流波 rūpa ……詩と小説126・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈33
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
あるいは、
燃え上がるきみを
見ていた。淚?
そんな、淚など
なにを、見た?その
燃える目は
焰。煽られた目は
その櫻。焰の上は
燃え上がる色ら
燃える白は
清冽な白。その色は
その櫻。焰をなした
冴えわたる色ら
燃え上がるきみは
見ていた。なにを?
そこで、その目は
見開き、なにを?…だからまばたきもせずに見ている。だれが?たしかに、わたしは。その楓。自分一人で燃え上がる楓。櫻の咲き乱れ、…乱れ?むしろ静謐。静寂の横溢。充溢の無音。楓。その下、じぶんでひとり、目隠しをしたかれ。…なぜ?見たくない?もう、なにも。なにを?拒絶して?なにを?そのまなざしに。その目隠しの布。引き裂いたTシャツ。だから黑。いつも黑。九鬼も黑。ふたりは黑。黑ずくめの黑。だから、見えない。その生地にいたずら書きしたウィンクする眼は。その明け方に。明けの寸前に。その三月。自分で自分にガソリンを浴びた。…なぜ?なぜ、なぜ、なぜ?楓。そんな、他人のもの眞似を。自分で手首を、しかも縛って。後ろ手に。…なぜ?なず、なず、なず?分かっていたはずなのに。その結果など。だれよりも。そこに≪流沙≫はいなかった。わたしの目の前には。だから、わたしはただ、「いいよ。…ね?」見ていた。楓を。「好きにして、いいよ」楓だけを。「赦してあげる。もう」わたしがかれを、≪流沙≫を、「もう、…ね?」そして楓も「好きにしていいよ」≪流沙≫をおいてけぼりに、——泣いてるの?
「なんで?」
焰はね
痛いから
「見せないの?…なんで≪流沙≫には。この、」
その
ふれないでください
冴えたまなざし。たぶん
かたちもあかさず
こわ
楓は、しかも
「最期を?」だからその目隠しの下に。最後に、すくなくともその肉体は楓でありえていた最期の、最終的な数秒に「最期。ただ、燒き盡される、…最後の」
「だから、なんで?」
匂いの散乱。花?むしろ、あくまでもおびただしいガソリンの臭気。
「見せたい?」ささやく。
焰はね
こわれるから
つぶやいていた。なぜ、
その
ちかづかないでください
こんなことを?…と。わたしは
色彩もあかさず
いた
動揺していながらも「雅雪は、あいつに」…ね?
「見せたくないの?」
さびしそうに?それは淡い、もはや見て取れないほどのほほ笑み。頬は、
「かわいそうじゃない」そう、ややあって、ふとつぶやき、「…あいつ、泣いちゃうよ。見たら」言い終わらないうちにライターをつけた。なぜか、いまだに慣れない指先で。だから、焰。いきなりの、すでに、爆発的に、赤裸々に、無造作に、謂く、
夜の明けには
明け切ったあとは
冴えた青。まだ
昏らい青に
沈まずに、月
浮かぶのだろう。その光り
西に、月
しろい、停滞
空に低い
孔のように
ふと、ひらき
しろいひらき
なにも、なにも
吐き出しは
なにも、なにも
吸い込みは
そこに、ひたすらに
月。しろく、ひらき
夢の擬態?
まぼろしの擬態?
まだ見えないよ
見えるはず、ない
まだ、明けないよ
いまだ夜だよ
恥じらいもない
孔のように
ふと、ひらき
しろいひらき
なにも、なにも
吐き出しは
なにも、なにも
吸い込みは
そこに、ひたすらに
月。しろく、ひらき
夢の擬態?
まぼろしの擬態?
わたしは夢、と?
あくまでも、しかも
幻、と?
そこに慥かに
そこに有り
その実在を
さらし、剝き出し
赤裸々に有り
泣いていい?
泣いちゃいそうだ
ただ、悲しいんだ
叫んでいい?
赤裸々に有り
さらし、剝き出し
その実在を
そこに有り
そこに慥かに
幻、と?
あくまでも、しかも
わたしは夢、と?
まぼろしの擬態?
夢の擬態?
