流波 rūpa ……詩と小説153・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈58





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





あるいは、

   ささやくべき

   ささやかれるべき

   言葉。そのひびき

   ひびきさえ


   見い出せないなら

   妄想に耽けるしか?

   墜ち込むしか?

   しかも墜ち込んだ


   その事実には

   気づかないまま?

   赦した。わたしは

   その楓。そのまなざしは


   妄想し

   ふいにささやき

   言葉。そのひびき

   ひびきさえ、いまそれは楓。かつてのいつも、その以上にやさしく、やさしい眼をした、その「でも、…さ」と。「よく、顏、出せるよね」楓。その日、だからそれは渋谷の再会の日。その楓。ただいたましいほどに無邪気ないたずらな笑顏。楓。ふいに感じた。その、すこし離れて知るべくもなかったその肌。その匂いが、そのあたたかみごと嗅ぎ取られた、と。そんな気がした。「ちょっと、あれかも…」錯覚。そしてさらなる「なんか、…ね、」錯覚。誘惑、と。まるでそれが、だから「ちょっと、意外だったかも」赤裸々な誘惑。わたしにだけ仕掛けた誘惑。明晰な意識に意図されたそんな、目的もない須臾の誘惑。…と、そんなものだったかにも、錯覚。もう知っている。それは錯覚。だからあり得ない、むしろ「…でも、ないか」錯乱。なすすべもなかった「こんなもん?…」他人のゆびさきの「こんなもんかな?」攪乱。勝手にわたしの意識を沙羅。その息遣い掻きまわして、と、しかもあらく、あらく、ただあららいで息づきつづけるのひびきはしかも

「なに?」

…え?

   あれ?

      なに?…その

「いま、…」

なに?

   泣いてるの?

      瞳孔に、綺羅

「ん?」

…ね、

   あれ?

      なに?…それ

「いま、…さ」

「なに、聞きたいの?」思った。楓は男性を自称し、慎重な男装にのみ身をつつみ隱しながら、そもそも自分の肉体の性別を隱す必要をなど見止めたことが、…意図。隱蔽の意図さえあったのだろうか。そう何度目?思った。そっ何度目?その刹那にあやうさ。…なぜ?あやうく、…なにが?楓が?わたしのふいに失語に、あるいは白濁に、墜ち入った意識の、わたしの意識が?とまれあやうく、ただあやうく思われて、…なぜ?

   あっ…

      豚が花、喰う

どうして?耳にふれ、ふれつづける聲。その楓のひくく、だから足元のひくみに這いながらひろがりつづけるような沙羅の聲はあけすけに少女のそれだった。

「さっきから、おまえ、ずっとへらついてる」云った。それは楓。わたしはおもわず舌を咬みかけながら、「なに?…いま、なんて?なんて云ったの?」

   曠野には

      咲いているだろう

「なに?」

「どの面さげて、みたいな?…でも、勝手におれらの前からいなくなったの、それ、むしろおまえのほうだったからね?」

   赤裸々な、そこ

      裂いて?

「忘れた?…たとえば、あれ、十三だっけ?十二?」

「なに?」

   曠野には

      花々、散乱

「あんな、ひっどいことしてさ、おれに」

「なに?」

   赤裸々な、そこ

      咲いているだろう

やばっと、その楓はことさらに冗談めかして、だからもうそれは愚弄?…からかい?留保なくわたしを愚弄しようと、邪気もなく、からかい?ただ、愚弄し、からかい、愚弄し、無邪気なままに、愚弄しきって、からかう。ふいに髮を数本乱した息づかいは、執拗なまでに、…発熱?

沙羅。

あなたはそこで、その息にひとり発熱の風。たとえばそんなあたりさわりのなさ。…なに?楓。なにもなかった。そこにはなんら、如何なる嗜虐も如何なる自虐も如何なる陰湿な喜びもなにも、なにもない、もう、だからただ赤裸々なあかるさ。

「あんな、はずかしいこと」

「なに?」

   やさしい、噓を

      破壊装置

無防備に、陽気。それは

「羽交い絞めにして、むりやり、さ」

「なんだよ、それ」

   ささやいて。やさしい

      知ってた?

だから、公園通りを、わたしたちは

「ひっぱたいて、さ。ぶちのめし」

「そういう、さ」

   やさしい噓を

      言葉は

息をきらせることもないのは

「ぶちのめしては、ひっぱたき」

「なにそれ。妄想?お前の」

   きみの唇が

      破壊装置

それは楓。だから

「制服全部、むちゃくちゃにして」

「ずりネタなの?それ」

   燃え盡きるまえに

      知ってた?

