流波 rūpa ……詩と小説128・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈35
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
あるいは、
殘された≪流沙≫
殘りもの?
あまりもの?
どうしようもないほど
あきらかな笑みを
かれはくれた
約一か月の不在を
感じていないまなざしは
疑惑の≪流沙≫
うたがわしいもの?
そうにちがいないもの?
どうしようもないほど
やさしい目つきを
わたしにさらした
うしろに紫陽花は咲いた
見ないの?…≪流沙≫。それは紫陽花。雨あがりの、だから濡れた花弁。散乱。しかも停滞。それら、水滴は。群がる葉にも。こぼれそうな。しかもこぼれはしない。ふるえそうな。しかもふるえない。ゆらぎ、綺羅。ゆらぐ、またはわたしのほうだけがゆれていただけ。停滞。あくまでも。湿っていた。大気は。そして、だから土も。ふれはしなかった。決して。ただの印象。砂利も。それは六月。ないし五月?いずれにせよふいにわたしのやさしい葉かげりの家を訪れた≪流沙≫を出迎えて、そして山道をのぼった。わたしの家。やさしい母と住んだ。それは宮島の西側。山なす坂の昇り口にあった。気配は澄んだ。だから、樹木。それら、群れ。右側にだけ傾いた繁茂。それらの匂い。香り。ざさっと?石を…ざむっと?ふむ。ざふっと?ふたりに
朝。朝の
耳に、…ね?
言葉はなかった。その
だから、ただ
さがすのだ。ぼくは
わたしたち。しかも
はずかしいくらいにみずみずしい光りが
ノイズのむれ
沈黙していたわけでも。
たとえば朝。そんな光りが
聞こえた気がした
かならずしも
ふさわしかった
きみの息づかいを
なかった。なにも、話されるべくして話されるべき、…なに?ことば。そんなもの、明確な言葉。ことばなど。ふさわしい、あるいはかわされはしていたのだった。すでに言葉。それとなくには。久しぶりと、たとえばそう言えば…と、その基準。久しぶりだったから、…と、その基準はなに?なんだったのだろう?どれほどの秒数をかさねればそれは久しいという形容にふさわしくなるのだろう?時間。お互いのそれぞれにとっての不在の、だからさぐりあい、言葉。…なにを?否応なくさがしあい、…なぜ?言葉。言葉は努力されつづけて、言葉。それら、赤裸々な気遣いの
夜。夜の
頬に、…ね?
むれ。互いの、それぞれ、互いへの。だから
だから、ただ
さがすのだ。ぼくは
喉に、舌に、
いとおしいくらいにやさしい光りが
なにもふれない、それに
歯にふれてくちびるを
たとえば夜。そんな光りが
感じようとした
とおりすぎ、そんな
ふさわしかった
きみの温度を
やさしい言葉は吐かれつつも、しかもまったく聴き取られることのなかった言葉。注意さえ、吐いたさきから須臾にさえ、忘れられたから。言葉。吐いた本人にさえも、そもそももとからありはしなかった、意識など。吐いた言葉。じぶんの、その、それらへの明晰な、だから喉に吐かれたという意識さえも。その認識さえも。知覚さえも。なにも。だから言葉。それら。記憶になどのこりようもなく、だから、それらひびく、ひたすらにひびき、ひびいていた言葉。それぞれのくちびるの先に。
そうなの?
そ、そ、そ
不安だった。なにが?たとえば、いきなり振り返ったまなざしはそこに唐突に自分の眼玉を抉り、その指に抉り取った≪流沙≫を見い出すとでも?たとえば、
ぞうなの?
