流波 rūpa ……詩と小説132・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈39





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





あるいは、

   少年たちは

   繊細に巢を

   その巢をつくり

   それはたとえば


   擬態。故意に

   底の割れた噓

   虛僞。あきらかな

   隠しようもない


   秘密。それらが

   繊細を巢を

   その巢をつくり

   それはたとえば


   監獄。わたしの

   かれらの、…だれの?

   隔離施設。少年の

   少年たちの、だから「云って…」と、だから、さ。ね、ね、ね、思い詰めたように?ね?「雅雪…」…ね?と、それは楓。いたぶるように?もう、ふれあいそうなくらいに嘲るように?距離。あやうい至近。そこに楓。綺麗な、綺麗な、綺麗な、見て。…それはその綺麗すぎ、ただ見て。…それはむしろいたましいだけの顏を

   見て。…それは

      孔?その花

近づけて、接近。もっと、

   見て。…それは

      その花、孔?

それは…限りなく

   ひとつだけ、そこに

      冴えた、昏い

もっと、十六歳の…もっと

   ひらいていた花

      青の昏みに

近くへ!まだ

   しろい花

      その花、孔?

かろうじて

   夜明けに殘った

      ふうぅって、さ

十五歳、…の?

   有明の月

      指、入るかな?

楓。気づかなかったふりをする。その≪流沙≫。かれはその楓に。窓際に、かれは、それは≪流沙≫であり得るすべもなかった≪流沙≫。そして流れていたのは音楽。本土の中古盤屋で買い付けて來た。楓が。アナログ盤。ジャケットに本土上陸。傷のある、伝説的なフェリーで上陸。『ロウ』。デヴィッド・ボウイ。オレンジ色。イーノ。アナログ・シンセ。…どうやって、こんな音。…なに?

   見たよ。月が

      櫻。さら

なにこれ?

   燃え上がるきみを

      さらら。…ららっ

これ?

   見てたよ。白い目

      櫻。くらっ

シーケンシャル・サーキット?

   孔のような目

      くらら。…ぐらっ

なに?

   見てたよ。月が

      櫻。とぅらっ

ムーグ?…まさかね。B面。インスト。パンク期のパンクと無緣な、あたたかな手づくりのひびき。八十九年か、九十年。聞いているふり。…た、ふり。それが…て、いる、ふり。≪流沙≫。その。かれの好みであるとは想えない。もっとやさしい音が好きだった。エアチェックの≪流沙≫。親の勝手な貧困の≪流沙≫。好きだった。それら、かれが好きだったのはヘルベルト・フォン・カラヤン。その七十年代の顏。ただ、その顏。なぜかマゼール。そしてレヴァインのマーラー。ブルーノ・ワルター。そのシューベルトだけ。交響曲だけ。そのピアノ・ソナタは嫌い。いたいから。ハイドンのは好き。モーツァルトは嫌い。マーラーは、…ね?マーラー?…ね?交響曲第五番の第三楽章。九番の二、三楽章が好き。回り、回り、文字を色の筋にする。色彩の輪。その、緩慢にターン・テーブルにまわった黒いビニールを、だからその≪流沙≫はひとりで、なに?な、「…なに、云ってるの?」

わたしはささやいていた。だから、楓に。そのふいの顏の過剰な接近に、…誘惑なの?そしてはそれは…愚弄なの?部屋。成功者の楓。の、親たちの家。その島ではいちばん豪華に見えていた部屋。「赦さないって、云ってよ」

そう云った楓の顏には、…あけすけな聲。あきらかな挑発が…あけすけに頬に、あった。ふれた息。「≪流沙≫との…」

「キス」わたしの言葉にかぶせてささやく楓は、それは焦燥?…なのだろうか、と。吹きこぼれそうな笑みを無理やり押さえ、わたしは吹き出しそうな笑みを無理やり押さえ、思っていた。そのときにはわななきはじめそうな笑みを無理やり押さえ、それは楓。すでに、その楓。挑発でも煽情でもなく、楓はいまひとり。そこにひとり。ただ焦燥していると、わたしは。謂く、

