流波 rūpa ……詩と小説129・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈36





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





あるいは、

   予測など

   ふたたび会うと

   予感など

   会えるはずだと


   あなたはあそこに

   壊れて仕舞った

   そう思っていた

   あの夜明けの前に


   期待など

   帰ってくると

   待機など

   そのほほ笑みを


   まがいもの?そこに

   普段のあなたは

   あまりの普通は

   その雨あがりわたしがかれに、あまりに久しぶり見たにもかかわらず、——一か月。例えば二十歳を越えてからはそのくらいなんでもなかったのだが、十五歳のわたしに一か月あまり…たらず?…の、不在はあまり長く、おどろくほどに長く、悲痛なまでに長い、長い不在としてのみあり得…なぜ?あの、…な窓。見下ろした窓のこちらに…なぜ?発見したかれに、…だから歓喜?それでもかれに聲を掛けなかったのは…なぜ?

   乾燥。ここは

      どこ?そこは

だから驚愕?しかも

   潤い。そこは

      しずくの兆し

かれの名を呼ばなかったのは…なぜ?手を振りさえ、しかも確信。そして見ていた。ほとんど身動きもせずに、かれ。≪流沙≫を。だから≪流沙≫。その、こちらをは見上げないかれをだから、盗み見るようにして?だから、來るにちがいないと?それはたぶんゆるぎもない確信。知っていた。違いなかった。その≪流沙≫。かれはそのまま、わたしを尋ねて來るに、ここにしか≪流沙≫。その場所はなく、わたししかいなかった。かれの会うべきひとは。だから…楓は?確信。そして…いつもいた。いつも、楓。事実、そうだった。だから、≪流沙≫。急降下を。わたしはその≪流沙≫。かれが蔦を這わせたアルミの門をひらこうとし…塗料。楓は?色はしろ。そのときにわたしは…蔦。その花は赤。踵をかえして、いつも一緒に。その≪流沙≫の不在の一か月には、

…と、なに?階段を降り、まるで…なぜ?かれをだけ待ち望んでいたかのように。だから唐突に「…なに?」と、その≪流沙≫は

   つっこんじゃおっか?

      ぐばぁっ

云った。開かれた

   あなたが不意に

      ぐふぁっ

玄関。その

   ひらいた口に

      んぐぁっ

逆光に、

   拳を、ふたつ

      ぶぐぁっ

驚きもなく、動揺もなく、むしろ呆気にとられて?…≪流沙≫。すなおなよろこびを?≪流沙≫。顏中に、≪流沙≫。そのこころ。だからその≪流沙≫、くだけてたよ≪流沙≫こころはかれがその手をふれようとしたときにはもう、いきなり内側からこじ開けられて仕舞っていたドア。…えっ?…と、玄関の。…あれっ?…と、「どうしたの?」ささやいた。そのわたしは。開かれたドアの向こうにかれをいまだ見止めなかった時に。たぶん必死に笑みを、そしてやがて、ようやく慥かにまなざしのとらえた昏い≪流沙≫。背後にはいまだ…いまこそ?綺羅。ただの綺羅。完璧な笑み。もう、かれのためにだけつくりあげた、その、ひたすらに完成度をもとめた、そしてそこには傷ついた≪流沙≫。犠牲者の≪流沙≫。そして猟奇的な一家みな殺しの未成年犯罪者の≪流沙≫。あるいは一部始終を目撃さえしてい、知りぬいているはずの殺人者をしかも

   なにも、…ね?

      は?

かたくなに隠しとおしている

   わるくはないんだ

      なに見てんの?

隠蔽の≪流沙≫。不穏な、…なぜ?

   あなたは

      なに見つめてんの?

それらが

   …ね?

