流波 rūpa ……詩と小説135・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈42





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





あるいは、

   ことさらな矜持

   さらしてみた

   ことさらに

   あなたのために


   有名人の知り合い

   特権的な交際

   あなたの虹彩に

   あなたの想いをさがしつづけて


   むしろ自慢げに

   気取ってみせた

   ことさらに

   ひとびとのために


   すれ違うまなざし

   はにかむささやき

   あなたの惑いに

   その傷みをだけ見つけつづけて、ふたりは迂回。楽屋スペースに、…せまい空間。かれら、たむろしていた、だから笑い聲。かれらの。ひとびとの。緩慢な、…迂回。聲。大学生風の男たち。それぞれに楓を返り見、言葉。陽気な?かれら、無責任な?笑い聲。それらを迂回するように楓は、その気もない数言を、…迂回。楓。返り見てかれらの鼻先にふいになにかささやきかけて、…出ようか?言った。わたしに、渋谷に…ね、ね、連れ出した。…出よっか?楓は、わたしだけを。

「あれ、バレてた?」と、かれがそう耳打ちしたいたずらじみた眼差しを見る。だから、そのイベントにあらわれた唐突なうつくしい存在。特出して場違いな、特出した美少年があの≪あす・ゆめ≫の右の方だと、「気づいてるっぽくはなかった…」と、「って、あんま、」答えるをわたしをは「見てない。そういう反応って」

「じゃなくて、」

ふれた。ゆび先。三本。そっと、わたしの背中に。ふと、押すように、…なぜ?そして「いま、おれ、…さ。歌ってるの。シンガー…って、いう、か、っていうそのこと、お前、知ってた?」

聲を立てて笑ったわたしを楓は見つめた。表情もなく。かれの眼の前にみだれるひとりの男の笑い聲のおさまるのを待つ?…そう?かならずしもそうとも想えない曖昧な楓の数秒。だから、わたしを見つめた虹彩。楓。…なぜ?なにも謂わずに、…なぜ?なぜかすぐに、やがて楓は目を逸らした。なんの翳りも…しかもかなしげに?昏みのわずかをさえもそこに…むしろせつなげに?きざしさえしないで。「…知ってる。でも、意外」

楓はなにも答えなかった。ただ、楓は

「ああいうの、お前の好みだったけ?」

こころの表情のないほほ笑みをだけ。

「ぜんぜん、あんな」

「でも、」ふいに楓はささやく。「ブライアン・ウィルソンのファンって、初期のサーフィン系?結構かろんじちゃうじゃない?いま。それこそほんとのブライアンじゃない的な。でも、あれ、本人ああいうのが好きだからああいうのやってたんじゃない?…違う?」

「それ、なんか、すっげぇ難解な答え方だよね」

「あっちに、いい店知ってる。公園通り…じゃっかん、步く。…って、あんま、良くないけど。まあまあ?顏バレしたら、ごめん。さわがしくなるかも」謂く、

   …ここ、敎会

   境界?…協会?

   十字架を見た

   そのエントランスに


   …ここ。好き

   クリスチャン?意外

   笑うきみを見た

   その虹彩に


   昏い綺羅。散り

   身をゆらすから

   わななかすから

   すぐ壊れ、散り


   …建物だけ。好き

   コルビュジェ様式?

   ファザードは

   白くいかつい


   …似合うんだ。雪

   雪?ここで、見たの?

   …しら雪。舞い散る雪

   いつ、雪、見たの?


   きみはつぶやいた

   想像してみた

   想像で見た

   きれいだよ。たぶん


   見てみてみなよ

   雪。雪がちらちら

   ちらちら、雪が

   見てみてみなよ


   きれいだよ。たぶん

   想像で見た

   想像してみた

   きみはつぶやいた


   いつ、雪、見たの?

   …しら雪。舞い散る雪

   雪?ここで、見たの?

   …似合うんだ。雪


   白くいかつい

   ファザードは

   コルビュジェ様式?

   …建物だけ。好き


   すぐ壊れ、散り

   わななかすから

   身をゆらすから

   昏い綺羅。散り


   その虹彩に

   笑うきみを見た

   クリスチャン?意外

   …ここ。好き


   そのエントランスに

   十字架を見た

   境界?…協会?

   …ここ、敎会

すなわち知った。わたしは楓に、たぶん楓も、楓はわたしに、もはやなにも。なにも。なにも。かつての焦燥などなにもなかった、と。憎惡に近いあのせつなさの切迫も。だから知った。たぶん、かつてわたしは楓に焦燥していたのだ。憎しみ、嫌惡し、せきたてられるにもひとしく。しかもかつて、楓。かれはわたしに、そして幻。降るはずもない雪を、その町に春に、雪の色を見ていた。冴えた気配も、冷えた気配も、なにもなく雪。その雪の群れ。いま渋谷にあえて雪が。かさねて謂く、

   …ここ、敎会

      好きだよ。おれ

    まるで、もう、すでに

     おれの音楽

   境界?…協会?