舞うように?あるいは

「ほら、放課後、あったじゃん?」

「っていうか、お前」

   ささやいて。…虛妄

      倫理は

重力への、ふいの裏切り?もっとも

「おれ、さ。お前のために叫ばなかったの」

「なんか、笑える。でも」

   きみの妄想を

      破壊装置

たしかに、そう

「やさしくない?…おれ」

「なんで?お前、あのころより」

   ささやいていて

      知ってた?

わたしだって、息を切らしてなどは

「怖かったし。そもそも。…それに」

「けっこう、明るく、さ」

   きみの頭部が

      国家は

しかし、喉には

「恥ずかしかったし。…ね、」

「明るくなってない?事実」

   吹っ飛ぶまえに

      破壊装置

なぜ?まるで、あなまたたかな

「乙女心じゃん?…で」

「燒けるかも。いま」

   ささやいて。…でたらめ

      知ってた?

やわらかな、そんな

「しかも避妊なしだからね」

「お前、いがいと、さ」

   むちゃなでたらめを

      教育は

かたまりを飲んだ?そんな

「ケツのほうにに入れそうだったじゃん?…てか」

「お前、いま」

   ささやいていて

      破壊装置

発熱。それは

「まじでケツ好き?…実は」

「ほんと、…」

   ぼくらの体が

      知ってた?

「なんだよ」と、ふいにたちどまった楓はわたしに歩み寄り、そして云った。わたしの「さっさと、」つま先立ちの鼻先に「言えよ。ちんかすくん」

瞬間、吹き出して笑ったわたしの、たぶん唾液の温度を、その気もなく沙羅。

その褐色の少女はわたしにつたえながらも、月。

飛散?飛沫?なにか匂った気がしたもの。楓は避けようとさえしない。わずかにも、「なに?」

「なんか、いま、お前だけしあわせそう」わたしはそう、やがてその数秒後にようやくつぶやいた。…喪失感?謂く、

   夜。依り添うように

   色彩。寄る光りら依り

   浮かびあがり、夜

   夜にそれら、その肌に


   さまざまな色。色ら

   ささやくように、気配ら

   なにも語らずに、なにも

   如何に語ろう?


   なにも明かさずに、なにも

   なにを見い出そう?

   まなざしがさらす

   あなたのその、しかも明瞭な


   だから夜。依り添うように

   色彩。寄る翳りら依り

   際立って、夜

   夜にそれら、その肌に


   さまざまな息吹き。息吹きら

   ささやくように、兆しら

   なにも語らずに、なにも

   如何に語ろう?


   なにも明かさずに、なにも

   なにを見い出そう?

   まなざしのしらす

   あなたの、しかも隱されもせずに


   おびえ。その刹那

   ふれそうに、爪。ふれ

   ふれて仕舞いそう。いま

   そのくちに、ゆびは


   あやうく、…なに?それは

   なぜ?…あやうく、それ

   そこに笑み。綺羅

   邪気もなく笑みが


   だから夜。依り添うように

   色彩。散り、綺羅ら依り

   ほのめかされ、夜

   夜にそれら、その肌に


   さまざまなまぼろし。ゆらら

   ささやくように、予感ら

   なにも語らずに、なにも

   如何に語ろう?


   なにも起こさずに、なにも

   なにをしておこう?

   醒めた、それ

   あなたの虹彩のこちらに


   衝動?ふいに、わたしの不意が

   焦燥?錯乱?それが欲望?

   名づけることも

   知ることさえ、…なに?


   もて余し、あそび

   霧れ、こころ。靄がけに

   もはや、もう、…おびえ?

   おびえ。わたしのおびえを


   こまらせないで、そう

   つぶやくことさえ

   もはや、もう、…おびえ?

   見つめていようか?


   その曖昧な笑み

   見えない笑みを

   その明瞭な笑み

   掻き消える笑み


   あなたの笑みを

   その不用意な笑み

   いたずらな笑みを

   その容赦ない笑み


   見つめていようか?

   もはや、もう、…おびえ?

   つぶやくことさえ

   こまらせないで、そう


   おびえ。わたしのおびえを

   もはや、もう、…おびえ?

   霧れ、こころ。靄がけに

   もて余し、あそび


   知ることさえ、…なに?

   名づけることも

   焦燥?錯乱?それが欲望?