      消えて。お願

その時の…だれ?≪流沙≫。見て。笑み、と。あるいは自分の笑みをそこに誇示して?かれに…なぜ?せめてもささげたもの。供物。せめてもの、…だれ?やさしさを与え、せめてもの癒しを…なに?与えてあげるための。だから…いつ?供物。そんな…なぜ?笑み。もしくは、これらあるべき配慮さえなくただ冷淡に?「ごめんね」と、それは≪流沙≫。たぶん、

   ただ空が、…ね?

      は?

そうささやきかけていた

   ふいに昏んだだけなんだ

      なに息してんだよ

≪流沙≫。その

   あなたは

      呼吸してんなよ

言葉をは礙って、

   …ね?

      死んで

——なぜ?わたしは、「…だれも、いない。ここ。いま、」

「お母さんは?」

「パート」ああ…、と、

   ただ鳥たちが、…ね?

      は?

留保なきうざったらしさ。その

   ふいに失神しただけなんだ

      なに生きてんだよ

≪流沙≫。配慮もなく

   あなたは

      存在してんなよ

さらされた

   …ね?

      死ぬわ。——じゃ

ささやかな同情の眼差し。躊躇なく押しつけがましかった。あの母親。苛酷で苛烈で殘酷で冷酷しかもぶざまなだけのあの女如きに≪流沙≫。かれがささげてあげるべきこころのやさしさなどなにもないはずだった。だからただ赦せない、と?

「ちょっと、步こうよ」

わたしは云った。耳にとけ、とろけるしかないささやき。≪流沙≫にはひびき。とくに、こだわりなどなにもささやきその、…なに?ひびここにいようと、どこにひびき。行こうと。だからかれはそっと、逆にわたしをいたわるそんな笑みを、…なぜ?他人ごと。稀薄な、…なぜ?あはっ、と。その笑みをそこにあはっ…と、くれ…なに?くれたのだった。謂く、

   赤裸々なのは

   それはかなしみ

   わたしに、傷み

   ひそめもせず


   かくしようももう、ないから

   あなたは気付く

   すぐにわかる

   だから、ほほ笑む


   こぼれていたのは

   それはいとしみ

   あなたが、いとしい

   おさえもせず


   すでにもう、わかりあってたから

   こころにふれる

   素手でふれあう

   だから、ほほ笑む


   こころの影に

   ゆらぐ息吹きを

   僞造してみた

   気持ちのゆらぎを


   あやういゆらぎを

   その存在を

   仮構してみた

   その虹彩のすぐ前に


   綺羅ら、綺羅

   それぞれは綺羅

   おなじ綺羅めき

   綺羅ら、綺羅


   その虹彩の前に

   仮構してみた

   その存在を

   あやういゆらぎを


   気持ちのゆらぎを

   僞造してみた

   ゆらぐ息吹きを

   こころの影に


   だから、ほほ笑む

   素手でふれあう

   こころにふれる

   すでにもう、わかりあってたから


   おさえもせず

   あなたが、いとしい

   それはいとしみ

   こぼれていたのは


   だから、ほほ笑む

   すぐにわかる

   あなたは気付く

   かくしようももう、ないから


   ひそめもせず

   わたしに、傷み

   それはかなしみ

   赤裸々なのは

すなわち憔悴の翳りを見た。どこに?たとえばかすかな、その虹彩の左右に。…おれは、さ。おれだよ。憔悴の翳りを見た。どこに?たとえばちいさな、額のひとつの吹き出ものに。…おれは、さ。ここだよ。憔悴の翳りを見た。どこに?たとえばにぶい、その鼻の下のあからみに。…大丈夫だよ。おれは、≪流沙≫。まだ生きてるよ。かさねて謂く、

