流波 rūpa ……詩と小説142・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈49





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





あるいは、

   不安?たしかに、なんら

   特別な反応じゃ

   突起されるべき

   不安じゃ。ならば


   おそれ?たしかに、なんら

   異常な反応じゃ

   記憶されるべき

   おそれじゃ。それは


   はじめてあなたに

   ≪流沙≫。≪流沙≫を

   聞かせたときに

   その生まれ出たばかりの


   ひびきに。たしかにあなたは

   怯えたまなざしじゃ

   なんら案じるべき

   まなざしでさえもないその≪流沙≫。やさしい笑みを?≪流沙≫。かれはもう、自分が≪流沙≫でこそありながら、≪流沙≫。こぼれでる笑みを?まだ、それに気付いていなかった、そんなだからその≪流沙≫。そこにこぼれでているだけ、いわば自動詞の笑みを?のちに到るまでも≪流沙≫。いやおうなくこぼれでてもうこぼれだすままに放置された笑みを?かれがじぶんで自分を≪流沙≫と意識した須臾さえ一度もなかったとしても、しかもあきらかなその≪流沙≫。そこに、瑠璃の、…というか、レコーディングの…燒いてよ。エンジニアに、か…いいよ。かれの手に依って?だからかの女が燒いてよこした≪流沙≫。その最初のひびき。そのCD‐Rを聞き、聞き終わるなりにすでにふたりの肌の部分的なだけの触感。体温。わずかに、かすかに、わずかに、ほのかに、わずかに、それら、しかしゆび先のほんの一部だけには噎せ返るようにも感じ取りあわれていた早朝。ビラ・ビアンカ。窓に光りは。

   あっ…

光り。り、り、

   白い鳥。鳥

やわらかな光り。

   いま、目覚め

光りら。あ、あ、

   目。まばたき

侵入しかけ、すでに侵入し、さらにも侵入しようとしてとめどもなく、しかもそれら侵入の気配さえ感じさせない横殴りの…なに?

   あっ…

      墜ちっ

光り。たぶん、雨。

   褐色の鳥。鳥

      散りっ

外は、雨。

   いま、淚

      散り墜っ

なぜ?

   ふらっ

      墜っ

「…いいじゃん」

そう、≪流沙≫はこともなげに云って…云い放ち、だからその放ち、無防備に?ささやき。所詮…無謀なまでに無防ひとことをささ、ささ、ささやき、放ち、ありふれたひとこと。ただありふれたままに吐き捨ててありふれた≪流沙≫。そのかれをわたしはなじっていた。あくまでも、…なぜ?故意に。

「…だって、さ」ささやき。やわらかな。それは≪流沙≫。

   ばかばかしいくらい

      ねねねっ…ね?

たぶんいかつく

   キスしちゃおっか

      核廃棄物処理についてどう思う?

いかつすぎる巨体は

   遠くの空に

      なななっ…な?

翳り。あきらかに

   爆弾どっかん

      わたしはイノチ

光りのせい。たぶん半分以上が侵犯した光り。あきらかに舐め、這い、息遣い、たぶん、そのかれの耳には気に入られなかったのだと。わたしがひとりおののいていたわたし。その言葉。だから打ち消すように放たれた口早やの言い訳じみた言葉。それらを捨て置きかれは、

「これ、このひびき、…」と、それは≪流沙≫。耳元に、だから自虐?しかも大胆な?わたしをただ、いつくしみいつくしんでいとしんだ、その想い須臾の赤裸々な≪流沙≫。かれの大胆をむしろ、ただ、嗜虐?かれに依るわたしへの

   ばかばかしいくらい

      ねねねっ…ね?

いじめじみて想い、

   見つめあっちゃお

      各政府に依る人体実験の歴史的諸事例についてどう思う?

自虐。それは

   足元ななめうしろ。ほら

      なななっ…な?

