二唯世俗
勝義諸種子 當知有六種
刹那滅倶有 恒隨轉應知
決定待衆緣 唯能引自果
堅無記可熏 與能熏相應
所熏非異此 是爲熏習相
六識無相應 三差別相違
二念不倶有 類例餘成失
此外内種子 能生引應知
枯喪由能引 任運後滅故
◎
此の中、五頌〔ある〕なり、
≪外内は不明了なり、
二に於て〔明了なり、外は〕唯、世俗なるのみ、
〔内は〕勝義なり、諸の種子なり
當に知るべし、〔種子に〕六種〔の義〕有りと。≫
≪(1)刹那に滅すると、(2)倶有なると、
(3)恒に隨轉すると、應に知るべし、
(4)決定と(5)衆緣を待つと、
唯、能く(6)自果を引くとなり。≫
≪〔所熏は〕(1)堅〔住性〕、(2)無記〔性〕、(3)可熏〔性〕、
(4)能熏と〔=與〕相應する〔性〕なり、
所熏は此れに異なるに非らず、
是れを熏習の相と爲す。≫
≪六識には相應すること無く、
三の差別、相違し、
二念、倶有せず、
餘に類例すれば〔過〕失と成る。≫
≪此の外内の種子の、
能生・〔能〕引をば應に知るべし、
枯喪〔の相續〕は能引〔の因〕に由り、
〔然して〕任運にして後滅するが故なり。≫
爲顯内種非如外種。復說二頌
外或無熏習 非内種應知
聞等熏習無 果生非道理
作不作失得 過故成相違
外種内爲緣 由依彼熏習
◎
内種は外種の如きには非らざることを顯らはさんが爲に、
復、二頌を說かく、
≪外の〔種子〕には或は熏習無し、
内種には非らず、應に知るべし、
聞等の熏習無くして、
果、生ずることは道理に非らず、≫
≪作・不作にして失得する、
過〔失〕なるが故に〔内外種は〕相違を成ず、
外種は内〔種〕を緣と爲し、
由依彼の熏習に由り依る。≫
復次其餘轉識。普於一切自體諸趣。應知說名能受用者。如中邊分別論中說。‘伽他曰
(※「伽他」二字宋元宮本俱作「伽陀」二字)
一則名緣識 第二名受者
此中能受用 分別推心法
◎
復、次に、其の餘の轉識をば、普く一切自體の諸趣に於て、應に知るべし、
說いて能受用者と名づくと、
中邊分別論の中に說ける伽カ陀〔=他〕ダの如し、(※「伽他」二字宋元宮本俱作「伽陀」二字)
曰はく、
≪一には則ち緣識と名づけ、
第二には受者と名づく
此の中、能受用と
〔能〕分別と〔能〕推とは心法なり。≫
如是二識更互爲緣。如阿毘達磨大乘經中說。伽他曰
諸法於識藏 識於法亦爾
更互爲果性 亦常爲因性
◎
是の如き二識は更互に緣と爲る、
阿毘達磨‐大乘經の中に說ける伽他の如し、
曰はく、
≪諸法をば、識に於て藏す、
識を法に於ても亦、爾なり、
更互に果性と爲り、
亦、常に因性と爲る。≫
若於第一緣起中。如是二識互爲因緣。於第二緣起中。復是何緣是增上緣。
◎
若し第一の緣起の中に於ては、
是の如き二識は互に因緣と爲る、
第二の緣起の中に於ては復、
是れ何づれの緣なりや。
是れ增上緣なり。
如是六識幾
緣所生。增上所緣等無間緣。
如是三種緣起。謂窮生死愛非愛趣。及能受用具有四緣。
◎
是の如き六識は幾ばくの緣より生ずる所〔=所生〕なりや。
增上〔緣〕・所緣〔緣〕・等無間緣なり。
是の如き三種の緣起は、謂はく、
生死愛非愛趣を竆はめ、
及び能受用は四緣を具有す。
如是已安立阿賴耶識異門及相。復云何知如是異門。及如是相決定唯在阿賴耶識。非於
轉識。由若遠離如是安立阿賴耶識。雜染淸淨皆不得成。謂煩惱雜染。若業雜染。若生
雜染。皆不成故。世間淸淨出世淸淨。亦不成故。
◎
是の如く已に阿賴耶識の異門及び相を安立せり、
復、云何んが是の如き異門、及び
是の如き相は決定して(唯、)阿賴耶識に在りて、
轉識に〔=於〕非らずと知るや。
若し是の如く安立する阿賴耶識を遠離すれば、