ぞ、ぞ、ぞ
そんな?もう≪流沙≫。その≪流沙≫。ある意味すべてを失ってしまったばかりの十五歳。孤独の≪流沙≫。かれが普通でいられるはずもないと、…なぜ?わたしは思っていた。かれは…だれ?事実として慥かにすべてをすでに失っていたから。あまりに多くの死。人の死。死の群れ。群がる悲惨、しかも燒けただれた、…を、見て、その目に見い出して仕舞っていたから。大家族の…だった、≪流沙≫。その家族構成は父親。それはひとり。母親。それらは三人。兄と姉の母はすでに死別した。その詳細は知らない。≪流沙≫。その喉に語り得るすべはないから。わたしと≪流沙≫。そのものごころついたまなざしにはすでに遺影。モノクローム。その明暗なじみあいしかも明確な色彩…と、猶もふいに感じられたそれ。…に、於いて、つまらなさそうにほほ笑んでいる人。その映像にすぎなかったから。思い出せない。その顏は。わたしには。だから顏のない遺影。わたしにとっては。いまや。それでも≪流沙≫。かれがまだ≪流沙≫であり得ていたならば、その≪流沙≫は時を隔てたいまにさえも思い出し得るのだろうか?≪流沙≫。そのふたりめの母。つかりはかれと、その妹の母親。かの女について、わたしは知らない。その名前をは。知らない。その聲のひびきも。≪流沙≫。かれはひとつの倫理として、かたくなに三人目。現存した最後の母親をのみ母親として語っていたから。血のつながりのない、かたわらの絵美子。…と、仮りにここでそう呼んでおくその女。生みの母親は離婚していた。…いつ?知らない。だから、たぶんおさない時に。瀬戸内海の綺羅のわずかなむこう、本土のどこかしらに別の家庭をもっている。…と、そう聞いた。噂。あくまでも、他人の口の。だからあくまでも≪流沙≫以外のくちびる。または、かれの家族以外のだれかしらのくちびる。ささやき。聞いた。だからわたしはそう知っていた。たぶん会ったことがない。わたしは…ほんとうに?その女とは。…どんな?物心ついたときには…どんなひと?≪流沙≫。かれらの母親はただ、絵美子ひとりだったにすぎない。その絵美子。かの女と父親の間にできたこどもは三人。妹、弟、妹。最後の妹。それはまだほんの二、三歳だったはずだ。十三歳くらいのときに?云った。その≪流沙≫は、…おれ、ね?最近、さ。ね?おむつの、…おれ、ね?換え方、いちばん、さ。…ね?うまいの、おれなんだ、と。
夕暮の風は
もう、すぐ…ね?
「まじ?…」すごいじゃん…と、それは、だれ?
楓?
あなたにも
昏くなる
「くその役にもたたないよ」わたしか、
それでも猶も
もう、すぐ…ね?
あるいは≪流沙≫。十三の
やさしいだろうか?
日が沈む
≪流沙≫。「女じゃねぇもん」差別的?…惡意。いたいけない冗談。すくなくとも吐くくちびるにはそう企画されていたもの。生き殘ったのはふたりだけ。≪流沙≫を除けば。島で有名な大家族だった、——テレビに出られるんじゃない?
紫陽花の
見ないで
大家族もの?
花の香りは
わたしばかりを
や。…それ。や。
どんな匂い?
見ないで
なんで?
ね?
おびえていた目で
…やだよ。父親と、その時には広島の車の工場に就職していたいちばん上の兄だけ。…だから、五人?六人?父親をここで仮りに洋一郎と名づけておく。洋一郎は実際にはもう普通に考えて再起不能だった。あきらかに。燒け爛れた肉体で、いわば廃人状態であるはずだから、…生きながら?生きながら火を放たれたのだった。かれは。見舞いはしなかった。だからわたしは目視しはしなかった。その惨状。たぶん白い、病室のベッドに。まさか紅蓮?だから、…まさかシャイニー・ピンク?だからその事件。騒がしさ。ひそめ、しかも無造作なひびき。さわぎ。ざわめき。さわぎだち。…と、熱気があった。額のおくにだけ、そこにだけしかし慥かに感じられていたいびつな発熱が、…と、そして不穏。その赤裸々な気配。…の。それらの醒める余地もない一か月。充溢。飽和?そののちのだから紫陽花。それら、それはうすむらさきの散乱。花々のかたわらに、…気づいた?あるいは…≪流沙≫。あたはそのあなたのななめ背後に咲いていた花に。にもかかわらず
その花はなぜ?
ふるえる、…ね?
実質的に事件の
かなしいほどに
花弁はこころの
生存者と謂えたのはただ
はかないのだろう?…むし
あなたのふるえ
≪流沙≫ひとりだった。のちに、
むしろ、大胆なほどに
はかなさは、…ね?
