流波 rūpa ……詩と小説150・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈55後半





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





または謂く、

   叫ぶだろう。それ

   口さえあれば

   叫びの孔が

   孔さえあれば


   わめくだろう。それ

   口さえあれば

   わめきの孔が

   孔さえあれば


   なぜ?…痛いのだろう?

   きみだけの崩壊

   きみとの乖離

   押しつぶして仕舞うから?


   わたしが、きみを

   きみだけの屠殺

   きみとの離別

   同じ鼓動を息吹いていたのに


   イノチは装置

   装置はイノチ

   わたしたちの聲を

   だれも聞かない


   耳など、だれにも

   なかったから

   聞き出すための

   わたしたちの聲を


   わたしたちの息吹きを

   知り、思うための

   なかったから

   こころなど、だれにも


   だれもふれない

   わたしたちのこころを

   装置はイノチ

   イノチは装置


   知ってる。もう

   その赤裸々な死

   あなたはひとりで生きられないから

   すべがないから


   知っている。もう

   轟音なす気配

   あなたが別れを告げていたから

   聲さえもなく


   そのひびきさえなく

   あなたが別れを告げていたから

   轟音なす気配

   知っている。もう


   すべがないから

   あなたはひとりで生きられないから

   その赤裸々な死

   知ってる。もう


   イノチは装置

   装置はイノチ

   わたしたちのこころを

   だれもふれない


   こころなど、だれにも

   なかったから

   知り、思うための

   わたしたちの息吹きを


   わたしたちの聲を

   聞き出すための

   なかったから

   耳など、だれにも


   だれも聞かない

   わたしたちの聲を

   装置はイノチ

   イノチは装置


   同じ鼓動を息吹いていたのに

   きみとの離別

   きみだけの屠殺

   わたしが、きみを


   押しつぶして仕舞うから?

   きみとの乖離

   きみだけの崩壊

   なぜ?…痛いのだろう?


   孔さえあれば

   わめきの孔が

   口さえあれば

   わめくだろう。それ


   孔さえあれば

   叫びの孔が

   口さえあれば

   叫ぶだろう。それ

すなわち聞いていただろう。耳さえあれば。やさしいささやき。ひそめられた聲。無数の聲。いつくしみの聲。やさしすぎる聲。それ以外にそのあり樣など持ち得ない聲。だからやさしく、やさしい聲が、それを殺した。あの妹を。沈黙のイノチ。赤裸々なイノチ。沈黙を以てかさねた饒舌、かさねて謂く、

   叫ぶだろう。それ

      捧げよう

    なに?…それは

     こんな風景を

   口さえあれば

      きみに

    かなしみ。…なぜ?

     たとえば

   叫びの孔が

      こんな風景を

    かなしみの息吹き

     捧げよう。せめて

   孔さえあれば


   わめくだろう。それ

      きみを妹と

    焰がつらぬき

     わたしたちは息吹く

   口さえあれば

      そう名づけ

    これが傷み?

     そう呼んで

   わめきの孔が

      わたしたちは息吹く

    焰のような、これは

     きみを妹と

   孔さえあれば


   なぜ?…痛いのだろう?

      捧げよう

    なに?…それは

     だって、光りたち、綺羅

   きみだけの崩壊

      ほほ笑み

    なげき。…なぜ?

     突然の

   きみとの乖離

      だって、綺羅めきに、翳り

    なげきの気配

     捧げよう。せめて

   押しつぶして仕舞うから?


   わたしが、きみを

      きみを妹と

    灼熱がつらぬき

     わたしたちは息吹く

   きみだけの屠殺

      そう名づけ

    これが傷み?

     そう呼んで

   きみとの離別

      わたしたちは息吹く

    赤裸々な灼熱、これは

     きみを妹と

   同じ鼓動を息吹いていたのに


   イノチは装置

      捧げよう

    決別?…たぶん

     だって、あかるい、鳥たち

   装置はイノチ

      笑い聲…なぜ?

