流波 rūpa ……詩と小説112・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈19





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





あるいは、

   その町。いわば

   軽蔑さるべき

   見下さるべき

   それがその町


   生きられなかっただろう

   そこにその町が

   なかったならば

   一秒さえも


   その町。いわば

   快樂をつくり

   生きる場所をなし

   与えた。救済


   救われるべきでなかったものらにも

   そこにその町が

   なかったならば

   だれも地獄など見なかったのだがその女。ユウとだけ名乘った。だれもが察していた。すでに、店の誰もが僞名と。ふれあうだれもが仮りの名。でたらめな名にすぎないのだろうと、わたしたち。そのわたしたちも。決して本名など名乘らない人たち。男たち。歌舞伎町。家出のあと流れついた町。ホストたち。流れついた職種。売り掛け客ではなかった。その女は。だから、事実、僞名だろうがなんだろうがそれに、なんら、なんの問題もなにも、なにもな「…ね?」その女。たぶん「お願い、ある。すっごい、せつない」まだ二十代半ばの「お願い、わたしに」女。たいした容姿ではない。でも「…あんの。…ね?」かならずしも「溺れていい?」醜くはない。まして「眞沙夜に。もう、」不潔感など、むしろ「溺れまくっていい?」清潔な?たぶん「ね?…」だれもに、それなりに「もう、壊れちゃうくらい」愛されて育って「溺れすぎていい?」

「莫迦?」聲。「そのまんまじゃん。それ、」と、ほほ笑みながら「もう、すでに、」ささやく「お前のいまのまんまじゃん。それ」わたしに「違う?」

「…お願い」

「なに?」

   好きにしていいよ

      フレグランス。フレ

それは、だから歌舞伎町の

「助けないで、…ね?」

「おれ?」

   きみに、ぜんぶ

      シャンパン。シャ

パリジャンヌ。店に行く前

「溺れてる。わたし、…もう、ぜったい」

「なんで?」

   ぜんぶあげたから

      眞露。ジ

そのテーブル。向かい合わせの

「助けないで。…ね?もう」

「ね、」

   妄想していいよ

      ナッツ。ナ

そこにはだれも

「救わないで。…ね?」

「お前、って、さ。もう」

   きみに、ぜんぶ

      シャンディ・ガフー。シャ

不在。女は

「手を、さしのべないで。…ね?」

「おかしくなっちゃった?」

   ぜんぶあ

      …なに?

「ふれないで」と、「ゆびさき一本さえ、」いちども「絶対、…ぜったい、に」わたしにふれたことのない「わたしに。…ね?」女。赦さなかったから。わたしが。だれも。ユウにも、わたしは、ほかの女たち。その他、それら、わたしに群がって発情した無数の女たち。それらと同じように。くちびるに?…瞼にも。頬に?…顎にも。額に?…耳たぶにも、頸筋にも、なににも、なにも。ゆびさきだけ。時にいやおうなくふれた、たとえばグラスにふれたその爪のさきに夢。夢ひらきそのユウはわたしの橫に夢。夢ひらき座って、わたしを橫目に

   夢。夢ひらき

      いい?…と。その目

見つづけていた。もう

   花。花ひらき

      いいですか?…と。その

知っていた。ユウが

   散らす。散りほら

      くちびる。わずかに

テーブルの下、その

   喰いちらす。ちらし

      ひらかれた、そのくちびるは

翳りに隠して、だれにも気付かれないようにかの女の、その自分にふれていることは。ねじったゆび先に。あくまでも間接的な接触。スパッツ。黑。その生地の上から。だからその慰撫。くちびるには息遣いのない息吹き。一瞬ごとに、息を止め、止めつづけ、吐き、吐いて、なぜ?止め、ほほ笑ましかった。だからわたしはひとりだけ、故意に至近に、その額の至近に額を寄せて、ほほ笑ましかった。いつでも赦していた。その性癖を。わたしたは。店のホストたち、…スタッフも。かれらくらいはもう気付いていたかもしれない。すくなくとも何人かは、しかし歌舞伎町。九十年代のそこ。ビル火災の前。そしてチャイニーズ・マフィアたちの息吹き。だからわたしたちは赦されていた。野放しの町だったから。ユウのせつない自慰。それさえも、そこでは嘲笑さえながらもう、どうしようもないほど赦されていた。謂く、

   行方不明。…だったのかも、…

   ね?半年後のきみの

   その失踪を

   さがすべきだった?