   そのまなざし

   楓は、それ

   ふれ、虹彩。まえで

   綺羅。そのまえに、ふれ


   ふれ、ふれあい、ふれ

   そっと、まえで

   そのまえに、ふれ

   虹彩。それ。綺羅


   わたしに、ふれ

   ふれ、ゆびに、ふれ

   虹彩。ゆれ、ふれ

   ふれながら、綺羅


   そのまなざし

   ≪流沙≫は、それ

   ふれ、虹彩。まえで

   綺羅。そのまえに、ふれ


   ふれ、ふれあい、ふれ

   そっと、まえで

   そのまえに、ふれ

   虹彩。それ。綺羅


   楓に、ふれ

   ふれ、ゆびに、ふれ

   虹彩。ゆれ、ふれ

   ふれながら、綺羅


   そのまなざし

   楓は、それ

   ふれ、虹彩。まえで

   綺羅。そのまえに、ふれ


   ふれ、ふれあい、ふれ

   そっと、まえで

   そのまえに、ふれ

   虹彩。それ。綺羅


   ≪流沙≫に、ふれ

   ふれ、ゆびに、ふれ

   虹彩。ゆれ、ふれ

   ふれながら、綺羅


   そのまなざし

   わたしは、それ

   ふれ、虹彩。まえで

   綺羅。そのまえに、ふれ


   ふれ、ふれあい、ふれ

   そっと、まえで

   そのまえに、ふれ

   虹彩。それ。綺羅


   楓に、ふれ

   ふれ、ゆびに、ふれ

   虹彩。ゆれ、ふれ

   ふれながら、綺羅


   そのまなざし

   ≪流沙≫は、それ

   ふれ、虹彩。まえで

   綺羅。そのまえに、ふれ


   ふれ、ふれあい、ふれ

   そっと、まえで

   そのまえに、ふれ

   虹彩。それ。綺羅


   わたしに、ふれ

   ふれ、ゆびに、ふれ

   虹彩。ゆれ、ふれ

   ふれながら、綺羅


   そのまなざし

   わたしは、それ

   ふれ、虹彩。まえで

   綺羅。そのまえに、ふれ


   ふれ、ふれあい、ふれ

   そっと、まえで

   そのまえに、ふれ

   虹彩。それ。綺羅


   ≪流沙≫に、ふれ

   ふれ、ゆびに、ふれ

   虹彩。ゆれ、ふれ

   ふれながら、綺羅


   かさねなかった

   くちびるに

   くちびるは

   穢いじゃん、…ね?


   不潔じゃん、…ね?

