流波 rūpa ……詩と小説122・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈29
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
あるいは、
鳥たち。翼を
手に入れ、それは
凶器。あるいは
狂気。翼は
獸たち。牙を
手に入れ、それは
凶器。あるいは
狂気。牙は
猨たち。焰を
手に入れ、それは
凶器。あるいは
狂気。焰は
目覚めた獸たち。言葉を
手に入れ、それは
凶器。あるいは
狂気。だから瑠璃。その聲。耳障りの惡い、しかもことさらに惡い聲。低すぎるざらつき。聲。もしも楓が、あるいは九鬼蘭。かれらが聞いたなら?その聲を。聲。とくに蘭。九鬼。その顏とのあざやかな対称。ただひらすら辛辣な九鬼。嗜虐的。自虐的なまでに嗜だからただ、瞼のかたむきにだけせせら笑い、そして吐いたに違いない。息。鼻に嘲笑の息を、聲のない、…なに?息。その意味。たとえば——お前、それでも「人間なの?」と。だ
見て。それは
ばばばっと
だから、その
赤裸々なイノチ
そのひびきもなく
瑠璃はそう
朝燒けの鳥
飛び交って、いま
つぶやいた。もはや機材の集合。そうかつてそれを呼んでいたのは楓。可憐なままに青年を擬態した楓。二十一歳?たしか。それら、接続。生命維持のために。だから接続。さまざまな機器。接続。繫がれ、繫ぎとめられ…現世?…と、だれかにも時に呼ばれたものに?人工肺?人工心臓?なに?脈打ち。その規則正しい脈打ちの…作動中。機械音のかたわらに…イノチ。イノチ。イノチ。きみの
まなざしは、なぜ
あっ…ね?
イノチ、そこに
やさしくゆらぎか
しずく、落ち
作動中。橫たわっていた…稼働中。九鬼蘭。その
おびえていたの?
いま。そこに、ぴ
生体。
ゆらぎかけ
ぴちょんっ
「じゃなかったら、なに?」
「せめて人様に最低限の気遣いくらいしなさいよって、…さ」それは「…ね、」瑠璃の「そう想ったりしない?これ」聲。ささやくに似た、しかしわめくに近い音量。ようするにただぶしつけな、赤裸々にぶしつけな、なぜか気取りのある聲。笑った?「このひと、一応は悲劇のカリスマなんでしょ?」
笑ってる?そこで
どんなふうに
笑い方、を、さ
「こうなってからだよ。そんなふうに謂われはじめたの、…」
わたしのうしろで。その
笑えばいいかな?
教えてくれない?
「そりゃ、さ、」
翳りで。と、立ち去っていた。一応は立ち会っていたナース。ふたり。殘っていたそのひとりさえ。場違いな?瑠璃その不穏さ。聲がけもなくふたりはすがたを消し、実際、「しかたないけどさ。…でも、さ」なにもなかった。ナースに、「自殺するにしてもなんにしても」もう、その年増のほうの「…って、あくまで」こ慣れたナースには「未遂、か?…あくまでも」そこにいるべき用など「でも、こう、死体…とか?片付けるひとたち、さ」そこにるべき必然など「そういうひとも、いるわけじゃん?そういう、さ。…だから、」なにも「…なに?」なかった。「迷惑?そういうのに、なんか、…さ。こころ傷まないもん?」
「迷惑じゃない死体ってあるの?」
「謂えてる」
だからそれは≪流沙≫。≪流沙≫をすでに≪流沙≫にして仕舞っていたその≪流沙≫。それが瑠璃のハイドンのレーベルからひっそりと発売されて数週間たったころだったが、だから、たしか九十九年。たぶん今年世界は滅びるだろう。しかし
燃え上がる空
音盤にまだ
空!空!空!
反応らしい反応も、まだ
燃え上がる鳥
滅びるはずもないけれど、
鳥!鳥!鳥!
