流波 rūpa ……詩と小説139・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈46





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





あるいは、

   殘虐な顏で、もっと

   笑ってみて

   吐きそうなくらい

   にどと見られない


   悲惨な顏で、もっと

   笑いさわいで見て

   いらつくくらい

   にどと見られない


   醜惡な顏で、もっと

   引き攣けてみて

   笑っちゃうくらい

   にどと見られない


   燒いてあげようか?

   あんたの顏、さ

   水のなかで、さ

   燒いてやろうかと彼女。仮にここで水月と名づけておくそのひとは、だからいとしいひと。それはわたしの母。たぶん、わたしがそれでもかろうじてって…かろうじて?まさか。もはや赤裸々にって…は?もはや泣き出してしまいたくらいにって…ば?もはや泣き叫びながら大聲でわめきちらしたいくらいに女のくせに、

「かすみ草」

   ゆらっ

      ららいら

それでも容赦なくいっさいのみにくさ、

「しら百合」

   くらっ

      ららいら

いっさいの穢さ、いっさいの

「花。はな菖蒲」

   ゆらっ

      ららいぃばっ

むごたらしさ、いっさいの

「すいせん」

   ぐだっ

      だだぃいばっ

貪りそのいっさいの

「かきつばた」

   ぶがっ

      ぐぐぅるっ

いじきなさ、そしていっさいの

「撫子の花」

女の愚劣を感じさせられないでいらっ、いさせらっ、いらさせっ、るぁれた唯一の女に他ならなかったのは、それは水月。だから母は矛盾としての女性。生け花が好きだった。だから当然、記憶の中に水月は莖ににじんだ青臭い液の色彩のないくさみのある水。…切りおとされた仮死の花。仮生の、それらイノチ。いきいきとしてみずみずしい仮死の花々。そのすすりあげているはずの水の匂い。仮生。生き、息、死?死に、息、仮生?容赦なくいとしく、それはただいとしいだけのひと。うつくしい、ただ、うつくしいだけの故に、謂く、