   くちびるは

   くちびるに

   かさねなかった


   ふれながら、綺羅

   虹彩。ゆれ、ふれ

   ふれ、ゆびに、ふれ

   ≪流沙≫に、ふれ


   虹彩。それ。綺羅

   そのまえに、ふれ

   そっと、まえで

   ふれ、ふれあい、ふれ


   綺羅。そのまえに、ふれ

   ふれ、虹彩。まえで

   わたしは、それ

   そのまなざし


   ふれながら、綺羅

   虹彩。ゆれ、ふれ

   ふれ、ゆびに、ふれ

   わたしに、ふれ


   虹彩。それ。綺羅

   そのまえに、ふれ

   そっと、まえで

   ふれ、ふれあい、ふれ


   綺羅。そのまえに、ふれ

   ふれ、虹彩。まえで

   ≪流沙≫は、それ

   そのまなざし


   ふれながら、綺羅

   虹彩。ゆれ、ふれ

   ふれ、ゆびに、ふれ

   楓に、ふれ


   虹彩。それ。綺羅

   そのまえに、ふれ

   そっと、まえで

   ふれ、ふれあい、ふれ


   綺羅。そのまえに、ふれ

   ふれ、虹彩。まえで

   わたしは、それ

   そのまなざし


   ふれながら、綺羅

   虹彩。ゆれ、ふれ

   ふれ、ゆびに、ふれ

   ≪流沙≫に、ふれ


   虹彩。それ。綺羅

   そのまえに、ふれ

   そっと、まえで

   ふれ、ふれあい、ふれ


   綺羅。そのまえに、ふれ

   ふれ、虹彩。まえで

   楓は、それ

   そのまなざし


   ふれながら、綺羅

   虹彩。ゆれ、ふれ

   ふれ、ゆびに、ふれ

   楓に、ふれ


   虹彩。それ。綺羅

   そのまえに、ふれ

   そっと、まえで

   ふれ、ふれあい、ふれ


   綺羅。そのまえに、ふれ

   ふれ、虹彩。まえで

   ≪流沙≫は、それ

   そのまなざし


   ふれながら、綺羅

   虹彩。ゆれ、ふれ

   ふれ、ゆびに、ふれ

   わたしに、ふれ


   虹彩。それ。綺羅

   そのまえに、ふれ

   そっと、まえで

   ふれ、ふれあい、ふれ


   綺羅。そのまえに、ふれ

   ふれ、虹彩。まえで

   楓は、それ

   そのまなざし

すなえわちせめて淫らさを擬態した。清潔なくちびる。清潔な息吹き。清潔なまなざし。清潔な肌。清潔なゆびさき。それら、それらに。穢らしい獸。野生の獸。獸の発情。その体液。だからせめて倒錯を擬態した。あなたの目のまえに、あえてかれにふれ、赤裸々に、戀もためらいも赤裸々に、ためらいも焦がれも赤裸々に、焦がれも惑いも怯えさえももう赤裸々に。あなたのそばに。かれの目のまえに、あえてあなたにふれ、赤裸々に、戀もためらいも赤裸々に、ためらいも焦がれも赤裸々に、焦がれも惑いも怯えさえももう赤裸々に。かれのそばに。わたしの目のまえに、あえてあなたにふれ、赤裸々に、戀もためらいも赤裸々に、ためらいも焦がれも赤裸々に、焦がれも惑いも怯えさえももう赤裸々に。わたしのそばに。かれの目のまえに、あえてわたしにふれ、赤裸々に、戀もためらいも赤裸々に、ためらいも焦がれも赤裸々に、焦がれも惑いも怯えさえももう赤裸々に。かれのそばに。わたしの目のまえに、あえてかれにふれ、赤裸々に、戀もためらいも赤裸々に、ためらいも焦がれも赤裸々に、焦がれも惑いも怯えさえももう赤裸々に。わたしのそばに。あなたの目のまえに、あえてわたしにふれ、赤裸々に、戀もためらいも赤裸々に、ためらいも焦がれも赤裸々に、焦がれも惑いも怯えさえももう赤裸々に。あなたのそばに。かさねて謂く、