反響らしい反響もなにも、たぶん世界は
燃え上がる海
滅びるだろう。なにも
海!瀛!膿みびちゃっ
なかったころ。ふと思い付きの見舞い。それは瑠璃。その提案者は瑠璃。たぶん返り見さえすればそこに眉間を翳らしているひと。その瑠璃自身が。
「來なきゃ、よかった」
笑ってた?その瑠璃は、ほんのすこしのもの思わしげな沈黙のあとに、せせら笑ってた?だって…悩まし気に瑠璃はその聲。いま、笑ってる?ささやいていた。気配。瑠璃はたぶん、まなざしをもたげて、わたしをようやくその虹彩に見かけ、見切りはしないその曖昧。顎の、のけぞりかけの根元。気配。それら気配。かなしそうに?あるいは、気配。それら痛ましげにことさらにくもらせた口元。わずかに、「必要?わたし、」すこし、気配。それらわずかにだけ「ここに、」ふるわせて。笑ってた?「わたし、」九鬼。せせら笑ってた?「必要なの?」自分で
「なんで?」
「…だって、さ」
がんばって
燃えながら飛ぶ
自分に火を放って、九鬼。蘭。九鬼もう
「なに?」
「わからない?だって」
負けないで
その鳥は
数か月も、一年近くたって
「言えよ。さっさと」
「もう、…なんか」
信じて。未来
なにを見ていたのだろう?
九鬼。蘭。九鬼。かれはすでに
「まだるっこしくない?それとも」
「まだ、生きてんだよね?こんな」
願って。しあわせ
燃えながら駆ける
ケロイドもなにも完全に
「それ、性格?」
「こんなになっても」
がんばって
その獸は
その九鬼。蘭。九鬼。本来の肉体そのものであったかにも
「やめてね。そういうの」
「なんで、まだ生きてられるの?なんか」
負けないで
なにを見ていたのだろう?
定着させ切りはじめて、九鬼。蘭。九鬼。しかも
「うざいから」
「逆にみんなつらくないの?」
感じて。息吹き
水没しながらもがく
すでに見慣れたわたしの眼差しには、もう
「だれ?」
「本人も、…さ」
見つめて。光り
こどもは
九鬼。蘭。九鬼。わずかの驚きも
「意志なんてない。意識自体」
「もとアイドルとかじゃなかった?」
がんばって
ゆらぐ月
いたましさも
「じゃねぇよ」
「殘酷じゃん」
負けないで
無数の月ら
違和感さえも九鬼。蘭。九鬼。なにもなかった。もとから
「一応、お前といっしょで、アーティス…」
「これ、」
走りだせ。いま!
無数の綺羅ら
これこそが九鬼。蘭。九鬼。これだけが
「…ん?」
「ご家族の意志。…なの?」
「家族なんか、いない」なぜだっただろう?そう云って…ささやき。笑ったわたしの…ささやき。笑いの意味は。あるいは、そのあくまでも繊細な、ささやき。必然は。…なに?契機は。…な「じゃ、だれ?…これ。こういう、維持?なに?維持費?こういうのだって、さ。金、さ。そうとう、さ。かかっ…さ。かかってないの?」
「おれ」
「あんた?…あんたなの?雅雪なの?」
それ、なに?
足?なに?
「いまは、おれが金、はらってる。もとは≪流沙≫が…かれも、はらってたよ」
「あんたの意志?これ、」
手?なに?
それ、なに?
「惡い?」
「極惡。あんた、むしろ極惡すぎ。なんか、」知っている。わたしは「恨みであるの?」ふるえ。自分が…わななき。むしろ悲痛そのものを描いたゆがみに眉間も鼻孔も顎も顏中をさえも震わせていたことは。知っている。もう、わたしの顏は泣き出して仕舞いそうだった。瑠璃は、だからまさにそんな橫顏を見ていたはずだった。その、ななめうしろで。「ごめんね」と、つぶやく。瑠璃は、「ごめん」と、「もう、なにも云わない」謂く、
夢。繰り返し見た
それは夢。夢は
描く。そこに壁。壁に
光り。ななめに光り
息吹く。イノチ
生きているから
死ねもしないから
息吹く。その朝も
たぶん朝だから
それは朝。そう、だれかが
呼んだ。だれもにそう呼ばれた
それは朝。醒めながら
夢。繰り返し見た
それは夢。夢は
描く。そこに壁。壁に
翳り。雪崩れた翳り
息吹く。イノチ
生きているから
死ねもしないから
息吹く。その朝も
たぶん朝だから
それは朝。そう、だれかが
呼んだ。だれもにそう呼ばれた
それは朝。醒めながら
夢。繰り返し見た
それは夢。夢は
描く。そこに壁。壁に
色彩。充溢した白
色彩。散乱のピンク
色彩。稀れにブルー
色彩。なに?地味な
その色の名は、なに?