   下を向き、しかも

   虹彩は上向き

   顎を引き、しかも

   喉に皴なし


   舌を咬み、しかも

   唾液を散らし

   焦燥し、しかも

   自虐じみて、さ


   あなたは笑って

   笑いながらしゃべって

   しゃくりあげ

   時には顎を、さ


   わなないて

   時には肩を

   ふるわせて

   時には喉を、さ


   過呼吸の発作

   飲み過ぎたあとで

   もがき、ひとりで

   聲に抱かれた


   笑いあう聲に。だから

   わたしたち

   さわぐ男たち。それら

   圍む女たち


   さげずむ女たち

   あせる男たち。それら

   わたしたち

   笑いあう聲に。だから


   聲に抱かれた

   もがき、ひとりで

   飲み過ぎたあとで

   過呼吸の発作


   時には喉を、さ

   ふるわせて

   時には肩を

   わなないて


   時には顎を、さ

   しゃくりあげ

   笑いながらしゃべって

   あなたは笑って


   自虐じみて、さ

   焦燥し、しかも

   唾液を散らし

   舌を咬み、しかも


   喉に皴なし

   顎を引き、しかも

   虹彩は上向き

   下を向き、しかも


   さがすべきだった?

   その失踪を

   ね?半年後のきみの

   行方不明。…だったのかも、…

すなわちユウ。その女。上手に、かわいく、あからさまな可憐さで笑う、…と、その女。そんな才能を持った女。…うまくね?

   莫迦なの?

      いい?

なに?

   ね、ね、ね、

      いいかな?

まじ、お前

   なんか、なんかさ

      笑っていい?

なに?

   莫迦にしてない?

      いいかな?

なんで、そんな、笑うのだけうまいの?笑い聲。それら、わたしとユウ。その口元に、喉に、そのそれぞれに聲。それぞれの笑い、ふいに笑った、それら、それぞれの聲、かさねて謂く、

   行方不明。…だったのかも、…

      やばくない?

    軽蔑だけ

     きたなくない?

   ね?半年後のきみの

      やばっ

    …ね?それだけ

     やばっ

   その失踪を

      きたなくない?

    それだけが

     やばくない?

   さがすべきだった?


   下を向き、しかも

      きたなっ

    …ね?ふさわしい

     くさっ

   虹彩は上向き

      漏らしてない?

    軽蔑こそが

     漏らしてない?

   顎を引き、しかも

      くさっ

    その町に。だから

     きたなっ

   喉に皴なし


   舌を咬み、しかも

      びしょびしょじゃん

    軽蔑だけ

     ぐしょぐしょじゃん

   唾液を散らし

      へんな汗じゃん

    …ね?それだけ

     へんな汗じゃん

   焦燥し、しかも

      ぐしょぐしょじゃん

    それだけが

     びしょびしょじゃん

   自虐じみて、さ


   あなたは笑って

      いいじゃん

    …ね?ふさわしい

     笑えばいいじゃん

   笑いながらしゃべって

      ね。じゃない?

    軽蔑こそが

     ね。じゃない?

   しゃくりあげ

      笑えばいいじゃん

    わたしには。だから

     いいじゃん

   時には顎を、さ


   わなないて

      それしかないじゃん

    十七歳。たどりついた

     なすすべないじゃん

   時には肩を

      ね。じゃない?

    未成年。なに?

     ね。じゃない?

   ふるわせて

      なすすべないじゃん

    なにが惡いの?