   そのまなざし

      それは傷み

    ひびき

     するどい牙に

   楓は、それ

      だから甘咬み

    聲は、それは

     だから甘咬み

   ふれ、虹彩。まえで

      するどい牙に

    かすかに笑った

     それは傷み

   綺羅。そのまえに、ふれ


   ふれ、ふれあい、ふれ

      やさしい傷み

    わたしの聲

     ただ、慎重に

   そっと、まえで

      ささやかな甘咬み

    聲。あなたは

     ささやかな甘咬み

   そのまえに、ふれ

      ただ、慎重に

    聲。かれの

     やさしい傷み

   虹彩。それ。綺羅


   わたしに、ふれ

      見せつけて

    聲。かれは

     あなたの恥部を

   ふれ、ゆびに、ふれ

      ね?…ただ

    聲。あなたの

     ね?…ただ

   虹彩。ゆれ、ふれ

      あなたの恥部を

    わたしは聲

     見せつけて

   ふれながら、綺羅


   そのまなざし

      さらして

    かすかに笑った

     あなたの恥辱を

   ≪流沙≫は、それ

      ね?…ただ

    聲は、それは

     ね?…ただ

   ふれ、虹彩。まえで

      あなたの恥辱を

    ひびき

     さらして

   綺羅。そのまえに、ふれ


   ふれ、ふれあい、ふれ

      それは悲しみ

    思い描いた

     鋭利な牙に

   そっと、まえで

      だから甘咬み

    いつも。記憶。その

     だから甘咬み

   そのまえに、ふれ

      鋭利な牙に

    想起には

     それは悲しみ

   虹彩。それ。綺羅


   楓に、ふれ

      せつない傷み

    それは窓

     ただ、慎重に

   ふれ、ゆびに、ふれ

      ほのめかす甘咬み

    たとえば日射し

     ほのめかす甘咬み

   虹彩。ゆれ、ふれ

      ただ、慎重に

    あたたかな

     せつない傷み

   ふれながら、綺羅


   そのまなざし

      見つめてて

    まばたき

     わたしの恥部を

   楓は、それ

      ね?…ただ

    だれが?たとえば、それはあなたが

     ね?…ただ

   ふれ、虹彩。まえで

      わたしの恥部を

    まばたき

     見つめてて

   綺羅。そのまえに、ふれ


   ふれ、ふれあい、ふれ

      さらけだす

    あたたかな

     わたしの恥辱を

   そっと、まえで

      ね?…ただ

    たとえば日射し

     ね?…ただ

   そのまえに、ふれ

      わたしの恥辱を

    それは窓

     さらけだす

   虹彩。それ。綺羅


   ≪流沙≫に、ふれ

      それは傷み

    想起には

     とがらせた牙に

   ふれ、ゆびに、ふれ

      だから甘咬み

    いつも。記憶。その

     だから甘咬み

   虹彩。ゆれ、ふれ

      とがらせた牙に

    思い描いた

     それは傷み

   ふれながら、綺羅


   そのまなざし

      やさしい悲しみ

    ざわめき

     ただ、慎重に

   わたしは、それ

      わずかな甘咬み

    胸は、それは

     わずかな甘咬み

   ふれ、虹彩。まえで

      ただ、慎重に

    かすかな発熱

     やさしい悲しみ

   綺羅。そのまえに、ふれ


   ふれ、ふれあい、ふれ

      見せつけて

    わたしの胸

     あなたの卑猥を

   そっと、まえで

      ね?…ただ

    胸。あなたは

     ね?…ただ

   そのまえに、ふれ

      あなたの卑猥を

    胸。かれの

     見せつけて

   虹彩。それ。綺羅


   楓に、ふれ

      さらして

    胸。かれは

     あなたの愚劣を

   ふれ、ゆびに、ふれ

      ね?…ただ

    胸。あなたの

     ね?…ただ

   虹彩。ゆれ、ふれ

      あなたの愚劣を

    わたしは胸

     さらして

   ふれながら、綺羅


   そのまなざし

      それは悲しみ

    かすかな発熱

     するどい牙に

   ≪流沙≫は、それ

      だから甘咬み

    胸は、それは

     だから甘咬み

   ふれ、虹彩。まえで

      するどい牙に

    ざわめき

     それは悲しみ

   綺羅。そのまえに、ふれ


   ふれ、ふれあい、ふれ

      せつない悲しみ

    思い描いた

     ただ、慎重に

   そっと、まえで

      ほのかな甘咬み

    いつも。記憶。その

     ほのかな甘咬み

   そのまえに、ふれ

      ただ、慎重に

    想起には

     せつない悲しみ

   虹彩。それ。綺羅


   わたしに、ふれ

      見つめてて

    それは光り

     わたしの卑猥を

   ふれ、ゆびに、ふれ

      ね?…ただ

    たとえば朝の

     ね?…ただ

   虹彩。ゆれ、ふれ

      わたしの卑猥を

    さわやかな

     見つめてて

   ふれながら、綺羅


   そのまなざし

      さらけだす

    まばたき

     わたしの愚劣を

   わたしは、それ

      ね?…ただ

    だれが?たとえば、それはかれが

     ね?…ただ

   ふれ、虹彩。まえで

      わたしの愚劣を

    まばたき

     さらけだす

   綺羅。そのまえに、ふれ


   ふれ、ふれあい、ふれ

      泣きそうなんだ

    さわやかな

     しかも、ね?