月。しろく、ひらき
そこに、ひたすらに
吸い込みは
なにも、なにも
吐き出しは
なにも、なにも
しろいひらき
ふと、ひらき
孔のように
恥じらいもない
いまだ夜だよ
まだ、明けないよ
見えるはず、ない
まだ見えないよ
まぼろしの擬態?
夢の擬態?
月。しろく、ひらき
そこに、ひたすらに
吸い込みは
なにも、なにも
吐き出しは
なにも、なにも
しろいひらき
ふと、ひらき
孔のように
空に低い
しろい、停滞
西に、月
浮かぶのだろう。その光り
沈まずに、月
昏らい青に
冴えた青。まだ
明け切ったあとは
夜の明けには
すなわち「秘密にしよう」と。そうささやく。…だれ?…なぜ?「だって、さ…なんか」と。そうささやく。あかるい聲で。あえて「いたましいじゃん。…楓が。だから、」陽気な聲で。なぜ?こころはもう、壊れていたから。≪流沙≫。その目隠しを解いてあげたあとで。≪流沙≫。その後ろ手の拘束を解いてあげたあとで。≪流沙≫。その耳元に。…わたしは、しかし、知らない。その顏。≪流沙≫。そのさらされていた、至近に。すぐちかくに青い、やさしい夜の昏みのなかに、ちかい、しかも明確なもの。それは顏。≪流沙≫の顏。見つめていた。その≪流沙≫を。知らない。その顏。その目の色。その頬の息吹き。その眉のかたち。不在の…なに?≪流沙≫。昏い…だれ?≪流沙≫。忘れ…なぜ?忘れたから?見ていなかった?ただ、その≪流沙≫だけを見つめていたのに。ガソリンの焰が燃え盡きたあとに。燒けた肉がもう、うがかなくなったそのころに。燒けた異臭にさいなまれながら。救急車をもう、「…行こう」呼んだあとで。かさねて謂く、
夜の明けには
ひらく。ひらき
おののいてなど
ひらいた
明け切ったあとは
その口
おびえてなど
その口
冴えた青。まだ
ひらいた
おそれてなど
ひらく。ひらき
昏らい青に
沈まずに、月
叫ばなかった
なに?…なにを?
なぜ?
浮かぶのだろう。その光り
なにも
≪流沙≫。あなたは
なにも
西に、月
なぜ?
なに?…なにを?
叫ばなかった
しろい、停滞
空に低い
ゆらぐ。ゆらぎ
かなしんでなど
ゆらいだ
孔のように
焰ら
いかりくるいも
焰ら
ふと、ひらき
ゆらいだ
にくしみさえも
ゆらぐ。ゆらぎ
しろいひらき
なにも、なにも
わめかなかった
同じだ。≪流沙≫
なぜ?
吐き出しは
なにも
楓のように
なにも
なにも、なにも
なぜ?
黑い目隠し
わめかなかった
吸い込みは
そこに、ひたすらに
ひらく。ひらき
同じだ。≪流沙≫
ひらいた
月。しろく、ひらき
その口
楓のように
その口
夢の擬態?
ひらいた
黑い拘束
ひらく。ひらき
まぼろしの擬態?
まだ見えないよ
すいこむのだった
見えない…見えない
なぜ?
見えるはず、ない
焰?
見え、…なにも?
焰?
まだ、明けないよ
なぜ?
見えない…見えない
すいこむのだった
いまだ夜だよ
恥じらいもない
ゆらぐ。ゆらぎ
わたしの背後に
ゆらいだ
孔のように
焰ら
目隠しされて
焰ら
ふと、ひらき
ゆらいだ
≪流沙≫…あなたは
ゆらぐ。ゆらぎ
しろいひらき
なにも、なにも
のけぞるのだった
楓の腕に
なぜ?
吐き出しは
腰から
縛り上げられ
腰から
なにも、なにも
なぜ?
≪流沙≫…その腕を
のけぞるのだった
吸い込みは
そこに、ひたすらに
ひらく。ひらき
そこで、たしかに
ひらいた
月。しろく、ひらき
その口
身もだえしていて
その口
夢の擬態?
ひらいた
も掻きさえ、体
ひらく。ひらき
まぼろしの擬態?
わたしは夢、と?
ブリッジを描いた
その体。のけぞり、あがき
なぜ?