   うつくしいものには

   匂いがあること

   敎えてくれた

   そのうつくしい花


   うつくしいひとが

   敎えてくれた

   やさしい聲に

   そのやさしさに


   うつくしいものには

   ひびきあること

   敎えてくれた

   そのうつくしい聲


   うつくしいひとが

   敎えてくれた

   そのくちびるに

   ただやわらかに


   うつくしいものには

   ふれられないこと

   敎えてくれた

   そのうつくしい肌


   うつくしいひとが

   敎えてくれた

   そのくちびるに

   ただあたたかに


   うつくしいものでも

   発熱すること

   敎えてくれた

   そのうつくしい肉


   うつくしいひとが

   敎えてくれた

   その発熱に

   その熱狂に


   轟音のなかに

   はかないだけの

   綺羅を見ていた

   うつくしすぎて


   みなもの月が

   敎えてくれた

   うつくしいものが

   壊れてゆくこと


   その綺羅のゆらぎは

   敎えてくれた

   うつくしいものが

   滅びてゆくこと


   滅びていたこと

   うつくしいものが

   敎えてくれた

   その綺羅のゆらぎは


   壊れていたこと

   うつくしいものが

   敎えてくれた

   みなもの月が


   うつくしすぎて

   綺羅を見ていた

   はかないだけの

   轟音のなかに


   その熱狂に

   その発熱に

   敎えてくれた

   うつくしいひとが


   そのうつくしい肉

   敎えてくれた

   発熱すること

   うつくしいものでも


   ただあたたかに

   そのくちびるに

   敎えてくれた

   うつくしいひとが


   そのうつくしい肌

   敎えてくれた

   ふれられないこと

   うつくしいものには


   ただやわらかに

   そのくちびるに

   敎えてくれた

   うつくしいひとが


   そのうつくしい聲

   敎えてくれた

   ひびきあること

   うつくしいものには


   そのやさしさに

   やさしい聲に

   敎えてくれた

   うつくしいひとが


   そのうつくしい花

   敎えてくれた

   匂いがあること

   うつくしいものには

すなわち淚を。だからその温度を。またはその留保なき破壊を。それは無慚にもただ壊し、くずした。くずし、ゆがめた。ゆがめ、溶かした。そのあふれた視野に、すべての形姿を。あるべき色を。色も形姿も。だから台無しにされた母。なぜ?それはただ赤裸々なけなげさだったから。孤独だった。孤立していたから。孤立していた。なにものにも報われなかったから。報われなかった。なにものにも救われなかったから。巢喰われた。だから、むしろわたしに。彼女だけがわたしにふれた。赦された。その接触を。生きることさえ苦痛だったろう。かの女にはそれが事実だったから。息をするさえ苦痛だったろう。かの女にはそれが事実だったから。貧困。同情。嘲笑。蔭口。無理解。それら、あらゆる棘に苛まれながら、その淚を。わたしはだからその温度を。またはその留保なき破壊を。それは無慚にもただ壊し、崩した。崩し、ゆがめた。ゆがめ、溶かした。そのあふれ出た視野に、すべての形姿は。その母も。あるべき色は。その母も。その色も形姿も。…ねぇ?ね?なぜぼくは鳥たちを殺すの?かさねて謂く、

   うつくしいものには

      花に恥

    ななめに

     ばはっ

   匂いがあること

      恥ぬりたくれ

    そそぐ

     恥ぬりたくれ

   敎えてくれた

      はっ

    ななめの

     鼻。…鼻血。…はっ

   そのうつくしい花


   うつくしいひとが

      花。花。花に

    朝日は

     死ね恥

   敎えてくれた

      突っ込んで

    それはなに?

     ぶちっ、ちっ、ち込んで

   やさしい聲に

      恥。知れ恥

    ななめの

     花。花。花に

   そのやさしさに


   うつくしいものには

      はづかひぃ花たちは

    翳りに

     夢のように咲き

   ひびきあること

      しずかに、そこに

    這われた

     しずかに、そこに

   敎えてくれた

      夢のように咲き

    ななめの

     はづかひぃ花たちは

   そのうつくしい聲


   うつくしいひとが

      花に糞

    翳りに

     ぶはっ

   敎えてくれた

      糞ぬりたくれ

    隠れた

     糞ぬりたくれ

   そのくちびるに

      くっ

    翳りの

     鼻。…鼻糞。…はっ

   ただやわらかに


   うつくしいものには

      花。花。花を

    色彩

     死ぬ恥

   ふれられないこと

      掻き毟り

    それはなに?

     むすぃっ、すぃっ、ずぃりまくって

   敎えてくれた

      恥。知れ恥

    翳りに

     花。花。花を

   そのうつくしい肌


   うつくしいひとが

      はづかずぃ花たちは

    ななめに

     汚点のように咲き

   敎えてくれた

      やさしく、そこに

    まがり

     やさしく、そこに

   そのくちびるに

      汚点のように咲き

    へしおられ

     はづかずぃ花たちは

   ただあたたかに


   うつくしいものでも

      花に美を

    まげられ

     づぃっ

   発熱すること

      美をぬりたくれ

    ななめに

     美をぬりたくれ

   敎えてくれた

      ぢっ

    まがり

     鼻。…花汁。…ずぁっ

   そのうつくしい肉


   うつくしいひとが

      花。花。花を

    息吹くもの

     死に恥

   敎えてくれた

      むしりちぎり

    それはなに?

     つぃっ、ぐぅっ、ぃいぐぃつくして

   その発熱に

      恥。知れ恥

    ななめに

     花。花。花を

   その熱狂に


   轟音のなかに

      はどぅくぁるひぃ花たちは

    ささやかないの?

     過失のように咲き

   はかないだけの

      たわむれに、そこに

    ささ、ささ、すぃしし

     たわむれに、そこに

   綺羅を見ていた

      過失のように咲き

    なに、してる?

     はどぅくぁるひぃ花たちは

   うつくしすぎて


   みなもの月が

      花に蛇を

    ななめの

     づぃっ

   敎えてくれた

      喰いちぎれ

    ななめに

     喰いちぎれ

   うつくしいものが

      ぢっ

    それはなに?

     鼻。…花血。…ずぁっ

   壊れてゆくこと


   その綺羅のゆらぎは

      花。花。花噉い

    まばたかないの?

     死ぬ恥

   敎えてくれた

      咬む咬みちぎり咬む

    まま、んま、んぃんまっ

     つぃっ、ぐぅっ、ぃいぐぃつくして

   うつくしいものが

      ちぎり花咬む

    なに、してる?