   そっと、まえで

      実は、ね?

    たとえば朝の

     実は、ね?

   そのまえに、ふれ

      しかも、ね?

    それは光り

     泣きそうなんだ

   虹彩。それ。綺羅


   ≪流沙≫に、ふれ

      泣きそうなんだ

    想起には

     しかも嫉妬

   ふれ、ゆびに、ふれ

      かれも、ね?

    いつも。記憶。その

     やや昏い

   虹彩。ゆれ、ふれ

      あなたも

    思い描いた

     昏く綺羅めき

   ふれながら、綺羅


   かさねなかった

      昏く綺羅めき

    かさなり

     かれが、わたしを

   くちびるに

      やや昏い

    かさね

     わたしが、あなたを

   くちびるは

      しかも嫉妬

    ふれ、たわむれ

     あなたが、かれを

   穢いじゃん、…ね?


   不潔じゃん、…ね?

      しかも嫉妬

    たわむれ、ふれ

     かれが、あなたを

   くちびるは

      やや昏い

    かさね

     あなたが、わたしを

   くちびるに

      昏く綺羅めき

    かさなり

     わたしが、かれを

   かさねなかった


   ふれながら、綺羅

      あなたも

    渇き

     昏く綺羅めき

   虹彩。ゆれ、ふれ

      かれも、ね?

    喉は、それは

     やや昏い

   ふれ、ゆびに、ふれ

      泣きそうなんだ

    かすかに焦がれた

     しかも嫉妬

   ≪流沙≫に、ふれ


   虹彩。それ。綺羅

      しかも、ね?

    わたしの喉

     泣きそうなんだ

   そのまえに、ふれ

      実は、ね?

    喉。あなたは

     実は、ね?

   そっと、まえで

      泣きそうなんだ

    喉。かれの

     しかも、ね?