白い壁
世界のすべて
すべての世界
壁は白
その色の名は、なに?
色彩。なに?地味な
色彩。稀れにブルー
色彩。散乱のピンク
色彩。充溢した白
描く。そこに壁。壁に
それは夢。夢は
夢。繰り返し見た
それは朝。醒めながら
呼んだ。だれもにそう呼ばれた
それは朝。そう、だれかが
たぶん朝だから
息吹く。その朝も
死ねもしないから
生きているから
息吹く。イノチ
翳り。雪崩れた翳り
描く。そこに壁。壁に
それは夢。夢は
夢。繰り返し見た
それは朝。醒めながら
呼んだ。だれもにそう呼ばれた
それは朝。そう、だれかが
たぶん朝だから
息吹く。その朝も
死ねもしないから
生きているから
息吹く。イノチ
光り。ななめに光り
描く。そこに壁。壁に
それは夢。夢は
夢。繰り返し見た
だれ?…だれですか?
そこに息吹くそれ
息吹いていたそれ
それ、…だれですか?
夢。その夢。夢を
夢を語ろうか?
醒めながら、しかも
醒めながら見ていた
夢。繰り返し見た
それは夢。夢は
知っていた。それは
妹。そう呼んだ
なぜ?…滅びそうだから
なぜ?…ひ弱だから
なぜ?…滅びるしかないから
なぜ?…それは
滅びそうで
壊れそうで
せつなくて、しかも
引き裂かれてしまったそれ
それについて名づけられた言葉
妹と。その響きとは
なにも、あくまでただの惜別の言葉
性別などもう
なにもないときに
かたちなどもう
なにもないとき
ともに息吹き
ともに息づき
ひとりだけ滅び
滅ぼされたもの
それは妹
切り離され、傷み
痛みなど、なにも
切り裂かれ、傷み
わずかにも、なにも
…押しつぶしてしまうから
わたしと仮りに、仮りに
ここでそう、そう呼ぶものは
そのわたしは
…生きられないから
妹と仮りに、仮りにそう呼び
ここでそう、そう呼ぶものは
その妹は
ずぶといくらいに
息づいた塊り
息づかうかたち
わたしは生きた
骨格切断
筋肉切断
内臓分離
引きはがし
妹の滅び
わたしのイノチ
息づかうイノチ
わたしは生きた
生き生きと
無慈悲なくらいに
泣き叫ぶべき?
生き生きと
わたしは生きた
息づかうイノチ
わたしのイノチ
妹の滅び
引きはがし
内臓分離
筋肉切断
骨格切断
わたしは生きた
息づかうかたち
息づいた塊り
ずぶといくらいに
その妹は
ここでそう、そう呼ぶものは
妹と仮りに、仮りにそう呼び
…生きられないから
そのわたしは
ここでそう、そう呼ぶものは
わたしと仮りに、仮りに
…押しつぶしてしまうから
わずかにも、なにも
切り裂かれ、傷み
痛みなど、なにも
切り離され、傷み
それは妹
滅ぼされたもの
ひとりだけ滅び
ともに息づき
ともに息吹き
なにもないとき
かたちなどもう
なにもないときに
性別などもう
なにも、あくまでただの惜別の言葉
妹と。その響きとは
それについて名づけられた言葉
引き裂かれてしまったそれ
せつなくて、しかも
壊れそうで
滅びそうで
なぜ?…それは
なぜ?…滅びるしかないから
なぜ?…ひ弱だから
なぜ?…滅びそうだから
妹。そう呼んだ
知っていた。それは
それは夢。夢は
夢。繰り返し見た
醒めながら見ていた
醒めながら、しかも
夢を語ろうか?
夢。その夢。夢を
なぜだろう?なぜ絶叫を聞かないのだろう?
耳などないから
口さえないから
なぜだろう?なぜ絶叫だけが響くのだろう?
夢。その夢。夢を
夢を語ろうか?
醒めながら、しかも
醒めながら見ていた
夢。繰り返し見た
それは夢。夢は
見ていた。醒めたまま
眠らないまま
眠りなど…それに
瞼もないのに?
まどろみなど…それに
意識もないのに?