あくまでも、しかも
焰は
苦しいの?…≪流沙≫
焰は
幻、と?
なぜ?
そのこころ。傷み、むせ返り
ブリッジを描いた
そこに慥かに
そこに有り
ゆらぐ。ゆらぎ
いいよ。…ね
ゆらいだ
その実在を
焰ら
泣いてもいい
焰ら
さらし、剝き出し
ゆらいだ
叫んでもいい
ゆらぐ。ゆらぎ
赤裸々に有り
泣いていい?
痙攣していたのだった
もう、燃えてたから
それら
泣いちゃいそうだ
焰ら
焰たち。ゆらぎ
焰ら
ただ、悲しいんだ
それら
もう、燃えてたから
痙攣していたのだった
叫んでいい?
赤裸々に有り
それら
叫んでもいい
痙攣していたのだった
さらし、剝き出し
焰ら
泣いてもいい
焰ら
その実在を
痙攣していたのだった
いいよ。…ね
それら
そこに有り
そこに慥かに
ゆらいだ
そのこころ。傷み、むせ返り
ゆらぐ。ゆらぎ
幻、と?
焰ら
苦しいの?…≪流沙≫
焰ら
あくまでも、しかも
ゆらぐ。ゆらぎ
その体。のけぞり、あがき
ゆらいだ
わたしは夢、と?
まぼろしの擬態?
なぜ?
も掻きさえ、体
ブリッジを描いた
夢の擬態?
焰は
身もだえしていて
焰は
月。しろく、ひらき
ブリッジを描いた
そこで、たしかに
なぜ?
そこに、ひたすらに
吸い込みは
ひらいた
≪流沙≫…その腕を
ひらく。ひらき
なにも、なにも
その口
縛り上げられ
その口
吐き出しは
ひらく。ひらき
楓の腕に
ひらいた
なにも、なにも
しろいひらき
なぜ?
≪流沙≫…あなたは
のけぞるのだった
ふと、ひらき
腰から
目隠しされて
腰から
孔のように
のけぞるのだった
わたしの背後に
なぜ?
恥じらいもない
いまだ夜だよ
ゆらいだ
見えない…見えない
ゆらぐ。ゆらぎ
まだ、明けないよ
焰ら
見え、…なにも?
焰ら
見えるはず、ない
ゆらぐ。ゆらぎ
見えない…見えない
ゆらいだ
まだ見えないよ
まぼろしの擬態?
なぜ?
黑い拘束
すいこむのだった
夢の擬態?
焰?
楓のように
焰?
月。しろく、ひらき
すいこむのだった
同じだ。≪流沙≫
なぜ?
そこに、ひたすらに
吸い込みは
ひらいた
黑い目隠し
ひらく。ひらき
なにも、なにも
その口
楓のように
その口
吐き出しは
ひらく。ひらき
同じだ。≪流沙≫
ひらいた
なにも、なにも
しろいひらき
なぜ?
にくしみさえも
わめかなかった
ふと、ひらき
なにも
いかりくるいも
なにも
孔のように
わめかなかった
かなしんでなど
なぜ?
空に低い
しろい、停滞
ゆらいだ
なに?…なにを?
ゆらぐ。ゆらぎ
西に、月
焰ら
≪流沙≫。あなたは
焰ら
浮かぶのだろう。その光り
ゆらぐ。ゆらぎ
なに?…なにを?
ゆらいだ
沈まずに、月
昏らい青に
なぜ?
おそれてなど
叫ばなかった
冴えた青。まだ
なにも
おびえてなど
なにも
明け切ったあとは
叫ばなかった
おののいてなど
なぜ?
夜の明けには
夢、見てた?と、「ちがう、よ」頸を振るまえにクィン?フィン?かの女はわれに返ってわたしに答え、そして「見てないよ」頸を橫にようやく振かけて「見蕩れてただけだよ」笑った。わたしも、だからそのクィン?フィン?かの女をかたわらの沙羅。その沙羅のそばでせめても孤立させないでおくために。「雅雪さんに、」
「なぜ?」
いたずらじみたわたしに、クィン?フィン?かの女はそれでもなんとか答えようとし、だからその須臾の懊悩、そして、ふたたびかの女はひとりで笑った。
0コメント