たぶん五年後には
咲き誇っていたのに
花のはかなさはこころの
兄はなぜか大阪府のどこかで入水自殺をとげたのだから。…なぜ?テレビの報道で知った。七時台のニュース?…しかも…だれ?兄は惨劇の場には不在だった。殺すものには殺しようがなかった。すくなくともそのときには。傷めつけるものには傷めようがな、…なに?すくなくともそのときには。破壊するものには破壊しようが…なぜ?すくなくともそのときなにが?≪流沙≫。なにがこわれちゃったの?生き殘りは≪流沙≫。知っていた。だれもが、すでに…だれ?島の?…の、の、のみならず、本土の、の、の、のみならず、九州、四国、北海道、沖縄、その他無数の島、海外赴任者、海外居住者、留学生、それら、日本のニュースを見るものたちのすべては、だれもが≪流沙≫。かれ、と。ただ、かれ。それはかれ。かれだけ、と。あくまでじぶんがしたにすぎない
嗅いだ?…その鼻
破壊だよ
推測を、だれか他人の
肉は燒ける
その目に見たもの
口にした確定であるかのように感じた、そんな
嗅いだ?…その鼻
破壊だよ
錯覚のなかに?それは
髮は燒ける
それはもはや留保なき
≪流沙≫。少年犯罪。やったのは十五歳の少年。それは≪流沙≫、…と。だれもが平凡で凡庸な少年として知るかれ、≪流沙≫。…いい子だったのよ、あの子。かれが…いい子だったのに、あの子。やったに違いない、と。知っていた。わたしは、…いい子だったのよ、あの子。かれが…いい子だったのに、あの子。事件直後、知っていた、生存者保護の名目で警察がかれを連れ去ったことは。だから隔離。幽閉したことは。管理下。察せられた。しかも、観察下。それとない尋問をぶしつけに受けつづけたに違いない。≪流沙≫。かれは、…いい子だったのよ、あの子。かれが…いい子だったのに、あの子。だから不可解だった。雨上がりの窓。それを開けて、そして…なぜ?湿気を滲ませた空気を部屋のなかにあえて
死んだら?…もう
ほら、あめあがりに
入れようとしていたとき、その
望み、ないじゃん
おひさしぶり、って
二階にふいに見えた
死んだら?…もう
ささやきなさい。すてきな
なつかしさ。ななめ下、下の
それしかないじゃん
世界さん。おひさ
道の…木立ち?翳り。…の、脇に、…翳り?ひとり、普通に…白濁。あわい、夕暮れまえの白濁。散乱。步いていた、白濁は散乱。≪流沙≫。かれを見い出したときに、…お散步?≪流沙≫。聲をは…逃亡?≪流沙≫。かけなかった。ただ、…なぜ?…失踪?≪流沙≫。ひまつぶしにぶらぶらする≪流沙≫。かれのそんな日常がそこに見えていただけだった。違和感があった。容赦なく。赤裸々な。その普通さそのもの、それこそが。なら、なに?その時の≪流沙≫。かれにはたとえばどんな?あるいはかれの家に殘存する妹のボールペンのことごとくをその兩目に突き刺しのたうち回りわめきちらし狂気しながら血まみれの≪流沙≫?さ迷いつんのめり転げ回っているこそ…滅びよ!ふさわしいと?それとも…いま、このおれこそあるいは…滅びよ!肛門と尿道に?もしくは鼻孔と耳孔にでも?謂く、
ささやかなかった
その事実をは
厖大な色
いま、さらされて
紫陽花は
ささやかで
だから綺羅
綺羅めきは、そこに
なにもなかった
かなしみは
知り得ないこころ
その目の向こうで
虹彩は
わたしを見つめ
だから綺羅
綺羅めきは、そこに
返り見ていた
そのまなざしは
知り得ない色
あなたのうしろで
紫陽花は
まだあかるくて
だから綺羅
綺羅めきは、そこに
ふるえを見ていた
ささやきかけて
その唇の
気配だけのゆれ
虹彩は
ゆらめきだけ
だから綺羅
綺羅めきは、そこに
敎えなかった
その花が
咲いた事実を
秘密めかした
紫陽花は
水滴をあびて
だから綺羅
綺羅めきは、そこに
もう雨は
消え失せたから
もう雲は
裂け目に綺羅ら
綺羅ら。ささやき
なんで?…と
あなたのささやき
だから、その笑み
わたしは、ふいに
なんで?…と
無視したささやき
かすかな笑みに
なんで?