雜染と淸淨と皆、成ずることを得ざるに由る、
謂はく、
煩惱雜染、若しくは業雜染、若しくは生雜染、
皆、成ぜざるが故に、
世間の淸淨、
出世〔間〕の淸淨も亦、成ぜざるが故なり。
云何煩惱雜染不成。以諸煩惱及隨煩惱熏習所作。彼種子體於六識身不應理故。
◎
云何んが煩惱・雜染、成ぜざるや。
諸の煩惱及び隨煩惱の熏習より作る所〔=所作〕の
彼の種子の體を以て、
六識身に於て〔ありと〕するは理に應ぜざるが故なり。
所以者何。若立眼識貪等煩惱及隨煩惱倶生倶滅。此由彼熏成種非餘。即此眼識若已謝
滅。餘識所間如是熏習。熏習所依皆不可得。從此先滅餘識所間現無有體。眼識與彼貪
等倶生。不應道理。以彼過去現無體故。如從過去現無體業。異熟果生不應道理。
◎
所以は〔=者〕何ん、
若し眼識と貪等の煩惱及び隨煩惱と倶に生じ倶に滅し、
此れは彼の熏〔習〕に由つて種〔子〕を成じて餘〔識〕には非らずと立てんか、
即ち此の眼識、
若し已に謝滅すれば餘識に間〔まじ〕はられて〔=所間〕
是の如き熏習および熏習の所依、皆、得可からず。
〔眼識〕此れ從り先に滅して
餘識に間はられ〔=所間〕て、現に體有ること無く、
眼識、彼の貪等と〔=與〕倶に生ずることは道理に應ぜず、
彼の過去〔の法〕は現に無體なるを以ての故なり、
過去の現に無體なる業從り、
異熟果、生ずるは道理に應ぜざるが如し。
又此眼識貪等倶生。所有熏習亦不成就。然此熏習不‘住貪中。
(※住字宮本作依字)
由彼貪欲是能依故。不堅住故。
◎
又、此の眼識は貪等と倶に生ずるも、
所有に熏習は亦、成就せず、
然も此の〔眼識の〕熏習は貪〔等〕の中に住せず、(※住字宮本作依字)
彼の貪欲は是れ能依なるに由るが故に、
堅住せざるが故なり。
亦不得住所餘識中。以彼諸識所依別故。又無決定倶生滅故。
亦復不得住自體中。由彼自體決定無有倶生滅故。
是故眼識貪等煩惱。及隨煩惱之所熏習不應道理。
又復此識非識所熏。
◎
亦、〔眼識の熏習は〕所餘〔その餘の〕識の中に住すことを得ず、
彼の諸識は所依、別〔こと〕なるを以ての故に、
又、〔從つて〕決定して倶に生滅すること有ること無きが故なり。
(亦、復、その自體中に住すことを得ず、
彼の自體は決定として
倶に生滅すること有ること無きに由りての故に、〕
是の故に眼識は貪等の煩惱、及び隨煩惱に〔=之〕
熏習せらるる〔=所熏習〕ことは道理に能ぜず、
又、復、此の識は〔同類の〕識に熏ぜらるる〔=所熏〕に非らず。
如說眼識所餘轉識亦復如是。如應當知。
◎
眼識を說くが如く、
所餘の轉識も亦、復、是の如し、
應ずるが如く當に知るべし。
復次從無想等上諸地沒來生此間。爾時煩惱及隨煩惱所染初識。此識生時應無種子。
由所依止及彼熏習並已過去。現無體故。
◎
復、次に、從無想〔天〕等の上の諸地より沒し來つて、
此の間に生ぜんに、爾の時、煩惱及び隨煩惱の所染の初識、
此の識、生ずる時、應に種子無かるべし、
所依止、及び彼の熏習は並らびに已に過去して、現に體無きに由るが故なり。
復次對治煩惱識。若已生一切世間餘識已滅。爾時若離阿賴耶識。所餘煩惱及隨煩惱
種子。在此對治識中不應道理。此對治識自性解脫故。與餘煩惱及隨煩惱不倶生滅故。
◎
復、次に、煩惱を對治する識、
若し已に生じ、一切世間の餘識、已に滅せんに、
爾の時、若し阿賴耶識を離れて所餘の煩惱及び隨煩惱の種子、
此の對治識の中に在るは道理に應ぜず、
此の對治識は自性解脫するが故に、
餘の煩惱及び隨煩惱と〔=與〕倶に生滅せざるが故なり。
復於後時世間識生。爾時若離阿賴耶識。彼‘諸熏習及所依止久已過去。
(※諸字宮本作識字)
現無體故。應無種子而更得生。是故若離阿賴耶識。煩惱雜染皆不得成。