      いまの、おれの、やってる音楽

    亡骸をさらした

     いまの、おれの、やってる音楽

   十字架を見た

      おれの音楽

    殘り滓のように?

     好きだよ。おれ

   そのエントランスに


   …ここ。好き

      変わったね、と

    無防備にせつなく

     ささやきはしない

   クリスチャン?意外

      その楓には

    せつないほどに

     その楓には

   笑うきみを見た

      ささやきはしない

    ただいとしいだけ

     変わったね、と

   その虹彩に


   昏い綺羅。散り

      笑い方、なんか違う、と

    まるで、もう、すでに

     あげつらうだけ

   身をゆらすから

      そのこころには

    台無しにされた

     そのこころには

   わななかすから

      あげつらうだけ

    廃人のように?

     笑い方、なんか違う、と

   すぐ壊れ、散り


   …建物だけ。好き

      暇な時、逢おうよ

    無防備にいとしく

     出られたら、出るよ

   コルビュジェ様式?

      いつでも、…さ。電話して

    いとしいままに

     いつでも、…さ。電話して

   ファサードは

      出れたら、出るよ

    ただ、稀薄なだけ

     暇な時、逢おうよ

   白くいかつい


   …似合うんだ。雪

      変わったね、と

    まるで、もう、すでに

     ささやきはしない

   雪?ここで、見たの?

      その楓には

    燒き盡くされた

     その楓には

   …しら雪。舞い散る雪

      ささやきはしない

    散る灰のように?

     変わったね、と

   いつ、雪、見たの?


   きみはつぶやいた

      話し方、なんか違う、と

    むしろ稀薄に

     あげつらうだけ

   想像してみた

      そのこころには

    許せないほどに

     そのこころには

   想像で見た

      あげつらうだけ

    ただせつないだけ

     話し方、なんか違う、と

   きれいだよ。たぶん


   見てみてみなよ

      地元のやつと逢ったりする?

    やっと、会えたね、…と

     知っていた。もう

   雪。雪がちらちら

      連絡、…とか?してたりする?

    いま、もう傷も痛みも自虐もなくて、…さ

     その楓には

   ちらちら、雪が

      いつ、來たの?…こっち

    やっと、会えたね、…と

     たいした変化はありはしない

   見てみてみなよ


   きれいだよ。たぶん

      あげつらうだけ

    ただせつないだけ

     たいした違いは

   想像で見た

      そのこころには

    許せないほどに

     すこし大人びた?

   想像してみた

      話し方、なんか違う、と

    むしろ稀薄に

     そのくらい。ただ

   きみはつぶやいた


   いつ、雪、見たの?

      ささやきはしない

    散る灰のように?

     変わったね、と

   …しら雪。舞い散る雪

      その楓には

    燒き盡くされた

     その楓には

   雪?ここで、見たの?

      変わったね、と

    まるで、もう、すでに

     ささやきはしない

   …似合うんだ。雪


   白くいかつい

      出れたら、出るよ

    ただ、稀薄なだけ

     暇な時、逢おうよ

   ファサードは

      いつでも、…さ。電話して

    いとしいままに

     いつでも、…さ。電話して

   コルビュジェ様式?

      暇な時、逢おうよ

    無防備にいとしく

     出られたら、出るよ

   …建物だけ。好き


   すぐ壊れ、散り

      あげつらうだけ

    廃人のように?

     笑い方、なんか違う、と

   わななかすから

      そのこころには

    台無しにされた

     そのこころには

   身をゆらすから

      笑い方、なんか違う、と

    まるで、もう、すでに

     あげつらうだけ

   昏い綺羅。散り


   その虹彩に

      ささやきはしない

    ただいとしいだけ

     変わったね、と

   笑うきみを見た

      その楓には

    せつないほどに

     その楓には

   クリスチャン?意外

      変わったね、と

    無防備にせつなく

     ささやきはしない

   …ここ。好き


   そのエントランスに

      おれの音楽

    殘り滓のように?

     好きだよ。おれ

   十字架を見た

      いまの、おれの、やってる音楽

    亡骸をさらした

     いまの、おれの、…どっちのほう?

   境界?…協会?

      好きだよ。おれ

    まるで、もう、すでに

     おれの音楽

   …ここ、敎会

頬。沙羅の頬、耳、頬骨の触感、それらを擦られる頬は感じていた。それら、沙羅のあたえた触感を。絶え間ない沙羅の腰のうごき。その震動にふるえながら、猶もたしかに、猶も赤裸々にケロイド。そしていびつな變形。それら、どうしても肌狎れない触感のむれ。沙羅は匂った。これ以上ない至近に。かれの故意にみだされた息づかいにも、口臭。猫の口のそれに似た、そして体臭。パルメザン・チーズを燒いたに似た、そしてそんな惡臭にもついにはうもれないでいた髮の毛の匂い。しめりけのある、しかも無機的な。どうしようもなく他人ごとの…それら、臭気。













Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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