たぶん≪流沙≫に依る

   地雷くっちょん

      わたしはイノチ

≪流沙≫。そのかれのためだけの自虐。わたしの不在。あくまでも。しかもわたしはなにか散乱。…産卵?散乱。なんとかして産卵。話をそらそうと画策したささやきを産卵しました。散らし、鳥たちが空に散らしつづけ、産卵しました。散乱。…産卵?散乱。撒き散らすだけだったものの

「なんか、耳慣れない、…なんか」それは≪流沙≫。惑い。赤裸々な惑い。赤裸々に惑い、…なぜ?わたしは耳慣れないというその言葉に。それは終始句だったのだろうか。つまりただひとつの結論。それとも接続形だったのだろうか?そのすぐのちには云い放たれることのなかった言葉を実は待機していた、準備していた、画策していた、そしてすでに放棄されなにを?たぶん≪流沙≫。かれそのものにさえついに見い出されず、だから不在の言葉。言い放たれなかったに他ならない以上、ただ赤裸々に不在でしかない未生の、なに?たとえばだから、と?たとえば

   ばかばかしいくらい

      ねねねっ…ね?

しかも、と?

   頬すりよせちゃう?

      各企業体による自然破壊の事実に関する情報隠蔽についてどう思う?

たとえばでも、と?あるいは

   頭上直前。あれっ

      なななっ…な?

不吉な、と?繊細な、

   空爆しゅごーんっ

      わたしはイノチ

と?綺麗な、と?不穏な、と?なに?だからただひたすらな謎でしかなかった曖昧。耳慣れない、と。しかもなにが?そもそもなにがあなたのその耳をさかっさかなでたのだろう?わたしのくちびるはその時に、だからさかったとえばなに?と。言いかけ、打ち消し、やり過ごし、だから屈辱的な存在抹消。話しつづけた。何度目かに?もう何度もささやかれていた話。わたしの片方の一本ゆびだけもピアノで参加したレコーディング。稀れな機会。並らぶ機械。黑を褪せさせた持ち込みフェンダー・ローズ。おもっレコーディング・セッションはくそおもっ一日だけ、…ジャズのなにこれおもっ人も、むかしは、さ。その話を、…ふらっと來て、入れて、それでおしまい。お疲れ!って、さ。しかも

「楓は、好きかな?…これ。だから、…だから、」それは≪流沙≫。ふいに思いついた、音の大きさについてのわたしの感想など≪流沙≫は、

「でも、」と、それは≪流沙≫。ジャケットの選別まで自分でするといって聞かなかった瑠璃をなじっているにはちがいないわたしはそれらの汚らしい言葉を、

「いい、と、…おれは、でも、」と、それは≪流沙≫。あくまでもやさしい。そのまなざしにほんめかされたこころの色。色めきは。なぜ?と、わたしは思い、なぜ≪流沙≫。いまこの時にさえもあなたはやさしく、ただやさしく、あまりにもやさしくいられるのだろう?≪流沙≫。かれの兩親兄弟、そして妹までもが眼の前であざ笑うように凌辱され、しかも虐殺され、しかも苦痛の叫びも悲鳴さえもあげずに

   月はいま

壊され皮膚に火を放たれていったあの夜と

   もうすこし、もっと

同じように、≪流沙≫。なぜ、

   西のほう、…

しかも、やさ

   かな?

やさしいのだろう?わたしはふいに至近に感じた≪流沙≫。その≪流沙≫。そこに、わたしを…わたしをだけ見て、見つづけ、猶もしかも見つめはしないまなざし、…の、その、存在。≪流沙≫。あるいはもう、見蕩れ仕舞っていたのだろうか。わたしは、そおこにひとりかれ。≪流沙≫。容赦もなくなまなましい実在の明確に。聞かなかった。わたしの口に、口をついて出、口をついてこぼれ、歯のうらを須臾掻いて放たれる言葉の群れ、むれ、群

「…そう思うよ」と、それは≪流沙≫。たぶん、ほほ笑み。そんな≪流沙≫に「…音楽、かな?」と。「違う、かな?」と、「おまえの聞いた通りの、だから、楓の音楽、かな?…これ。だから、いま、かれがいま鳴らすべき…」音楽。

   あっ…

      轟音なんだ!

ひびき。わたっ

   むらさきの鳥。鳥

      きみはもう

わたしの、言葉。

   いま、吼えた

      そのほほ笑みは

ひびき。そ

   ぐるぁーっ

      絶叫なんだ!

その≪流沙≫。か

   あっ…

      きみはもう

その耳にひびき。

   蛇尾の鳥。鳥

      そのやさしさは

わたしの、言葉。ひぃっ

   いま、泣いた

      殲滅なんだ!

