流波 rūpa ……詩と小説160・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈65





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





あるいは、

   母。それは

   わたしに殘しはしなかった

   須臾にも、まなざし

   その鮮明さをも


   母。それは

   わたしに殘しはしなかった

   髪の毛の匂い

   その鮮明さをも


   母。それは

   だからむしろ

   翳りのなかに記憶しておこう

   あるいは綺羅に


   母。それは

   わたしに殘しはしなかった

   その肌の温度

   その鮮明ささえをも母。それは母。ここで仮に葉子と名づけておく彼女は、だから振り向きざまに謎をかけて、「月にはうさぎがいるでしょ?」…なぜ?

「いないよ」

だってね、だってね、月の海はきれいな、たいらな、クレーターだらけの平面だから。…と、だからそれはいつ?それは瞼。母、やや、戯れたふるえに、だからなに?笑ってた?…ふるえ、それは葉子。かの女の、なに?わたしは、わたしも?だから、十二歳くらい?…怯えている。なぜ。わたしは、——だれ?だれが?怯え、その意味はそんなまばたきに、沙羅。

その須臾のまばたきに散った綺羅を死者ら。

それら翳りなす死者ら。

想わずに見蕩れながら…なぜ?

わたしは、沙羅。

しかも沙羅。

いま子供じみたなぞかけにふさわしい年齢ではない事をわたしはすでにわたしに自覚していたからふるえ、睫毛。それはふるえ、ふるえていた睫毛。その、やわらかな?ややかたい?あきらかにかたい?しかし赤裸々にしなやかに?ふるえ、ふるえつづけている印象をだけそこに殘しはしても、知ってる。わたしも、もう、それがほんの一瞬にすぎなかったことは、「裏側には、なにがいるのでしょう?」と。わたしは

   やめようよ。もう

      お露はね

聞いていた。その鮮明な

   やめようよ。せめて

      ふるえています

耳に、あきらかな耳に、その

   怒鳴りあうのは

      綺羅のみ散らし

聲に、いない、と、月にはうさぎも、なにもいない、…ね?

「月の裏側に、なにがいるの?」

「イソギンチャク?」

   やめようよ。もう

      壊してほしい?

ほほ笑む母は、だからわたしのためにだけそのほほ笑みを、…傷み。

「違う、…かな?…なにがいるの?」

「飛べるにわとり?」

   いじめないでよ

      だったら、ほらね

なぜ?…傷み。ひんむかれて素肌をさらした腰には傷み。もう、燒けつくような、だから

「違う、…なに?」

「内臓ぶちまけた反対のうさぎ」

   やめようよ。もう

      自分で舌を

燃える傷み、謂く、

   のたうちまわるような

   掻きむしり

   背骨。その骨髄を

   掻き毟られるような


   そんな傷み

   それが愛。あなたに

   捧げた。それが

   愛。…なぜ?


   わめきちらすような

   ぶち込まれたままに

   喉に。鐵製の玉を

   さけびちらすような


   そんな傷み

   それが愛。あなたに

   捧げた。それが

   愛。…なぜ?


   ささやき聲など

   ふさわしくないから

   絶叫してるよ

   もう、聲もなく


   ただ、聲もなく

   絶叫してるよ

   ふさわしくないから

   ため息さえも


   愛。…なぜ?

   捧げた。それが

   それが愛。あなたに

   そんな傷み


   さけびちらすような

   喉に。鐵製の玉を

   ぶち込まれたままに

   わめきちらすような


   愛。…なぜ?

   捧げた。それが

   それが愛。あなたに

   そんな傷み


   掻き毟られるような

   背骨。その骨髄を

   掻きむしり

   のたうちまわるような

すなわちやさしさの芽生え。そしてその息吹き。だから息吹くやさしさ、その息吹きにこそ、母。そう名づけられた形姿を想おう。いまも猶も…なぜ?それ以外にすべがないから…なぜ?女のかたちへの憧憬。そしてそのさきがけ。だからたしかにやさしさ、その女のかたちのそれにこそ、母。そう名づけられた形姿を想おう。いまも猶も…なぜ?それ以外にすべがないから…なぜ?そのひとが女であった必然などどこにあったのだろう?事実なのかな?かの女。それが女と名づけられるべき必然を持っていたという事実は。事実?かさねて謂く、

   のたうちまわるような

      仮構のように

    破裂。その、鮮明な

     そのひと

   掻きむしり

      語っておこう

    印象。ばばんっ

     語っておこう

   背骨。その骨髄を

      そのひと

    だばんっ

     仮構のように

   掻き毟られるような


   そんな傷み

      ひと?…翳り?