痛みなど…それに
理解されない神経の叫び
かなしみなど…それに
理解されない感情のわめき
それはわたし
そう知った。夢。その
夢。夢のなかに
たしかに、夢に
夢を見た
夢を見ていた
醒めながら、猶も
醒めつづけながら
醒めていながら
醒めながら、猶も
夢を見ていた
夢を見た
たしかに、夢に
夢。夢のなかに
そう知った。夢。その
それはわたし
理解されない感情のわめき
かなしみなど…それに
理解されない神経の叫び
痛みなど…それに
意識もないのに?
まどろみなど…それに
瞼もないのに?
眠りなど…それに
眠らないまま
見ていた。醒めたまま
それは夢。夢は
夢。繰り返し見た
醒めながら見ていた
醒めながら、しかも
夢を語ろうか?
夢。その夢。夢を
…ここで、絶望など語らなかった
ね?…これはただ、ただ、むしろ救済
それは夢。夢は
夢。繰り返し見た
すなわち想像してみて。こう想像して、こんなふうに、それでこう想像してみて。それは指。あくまでも指という名。その名をつぶやく口が燃え盡きた。それはなに?あえて謂えば、それは畸形。前例のない生き生きしていた、それは息吹き。それはイノチ。…という名。その名をつぶやく口が燃え盡きた。それはなに?あえて謂えば、それは畸形。前例のない畸形は、そこに息遣う。想像してみて。こう想像して、こんなふうに、それでこう想像してみて。そこは例えば病室の中。隔離され、生き延びるために整備され、制御しようとした、そんな清潔な病室。だから色彩たち。それら色彩たち。さまざま、白。色とりどりの、白とりどりの、さまざまな白。白い病室に夢を見る。その畸形。手と呼ばれた手などない。足と呼ばれた足などない。口と呼ばれた口などない。鼻と呼ばれた鼻などない。目と呼ばれた目などない。虹彩と呼ばれた虹彩などない。頸と呼ばれた頸などない。頭部と呼ばれた頭部などない。肉体と呼ばれた肉体などない。あえて謂えば、だから畸形。前例のない畸形は、そこに息遣う。そこに夢見る。醒めながら。醒めきりながら、かさねて謂く、
夢。繰り返し見た
恐怖から。せめて
聞いていたんだ
赤裸々なその恐怖だけから
それは夢。夢は
はじめておこうよ
聞き続けていたんだ
はじめておこうよ
描く。そこに壁。壁に
赤裸々なその恐怖だけから
…なに?
恐怖から。せめて
光り。ななめに光り
息吹く。イノチ
前例のない
赤裸々な悲鳴
恐怖。ただ、恐怖
生きているから
前例のなさに
…なぜ?
前例のなさに
死ねもしないから
恐怖。ただ、恐怖
容赦ない叫び
前例のない
息吹く。その朝も
たぶん朝だから
絶叫から。せめて
たぶんね、わたしは
恐るべきその絶叫だけから
それは朝。そう、だれかが
はじめておこうよ
わたしは悲鳴
はじめておこうよ
呼んだ。だれもにそう呼ばれた
恐るべきその絶叫だけから
前例もない
絶叫から。せめて
それは朝。醒めながら
夢。繰り返し見た
赤裸々な
たぶんね、かの女は
絶叫。ただ、絶叫
それは夢。夢は
赤裸々さに
かの女は悲鳴
赤裸々さに
描く。そこに壁。壁に
絶叫。ただ、絶叫
前例もない
赤裸々な
翳り。雪崩れた翳り
息吹く。イノチ
心配しないで
妹と、ここで
てめぇもうすでに
生きているから
壊れねぇから
その息吹き
壊れねぇから
死ねもしないから
てめぇもうすでに
そう呼んでおくもの
心配しないで
息吹く。その朝も
たぶん朝だから
壊れてんじゃん?
妹と、ここで
まじクソじゃんマジ
それは朝。そう、だれかが
あたまもねぇじゃん?
その息づき
あたまもねぇじゃん?
呼んだ。だれもにそう呼ばれた
まじクソじゃんマジ
そう呼んでおくもの
壊れてんじゃん?