ひびき。なっ

   ぐるぁーっ

      きみはもう

音楽。ただ≪流沙≫のためだけにささげられたわたしのとめどもない一方的な言葉の群れ。むれ。群れに≪流沙≫。かれは、むしろただやさしいだけ。やさしくだけあった、そこにやさしいだけの、だからことさらにやさしく謎めいて感じられたほほ笑みの気配をだけくれ、「…すきだよ」

「これってね、ほんとは、」

   それでも、ね?

      聞いておこうか?

「すき。…だ、と、思う。きっと。なんか、」

「もう、結構、さ。録音で、…さ。マジいじった。もうマ」

   いま、蟻たちが

      …なぜ?

「いいね、なんか」

「いじりまくっだから実は、…か。この楽器」

   濡れながら

      いつか、それでも

「いろんな、風景を」

「バリトン。…あれ、古い楽器。だか、ら、…かな?か?」

   しかも、濡れながら

      記憶するため

「なに?」

「微弱音?…って?そういうの?なんか、かなり」

   行進します

      データ保存

「描いてくれる…たのんでもないのに、」

「苦手なわけ。にがっ基本、かなり、なり」

   どこ?どこへ?

      きみの瞼その細胞分裂のひびき

「勝手に、…って、」

「な、」

   それでも、ね?

      聞いておこうか?

「違うか。なんか、」

「なりって。…て、鳴り響かせる楽器だから。あれ。びぃ…だから」

   いま、蜥蜴たちが

      …なぜ?

「情報少なすぎて、逆に」

「ぐびゃーん。って、さ、…あれ、」

   濡れながら

      いつか、それでも

「聞きながら勝手に」

「音の大きさ。ピアノとの、フェン、…バランス?」

   しかも、濡れながら

      記憶するため

「無意識にいろいろ」

「溶けあうように。しかも」

   擬態します

      データ保存

「補っちゃうんだろうね。たぶん、」

「奥行き…それから、ん。エコー…なんかリヴァッ」

   なに?なにに?

      きみの肌その息づくヴィルスのふいの壊死の音

「でも、」

「ぜんぶ、もう、」

   それでも、ね?

      聞いておこうか?

「なんか、」

「めっちゃっくちゃ、」

   いま、のら鼠たちが

      …なぜ?

「いいとおもうよ。おれは、」

「いじっていじっていじりたおして」

   濡れながら

      いつか、それでも

「雅雪が?」

「エンジニア」と、わたしは笑う。「あくまで、エンジニアと、それから、瑠璃もじゃない?…かな?たぶん」謂く、

   雨に濡れ、濡れ

   濡れた雨にも

   濡れる雨にも

   濡れ、雨に濡れ


   しずく散り、散り

   散ったしずくにも

   散るしずくにも

   散り、しずく散り


   飛沫くだき、くだけ

   くだく飛沫にも

   くだけ飛沫にも

   くだき、飛沫くだけ


   霧に霞み、霞み

   霞んだ霧にも

   霞む霧にも

   霞み、霧に霞み


   霞み霧れ、霧れ

   霧れた霞みにも

   霧れる霞みにも

   霧れ、霞み霧れ


   しかも猶も

   同じ綠り。綠りを

   沈痛な?

   沈鬱な?


   もの憂い

   それら綠り。綠りを

   神宮の

   すこし先の


   色彩。おなじ

   おなじ色。おなじ?

   映えない

   変わり映えのない


   昏い色彩。濃く

   濃い色彩。昏く

   ざわつきも

   そのざわめきも


   見止められない

   まなざしには

   ただの停滞

   無慚な沈滞


   だから、頸すじ

   うしろに、汗。それ

   ひとすじ、汗。それ

   だから、頸すじ


   無慚な沈滞

   ただの停滞

   まなざしには

   見止められない


   そのざわめきも

   ざわつきも

   濃い色彩。昏く

   昏い色彩。濃く


   変わり映えのない

   映えない

   おなじ色。おなじ?

   色彩。おなじ


   すこし先の

   神宮の

   それら綠り。綠りを

   もの憂い


   沈鬱な?

   沈痛な?