その笑み
そのささやき
わたしのささやき
なんで?
その笑み
耳に鳴り
すぐ、そばに
そのささやき
あなたのささやき
耳に鳴り
すぐ、そばに
燒かれてゆくよ
崩れもせずに
ゆらぎもせずに
燒けてゆくよ
もうすぐ空は
燃え上がり
あなたのうしろに
見えないそこに
夕焼けは
もうすぐ兆し
紅蓮に染まり
色彩は、そこに
色彩は、そこに
紅蓮に染まり
もうすぐ兆し
夕焼けは
見えないそこに
あなたのうしろに
燃え上がり
もうすぐ空は
燒けてゆくよ
ゆらぎもせずに
崩れもせずに
燒かれてゆくよ
すぐ、そばに
耳に鳴り
あなたのささやき
そのささやき
すぐ、そばに
耳に鳴り
その笑み
なんで?
わたしのささやき
そのささやき
その笑み
なんで?
かすかな笑みに
無視したささやき
なんで?…と
わたしは、ふいに
だから、その笑み
あなたのささやき
なんで?…と
綺羅ら。ささやき
裂け目に綺羅ら
もう雲は
消え失せたから
もう雨は
綺羅めきは、そこに
だから綺羅
水滴をあびて
紫陽花は
秘密めかした
咲いた事実を
その花が
敎えなかった
綺羅めきは、そこに
だから綺羅
ゆらめきだけ
虹彩は
気配だけのゆれ
その唇の
ささやきかけて
ふるえを見ていた
綺羅めきは、そこに
だから綺羅
まだあかるくて
紫陽花は
あなたのうしろで
知り得ない色
そのまなざしは
返り見ていた
綺羅めきは、そこに
だから綺羅
わたしを見つめ
虹彩は
その目の向こうで
知り得ないこころ
かなしみは
なにもなかった
綺羅めきは、そこに
だから綺羅
ささやかで
紫陽花は
いま、さらされて
厖大な色
その事実をは
ささやかなかった
すなわちまさか。須臾にさえも。紫陽花の花たち。その群がりの途方もなさなど見つめはしなかった。須臾にさえも。背景としてただ、霞むだけの色。見つめていた。あなたのまなざし。あなたの頬。あなたの唇。あなたのくちもと。さがそうとした。そこに、見い出されはしない、しかし、見い出すべきもの。あなたは、≪流沙≫。もう壊れてる?すぐ壊れるの?まだ壊れないの?壊れもしないの?きみはどこで、ひとり殘酷に死んでゆくのだろう?かさねて謂く、
ささやかなかった
吐きそう?
気付かなかったふりをしよう
くるしみの血
その事実をは
たとえば
あなたのために
たとえば
厖大な色
くるしみの血
やさしさを以て
吐きそう?
いま、さらされて
紫陽花は
血まみれの血
限りない、やさしさ
沸騰した血
ささやかで
燃え上がる血
やさしさ
燃え上がる血
だから綺羅
沸騰した血
あり得ない、やさしさ
血まみれの血
綺羅めきは、そこに
なにもなかった
吐きそう?
知らなかったふりをしよう
絶望の血
かなしみは
たとえば
あなたのために
たとえば
知り得ないこころ
絶望の血
やさしさを以て
吐きそう?
その目の向こうで
虹彩は
血まみれの血
限りない、やさしさ
沸騰した血
わたしを見つめ
燃え上がる血
やさしさ
燃え上がる血
だから綺羅
沸騰した血
あり得ない、やさしさ
血まみれの血
綺羅めきは、そこに
返り見ていた
吐きそう?
なにもなかったふりをしよう
傷みの血
そのまなざしは
たとえば
あなたのために
たとえば
知り得ない色
傷みの血
やさしさを以て
吐きそう?
あなたのうしろで
紫陽花は
血まみれの血
限りない、やさしさ
沸騰した血
まだあかるくて
燃え上がる血
やさしさ
燃え上がる血
だから綺羅
沸騰した血
あり得ない、やさしさ
血まみれの血
綺羅めきは、そこに
ふるえを見ていた
吐きそう?
あり得なかったふりをしよう
嫌惡の血
ささやきかけて
たとえば
あなたのために
たとえば
その唇の
嫌惡の血
やさしさを以て
吐きそう?