   衝動?ふいに、わたしの不意が


   あなたの虹彩のこちらに

   醒めた、それ

   なにをしておこう?

   邪気もなく笑み


   そこに綺羅。笑み

   なぜ?…あやうい、それ

   あやうく、…なに?

   なにも起こさずに、なにも


   如何に語ろう?

   なにも語らずに、なにも

   ささやくような、予感ら

   さまざまなまぼろし。ゆらら


   夜にそれら、その肌に

   ほのめかされ、夜

   色彩。散り、綺羅ら依り

   だから夜。依り添うように


   邪気もなく笑みが

   そこに笑み。綺羅

   なぜ?…あやうく、それ

   あやうく、…なに?それは

   そのくちに、ゆびは


   ふれて仕舞いそう。いま

   ふれそうに、爪。ふれ

   おびえ。その刹那

   あなたの、しかも隱されもせずに


   まなざしのしらす

   なにを見い出そう?

   なにも明かさずに、なにも

   如何に語ろう?


   なにも語らずに、なにも

   ささやくように、兆しら

   さまざまな息吹き。息吹きら

   夜にそれら、その肌に


   際立って、夜

   色彩。寄る翳りら依り

   だから夜。依り添うように

   あなたのその、しかも明瞭な


   まなざしがさらす

   なにを見い出そう?

   なにも明かさずに、なにも

   如何に語ろう?


   なにも語らずに、なにも

   ささやくように、気配ら

   さまざまな色。色ら

   夜にそれら、その肌に


   浮かびあがり、夜

   色彩。寄る光りら依り

   夜。依り添うように

すなわちなつかしい、…なに?それはなに?だから、なつかしい、…なに?これ、なに?これは。あるいはわたしの半分の失語。そして殘された饒舌。見つめていた。時には覗き見るように。うかがい見るように。無造作にも見て、そのまなざしのなかに、夜。その、それら光源。色つきの光り。…ら。光りら。あなたの皮膚の兆すさまざまな息吹きを聴き取ろうという、そんな無駄な努力の徒労と無意味などすでに知って知りぬきながらも、かさねて謂く、

   夜。依り添うように

      見たことなど

    ひとり、そこに

     泣いた、あなたの

   色彩。寄る光りら依り

      一度だって

    忘れたのだろう

     一度だって

   浮かびあがり、夜

      泣いた、あな

    そのあなたは

     見たことなど

   夜にそれら、その肌に


   さまざまな色。色ら

      泣いた顏を

    あの、最後のときに

     なぜ?

   ささやくように、気配ら

      そんな顏を

    謎をかけ、謎

     そんな顏を

   なにも語らずに、なにも

      なぜ?

    謎のみをさらし

     泣いた顏を

   如何に語ろう?


   なにも明かさずに、なにも

      いま、ふと

    その須臾に、そこに

     兆したの?

   なにを見い出そう?

      泣きそうな気配を

    忘れられたのだろう

     泣きそうな気配を

   まなざしがさらす

      兆したの?

    その事実だけが

     いま、ふと

   あなたのその、しかも明瞭な


   だから夜。依り添うように

      見たことなど

    あの、最後のとき

     あなたの、痛みに

   色彩。寄る翳りら依り

      一度だって

    謎をかけ、謎

     一度だって

   際立って、夜

      あなたの、いぃっ

    謎のみをさらし

     見たことなど

   夜にそれら、その肌に


   さまざまな息吹き。息吹きら

      傷んだ顏を

    なに?…と、それ

     なぜ?

   ささやくように、兆しら

      そんな顏を

    戸惑いながら

     そんな顏を

   なにも語らずに、なにも

      なぜ?

    なぜ?…と、そこ

     傷んだ顏を

   如何に語ろう?


   なにも明かさずに、なにも

      いま、ふと

    立ち尽くし?…まさか

     兆したの?

   なにを見い出そう?

      いたましい気配を

    むしろ、わたしは

     いたましい気配を

   まなざしのしらす

      兆したの?

    ほほ笑んでいた

     いま、ふと

   あなたの、しかも隱されもせずに


   おびえ。その刹那

      まるで、軽蔑

    あなたのため、ただ

     甲高い聲に

   ふれそうに、爪。ふれ

      哄笑している、そんなふうに

    それは不意。不意に

     哄笑している、そんなふうに

   ふれて仕舞いそう。いま

      甲高い聲に

    近づけた。そのとき

     まるで、軽蔑

   そのくちに、ゆびは


   あやうく、…なに?それは

      あなたはいつも

    顏を、あなたは。背伸びして

     あなたの聲

   なぜ?…あやうく、それ

      それが笑い聲

    眼の前。ひらく

     それが笑い聲

   そこに笑み。綺羅

      あなたの聲

    くちびるを。なに?