   同じ綠り。綠りを

   しかも猶も


   霧れ、霞み霧れ

   霧れる霞みにも

   霧れた霞みにも

   霞み霧れ、霧れ


   霞み、霧に霞み

   霞む霧にも

   霞んだ霧にも

   霧に霞み、霞み


   くだき、飛沫くだけ

   くだけ飛沫にも

   くだく飛沫にも

   飛沫くだき、くだけ


   散り、しずく散り

   散るしずくにも

   散ったしずくにも

   しずく散り、散り


   濡れ、雨に濡れ

   濡れる雨にも

   濡れた雨にも

   雨に濡れ、濡れ

すなち雨に濡れ、濡れる雨。雨も濡れ、だから濡れた雨。それらのおびただしさの中で、その森はしかも、おなじ色彩を。すくなくとも代り映えはしない色彩を。だから、ただ同じような色彩を。…いつ?色彩はそっと褪せて行ったのだろう?かさねて謂く、

   雨に濡れ、濡れ

      …笑った、と

    聲を立てて

     並ぶように立つ

   濡れた雨にも

      思った。背後

    笑った。かれは

     思った。背後

   濡れる雨にも

      並ぶように立つ

    その≪流沙≫

     …笑った、と

   濡れ、雨に濡れ


   しずく散り、散り

      その背後。きみは

    その≪流沙≫

     あやうく接触

   散ったしずくにも

      すれすれに接近

    そのひびき。かれは

     すれすれに接近

   散るしずくにも

      あやうく接触

    そのひびきを

     その背後。きみは

   散り、しずく散り


   飛沫くだき、くだけ

      鼻くそほじった、と

    聲を立てて

     きみ。…だれ?

   くだく飛沫にも

      思った。それが

    笑っていた。かれは

     思った。それが

   くだけ飛沫にも

      きみ。…だれ?

    その≪流沙≫

     鼻くそほじった、と

   くだき、飛沫くだけ


   霧に霞み、霞み

      その背後。きみは

    その≪流沙≫

     あやうく接触

   霞んだ霧にも

      すれすれに接近

    はじめて耳に

     すれすれに接近

   霞む霧にも

      あやうく接触

    耳にふれ、ふれ

     その背後。きみは

   霞み、霧に霞み


   霞み霧れ、霧れ

      頭吹っ飛ばした、と

    その≪流沙≫

     きみ。…だれ?

   霧れた霞みにも

      思った。それが

    そのひびき。かれは

     思った。それが

   霧れる霞みにも

      きみ。…だれ?

    そのひびきを

     頭吹っ飛ばした、と

   霧れ、霞み霧れ


   しかも猶も

      その背後。きみは

    聲を立てて

     あやうく接触

   同じ綠り。綠りを

      すれすれに接近

    笑っていた。かれは

     すれすれに接近

   沈痛な?

      あやうく接触

    その≪流沙≫

     その背後。きみは

   沈鬱な?


   もの憂い

      ゆび咬み引きちぎり喰った、と

    その≪流沙≫

     きみ。…だれ?

   それら綠り。綠りを

      思った。それが

    はじめて脳に

     思った。それが

   神宮の

      きみ。…だれ?

    脳にとけ、とけ

     ゆび咬み引きちぎり喰った、と

   すこし先の


   色彩。おなじ

      その背後。きみは

    吹き出して

     あやうく接触

   おなじ色。おなじ?

      すれすれに接近

    笑った。かれは

     すれすれに接近

   映えない

      あやうく接触

    その≪流沙≫

     その背後。きみは

   変わり映えのない


   昏い色彩。濃く

      舌咬みちぎった、と

    その≪流沙≫

     きみ。…だれ?

   濃い色彩。昏く

      思った。それが

    そのひびき。かれは

     思った。それが

   ざわつきも

      きみ。…だれ?

    そのひびきを

     舌咬みちぎった、と

   そのざわめきも


   見止められない

      その背後。きみは

    やや背後

     あやうく接触

   まなざしには

      すれすれに接近

    笑った。かれは

     すれすれに接近

   ただの停滞

      あやうく接触

    その≪流沙≫

     その背後。きみは

   無慚な沈滞


   だから、頸すじ

      あやうく接触

    その≪流沙≫

     その背後。きみは

   うしろに、汗。それ

      すれすれに接近

    そのひびき。かれは

     すれすれに接近

   ひとすじ、汗。それ

      その背後。きみは

    そのひびきを

     あやうく接触

   だから、頸すじ


   無慚な沈滞

      きみ。…だれ?

