暗殺者たち/夜……詩





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





   ごくあたりまえの風景だったのだろう

   影がかたむき

   凍りついてゆき

   ふるえかけなら

背後で鼠が執拗に監視するものなんですがあえてささやいておきましょうか。まだかろうじて耳がありま…って、ところで昨日の鼠はいくらなんでも塩からすぎましたね?

   あたりまえすぎた風景

     目を。ふと

    未曽有だね

      まだだれも

   影がかたむき

     見ひらき、まだ

    まさに稀有だね

      だれも見たことも

   凍りついてゆき

     きみに、知られなかったきみが

    特筆ものだよ

      その風景に

   ふるえかけなら

そうですか。若干意外ですが、ところで

   すでに見飽きていた風景だったのだろう

   影がいきなり

   色彩をうしない

   青ざめかけなら

背後で鼠が容赦なく虐待するものですがあえてつぶやいておきましょうか。まだかろうじて右の鼻孔がありま…って、ところでおとといの鼠はさすがにしょうしょう甘すぎというものでしたでしょうね?…え?

   見飽きていた

      まだだれも

    とんでもないね

     耳をすました

   影がいきなり

      だれも見たこともな

    あり得ないね

     きみが。まだ

   色彩をうしない

      その風景に

    めざましいほどだったよ

     きみに、知られなかったきみが

   青ざめかけながら

ところで鼠に餌をやったのって、あなたですか?

   だれかがほら

   弑殺されて

   だれかがほら

   走っていったね?

背後で鼠がわたしを後ろ手にしばるものなのですが、ところで鼠の加熱しすぎはさすがによろしくありませんね?

   だれかがほら

     もういい?

    それ

      蛇が足元で

   弑殺されて

     顔。もう

    それ。それ

      頸をかしげたもんだから

   だれかがほら

     だしてもいい?顔

    実に、それ

      わたしは

   走っていったね?

もうそろそろでしょうね?頸をじょぎんっ、って感じですか?

   だれかがほら

   暗殺されて

   だれかがほら

   耳をふさいだね?

背後で鼠がわたしに目隠しをこころみつづけるものだったのですが、ところで鼠の生食は、…まさかね?

   だれかがほら

      蜥蜴が背後に

    そう

     もういい?

   暗殺されて

      まわりこんだもんだから

    そう。そう

     顔。もう

   だれかがほら

      わたしは

    実に、そう

     捨てちゃってもいい?顔

   耳をふさいだね?

最後の言葉は、なんですか?ま、鼠は顎がはずれるほど大量のブーケガルニを咥えさせてからの丸焼きです。しかもケツに葱ぶちこんでね。

   みんながみんな

   屠殺されて

   虐殺されて

   略奪されて

ほら、鼠が踵をかえしましたよ。ところで、煮てもうまいもんですか?鼠は。

   みんながみんな

      走っていきました

    だれ?

     気の早い鳥が

   屠殺されて

      刎ね落とされた

    だれだれ?

     眼玉を

   虐殺されて

      頸をこわきに

    実に、だれだ?

     ばくりっ

   略奪されて

鼠が舌なめずりです。ま、こっちもそっちも舌なめずりしてやりますがね。実際は。

   みんながすでに

   侵害されて

   凌辱されて

   こわされてゆくね

ほら、鼠が銃口を咥えましたよ。ところで、寄生虫とか、…ええ。いかがなもんですか?鼠は。

   みんながすでに

     飢渇の鳥が

    どこ?

      振り返っては

   侵害されて

     眼窩に

    どこどこ?

      さぐりをいれるんです

   凌辱されて

     がくりっ

    実に、どこ?

      ひどいもんです

   こわされてゆくね

ほら、鼠が絶望してしまった頃合いですが、ところで猿轡はいつ咬まされるもんですか?わたしらは。

   ぼくも、きみも?

      あした

    爪。割れた。ふいに

     殺されたぼくが

   そうなるだろうね?

      晴れだったら

    唐突に

     ぼくの影を

   ぼくたちはすでに

      自傷しよっか

    ささやきあっていた

     ふみそこね

   弑殺者だったから


   わたしたちが

   両目を伏せた

   言葉をなくした

   わたしたちが


   暗殺者だったから

      自傷しちゃおっか

    裂きあっていた

     ふんだ

   ぼくたちはすでに

      雨でも

    唐突に

     ぼくの影を

   そうなるだろうね?

      あした

    爪。さかむけた。そっと

     殺されたきみが

   明日?あさって?

あら?あなた、もう息してませんが。あら?わたしもですか?…じゃ、

   嘴に焰を

   焰を咥えて

   そんな鳥たちを

   見ましたか?


   どこへ?どこ

   どこへ?いつ

   もう飛んでゆきましたか?

   どこへ?なぜ


   返さなければならないのです

   ぼくは目を

   彼等から目を

   奪ったのです


   だから、せめて

      声など。きみの

    殺してない?…まだ

     死んでる?

   ぼくは目を

      いちども

    きみは、まだ

     聞こえな

   彼等から目を

      生きてる?

    殺されてなかった?…まだ

     声さえ。きみの

   奪い取って


   掠め取って

     声さえ。きみの

    殺されてないの?…まだ

      生きてた?

   彼等から目を

     いちどだって

    きみは、まだ

      聞かな

   ぼくは目を

     死んでた?

    殺してな…まだ

      声など。きみの

   だから、せめて


   掠め取ったのです

   彼等から目を

   ぼくは目を

   返さなければならないのです


   どこへ?なぜ

   もう飛んでゆきましたか?

   どこへ?いつ

   どこへ?どこ


   見ましたか?

   そんな鳥たちを

   焰を咥えて

   嘴に焰を


2022.07.11











Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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