◎
復、後時に於て世間識生ぜんに、
爾の時若し阿賴耶識を離るれば彼の諸の熏習及び所依止は久しく已に過去し、(※諸字宮本作識字)
現に體無きが故に應に種子無くして〔=而〕更に生ずることを得べし、
〔是れ道理に應ぜず。〕
是の故に、若し阿賴耶識を離るれば煩惱・雜染皆、成ずることを得ざるなり。
云何爲業雜染不成。行爲緣識不相應故。此若無者。取爲緣有亦不相應。
◎
云何んが業雜染、成ぜずと爲すや。
〔業雜染無ければ〕行、識に緣たること相應せざるが故に、
此の〔行識に緣たること〕若し無くんば〔=者〕、
取、有に緣たること(亦)相應せざるなり。
云何爲生雜染不成。結相續時不相應故。
◎
云何んが生雜染、成ぜずと爲すや。
結〔生〕相續の時〔自體を得ること〕相應せざるが故なり。
若有於此非等引地沒已生時。依中有位意起染汚意識結生相續。此染汚意識於‘中有中滅。
(※中字上三本俱有此字)
於母胎中識羯羅藍更相和合。若即意識與彼和合。既和合已依止此識。於母胎中
有意識轉。
◎
若し此の非等引地に於て〔死〕沒し已つて
〔次に〕生ずる時、中有の位に依る意に染汙〔=汚〕の意識を起こし、
結生相續すること有らば、
此の染汙〔=汚〕の意識、中有の中に於て滅して、(※中字上三本俱有此字)
母胎の中に於て〔生ずる時〕、
〔此の〕識と羯カ羅ラ藍ランと更らに相ひ和合す(有り)、
若し即ち意識と彼れと〔=與〕和合せんか、
既に和合し已つて此の識に依止して、
母胎の中に於て〔その餘の〕意識、轉〔生〕すること有り。
若爾即應有二意識於母胎中同時而轉。
◎
若し爾らば即に應に二の意識(母胎中に〔=於〕)有りて同時に(而)轉〔生〕すべし。
又即與彼和合之識是意識性。不應道理。依染汚故。時無斷故。意識所緣不可得故。
◎
又、即ち彼の和合(之)識と是の意識とは、
性、道理に應ぜず、
染汙〔=汚〕に依るが故に、
時、斷ずること無きが故に、
意識の〔如き〕所緣、不可得なるが故なり。
設和合識即是意識。爲此和合意識。即是一切種子識爲依止。此識所生餘意識。是一
切種子識。
◎
設ひ、和合識即ち是れ意識なるも、
此の和合意識、即ち是れ一切種子識なりと爲し、
此の識に依止して餘の意識を生ず所〔=所生〕は
是れ一切種子識なりと爲す。
若此和合識是一切種子識。即是阿賴耶識。汝以異名立爲意識。
◎
若し此の和合識は是れ一切種子識ならば、
即ち是れ阿賴耶識なり、
汝は異名を以て立てて意識と爲す。
若能依止識。是一切種子識。是則所依因識。非一切種子識能依果識是一切種子識。不應道理。
◎
若し能依止の識は是れ一切種子識ならば是れ則ち、所依の因識は、一切種子識に非らず、
能依〔止〕の果識、是れ一切種子識なる〔こと〕は〔本より〕道理に應ぜず。
是故成就此和合識非是意識。但是異熟識。是一切種子識。
◎
是の故に此の和合の識は是れ意識に非らず、
但、是れ異熟識なり、
是れ一切種子識なることを成就す。
復次結生相續已。若離異熟識。執受色根亦不可得。其餘諸識各別依故。不堅住故。是諸
色根不應離識。
◎
復、次に結生相續し已つて若し異熟識を離るれば、
〔五〕色根を執受すること亦、得可からず。
其の餘の諸識は各別の〔所〕依なるが故に、堅住せざる故なり。
是の諸の〔五〕色根に應に〔異熟〕識を離るべからず。
若離異熟識。識與名色更互相依。譬如蘆束相依而轉。此亦不成。
◎
若し異熟識を離るれば、識と名色と〔=與〕更互に相ひ依ること、
譬へば蘆束、相ひ依りて〔=而〕轉ずるが如き、
此れも亦、成ぜず。
若離異熟識。已生有情識食不成。何以故。以六識中隨取一識。於三界中已生有情。能
作食事不可得故。
◎