    ひびきあって

     舌咬みちぎった、と

   ただの停滞

      思った。それが

    ひびきあいかれは

     思った。それが

   まなざしには

      舌咬みちぎった、と

    その≪流沙≫

     きみ。…だれ?

   見止められない


   そのざわめきも

      あやうく接触

    その≪流沙≫

     その背後。きみは

   ざわつきも

      すれすれに接近

    笑った。かれは

     すれすれに接近

   濃い色彩。昏く

      その背後。きみは

    やや背後

     あやうく接触

   昏い色彩。濃く


   変わり映えのない

      きみ。…だれ?

    そのひびきを

     ゆび咬み引きちぎり喰った、と

   映えない

      思った。それが

    そのひびき。かれは

     思った。それが

   おなじ色。おなじ?

      ゆび咬み引きちぎり喰った、と

    その≪流沙≫

     きみ。…だれ?

   色彩。おなじ


   すこし先の

      あやうく接触

    その≪流沙≫

     その背後。きみは

   神宮の

      すれすれに接近

    笑った。かれは

     すれすれに接近

   それら綠り。綠りを

      その背後。きみは

    吹き出して

     あやうく接触

   もの憂い


   沈鬱な?

      きみ。…だれ?

    脳にとけ、とけ

     頭吹っ飛ばした、と

   沈痛な?

      思った。それが

    はじめて脳に

     思った。それが

   同じ綠り。綠りを

      頭吹っ飛ばした、と

    その≪流沙≫

     きみ。…だれ?

   しかも猶も


   霧れ、霞み霧れ

      あやうく接触

    その≪流沙≫

     その背後。きみは

   霧れる霞みにも

      すれすれに接近

    笑っていた。かれは

     すれすれに接近

   霧れた霞みにも

      その背後。きみは

    聲を立てて

     あやうく接触

   霞み霧れ、霧れ


   霞み、霧に霞み

      きみ。…だれ?

    そのひびきを

     鼻くそほじった、と

   霞む霧にも

      思った。それが

    そのひびき。かれは

     思った。それが

   霞んだ霧にも

      鼻くそほじった、と

    その≪流沙≫

     きみ。…だれ?

   霧に霞み、霞み


   くだき、飛沫くだけ

      あやうく接触

    耳にふれ、ふれ

     その背後。きみは

   くだけ飛沫にも

      すれすれに接近

    はじめて耳に

     すれすれに接近

   くだく飛沫にも

      その背後。きみは

    その≪流沙≫

     あやうく接触

   飛沫くだき、くだけ


   散り、しずく散り

      並ぶように立つ

    その≪流沙≫

     …笑った、と

   散るしずくにも

      思った。背後

    笑っていた。かれは

     思った。背後

   散ったしずくにも

      …笑った、と

    聲を立てて

     並ぶように立つ

   しずく散り、散り


   濡れ、雨に濡れ

      顎あー…引きちぎった、と

    そのひびきを

     きみ。…だれ?

   濡れる雨にも

      思った。それが

    そのひびき。かれは

     思った。それが

   濡れた雨にも

      きみ。…だれ?

    その≪流沙≫

     顎あー…引きちぎった、と

   雨に濡れ、濡れ

汗に濡れる。だから、そしてその沙羅を殴打しつづけるわたしの手のひらは。拳?まさか。その頭部をはいちども拳に殴りつけなどしなかった。沙羅のため、…ではなくて、ただわたしの拳をかれの骨格で傷めないでおくために。のけぞった。時に。その沙羅は。息を止めた。時に、その沙羅は。顎をふるわせた。時に。その沙羅は。眼を剝いた。時に。その沙羅は。前のめりに尻をつきだし、時に。その沙羅は。息を飲んだ。時に。その沙羅は。左うでにすがる挙動を虛空に見せた。時に。その沙羅は。えづいた。時に。その沙羅は、かれの腹部を殴りつけた時に。赦しはない。わたしの手のひらも、拳も、腕も、膝も、なにも、沙羅。かれが床に倒れ込むことなど。いつか、その粗い息さえ吐き得もしない沙羅のためのほほ笑みのうちに。













Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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