    わたしたちの

     笑い聲…そこでひとり

   わたしたちの聲を

      だって、あざやかな、鳥たち、羽搏き

    最期?…たぶん

     捧げよう。せめて

   だれも聞かない


   耳など、だれにも

      きみを妹と

    このつながるイノチの

     わたしたちは息吹く

   なかったから

      そう名づけ

    消滅?…たぶん

     そう呼んで

   聞き出すための

      わたしたちは息吹く

    意識。そう、名づけられたそれ

     きみを妹と

   わたしたちの聲を


   わたしたちの息吹きを

      捧げよう

    破裂がつらぬき

     こんな風景を

   知り、思うための

      息吹きの最期の風景に

    これが傷み?

     息吹きの最期の風景に

   なかったから

      こんな風景を

    容赦なき破裂。これが

     捧げよう。せめて

   こころなど、だれにも


   だれもふれない

      きみと、弟と

    なに?…たぶん

     かれはもう、すでに

   わたしたちのこころを

      そう名づけ

    最初から生まれてはいなかった

     そう呼んで

   装置はイノチ

      かれはもう、すでに

    未生?…たぶん

     きみと、弟と

   イノチは装置


   知ってる。もう

      すでに燃えたね

    出生の擬態?

     なにを捧げよう?

   その赤裸々な死

      かれにはなにを?

    なに?…なに?

     かれにはなにを?

   あなたはひとりで生きられないから

      なにを捧げよう?

    発生の擬態?

     すでに燃えたね

   すべがないから


   知っている。もう

      こぼれ出たもの

    わたしたちはなに?

     きみの最期の

   轟音なす気配

      それはイノチ?

    清潔すぎる空間のなかに

     その匂い

   あなたが別れを告げていたから

      きみの最期の

    なに?…なに?

     こぼれ出たもの

   聲さえもなく


   そのひびきさえなく

      その息吹き?

    発生の擬態?

     その顯らわれ?

   あなたが別れを告げていたから

      くれないの、飛び散

    なに?…なに?

     くれないの、飛び散らせたもの

   轟音なす気配

      その顯らわれ?

    出生の擬態?

     その息吹き?

   知っている。もう


   すべがないから

      きみの最期の

    未生?…たぶん

     こぼれ出たもの

   あなたはひとりで生きられないから

      その匂い

    最初から生まれてはいなかった

     それはイノチ?

   その赤裸々な死

      こぼれ出たもの

    なに?…たぶん

     きみの最期の

   知ってる。もう


   イノチは装置

      なにを捧げよう?

    容赦なき破裂。これが

     すでに燃えたね

   装置はイノチ

      かれにはなにを?

    これが傷み?

     かれにはなにを?

   わたしたちのこころを

      すでに燃えたね

    破裂がつらぬき

     なにを捧げよう?

   だれもふれない


   こころなど、だれにも

      かれはもう、すでに

    意識。そう、名づけられたそれ

     きみと、弟と

   なかったから

      そう呼んで

    消滅?…たぶん

     そう名づけ

   知り、思うための

      きみと、弟と

    このつながるイノチつながりの

     かれはもう、すでに

   わたしたちの息吹きを


   わたしたちの聲を

      こんな風景を

    最期?…たぶん

     捧げよう。せめて

   聞き出すための

      息吹きの最期の風景に

    わたしたちの

     息吹きの最期の風景に

   なかったから

      捧げよう

    決別?…たぶん

     こんな風景を

   耳など、だれにも


   だれも聞かない

      わたしたちは息吹く

    赤裸々な灼熱、これは

     きみを妹と

   わたしたちの聲を

      そう呼んで

    これが傷み?

     そう名づけ

   装置はイノチ

      きみを妹と

    灼熱がつらぬき

     わたしたちは息吹く

   イノチは装置


   同じ鼓動を息吹いていたのに

      あざやかな、鳥たち、羽搏き

    なげきの気配

     捧げよう。せめて

   きみとの離別

       笑い聲…なぜ?そこでひとり

    なげき。…なぜ?