若し異熟識を離るれば已に生ずる有情の識食、成ぜず、
何となれば〔=何以故〕
六識中、隨つて一識を取るも、
三界の中に汙て已に生ぜる有情、
能く食事を作すこと得可からざるを以ての故なり。
若從此沒於等引地正受生時。由非等引染汚意識結生相續。此非等引染汚之心。彼地
所攝離異熟識。餘種子體定不可得。
◎
若し此れ從り〔死〕沒し、
等引地に於て正に生を受く時は、
非等引〔地〕の染汙〔=汚〕の意識に由るて結生相續す、
此の非等引〔地〕の染汙〔=汚〕の〔=之〕心は、
彼の〔非等引〕地の所攝なり、
異熟識を離れては餘の種子の體は定んで得可からざるなり。
復次生無色界。若離一切種子異熟識。染汚善心應無種子。染汚善心應無依持。
◎
復、次に、無色界に生ぜんに、
若し一切種子、異熟識を離るれば、
染汙〔=汚〕と善との心には應に種子無かるべく、
染汙〔=汚〕と善との心には應に依持無かるべし。
又即於彼若出世心正現在前。餘世間心皆滅盡故。爾時便應滅離彼趣。若生非想非非
想處無所有處。出世間心現在前時。即應二趣悉皆滅離。此出世識不以非想非非想處
爲所依趣。亦不應以無所有處爲所依趣。亦非涅槃爲所依趣。
◎
又、即ち彼しこに於て
若し出世〔間〕心、正に現在前すれば、
餘の世間心、皆、滅盡するが故に、
爾の時便ち應に彼の趣を滅離すべく、
若し非想非非想處、無所有處に生じて、出世間心、現在前する時は即ち、
應に二趣をば悉く皆、滅離すべし。
此の出世の識は非想非非想處を以て所依趣と爲さず。
亦、應に無所有處を以て所依趣と爲すべからず。
亦、涅槃を所依趣と爲すに非らず、〔必ず應に阿賴耶識を所依と爲すべきなり〕。
又將沒時造善造惡。或下或上所依漸冷。若不信有阿賴耶識皆不得成。是故若離一切
種子異‘熟識者。
(※熟字宮本无)
此生雜染亦不得成。
◎
又、將に〔死〕沒せんとする時、善を造り惡を造り、
或は下り或は上らんに、
所依〔の身分〕漸く冷ゆ、
若し阿賴耶識有ることを信ぜざれば〔此の理〕皆、成ずることを得ず。
是の故に若し一切種子異熟識を離るれば〔=者〕(※熟字宮本无)
此の生、雜染亦た成ずることを得ざるなり。
云何世間淸淨不成。謂未離欲纒貪。未得色纒心者。即以欲纒善心爲離欲纒貪故勤修加行。
◎
云何んが世間の淸淨、成ぜざるや。
謂はく、
未だ欲纒の貪を離れず。
未だ色纒の心を得ざる者は即ち、
欲纒の善心を以て離欲纒の貪を離れんが爲の故に加行を勤修す。
此欲纒‘加行心與色纒心不倶‘生滅故。
(※加字明本作如字。生字元本作上字、明本作止字)
非彼所熏。爲彼種子不應道理。
◎
此の欲纒の加行心と色纒の心と〔=與〕は、
倶に生じ〔俱に〕滅せざるが故に(※加字明本作如字。生字元本作上字、明本作止字)
彼の〔色纏の善心の〕所熏に非らずして、
彼の〔色纏の善心の〕種子と爲ることは道理に應ぜざるなり。
又色纒心過去多生。餘心間隔不應爲今定心種子。唯無有故。
◎
又、色纒の心は過去多生〔に於て〕餘心〔ありて〕間隔すれば、
應に今の定心の種子と爲るべからす。
唯、有ること無きのみなるが故なり。
是故成就色纒定心一切種子異熟果識。展轉傳來爲今因緣。加行善心爲增
上緣。如是一切離欲地中如應當知。如是世間淸淨。若離一切種子異熟識。理不得成。
◎
是の故に色纒の定心を成就するは
一切種子異熟果識、展轉‐傳來して今の〔親〕因緣と爲り、
加行の善心は增上緣と爲るなり。
是の如く一切離欲地中にても應ずるが如く、
當に知るべし。
是の如く世間の淸淨は
若し一切種子‐異熟識を離るれば理〔として〕成ずることを得ざるなり。
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