流波 rūpa ……詩と小説141・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈48





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





あるいは、

   実は、記憶など

   かの女の記憶

   そんなものなど

   なにもないのだ


   だから不在の

   その翳りには

   たとえば百合を

   埋めておこうか


   実は、記憶など

   そのひとの記憶

   そんなものなど

   なにもないのだ


   陥没。不在の

   そのほら孔には

   たとばえば蓮華を

   沈めておこうか、と。そこに鼻血をそっとぬぐってあげた。それはいつの、だから何歳の、どんな、そのひと?そのひと、どんな?仮りにここで…その顏は?顏?和希と名づけておく、それは…その髮は?髮?母。だからその母の…その体臭は?体臭?鼻に流したふたすじの、…だから兩鼻。ふたつは鼻血。「すっげぇ花火くさっ」と?

   るぅぁあっ。つぁっ。つぁっ。っぶ、ふぅ、ぶぁー

      あしたは、雨が…

まばたきもしない双渺を見開いて、それはうるおい。にじんだ淚的な?そんな体液にうるんだそれは

「くさっくさっ…てか」と?

   くぅぁあっ。るぁっ。るぁっ。っぴ、ひぅ、びひぁー

      きみが隠した

双渺。和希は、あおむけてわたしの腕のなかに、抱き上げられながら発する言葉は、もう

「かゆくね?ケツとか」と?

   とぅぁあっ。おぁっ。くぁっ。っぴ、るぅ、りひぁー

      淚の雨、…かな?

聞き取れない。日本語としては。聞き取れない。だから耳を、わたしはそれでも耳を澄まし耳を。だからわたしはそれでも耳をよせて、いつ?それはいつの和希の殘した、いま——引っ掻くように!蘇るあざやかな——咬みついたように!いまの記憶なのだろう?謂く、

   あくまでも花

   花の、たとえば清楚な

   花の、その清楚さをこそ

   ささげよう。その


   霞む陥没に

   母に。もっともしたしく

   いとしいひとに

   その指の匂いに


   あくまでも花

   花の、たとえば可憐な

   花の、その可憐さでこそ

   かざりたてよう。その


   昏む陥没に

   母に。もっともいとしく

   なつかしいひとに

   その髮の匂いに


   あくまでも花

   花の、たとえば豪奢な

   花の、その豪奢さをこそ

   かさねよう。その


   滲む陥没に

   母に。もっともなつかしく

   かなしいひとに

   その指の匂いに


   あくまでも花

   花の、たとえば繊細な

   花の、その繊細さにこそ

   とむらおう。その


   ひそむ陥没に

   母に。もっともかなしく

   不穏なひとに

   その息の匂いに


   まなざしに虹彩

   虹彩に綺羅

   それはだれ?

   わたし?それは


   白濁のゆがみ

   ゆがみ、くずれ

   不在の翳り

   昏みなき翳り


   綺羅それは翳り

   不在の翳り

   ゆがみ、くずれ

   白濁のゆがみ


   わたし?それは

   それはだれ?

   虹彩に綺羅

   まなざしに虹彩


   その息の匂いに

   不穏なひとに

   母に。もっともかなしく

   ひそむ陥没に


   とむらおう。その

   花の、その繊細さにこそ

   花の、たとえば繊細な

   あくまでも花


   その指の匂いに

   かなしいひとに

   母に。もっともなつかしく

   滲む陥没に


   かさねよう。その

   花の、その豪奢さをこそ

   花の、たとえば豪奢な

   あくまでも花


   その髮の匂いに

   なつかしいひとに

   母に。もっともいとしく

   昏む陥没に


   かざりたてよう。その

   花の、その可憐さでこそ

   花の、たとえば可憐な

   あくまでも花


   その指の匂いに

   いとしいひとに

   母に。もっともしたしく

   霞む陥没に


   ささげよう。その

   花の、その清楚さをこそ

   花の、たとえば清楚な

   あくまでも花

すなわち夢。それは夢。返り見して、わたしをそのまなざしが見止める寸前に母は、なにか云った。なにを?…わたしはまばたく。まばたいた。慥かに。そんな気がした。かさねて謂く、

   あくまでも花

      記憶。それは

    聞けよ。ぼくらが

     あの月

   花の、たとえば清楚な

      月。…なに?

    燒け崩れた音

     月。…なに?

   花の、その清楚さをこそ

      あの月

    轟音。この世界をさえ道連れに

     記憶。それは

   ささげよう。その


   霞む陥没に

      ゆらぐ月

    見つめようか?

     しろい月

   母に。もっともしたしく

      無数の月

    まるで仇敵のように

     無数の月

   いとしいひとに

      しろい月

    なぜ?

     ゆらぐ月

   その指の匂いに


   あくまでも花

      月。月ら

    見つめようか?

     綺羅らぐ月ら

   花の、たとえば可憐な

      綺羅

    まるで親友のように

     綺羅ら

   花の、その可憐さでこそ

      綺羅らぐ月ら

    なぜ?

     月。月ら

   かざりたてよう。その


   昏む陥没に

      みなものむこう。そこに

    見つめようか?

     あの月

   母に。もっともいとしく

      月。…なに?

    まるで差別主義者のように

     月。…なに?

   なつかしいひとに

      あの月

    なぜ?

     みなものむこう。そこに

   その髮の匂いに


   あくまでも花

      とける月

    見つめようか?