それは朝。醒めながら
夢。繰り返し見た
こわれそうだね
たぶんね、わたしは
いたましいよね
それは夢。夢は
ふるえていたよ
わたしは叫び
ふるえているよ
描く。そこに壁。壁に
いたましいよね
前例もない
こわれそうだね
色彩。充溢した白
色彩。散乱のピンク
ふるえているよ
たぶんね、かの女は
泣きたいくらい
色彩。稀れにブルー
ふるえていたよ
かの女は叫び
ふるえているよ
色彩。なに?地味な
泣きたいくらい
前例もない
ふるえていたよ
その色の名は、なに?
白い壁
ノイズの群れ。群れ
あんたは?
うるせークソまじ
世界のすべて
やべぇーまじクソ
オメェは?
ノイズのむ
すべての世界
クソやべぇーまじ響きわたって
てめぇは?
うるさくね?クソ満たされて
壁は白
その色の名は、なに?
泣きたいくらい
前例もない
ふるえていたよ
色彩。なに?地味な
いたましいよね
かの女は叫び
いたましいよね
色彩。稀れにブルー
ふるえているよ
たぶんね、かの女は
泣きたいくらい
色彩。散乱のピンク
色彩。充溢した白
ふるえていたよ
前例もない
こわれそうだね
描く。そこに壁。壁に
ふるえているよ
わたしは叫び
ふるえていたよ
それは夢。夢は
こわれそうだね
たぶんね、わたしは
ふるえているよ
夢。繰り返し見た
それは朝。醒めながら
まじクソじゃんマジ
そう呼んでおくもの
壊れてんじゃん?
呼んだ。だれもにそう呼ばれた
あたまもねぇじゃん?
その息づき
あたまもねぇじゃん?
それは朝。そう、だれかが
壊れてんじゃん?
妹と、ここで
まじクソじゃんマジ
たぶん朝だから
息吹く。その朝も
てめぇもうすでに
そう呼んでおくもの
心配しないで
死ねもしないから
壊れねぇから
その息吹き
壊れねぇから
生きているから
心配しないで
妹と、ここで
てめぇもうすでに
息吹く。イノチ
翳り。雪崩れた翳り
絶叫。ただ、絶叫
前例もない
赤裸々な
描く。そこに壁。壁に
赤裸々さに
かの女は悲鳴
赤裸々さに
それは夢。夢は
赤裸々な
たぶんね、かの女は
絶叫。ただ、絶叫
夢。繰り返し見た
それは朝。醒めながら
恐るべきその絶叫だけから
前例もない
絶叫から。せめて
呼んだ。だれもにそう呼ばれた
はじめておこうよ
わたしは悲鳴
はじめておこうよ
それは朝。そう、だれかが
絶叫から。せめて
たぶんね、わたしは
恐るべきその絶叫だけから
たぶん朝だから
息吹く。その朝も
恐怖。ただ、恐怖
容赦ない叫び
前例のない
死ねもしないから
前例のなさに
…なぜ?
前例のなさに
生きているから
前例のない
赤裸々な悲鳴
恐怖。ただ、恐怖
息吹く。イノチ
光り。ななめに光り
赤裸々なその恐怖だけから
…なに?
恐怖から。せめて
描く。そこに壁。壁に
はじめておこうよ
聞き続けていたんだ
はじめておこうよ
それは夢。夢は
恐怖から。せめて
聞いていたんだ
赤裸々なその恐怖だけから
夢。繰り返し見た
だれ?…だれですか?
暴力?
てめぇは?
苛酷?
そこに息吹くそれ
救済。むしろ
オメェは?
むしろ救済
息吹いていたそれ
破壊?
あんたは?
絶望?
それ、…だれですか?
夢。その夢。夢を
イノチと、しかも
聞いてごらん
仮りそう呼び、呼び捨てたそれら
夢を語ろうか?
それらイノチら、綺羅
そのこども
それらイノチら、綺羅
醒めながら、しかも
仮りそう呼び、呼び捨てたそれら
こども?
イノチと、しかも
醒めながら見ていた
夢。繰り返し見た
一度もなかった
なに?
なかった。一瞬でさえ
それは夢。夢は
わたしがわたしであったことなど
そのこどもたち
わたしがわたしであったことなど
知っていた。それは
なかった。一瞬でさえ
こどもたち?