     それしかないじゃん

   時には喉を、さ


   過呼吸の発作

      引き攣ってんじゃん

    欲しがってるじゃん?

     やばっ

   飲み過ぎたあとで

      なにこれ?

    未完成の微笑

     なにこれ?

   もがき、ひとりで

      やばっ

    あやうい美

     引き攣ってんじゃん

   聲に抱かれた


   笑いあう聲に。だから

      のけぞってんじゃん

    見蕩れていいよ。ぼくは

     やばっ

   わたしたち

      なにこれ?

    あなたの目の前で

     なにこれ?

   さわぐ男たち。それら

      やばっ

    そこで、たしかにうつくしい。だから

     のけぞってんじゃん

   圍む女たち


   さげずむ女たち

      やばっ

    そこで、たしかにうつくしい。だから

     のけぞってんじゃん

   あせる男たち。それら

      なにこれ?

    あなたの目の前で

     なにこれ?

   わたしたち

      のけぞってんじゃん

    見蕩れていいよ。ぼくは

     やばっ

   笑いあう聲に。だから


   聲に抱かれた

      やばっ

    あやうい美

     引き攣ってんじゃん

   もがき、ひとりで

      なにこれ?

    未完成の微笑

     なにこれ?

   飲み過ぎたあとで

      引き攣ってんじゃん

    欲しがってるじゃん?

     やばっ

   過呼吸の発作


   時には喉を、さ

      なすすべないじゃん

    なにが惡いの?

     それしかないじゃん

   ふるわせて

      ね。じゃない?

    未成年。なに?

     ね。じゃない?

   時には肩を

      それしかないじゃん

    十七歳。たどりついた

     なすすべないじゃん

   わなないて


   時には顎を、さ

      笑えばいいじゃん

    わたしには。だから

     いいじゃん

   しゃくりあげ

      ね。じゃない?

    軽蔑こそが

     ね。じゃない?

   笑いながらしゃべって

      いいじゃん

    …ね?ふさわしい

     笑えばいいじゃん

   あなたは笑って


   自虐じみて、さ

      ぐしょぐしょじゃん

    それだけが

     びしょびしょじゃん

   焦燥し、しかも

      へんな汗じゃん

    …ね?それだけ

     へんな汗じゃん

   唾液を散らし

      びしょびしょじゃん

    軽蔑だけ

     ぐしょぐしょじゃん

   舌を咬み、しかも


   喉に皴なし

      くさっ

    その町に。だから

     きたなっ

   顎を引き、しかも

      漏らしてない?

    軽蔑こそが

     漏らしてない?

   虹彩は上向き

      きたなっ

    …ね?ふさわしい

     くさっ

   下を向き、しかも


   さがすべきだった?

      きたなくない?

    それだけが

     やばくない?

   その失踪を

      やばっ

    …ね?それだけ

     やばっ

   ね?半年後のきみの

      やばくない?

    軽蔑だけ

     きたなくない?

   行方不明。…だったのかも、…

…ね?…と。「でも、結局、ウクライナの方がなんか、折れてやるしか収拾のつきようもないわけでしょ」

「不可能でしょ。それは」

「英雄気取りでもりあがりまくってるから?」

「あそこに英雄なんかいないよ。まして英雄気取りとか。ボスもふくめてウクライナに英雄は存在できない。なぜなら攻め込まれたほうは追い詰められて選択の余地もなく抗ってるだけだから。かれ等は戦いつづけるしかない。日の丸特攻隊と一緒。突っ込む以外に何ができるの?かれらはただ悲惨なだけで英雄的ではない。選択肢があるのはロシアのほうだけ。停戦も継続も。要するに、結局は、収束するならプーチンの頭がだれかに吹っ飛ばされる以外にない…ロシア人たちのだれかに、さ」

「それとも、核兵器?」

「なつかしいひびきだよね。核弾頭って」わたしは笑った。…まだ、錆ついてないのな。倉庫のなかで。












Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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