流波 rūpa ……詩と小説131・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈38
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
あるいは、
わたしは聞いた
その山の頂きで
その聲たちは
ざわめきたった
孤独なままに
孤立なままに
思わず泣いた
その聲たちを
あなたも聞いた
わたしの前で
嗚咽をもらした
あなたも聞いた
泣いていいよ
悲しいのだから
許せないのだから
もう、すべて壊されて仕舞った山のその頂きには仏塔があった。それがいつの時代のものだったかは知らない。忘れた。たぶん、小学校の時に敎師に敎えられたはずだった。だから忘れたことさえ忘れた。ない。だから正確な記憶など。人の気配も。なにも。しかも音響。さまざまな。遠くの。近くの。足元の。背後の。ななめの、だからひびきあい、ひびく。來ない。観光客たち。好き好んでは。そこにまでは。だから基地、…と?少年たちのいわゆる秘密基地のようなもの。すでに十五歳のそのときのにはすでに放棄されていたそれ。その翳り。そこは、わたし。そして≪流沙≫。そして楓。わたしたちと、基地。そして自生の鹿たちが時に昆虫たち。蟻。訪れるにすぎないだから蟻たち。蠅。忘れられた蠅たち。猫。そんな場所だった。ゆびさきが猫たち。蚊。そこ。はじめて楓のくちびるを知ったのもそこだった。だから≪流沙≫。かれのそれも。その≪流沙≫。かれはその六月、…または五月に、…何歳?そして立ち止まってふと…いつ?息を調え、…はぁっ。…と?笑った。わたしを返り見た瞬間に、そのかれだけが。無防備な聲を好き放題に
喪失。ぼくらは
違うよ
立てて。唇のさき。あかるく、ただ、もう
気づかなかったまま
消えたのは
ひたすらに
喪失。紫陽花は
ぼくら。消したのは
あかるく。…なぜ?
その意識もないまま
紫陽花。消されたのは
だから、それは、しかし
喪失。ぼくらに
違うよ
あくまでもそおのあかるさこそが赦し難い不穏そのものだとでも?いまこの時には。なら、そのとおりすぎた。もうその時の≪流沙≫はむしろすでにとおりすぎた。もういきなり舌をだして花。花たち。花たちの咬みちぎり、咬みちぎって血を失神。失神した花たち。それら吹き出し、血を吹き出しながら自分で色彩。紫陽花。それらの色彩などもう自分の爪を指にとおりすぎた。もう、だからはぎとり、剝ぎ取り血に塗れ、どこにも。それら失神した血にまみれながら花たち。それら紫陽花の泣き叫び、言葉もなく花たち。それら失神のただ絶望の色彩。慟哭を、——そう?
そそそそうです
せめてわたしたちは
そうなの?
そそそうでした
幸福をこそ
それこそがふさわしかったの?わたしもすでに、ただ無造作に笑っていた。聲はかさなった。わたしたちの。だから、頭のうしろのやや下の方に、鳥の…とぅいっとぅいっとっ、と?鳴き合った聲が…とぃんっとぃんっとっ、と?聞こえていた。やがてそれらも羽搏くのだろうか?謂く、
思い出の場所と
呼べば。そこを
なぜ?
こころが不快な汗をかく
傷みなど
羞恥?…背中は
うずき。不快な
執拗な
大切な記憶と
呼べば。そこを
なぜ?
神経がふいに燃え上がる
嫌惡など
自虐?…骨髄は
さむけ。冷えた
不穏な
いらだち
ゆびさき
ふれた。その、あやうい
触感。あきらかに
しかも、かすかに
臆病に
ふれた。それが、あせり
違和感。わからない
愛してる、と?…なに?
求めてる?…なに?
くちびる。しかし
そんなの欲しいんじゃない
知りたくない。なに?
なに、したい?ほしい?
精神?こころ?魂?
やめて。わからない
あえいでたんだ
ほほ笑みながら。ただ
きみだけのため。だから
えづいてたんだ
やめて。わからない
精神?こころ?魂?
なに、したい?ほしい?
知りたくない。なに?
そんなの欲しいんじゃない
くちびる。しかし
求めてる?…なに?
愛してる、と?…なに?
違和感。わからない
ふれた。それが、あせり
臆病に
しかも、かすかに
触感。あきらかに
ふれた。その、あやうい
ゆびさき
いらだち
不穏な
さむけ。冷えた
自虐?…骨髄は
嫌惡など
神経がふいに燃え上がる
なぜ?
呼べば。そこを
大切な記憶と
執拗な
うずき。不快な
羞恥?…背中は
傷みなど
こころが不快な汗をかく
なぜ?
呼べば。そこを
思い出の場所と
すなわち≪流沙≫。あなたは知らないのだ。その≪流沙≫。あの≪流沙≫。この≪流沙≫。どの≪流沙≫?勝手に夢見た妄想の≪流沙≫にも到るすべての≪流沙≫。知らないのだ。振り向きざまにふれた指。そのわたしの指さきにしかも、笑んだただわたしを見つめ≪流沙≫。あなたは知らない。そのかたわらにも逸らされたまなざし。それは楓。あなたは見なかった。わたしのそらされたまなざしを、≪流沙≫。それだけがあなたをほほ笑ませたから。かさねて謂く、
思い出の場所と
なにも、仕組みは
蝶のはばたきは
それはささやき
呼べば。そこを
だから、あっ…
たぶん、ひそかな
だから、あっ…
なぜ?
それはささやき
混乱だから
なにも、仕組みは
こころが不快な汗をかく
傷みなど
傷つけた?