一度もなかった
妹。そう呼んだ
なぜ?…滅びそうだから
息吹く
聲。その
イノチら綺羅ら
なぜ?…ひ弱だから
息吹き、ほら
聲のように息吹き
息吹き、ほら
なぜ?…滅びるしかないから
イノチら綺羅ら
息吹き。その
息吹く
なぜ?…それは
滅びそうで
一度もなかった
聲。その
あなたがあなたであったことなど
壊れそうで
なかった。一瞬でさえ
聲のように息吹き
なかった。一瞬でさえ
せつなくて、しかも
あなたがあなたであったことなど
息吹き。その
一度もなかった
引き裂かれてしまったそれ
それについて名づけられた言葉
息吹く
息吹きのように
イノチら綺羅ら
妹と。その響きとは
息吹き、ほら
聲。その
息吹き、ほら
なにも、あくまでただの惜別の言葉
イノチら綺羅ら
ささやき
息吹く
性別などもう
なにもないときに
一度もなかった
見てごらん
その鳥がその鳥であったことなど
かたちなどもう
なかった。一瞬でさえ
そのいきもの
なかった。一瞬でさえ
なにもないとき
その鳥がその鳥であったことなど
いきもの?
一度もなかった
ともに息吹き
ともに息づき
息吹く
かたち。その
イノチら綺羅ら
ひとりだけ滅び
息吹き、ほら
かたちのように色づき
息吹き、ほら
滅ぼされたもの
イノチら綺羅ら
色づき。その
息吹く
それは妹
切り離され、傷み
一度もなかった
色づきのように
その屍がその屍であったことなど
痛みなど、なにも
なかった。一瞬でさえ
かたち。その
なかった。一瞬でさえ
切り裂かれ、傷み
その屍がその屍であったことなど
きらめき
一度もなかった
わずかにも、なにも
…押しつぶしてしまうから
息吹く
ふれてごらん
イノチら綺羅ら
わたしと仮りに、仮りに
息吹き、ほら
その…なに?
息吹き、ほら
ここでそう、そう呼ぶものは
イノチら綺羅ら
そこに、息づかうひびき
息吹く
そのわたしは
…生きられないから
一度もなかった
その畸形
その虹がその虹であったことなど
妹と仮りに、仮りにそう呼び
なかった。一瞬でさえも
かれとかれ
なかった。一瞬でさえも
ここでそう、そう呼ぶものは
その虹がその虹であったことなど
または
一度もなかった
その妹は
ずぶといくらいに
息吹く
その畸形
イノチら綺羅ら
息づいた塊り
息吹き、ほら
かれとかのじょ
息吹き、ほら
息づかうかたち
イノチら綺羅ら
または
息吹く
わたしは生きた
骨格切断
一度もなかった
その畸形
光りと翳りがたわむれたことなど
筋肉切断
なかった。一瞬でさえも
かのじょとかのじょ
なかった。一瞬でさえも
内臓分離
光りと翳りがたわむれたことなど
または
一度もなかった
引きはがし
妹の滅び
息吹く
そんなものじゃなく
イノチら綺羅ら
わたしのイノチ
息吹き、ほら
もっと、もっと
息吹き、ほら
息づかうイノチ
イノチら綺羅ら
すばらしいもの
息吹く
わたしは生きた
生き生きと
その踏みつぶされそうな蛆の
いまだかつてあり得なかったもの
千回死んで、繰り返し更に、更に死のうか?
無慈悲なくらいに
その幸福のためだけに死んでみようか?
ただ、稀有なもの
その幸福のためだけに死んでみようか?
泣き叫ぶべき?
千回死んで、繰り返し更に、更に死のうか?
前例などなにもありえないもの
その踏みつぶされそうな蛆の
生き生きと
わたしは生きた
その引き裂かれたプラナリアの
ひとつのままに
千回死んで、繰り返し更に、更に死のうか?
息づかうイノチ
そのしあわせのためだけに死んでみようか?
ふたつの息吹き
そのしあわせのためだけに死んでみようか?
わたしのイノチ
千回死んで、繰り返し更に、更に死のうか?
ふたつのままに
その引き裂かれたプラナリアの
妹の滅び
引きはがし
二度と返り見られなかった雄の蚊の
ひとつのうごめき
千回死んで、繰り返し更に、更に死のうか?
内臓分離
そのうつくしさのためだけに死んでみようか?
ひとつのままに
そのうつくしさのためだけに死んでみようか?
筋肉切断
千回死んで、繰り返し更に、更に死のうか?