気配だけのゆれ
虹彩は
血まみれの血
限りない、やさしさ
沸騰した血
ゆらめきだけ
燃え上がる血
やさしさ
燃え上がる血
だから綺羅
沸騰した血
あり得ない、やさしさ
血まみれの血
綺羅めきは、そこに
敎えなかった
吐きそう?
傷みでしかない
それとも
その花が
恍惚の血
やさしさを以て
恍惚の血
咲いた事実を
それとも
その目の前で
吐きそう?
秘密めかした
紫陽花は
血まみれの血
限りない、やさしさ
沸騰した血
水滴をあびて
燃え上がる血
やさしさ
燃え上がる血
だから綺羅
沸騰した血
あり得ない、やさしさ
血まみれの血
綺羅めきは、そこに
もう雨は
吐きそう?
違和感しかない
歓喜の血
消え失せたから
それとも
やさしさを以て
それとも
もう雲は
歓喜の血
その目の前で
吐きそう?
裂け目に綺羅ら
綺羅ら。ささやき
血まみれの血
限りない、やさしさ
なんで?…と
沸騰した血
やさしさ
沸騰した血
あなたのささやき
あり得ない、やさしさ
血まみれの血
だから、その笑み
わたしは、ふいに
吐きそう?
限りない、やさしさ
充実の血
なんで?…と
それとも
やさしさ
それとも
無視したささやき
充実の血
あり得ない、やさしさ
吐きそう?
かすかな笑みに
なんで?
血まみれの血
恥ずかしさしかない
沸騰した血
その笑み
燃え上がる血
やさしさを以て
燃え上がる血
そのささやき
沸騰した血
その目の前で
血まみれの血
わたしのささやき
なんで?
吐きそう?
限りない、やさしさ
快感の血
その笑み
それとも
やさしさ
それとも
耳に鳴り
快感の血
あり得ない、やさしさ
吐きそう?
すぐ、そばに
そのささやき
血まみれの血
虹彩のために
燃え上がる血
あなたのささやき
沸騰した血
あなたのために
沸騰した血
耳に鳴り
燃え上がる血
なにもさらさない
血まみれの血
すぐ、そばに
燒かれてゆくよ
吐きそう?
虹彩のために
悔恨の血
崩れもせずに
それは
あなたのために
それは
ゆらぎもせずに
悔恨の血
なにも見い出さない
吐きそう?
燒けてゆくよ
もうすぐ空は
血まみれの血
虹彩以外は
沸騰した血
燃え上がり
燃え上がる血
やさしさを以て
燃え上がる血
あなたのうしろに
沸騰した血
その目の前で
血まみれの血
見えないそこに
夕焼けは
吐きそう?
限りない、やさしさ
自裁の血
もうすぐ兆し
それは
やさしさ
それは
紅蓮に染まり
自裁の血
あり得ない、やさしさ
吐きそう?
色彩は、そこに
色彩は、そこに
沸騰した血
その目の前で
血まみれの血
紅蓮に染まり
燃え上がる血
やさしさを以て
燃え上がる血
もうすぐ兆し
血まみれの血
あなた以外は
沸騰した血
夕焼けは
見えないそこに
自裁の血
なにも見い出さない
それは
あなたのうしろに
吐きそう?
あなたのために
吐きそう?
燃え上がり
それは
虹彩のために
自裁の血
もうすぐ空は
燒けてゆくよ
沸騰した血
なにもさらさない
血まみれの血
ゆらぎもせずに
燃え上がる血
あなたのために
燃え上がる血
崩れもせずに
血まみれの血
虹彩のために
沸騰した血
燒かれてゆくよ
すぐ、そばに
悔恨の血
あり得ない、やさしさ
吐きそう?
耳に鳴り
それは
やさしさ
それは
あなたのささやき
吐きそう?
限りない、やさしさ
悔恨の血
そのささやき
すぐ、そばに
沸騰した血
その目の前で
血まみれの血
耳に鳴り
燃え上がる血
やさしさを以て
燃え上がる血
その笑み
血まみれの血
恥ずかしさしかない
沸騰した血
なんで?
わたしのささやき
快感の血
あり得ない、やさしさ
吐きそう?
そのささやき
それとも
やさしさ
それとも
その笑み
吐きそう?
限りない、やさしさ
快感の血
なんで?