     笑い聲…なぜ?

   きみだけの屠殺

      捧げよう

    なに?…それは

     だって、あかるい、鳥たち

   わたしが、きみを


   押しつぶして仕舞うから?

      わたしたちは息吹く

    焰のような、これは

     きみを妹と

   きみとの乖離

      そう呼んで

    これが傷み?

     そう名づけ

   きみだけの崩壊

      きみを妹と

    焰がつらぬき

     わたしたちは息吹く

   なぜ?…痛いのだろう?


   孔さえあれば

      だって、綺羅めきに、翳り

    かなしみの息吹き

     捧げよう。せめて

   わめきの孔が

      突然の

    かなしみ。…なぜ?

     ほほ笑み

   口さえあれば

      捧げよう

    なに?…それは

     だって、光りたち、綺羅

   わめくだろう。それ


   孔さえあれば

      わたしたちは息吹く

    告げる別れなどないのだろう

     きみを妹と

   叫びの孔が

      そう呼んで

    生まれ得てさえいなのなら

     そう名づけ

   口さえあれば

      きみを妹と

    ただ、清潔な綺羅ら

     わたしたちは息吹く

   叫ぶだろう。それ

ぶふぅはっ…と?たとえばそんな、…なに?聲?猶も?それは、音。喉の、…なに?息の?…なに?ひびき。音響。そこに、ひびき。沙羅。その褐色の沙羅。傷めつけられ、もはやその肉体中に痛みを、あるいはもはや骨格にさえも痛みを知った、だから、その沙羅。わたしが最後にその突き出された不用意な尻を膝のかたいところで蹴倒したときに、沙羅。前のめりのついに倒れることを赦されながら沙羅。その、だから褐色のうつくしい少年。

るふぃはっ…と?たとえばそんな、…なに?聲?沙羅。前のめりの床に、瞬間、急接近。ふいにかれの視界をいっぱいに至近に覆いつくした須臾には直撃。額。むしろ後頭部と頸筋に巨大な傷みが、沙羅。散る。傷み。撒き散り、口にノイズ。その口にみじかくごく微細な騒音をしかも赤裸々にたてて、そしてへの字に床に彎曲を描きかけた沙羅。その一瞬の沙羅が、腰から崩れて仰向けたのを見た。

月。

窓の外には月が、…知っていた。すでに…まだ?まだ地表の、だから遠い近くに遠く浮かんでいることは。

だから、ひたすらに冴えてあかるい、しかも翳り。

その部屋の中は。

違和感があった。

翳り。

…なぜ?

翳りのむれ。

違和。

その沙羅。

…なに?

床の上に四肢を投げ出し、沙羅。

そこに鳴っていてしかるべきものの不在に。

…なに?

違和感。

…だれ?

だから、たとえばひびき。

…なぜ?

音響。

…いつ?

ひびき。

…どこ?

沙羅。

かの女はいまそこで、むしろあえぐに似た粗い、荒い、荒んだ息を乱しているべきだった。

死?…と。

そう思った須臾でもほんとうにあったのなら、そこに違和感などきざしてあるべくもなかった。

事実、刹那の疑いさえいだく余地なく、沙羅。

その褐色の沙羅。

かの女はそこに生きていた。

だから赤裸々に、赤裸々な違和感。

瞼が、…だれ?

わたしの、だから瞼がまばたきかけた瞬間に、吐いた。

沙羅が、息を。

その息を、…滞っていた呼吸を、いきなりに吐き出して沙羅は、そこにひとり、乱雑な息のむれを撒き散らした。

それら、無謀なまでに無防備なノイズを。

汗。

ふきだす。

その肌に、褐色に、崩壊の皮膚にも、いま、沙羅。

その表皮すべてに、と。

わたしはすでに沙羅から眼をそらして仕舞いながら、そこに、そう思っていた。











Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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