ふたつの頸すじ
叩きつぶされた雌の蚊の
骨格切断
わたしは生きた
イノチら綺羅ら
ふたつのままに
息吹く
息づかうかたち
息吹き、ほら
ひとつの心臓
息吹き、ほら
息づいた塊り
息吹く
ほら
イノチら綺羅ら
ずぶといくらいに
その妹は
なにも失われはしなかった
イノチをさらし
あり得なかった。一瞬でさえ
ここでそう、そう呼ぶものは
一度もなかった
イノチをきざし
一度もなかった
妹と仮りに、仮りにそう呼び
あり得なかった。一瞬でさえ
イノチを剝きだし
なにも失われはしなかった
…生きられないから
そのわたしは
イノチら綺羅ら
もうひとつ
息吹く
ここでそう、そう呼ぶものは
息吹き、ほら
なににもならない
息吹き、ほら
わたしと仮りに、仮りに
息吹く
過剰なそれ
イノチら綺羅ら
…押しつぶしてしまうから
わずかにも、なにも
なにも滅びはしなかった
名づけられない
あり得なかった。一瞬でさえ
切り裂かれ、傷み
一度もなかった
余剰のそれ
一度もなかった
痛みなど、なにも
あり得なかった。一瞬でさえ
だから、みっつ?
なにも滅びはしなかった
切り離され、傷み
それは妹
イノチら綺羅ら
だれ?…ささやいて
息吹く
滅ぼされたもの
息吹き、ほら
ささやきあって
息吹き、ほら
ひとりだけ滅び
息吹く
ささやいて、…どれ?
イノチら綺羅ら
ともに息づき
ともに息吹き
なにも壊れはしなかった
そのきざし
あり得なかった。一瞬でさえ
なにもないとき
一度もなかった
永遠の
一度もなかった
かたちなどもう
あり得なかった。一瞬でさえ
果ても無い転生。その
なにも壊れはしなかった
なにもないときに
性別などもう
イノチら綺羅ら
永遠の
息吹く
なにも、あくまでただの惜別の言葉
息吹き、ほら
限りもない輪廻。その
息吹き、ほら
妹と。その響きとは
息吹く
永遠の
イノチら綺羅ら
それについて名づけられた言葉
引き裂かれてしまったそれ
なにも生まれはしなかった
そのどこか
あり得なかった。一瞬でさえ
せつなくて、しかも
一度もなかった
その須臾のどれか
一度もなかった
壊れそうで
あり得なかった。一瞬でさえ
その綺羅のいつか
なにも生まれはしなかった
滅びそうで
なぜ?…それは
イノチら綺羅ら
だれ?…ささやいて
息吹く
なぜ?…滅びるしかないから
息吹き、ほら
ささやきあって
息吹き、ほら
なぜ?…ひ弱だから
息吹く
ささやいて、…それ
イノチら綺羅ら
なぜ?…滅びそうだから
妹。そう呼んだ
なにも目覚めはしなかった
たぶん
あり得なかった。一瞬でさえ
知っていた。それは
一度もなかった
内側に感じていた…ね?
一度もなかった
それは夢。夢は
あり得なかった。一瞬でさえ
その息吹き
なにも目覚めはしなかった
夢。繰り返し見た
醒めながら見ていた
イノチら綺羅ら
たぶん
息吹く
醒めながら、しかも
息吹き、ほら
かさなり、感じていた…ね?
息吹き、ほら
夢を語ろうか?
息吹く
その聲も
イノチら綺羅ら
夢。その夢。夢を
なぜだろう?なぜ絶叫を聞かないのだろう?
なにも眠りはしなかった
永遠。それは
あり得なかった。一瞬でさえ
耳などないから
一度もなかった
須臾。それは
一度もなかった
口さえないから
あり得なかった。一瞬でさえ
永遠。それは
なにも眠りはしなかった
なぜだろう?なぜ絶叫だけが響くのだろう?
夢。その夢。夢を
息吹く
知らない。しずく
イノチら綺羅ら
夢を語ろうか?
息吹き、ほら
しずくなど。頬に
息吹き、ほら
醒めながら、しかも
イノチら綺羅ら
ふれたことない
息吹く
醒めながら見ていた
夢。繰り返し見た
吹き込む
ふれたことないから
のけぞりかえって
それは夢。夢は
吹き込み
知らない。焰
吹き込み
見ていた。醒めたまま
のけぞりかえって
焰など。頬に
吹き込む
眠らないまま
眠りなど…それに
息吹く
ふれたことない
イノチら綺羅ら
瞼もないのに?