かすかな笑みに
沸騰した血
その目の前で
血まみれの血
無視したささやき
燃え上がる血
やさしさを以て
燃え上がる血
なんで?…と
血まみれの血
違和感しかない
沸騰した血
わたしは、ふいに
だから、その笑み
充実の血
あり得ない、やさしさ
それとも
あなたのささやき
吐きそう?
やさしさ
吐きそう?
なんで?…と
それとも
限りない、やさしさ
充実の血
綺羅ら。ささやき
裂け目に綺羅ら
沸騰した血
その目の前で
血まみれの血
もう雲は
燃え上がる血
やさしさを以て
燃え上がる血
消え失せたから
血まみれの血
傷みでしかない
沸騰した血
もう雨は
綺羅めきは、そこに
歓喜の血
あり得ない、やさしさ
吐きそう?
だから綺羅
それとも
やさしさ
それとも
水滴をあびて
吐きそう?
限りない、やさしさ
歓喜の血
紫陽花は
秘密めかした
沸騰した血
やさしさを以て
血まみれの血
咲いた事実を
燃え上がる血
あなたのために
燃え上がる血
その花が
血まみれの血
あり得なかったふりをしよう
沸騰した血
敎えなかった
綺羅めきは、そこに
恍惚の血
あり得ない、やさしさ
吐きそう?
だから綺羅
それとも
やさしさ
それとも
ゆらめきだけ
吐きそう?
限りない、やさしさ
恍惚の血
虹彩は
気配だけのゆれ
沸騰した血
やさしさを以て
血まみれの血
その唇の
燃え上がる血
あなたのために
燃え上がる血
ささやきかけて
血まみれの血
なにもなかったふりをしよう
沸騰した血
ふるえを見ていた
綺羅めきは、そこに
嫌惡の血
あり得ない、やさしさ
吐きそう?
だから綺羅
たとえば
やさしさ
たとえば
まだあかるくて
吐きそう?
限りない、やさしさ
嫌惡の血
紫陽花は
あなたのうしろで
沸騰した血
やさしさを以て
血まみれの血
知り得ない色
燃え上がる血
あなたのために
燃え上がる血
そのまなざしは
血まみれの血
知らなかったふりをしよう
沸騰した血
返り見ていた
綺羅めきは、そこに
傷みの血
あり得ない、やさしさ
吐きそう?
だから綺羅
たとえば
やさしさ
たとえば
わたしを見つめ
吐きそう?
限りない、やさしさ
傷みの血
虹彩は
その目の向こうで
沸騰した血
やさしさを以て
血まみれの血
知り得ないこころ
燃え上がる血
あなたのために
燃え上がる血
かなしみは
血まみれの血
気付かなかったふりをしよう
沸騰した血
なにもなかった
綺羅めきは、そこに
絶望の血
失語にすぎない
吐きそう?
だから綺羅
たとえば
ささやきを
たとえば
ささやかで
吐きそう?
あなたにささげた
絶望の血
紫陽花は
いま、さらされて
沸騰した血
もうすぐ空の
血まみれの血
厖大な色
燃え上がる血
燒けるころ
燃え上がる血
その事実をは
血まみれの血
紫陽花の花の、花の向かいで
沸騰した血
ささやかなかった
「すき、…」と。だからそのクィン?フィン?かの女はいちども。わたしに、好きとは。まして愛しているとも。しかもすでにひらききった瞳孔に殊更にもその事実をだけあばきたてて仕舞っていながら。そして死者たち。それら、死者たち。あの、とどめようもなく死者たち。それら、閉じた瞼のこちらにさえも見い出されつづけた死者たち。知っている。それら、ささやき。死者たち。孔ひらき、ひらかれた孔に陥没して仕舞いながら無数に孔ひらき、死者たち。それらがしかも猶もささやきつづけ、くち走りつづけていた事実をは。それら、決して聴き取りようのない言葉のむれ。死者ら。喉などもはや、あるいは最初から存在しなかったにもかかわずそれら、死者たち。それら、知っていた。見い出しつづけていることは。…なにを?だからクィン?フィン?かの女がふと耳もとに、…だれ?わたしの耳もとにささやいて死者たち。それら「なに?…」聞き取れなかった。だから、…な、死者たち。それらなにを?もはや、あるいは最初から眼窩さえもなかたったままに死者たち。それら、なにを?
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