   ふれ、ふれあい、ふれ


   綺羅。そのまえに、ふれ

      わたしの愚劣を

    喉。かれは

     さらけだす

   ふれ、虹彩。まえで

      ね?…ただ

    喉。あなたの

     ね?…ただ

   わたしは、それ

      さらけだす

    わたしは喉

     わたしの愚劣を

   そのまなざし


   ふれながら、綺羅

      わたしの卑猥を

    かすかに焦がれ

     見つめてて

   虹彩。ゆれ、ふれ

      ね?…ただ

    喉は、それは

     ね?…ただ

   ふれ、ゆびに、ふれ

      見つめてて

    渇き

     わたしの卑猥を

   わたしに、ふれ


   虹彩。それ。綺羅

      ただ、慎重に

    思い描いた

     せつない悲しみ

   そのまえに、ふれ

      ほのかな甘咬み

    いつも。記憶。その

     ほのかな甘咬み

   そっと、まえで

      せつない悲しみ

    想起には

     ただ、慎重に

   ふれ、ふれあい、ふれ


   綺羅。そのまえに、ふれ

      するどい牙に

    それは朝

     それは悲しみ

   ふれ、虹彩。まえで

      だから甘咬み

    たとえば吐息

     だから甘咬み

   ≪流沙≫は、それ

      それは悲しみ

    謎めいた

     するどい牙に

   そのまなざし


   ふれながら、綺羅

      あなたの愚劣を

    まばたき

     さらして

   虹彩。ゆれ、ふれ

      ね?…ただ

    だれが?たとえば、それはわたしが

     ね?…ただ

   ふれ、ゆびに、ふれ

      さらして

    まばたき

     あなたの愚劣を

   楓に、ふれ


   虹彩。それ。綺羅

      あなたの卑猥を

    謎めいた

     見せつけて

   そのまえに、ふれ

      ね?…ただ

    たとえば吐息

     ね?…ただ

   そっと、まえで

      見せつけて

    それは朝

     あなたの卑猥を

   ふれ、ふれあい、ふれ


   綺羅。そのまえに、ふれ

      ただ、慎重に

    想起には

     やさしい悲しみ

   ふれ、虹彩。まえで

      わずかな甘咬み

    いつも。記憶。その

     わずかな甘咬み

   わたしは、それ

      やさしい悲しみ

    思い描いた

     ただ、慎重に

   そのまなざし


   ふれながら、綺羅

      とがらせた牙に

    自傷

     それは傷み

   虹彩。ゆれ、ふれ

      だから甘咬み

    ふれあいは、それは

     だから甘咬み

   ふれ、ゆびに、ふれ

      それは傷み

    慥かな自虐

     とがらせた牙に

   ≪流沙≫に、ふれ


   虹彩。それ。綺羅

      わたしの恥辱を

    わたしのふれあい

     さらけだす

   そのまえに、ふれ

      ね?…ただ

    ふれあい。あなたは

     ね?…ただ

   そっと、まえで

      さらけだす

    ふれあい。かれの

     わたしの恥辱を

   ふれ、ふれあい、ふれ


   綺羅。そのまえに、ふれ

      わたしの恥部を

    ふれあい。かれは

     見つめてて

   ふれ、虹彩。まえで

      ね?…ただ

    ふれあい。あなたの

     ね?…ただ

   楓は、それ

      見つめてて

    わたしはふれあい

     わたしの恥部を

   そのまなざし


   ふれながら、綺羅

      ただ、慎重に

    慥かな自虐

     せつない傷み

   虹彩。ゆれ、ふれ

      ほのめかす甘咬み

    ふれあいは、それは

     ほのめかす甘咬み

   ふれ、ゆびに、ふれ

      せつない傷み

    自傷

     ただ、慎重に

   楓に、ふれ


   虹彩。それ。綺羅

      鋭利な牙に

    思い描いた

     それは悲しみ

   そのまえに、ふれ

      だから甘咬み

    いつも。記憶。その

     だから甘咬み

   そっと、まえで

      それは悲しみ

    想起には

     鋭利な牙に

   ふれ、ふれあい、ふれ


   綺羅。そのまえに、ふれ

      あなたの恥辱を

    それは吐息

     さらして

   ふれ、虹彩。まえで

      ね?…ただ

    たとえば窓越し

     ね?…ただ

   ≪流沙≫は、それ

      さらして

    きよらかな

     あなたの恥辱を

   そのまなざし


   ふれながら、綺羅

      あなたの恥部を

    その風、ひとふき

     見せつけて

   虹彩。ゆれ、ふれ

      ね?…ただ

    そんなふうに

     ね?…ただ

   ふれ、ゆびに、ふれ

      見せつけて

    消滅

     あなたの恥部を

   わたしに、ふれ


   虹彩。それ。綺羅

      ただ、慎重に

    綺羅めき

     やさしい傷み

   そのまえに、ふれ

      ささやかな甘咬み

    だれが?たとえば、それは虹彩。その

     ささやかな甘咬み

   そっと、まえで

      やさしい傷み

    綺羅めき

     ただ、慎重に

   ふれ、ふれあい、ふれ


   綺羅。そのまえに、ふれ

      するどい牙に

    消滅

     それは傷み

   ふれ、虹彩。まえで

      だから甘咬み

    そんなふうに

     だから甘咬み

   楓は、それ

      それは傷み

    その風、ひとふき

     するどい牙に

   そのまなざし

舐めまわすように見つめてまわり、その沙羅がシャワー・ルームのそとで、洗浄したてのわたしの体からひとつ粒殘さず水滴の吹き取られたことを納得するまで、だから、数分が消費された。結局は、いつものように。壁にうしろ向きに手をつかされ、股をひろげて沙羅にさけだしさえしながらも。ようやくバスタオルをわたしから離した沙羅の、そのそばをはなれて照明をつけようとしたときに、なぜか沙羅は拒絶した。それを、あるいは、そうではなかったのかもしれない。いつもと違うその沙羅は、ふいにうしろからわたしにしがみついて、そして、女の子のそれにそうするような、そんな手つきでわたしの乳首をいじった。どこか軽蔑的な、だからせせら笑いを?わたしの背後にしのばせながら。わたしに、じぶんのまだあどけなさのあるそれをこすりつけて。













Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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