息吹き、ほら
ふれたことないから
息吹き、ほら
まどろみなど…それに
イノチら綺羅ら
知らない。飛沫
息吹く
意識もないのに?
痛みなど…それに
吹き込む
飛沫など。頬に
のたうちまわって
理解されない神経の叫び
吹き込み
ふれたことない
吹き込み
かなしみなど…それに
のたうちまわって
ふれたことないから
吹き込む
理解されない感情のわめき
それはわたし
息吹く
知らない。砂粒
イノチら綺羅ら
そう知った。夢。その
息吹き、ほら
砂粒など。頬に
息吹き、ほら
夢。夢のなかに
イノチら綺羅ら
ふれたことない
息吹く
たしかに、夢に
夢を見た
吹き込む
ふれたことないから
もだえさえして
夢を見ていた
吹き込み
知らない。波紋
吹き込み
醒めながら、猶も
もだえさえして
波紋など。頬に
吹き込む
醒めつづけながら
醒めていながら
全世界を千回救ってみようか
ふれたことない
全人類を数限りなく救ってみようか
醒めながら、猶も
ね?…じゃない?
ふれたことないから
ね?…じゃない?
夢を見ていた
全人類を千回救ってみようか
知らない。風
全世界を数限りなく救ってみようか
夢を見た
たしかに、夢に
もだえさえして
風など。頬に
吹き込む
夢。夢のなかに
吹き込み
ふれたことない
吹き込み
そう知った。夢。その
吹き込む
ふれたことないから
もだえさえして
それはわたし
理解されない感情のわめき
イノチら綺羅ら
知らない。波立ち
息吹く
かなしみなど…それに
息吹き、ほら
波立ちなど。頬に
息吹き、ほら
理解されない神経の叫び
息吹く
ふれたことない
イノチら綺羅ら
痛みなど…それに
意識もないのに?
のたうちまわって
ふれたことないから
吹き込む
まどろみなど…それに
吹き込み
知らない。日射し
吹き込み
瞼もないのに?
吹き込む
日射しなど。頬に
のたうちまわって
眠りなど…それに
眠らないまま
イノチら綺羅ら
ふれたことない
息吹く
見ていた。醒めたまま
息吹き、ほら
ふれたことないから
息吹き、ほら
それは夢。夢は
息吹く
知らない。淚
イノチら綺羅ら
夢。繰り返し見た
醒めながら見ていた
のけぞりかえって
淚など。頬に
吹き込む
醒めながら、しかも
吹き込み
ふれたことない
吹き込み
夢を語ろうか?
吹き込む
ふれたことないから
のけぞりかえって
夢。その夢。夢を
…ここで、絶望など語らなかった
イノチら綺羅ら
まばたく。まばたき
息吹く
ね?…これはただ、ただ、むしろ救済
息吹き、ほら
ひろげ、あけひろげ
息吹き、ほら
それは夢。夢は
息吹く
まばたき、まばたく
イノチら綺羅ら
夢。繰り返し見た
…んだ、と。そのクィン?フィン?かの女がささやき、「なに?」いま、…ね?だからクィン?フィン?かの女は日本語で、あるいは悩ましげに「いま、ね?…」ささやき、ふいにまるで昨日、「夢、見てた、よ?」覚えたばかりの構文を必死に「雅雪さんの、…」思い出そうと「…ね?」しているかのように、「夢見てたんだよ」
「なに?」
「雅雪さんが、…ね?」
「なに?」
「しあわせになってた」
「なんで?」
それはふと、うたたねをはじめたクィン?フィン?かの女がたわむれに、沙羅が頸すじにふきかけた息にわずかに驚いて、そして目覚めたあとに、だからわたしにその悪戯らをとがめるまなざしを送ったあとの、…いつ?沈黙。拒絶とは違う、むしろ焦らしを樂しむに見えた沈黙に、「言えよ」
「秘密だよ」
そのクィン?フィン?かの女は言った。そしてひとりで笑った。聞きとれないくらいの笑い聲をだけたてて、沙羅。その、クィン?フィン?かの女の目覚めの瞬間からのけぞって笑い転げていた沙羅。その聲を無視しつづけるままに。
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