     消え失せる月

   花の、たとえば豪奢な

      くずれ月

    まるで制圧者のように

     くずれ月

   花の、その豪奢さをこそ

      消え失せる月

    なぜ?

     とける月

   かさねよう。その


   滲む陥没に

      月。月ら

    見つめようか?

     翳りなす月ら

   母に。もっともなつかしく

      昏み

    まるで恋人のように

     昏み

   かなしいひとに

      翳りなす月ら

    なぜ?

     月。月ら

   その指の匂いに


   あくまでも花

      みなものこちら?それは

    見つめようか?

     あの月

   花の、たとえば繊細な

      月。…なに?

    まるで母親のように

     月。…なに?

   花の、その繊細さにこそ

      あの月

    なぜ?

     みなものこちら?それは

   とむらおう。その


   ひそむ陥没に

      ふるえ月

    たぶんね、世界は

     とめどない月

   母に。もっともかなしく

      霞む月

    まなざしとまなざし

     霞む月

   不穏なひとに

      とめどない月

    その在り得ない眞ん中に

     ふるえ月

   その息の匂いに


   まなざしに虹彩

      月。月ら

    綺羅らと翳り

     くだけ散る月ら

   虹彩に綺羅

      くだけ

    翳りは綺羅ら

     くだけ

   それはだれ?

      くだけ散る月ら

    綺羅らとゆらぎ

     月。月ら

   わたし?それは


   白濁のゆがみ

      際限もなく

    綺羅らと綺羅ら

     盡きるすべもなく

   ゆがみ、くずれ

      窮まりなく

    その在の得ない眞ん中に

     窮まりなく

   不在の翳り

      盡きるすべもなく

    たぶんね、世界は

     際限もなく

   昏みなき翳り


   綺羅それは翳り

      くだけ散る月ら

    たぶんね、世界は

     月。月ら

   不在の翳り

      くだけ

    綺羅らと綺羅ら

     くだけ

   ゆがみ、くずれ

      月。月ら

    その在の得ない眞ん中に

     くだけ散る月ら

   白濁のゆがみ


   わたし?それは

      とめどない月

    綺羅らとゆらぎ

     ふるえ月

   それはだれ?

      霞む月

    翳りは綺羅ら

     霞む月

   虹彩に綺羅

      ふるえ月

    綺羅らと翳り

     とめどない月

   まなざしに虹彩


   その息の匂いに

      あの月

    その在り得ない眞ん中に

     みなものこちら?それは

   不穏なひとに

      月。…なに?

    まなざしとまなざし

     月。…なに?

   母に。もっともかなしく

      みなものこちら?それは

    たぶんね、世界は

     あの月

   ひそむ陥没に


   とむらおう。その

      翳りなす月ら

    なぜ?

     月。月ら

   花の、その繊細さにこそ

      昏み

    まるで母親のように

     昏み

   花の、たとえば繊細な

      月。月ら

    見つめようか?

     翳りなす月ら

   あくまでも花


   その指の匂いに

      消え失せる月

    なぜ?

     とける月

   かなしいひとに

      くずれ月

    まるで恋人のように

     くずれ月

   母に。もっともなつかしく

      とける月

    見つめようか?

     消え失せる月

   滲む陥没に


   かさねよう。その

      あの月

    なぜ?

     みなものむこう。そこに

   花の、その豪奢さをこそ

      月。…なに?

    まるで制圧者のように

     月。…なに?

   花の、たとえば豪奢な

      みなものむこう。そこに

    見つめようか?

     あの月

   あくまでも花


   その髮の匂いに

      綺羅らぐ月ら

    なぜ?

     月。月ら

   なつかしいひとに

      綺羅ら

    まるで差別主義者のように

     綺羅

   母に。もっともいとしく

      月。月ら

    見つめようか?

     綺羅らぐ月ら

   昏む陥没に


   かざりたてよう。その

      しろい月

    なぜ?

     ゆらぐ月

   花の、その可憐さでこそ

      無数の月

    まるで親友のように

     無数の月

   花の、たとえば可憐な

      ゆらぐ月

    見つめようか?

     しろい月

   あくまでも花


   その指の匂いに

      あの月

    なぜ?

     記憶。それは

   いとしいひとに

      月。…なに?

    まるで仇敵のように

     月。…なに?

   母に。もっともしたしく

      記憶。それは

    見つめようか?

     あの月、…ね?

   霞む陥没に


   ささげよう。その

      咬みついちゃおうか?

    轟音。この世界をさえ道連れに

     …じゃねじゃねじゃね?

   花の、その清楚さをこそ

      飲み込んじゃおうか?

    燒け崩れた音

     そうじゃね?違う?

   花の、たとえば清楚な

      排泄しちゃう?

    聞けよ。ぼくらが

     …じゃね?そうじゃね?

   あくまでも花

思った。その褐色の、だから昏がりにいよいよ濃く、もはや色彩の鮮度をあきらかに昏みに埋没させ、消え失せかけさせてその沙羅。褐色の沙羅。あるいは花?…と。あり得ない不当な連想。だから褐色の、花。およそ花らしくもない花。そして血。ひとすじの、ただ黑みをしかそこに感じさせず、しかもその本來の赤。もう、如何にしても見い出されることのない眞紅。見い出されもせず見い出すべくもないそれが猶もなぜ本來のものでなければならないのだろう?本來のものであり得ているのだろう?鼻血。花に、あるいはそれはたとえば垂れた花汁、と?そうだと?













Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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