     あなたはいつも

   邪気もなく笑みが


   だから夜。依り添うように

      まるで、侮辱

    咬みつこうとでも?

     ひるがえる聲に

   色彩。散り、綺羅ら依り

      手当たり次第に、そんなふうに

    飲み込もうとでも?

     手当たり次第に、そんなふうに

   ほのめかされ、夜

      ひるがえる聲に

    なぜ?きみは

     まるで、侮辱

   夜にそれら、その肌に


   さまざまなまぼろし。ゆらら

      あなたはいつも

    かける言葉も

     あなたの聲

   ささやくように、予感ら

      それが笑い聲

    ささやきもなく

     それが笑い聲

   なにも語らずに、なにも

      あなたの聲

    虹彩。ただ、綺羅

     あなたはいつも

   如何に語ろう?


   なにも起こさずに、なにも

      感じたことなど

    しかも笑った

     かなしみ。あなたの

   なにをしておこう?

      一度だって

    鼻にちいさく

     一度だって

   醒めた、それ

      かなしみ。あなたの

    聲を立て

     感じたことなど

   あなたの虹彩のこちらに


   衝動?ふいに、わたしの不意が

      せつない顏を

    そのひびき

     なぜ?

   焦燥?錯乱?それが欲望?

      そんな顏を

    みじかい悲鳴。悲鳴のように

     そんな顏を

   名づけることも

      なぜ?

    そのひびき

     せつない顏を

   知ることさえ、…なに?


   もて余し、あそび

      いま、ふと

    逃げた?消えるまえ

     兆したの?

   霧れ、こころ。靄がけに

      気配の、赤裸々なせつなさ

    わたしたちのまえ。そのまえから

     気配の、赤裸々なせつなさ

   もはや、もう、…おびえ?

      兆したの?

    消え去るまえ、ひとり

     いま、ふと

   おびえ。わたしのおびえを


   こまらせないで、そう

      しあわせだったのかもね

    その夜の朝に

     たぶん、あなたは

   つぶやくことさえ

      たぶん、あなたは

    あなたはそこで

     たぶん、あなたは

   もはや、もう、…おびえ?

      たぶん、あなたは

    笑っていた。ひとり

     しあわせだったのかもね

   見つめていようか?


   その曖昧な笑み

      わたしと、あなたが

    ひとりで、そっと

     しあわせだったね?

   見えない笑みを

      ふれあわないほうが

    ひらいた口に

     ふれあわないほうが

   その明瞭な笑み

      しあわせだったね?

    かすかな匂いに

     わたしと、あなたが

   掻き消える笑みを


   あなたの笑みを

      口がひらく。なにか言いかけ

    なぶる光りに

     わたしの口が

   その不用意な笑み

      咬みつくように?

    肌の白濁

     飲み込むように?

   いたずらな笑みを

      わたしの口が

    赤裸々な綺羅に

     口がひらく。なにか言いかけ

   その容赦ない笑み


   見つめていようか?

      しあわせだったね?

    笑っていた。ひとり

     わたしと、あなたが

   もはや、もう、…おびえ?

      ふれあわないほうが

    あなたはそこで

     ふれあわないほうが

   つぶやくことさえ

      わたしと、あなたが

    その夜の朝に

     しあわせだったね?

   こまらせないで、そう


   おびえ。わたしのおびえを

      出逢わないほうが

    消え去るまえ、ひとり

     しあわせだったのかもね

   もはや、もう、…おびえ?

      たぶん、あなたは

    わたしたちのまえ。そのまえから

     たぶん、あなたは

   霧れ、こころ。靄がけに

      しあわせだったのかもね

    逃げた?消えるまえ

     出逢わないほうが

   もて余し、あそび


   知ることさえ、…なに?

      兆したの?

    そのひびき

     いま、ふと

   名づけることも

      気配の、赤裸々なせつなさ

    みじかい悲鳴。悲鳴のように

     気配の、赤裸々なせつなさ

   焦燥?錯乱?それが欲望?

      いま、ふと

    そのひびき

     兆したの?

   衝動?ふいに、わたしの不意が


   そこに綺羅。笑み

      なぜ?

    聲を立て

     せつない顏を

   なぜ?…あやうい、それ

      そんな顏を

    鼻にちいさく

     そんな顏を

   あやうく、…なに?