     花。花。花噉い

   滅びてゆくこと


   滅びていたこと

      ぶはっるくぁふひぃいぃ花たちは

    なに、してる?

     ずぁっ。きぃんむぃどぅぁっ

   うつくしいものが

      むしゃぶりしゃぶらい、そこに

    まま、んま、んぃんまっ

     みだるるみだら

   敎えてくれた

      ぶはっるくぁふひぃいぃ花たちは

    まばたかないの?

     咲きみだれ

   その綺羅のゆらぎは


   壊れていたこと

      死ぬ恥

    それはなに?

     花。花。花噉い

   うつくしいものが

      つぃっ、ぐぅっ、ぃいぐぃつくして

    ななめに

     咬む咬みちぎり咬む

   敎えてくれた

      花。花。花噉い

    ななめの

     ちぎり花咬む

   みなもの月が


   うつくしすぎて

      づぃっ

    なに、してる?

     花に蛇を

   綺羅を見ていた

      喰いちぎれ

    ささ、ささ、すぃしし

     喰いちぎれ

   はかないだけの

      鼻。…花血。…ずぁっ

    ささやかないの?

     ぢっ

   轟音のなかに


   その熱狂に

      過失のように咲き

    ななめに

     はどぅくぁるひぃ花たちは

   その発熱に

      たわむれに、そこに

    それはなに?

     たわむれに、そこに

   敎えてくれた

      はどぅくぁるひぃ花たちは

    息吹くもの

     過失のように咲き

   うつくしいひとが


   そのうつくしい肉

      死に恥

    まがり

     花。花。花を

   敎えてくれた

      つぃっ、ぐぅっ、ぃいぐぃつくして

    ななめに

     むしりちぎり

   発熱すること

      花。花。花を

    まげられ

     恥。知れ恥

   うつくしいものでも


   ただあたたかに

      づぃっ

    へしおられ

     花に美を

   そのくちびるに

      美をぬりたくれ

    まがり

     美をぬりたくれ

   敎えてくれた

      鼻。…花汁。…ずぁっ

    ななめに

     ぢっ

   うつくしいひとが


   そのうつくしい肌

      汚点のように咲き

    翳りに

     はづかずぃ花たちは

   敎えてくれた

      やさしく、そこに

    それはなに?

     やさしく、そこに

   ふれられないこと

      はづかずぃ花たちは

    色彩

     汚点のように咲き

   うつくしいものには


   ただやわらかに

      死ぬ恥

    翳りの

     花。花。花を

   そのくちびるに

      むすぃっ、すぃっ、ずぃりまくって

    隠れた

     掻き毟り

   敎えてくれた

      花。花。花を

    翳りに

     恥。知れ恥

   うつくしいひとが


   そのうつくしい聲

      ぶはっ

    ななめの

     花に糞

   敎えてくれた

      糞ぬりたくれ

    這われた

     糞ぬりたくれ

   ひびきあること

      鼻。…鼻糞。…はっ

    翳りに

     くっ

   うつくしいものには


   そのやさしさに

      夢のように咲き

    ななめの

     はづかひぃ花たちは

   やさしい聲に

      しずかに、そこに

    それはなに?

     しずかに、そこに

   敎えてくれた

      はづかひぃ花たちは

    朝日は

     夢のように咲き

   うつくしいひとが


   そのうつくしい花

      死ね恥

    ななめの

     花。花。花に

   敎えてくれた

      ぶちっ、ちっ、ち込んで

    そそぐ

     突っ込んで

   匂いがあること

      花。花。花に

    ななめに

     恥。知れ恥

   うつくしいものには

鼻血が垂れた。その沙羅。ふいの、だから頬へのわたしへの殴打に、…なぜ?と。あくまでわたしのまなざしにあったのは呵責?良心の?まさか、嗜虐?間違っても。殘忍なよろこびの殘忍な息吹きなどひとかけらさえも。ただ無防備なまでに赤裸々な違和感。たしかにまなざしに流されていたその鼻血。そんなはずがなかった。沙羅。ほんの、かすった程度にすぎなかった平手打ちに、いくらなんでもふれてもいなかった鼻孔に鼻血など。おののきは、たしかにその違和感のみがわたしのむしろまなざしにだけ、投げつけていたものだった。













Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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