名づけておこう
そのゆびさき。それ
羞恥?…背中は
きみを。だから
それを、わたしと
きみを。だから
うずき。不快な
そのゆびさき。それ
なぜ?…しかも
傷つけた?
執拗な
大切な記憶と
はにかんで、不意
黑。黑。黃色
目をそらしていた
呼べば。そこを
笑んだきみに
白。綺羅。むらさき
笑んだきみに
なぜ?
目をそらしていた
綠り。もも色
はにかんで、不意
神経がふいに燃え上がる
嫌惡など
なにも、仕掛けは
燐光。綺羅り
それはささやき
自虐?…骨髄は
だから、あっ…
とけあい、綺羅り
だから、あっ…
さむけ。冷えた
それはささやき
それぞれ綺羅り
なにも、仕掛けは
不穏な
いらだち
傷つけた?
蛾のはばたきは
その不意打ち。それ
ゆびさき
きみを。だから
たぶん、不穏な
きみを。だから
ふれた。その、あやうい
その不意打ち。それ
混迷だから
傷つけた?
触感。あきらかに
しかも、かすかに
おびえてて、不意
名づけておこう
耳を澄ました
臆病に
笑んだきみに
それを、わたしと
笑んだきみに
ふれた。それが、あせり
耳を澄ました
なぜ?…しかも
おびえてて、不意
違和感。わからない
愛してる、と?…なに?
なにも、企みは
黑。群青。茶色
それはささやき
求めてる?…なに?
だから、あっ…
黑。黃の綺羅。翳り
だから、あっ…
くちびる。しかし
それはささやき
褐色。朱色
なにも、企みは
そんなの欲しいんじゃない
知りたくない。なに?
傷つけた?
燐光。綺羅り
そのためらい。それ
なに、したい?ほしい?
きみを。だから
とけあい、綺羅り
きみを。だから
精神?こころ?魂?
そのためらい。それ
それぞれ綺羅り
傷つけた?
やめて。わからない
あえいでたんだ
おそれてて、不意
蚊のはばたきは
喉を鳴らした
ほほ笑みながら。ただ
笑んだきみに
たぶん、ひそかな
笑んだきみに
きみだけのため。だから
喉を鳴らした
渾沌だから
おそれてて、不意
えづいてたんだ
やめて。わからない
血をながしていた
名づけておこう
裏切りを感じて
精神?こころ?魂?
わたしのゆびは
それを、わたしと
わたしの骨は
なに、したい?ほしい?
そのくちびるにふれ
なぜ?…しかも
裂けていた
知りたくない。なに?
そんなの欲しいんじゃない
喉を鳴らした
黑。黑。黑色
おそれてて、不意
くちびる。しかし
笑んだきみに
綺羅。白濁。ゆらぎ
笑んだきみに
求めてる?…なに?
おそれてて、不意
黑。枯れた黑色
喉を鳴らした
愛してる、と?…なに?
違和感。わからない
そのためらい。それ
生滅。綺羅り
傷つけた?
ふれた。それが、あせり
きみを。だから
とけあい、綺羅り
きみを。だから
臆病に
傷つけた?
それぞれ綺羅り
そのためらい。それ
しかも、かすかに
触感。あきらかに
それはささやき
その虹彩は
なにも、企みは
ふれた。その、あやうい
だから、あっ…
たぶん、あきらかな
だから、あっ…
ゆびさき
なにも、企みは
狂気だから
それはささやき
いらだち
不穏な
耳を澄ました
名づけておこう
おびえてて、不意
さむけ。冷えた
笑んだきみに
それを、わたしと
笑んだきみに
自虐?…骨髄は
おびえてて、不意
なぜ?…しかも
耳を澄ました
嫌惡など
神経がふいに燃え上がる
その不意打ち。それ
見つめ、黑。茶色
傷つけた?
なぜ?
きみを。だから
綺羅。白。散り、琥珀…なに?
きみを。だから
呼べば。そこを
傷つけた?
黑。褐色。あなたは
その不意打ち。それ
大切な記憶と
執拗な
それはささやき
見つめ、綺羅り
なにも、仕掛けは
うずき。不快な
だから、あっ…
揺れ動き、綺羅り
だから、あっ…
羞恥?…背中は
なにも、仕掛けは
わななき、綺羅り
それはささやき
傷みなど
こころが不快な汗をかく
目をそらしていた
なにを、見てたの?
はにかんで、不意
なぜ?
笑んだきみに
十一歳の目
笑んだきみに
呼べば。そこを
はにかんで、不意
なぜ、ゆららぐの?
目をそらしていた
思い出の場所と
沙羅はかたくななまでにその眼を、…なぜ?クィン?フィン?かの女が立ち去ったあとに、わたしの肌を洗い流しながら、だからそのシャワー・ルームで。それは沙羅の仕事だった。だれもいなくなったあとに、わたしを洗浄すること。クィン?フィン?あるいはそれ以外の誰かが來て、そして焦らされるだけ焦らされて帰っていったあとであっても、いつでも。わたしの肌、…かならずしも汗のにじみさえもうかべない、だから、他人の?他人がなすりつけたかもしれない汗または違う体液の匂いを?…見ない。沙羅は、かたくなに肌から眼を逸らしたまま、ゆびに容赦なくさわりまくって。いそがしいクィン?フィン?かの女はほんの数時間しかしない。いつも。だから、まだ夜は淺い。淺いどころか、ようやく昏くなったばかりにすぎない。沙羅がじぶんで飛沫を飛び散らさせながら水滴に、ときにあえぐようにしながら息を吐く。
0コメント