   赤裸々なのは

      泣きそうなんだ

    傷だらけだったんだ

     見止めるだけで

   それはかなしみ

      あなたを、そこに

    こんなにも、と

     あなたを、そこに

   わたしに、傷み

      見止めるだけで

    はじめて気付いた

     泣きそうなんだ

   ひそめもせず


   かくしようももう、ないから

      悲鳴、あげそう

    そのほほ笑みに

     見止めるだけで

   あなたは気付く

      あなたを、そこに

    わたしは、そこに

     あなたを、そこに

   すぐにわかる

      見止めるだけで

    …おれって、さ

     悲鳴、あげそう

   だから、ほほ笑む


   こぼれていたのは

      叫びそうなんだ

    こわれちゃいそうだったんだ

     見止めるだけで

   それはいとしみ

      あなたを、そこに

    こんなにも、と

     あなたを、そこに

   あなたが、いとしい

      見止めるだけで

    はじめて気付いた

     叫びそうなんだ

   おさえもせず


   すでにもう、わかりあってたから

      失神、しそう

    そのほほ笑みに

     砕けてみようか?

   こころにふれる

      あなたと、そこに

    わたしは、そこに

     あなたと、そこに

   素手でふれあう

      砕けてみようか?

    …おれって、さ

     失神、しそう

   だから、ほほ笑む


   こころの影に

      言っていい?

    おびえつづけていたんだね

     会いたかったって

   ゆらぐ息吹きを

      ささやいていい?

    こんなにも、と

     ささやいていい?

   僞造してみた

      会いたかったって

    はじめて気付いた

     言っていい?

   気持ちのゆらぎを


   あやういゆらぎを

      言っていい?

    そのほほ笑みに

     待ってたよって

   その存在を

      ささやいていい?

    わたしは、そこに

     ささやいていい?

   仮構してみた

      待ってたよって

    あなたの笑みに

     言っていい?

   その虹彩のすぐ前に


   綺羅ら、綺羅

      言っていい?

    あなたの笑みに

     想ってたって

   それぞれは綺羅

      ささやいていい?

    わたしは、そこに

     ささやいていい?

   おなじ綺羅めき

      想ってたって

    そのほほ笑みに

     言っていい?

   綺羅ら、綺羅


   その虹彩の前に

      言っていい?

    はじめて気付いた

     信じてたよって

   仮構してみた

      ささやいていい?

    こんなにも、と

     ささやいていい?

   その存在を

      信じてたよって

    おびえつづけていたんだね

     言っていい?

   あやういゆらぎを


   気持ちのゆらぎを

      砕けてみようか?

    …おれって、さ

     失神、しそう

   僞造してみた

      あなたと、そこに

    わたしは、そこに

     あなたと、そこに

   ゆらぐ息吹きを

      失神、しそう

    そのほほ笑みに

     砕けてみようか?

   こころの影に


   だから、ほほ笑む

      見止めるだけで

    はじめて気付いた

     叫びそうなんだ

   素手でふれあう

      あなたを、そこに

    こんなにも、と

     あなたを、そこに

   こころにふれる

      叫びそうなんだ

    こわれちゃいそうだったんだ

     見止めるだけで

   すでにもう、わかりあってたから


   おさえもせず

      見止めるだけで

    …おれって、さ

     悲鳴、あげそう

   あなたが、いとしい

      あなたを、そこに

    わたしは、そこに

     あなたを、そこに

   それはいとしみ

      悲鳴、あげそう

    そのほほ笑みに

     見止めるだけで

   こぼれていたのは


   だから、ほほ笑む

      見止めるだけで

    はじめて気付いた

     泣きそうなんだ

   すぐにわかる

      あなたを、そこに

    こんなにも、と

     あなたを、そこに

   あなたは気付く

      泣きそうなんだ

    傷だらけだったんだ

     見止めるだけで

   かくしようももう、ないから


   ひそめもせず

      なじっていい?

    立ってられない

     愛しているよって

   わたしに、傷み

      せいいっぱい

    砂粒になりそう

     せいいっぱい

   それはかなしみ

      愛しているよって

    もう、ダメになる

     なじっていい?

   赤裸々なのは

窓際に立ったまま、沙羅。その褐色の、しかも逆光にいよいよ濃くそのあざやかな色彩をさらした沙羅は、だからその沈黙をやぶってふと笑った。…なぜ?みじかく、あくまでもその、かの女たちの言語で。













Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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