    傷み?それさえも

     見た記憶のないひとをは

   それが愛。あなたに

      綺羅?…その

    破裂。すでにして

     綺羅?…その

   捧げた。それが

      見た記憶のないひとをは

    破裂。容赦なく

     ひと?…翳り?

   愛。…なぜ?


   わめきちらすような

      虛構のように

    炸裂。その、強烈な

     そのかたち

   ぶち込まれたままに

      ささやいておこう

    印象。ずだんっ

     ささやいておこう

   喉に。鐵製の玉を

      そのかたち

    ぶびゃんっ

     虛構のように

   さけびちらすような


   そんな傷み

      かたち?…翳り?

    苦痛?それさえも

     色彩さえ記憶しないひとをは

   それが愛。あなたに

      綺羅?…その

    炸裂。最初から

     綺羅?…その

   捧げた。それが

      色彩さえ記憶しないひとをは

    炸裂。だから

     かたち?…翳り?

   愛。…なぜ?


   ささやき聲など

      ひそひそ聲で

    取り返しがつかない

     錯誤さえ恐れもしないで

   ふさわしくないから

      しかも大胆に

    明確な認識。もう

     しかも大胆に

   絶叫してるよ

      錯誤さえ恐れもしないで

    すべて、わたしは、すべて手遅れ

     ひそひそ聲で

   もう、聲もなく


   ただ、聲もなく

      誤認さえ恐れもしないで

    なにもかも

     ひそひそ聲で

   絶叫してるよ

      しかも大胆に

    この肉体。皮膚も。こころも

     しかも大胆に

   ふさわしくないから

      ひそひそ聲で

    なにもかも

     誤認さえ恐れもしないで

   ため息さえも


   愛。…なぜ?

      色彩さえ記憶しないひとをは

    すべて、わたしは、すべて手遅れ

     かたち?…翳り?

   捧げた。それが

      綺羅?…その

    明確な認識。もう

     綺羅?…その

   それが愛。あなたに

      かたち?…翳り?

    取り返しがつかない

     色彩さえ記憶しないひとをは

   そんな傷み


   さけびちらすような

      そのかたち

    炸裂。だから

     虛構のように

   喉に。鐵製の玉を

      ささやいておこう

    炸裂。最初から

     ささやいておこう

   ぶち込まれたままに

      虛構のように

    苦痛?それさえも

     そのかたち

   わめきちらすような


   愛。…なぜ?

      見た記憶のないひとをは

    ぶびゃんっ

     ひと?…翳り?

   捧げた。それが

      綺羅?…その

    印象。ずだんっ

     綺羅?…その

   それが愛。あなたに

      ひと?…翳り?

    炸裂。その、強烈な

     見た記憶のないひとをは

   そんな傷み


   掻き毟られるような

      そのひと

    破裂。容赦なく

     仮構のように

   背骨。その骨髄を

      語っておこう

    破裂。すでにして

     語っておこう

   掻きむしり

      仮構のように

    傷み?それさえも

     そのひと

   のたうちまわるような

その沙羅につられたようにしずかに笑んで、見つめるのだった。その、眼の前の沙羅あぃるぃいっぱぁぅんっと?「あなたの眼、いま、燃えてるよ」とでも?その、未知の不可解な言語にささやいた沙羅に、そのくちびる。あくまでもいまだ咥え、指。それ。容赦なくその背にまで密集した皴をさらす指を咥えかけつづけたくちびに、沙羅。

「なに、見てんの?」

その、日本語のささやきを沙羅。

かの女はなんと聞いたのだろう?

なぅいんってぇあ、びんぼっ…と?

そうとでも?

沙羅。

ふいにこれみよがしに聲を立てて笑い、笑いくずれたその痴呆の沙羅。

その、だからがたつくくちびるにわたしはかさねた。

そっと、無理やりにわたしのくちびる。

…なに?

老いのみ蝕んだそれを、しかも…なぜ?

沙羅の、その骨格にわたしの歯を…だれ?

すこし、傷めながらも。

ふと、










Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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