      せつない顏を

    しかも笑った

     なぜ?

   なにも起こさずに、なにも


   如何に語ろう?

      かなしみ。あなたの

    虹彩。ただ、綺羅

     感じたことなど

   なにも語らずに、なにも

      一度だって

    ささやきもなく

     一度だって

   ささやくような、予感ら

      感じたことなど

    かける言葉も

     かなしみ。あなたの

   さまざまなまぼろし。ゆらら


   夜にそれら、その肌に

      あなたの聲

    なぜ?きみは

     あなたはいつも

   ほのめかされ、夜

      それが笑い聲

    飲み込もうとでも?

     それが笑い聲

   色彩。散り、綺羅ら依り

      あなたはいつも

    咬みつこうとでも?

     あなたの聲

   だから夜。依り添うように


   邪気もなく笑みが

      ひるがえる聲に

    くちびるを。なに?

     まるで、侮辱

   そこに笑み。綺羅

      手当たり次第に、そんなふうに

    眼の前。ひらく

     手当たり次第に、そんなふうに

   なぜ?…あやうく、それ

      まるで、侮辱

    顏を、あなたは。背伸びして

     ひるがえる聲に

   あやうく、…なに?それは


   そのくちに、ゆびは

      あなたの聲

    近づけた。そのとき

     あなたはいつも

   ふれて仕舞いそう。いま

      それが笑い聲

    それは不意。不意に

     それが笑い聲

   ふれそうに、爪。ふれ

      あなたはいつも

    あなたのため、ただ

     あなたの聲

   おびえ。その刹那


   あなたの、しかも隱されもせずに

      甲高い聲に

    ほほ笑んでいた

     まるで、軽蔑

   まなざしのしらす

      哄笑している、そんなふうに

    むしろ、わたしは

     哄笑している、そんなふうに

   なにを見い出そう?

      まるで、軽蔑

    立ち尽くし?…まさか

     甲高い聲に

   なにも明かさずに、なにも


   如何に語ろう?

      兆したの?

    なぜ?…と、そこ

     いま、ふと

   なにも語らずに、なにも

      いたましい気配を

    戸惑いながら

     いたましい気配を

   ささやくように、兆しら

      いま、ふと

    なに?…と、それ

     兆したの?

   さまざまな息吹き。息吹きら


   夜にそれら、その肌に

      なぜ?

    謎のみをさらし

     傷んだ顏を

   際立って、夜

      そんな顏を

    謎をかけ、謎

     そんな顏を

   色彩。寄る翳りら依り

      傷んだ顏を

    あの、最後のとき

     なぜ?

   だから夜。依り添うように


   あなたのその、しかも明瞭な

      あなたの、痛みに

    その事実だけが

     見たことなど

   まなざしがさらす

      一度だって

    忘れられたのだろう

     一度だって

   なにを見い出そう?

      見たことなど

    その須臾に、そこに

     あなたの、痛みに

   なにも明かさずに、なにも


   如何に語ろう?

      兆したの?

    謎のみをさらし

     いま、ふと

   なにも語らずに、なにも

      泣きそうな気配を

    謎をかけ、謎

     泣きそうな気配を

   ささやくように、気配ら

      いま、ふと

    あの、最後のときに

     兆したの?

   さまざまな色。色ら


   夜にそれら、その肌に

      なぜ?

    そのあなたは

     泣いた顏を

   浮かびあがり、夜

      そんな顏を

    忘れたのだろう

     そんな顏を

   色彩。寄る光りら依り

      泣いた顏を

    ひとり、そこに

     なぜ?

   夜。依り添うように

そこでひとりでしかも交尾でもしているかのような沙羅。そのあるいはむごたらしくも感じられた息のひびきの生滅のむれを下に、月。月は、そして死者たち。それら、色彩のない死者たちはやはり、そのまなざしにさえも網膜にあきらかに、隱されようもなく赤裸々で、だからわたしは更にも死者たちさえをも見い出して、月。

しろい孔。

空にひらいた、ふいの孔。

あわい光りの、雪よりもむしろ、雪さえももはやくらぶべくもなくただひたすらに儚く、その孔。

儚すぎて、孔。

いたたまれないほどの孔。

ただしろいあきらかな孔。

ひらいた。

その孔を。

無数に、だから無数の死者たちはそこにひらき、だから、無数の孔の、すでにくずれながら孔なすのをわたしは見ていた。

ただ、波さえもがひびき、












Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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