流波 rūpa ……詩と小説109・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈16
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
あるいは、
それはマーラー
その第五番。それは
ファンファーレ
行進。喇叭
そのテーマ
一部の、反転。それは
≪流沙≫がくちずさんで
ほのめかしたのだ
埋葬だから?
葬送の始まり
そのひびき
弔いだから?
反転したなら
誕生の?…何の?
その生誕。≪流沙≫の?
そこに生き、もう生まれていたから感じてるの?…と。と?…と。そうささやかれ、だからささやき。耳元にささやき。ささやかれ、ささやき。もうその瞬間にははっと、わたしはすでにはっとして、なに?返り見た。綺羅。だから瑠璃を、返り見綺羅。その逆光は、昏み。背後に赤裸々に眩み、立ってい赤裸々に昏み、背後。瑠璃。綺羅。女。もう、名前さえわすれた女…だれ?…の、とぅ…んっ。殘したフェンダー・ローズ。…の、なに?ピアノ。ふれつづけていた。その鍵盤はいまだ、ふれられつづけ、だからそのまま、だからなにもこわれなかったよ。ふと、なにも奪われなかったよ。もう、指先はふるえ、なにも失われはしなふるえていた。快感を?…なぜ?あくまでも性的。ぞぞぞって?…快感を?もう、なにも失わすぐにもう、ほんの須臾ののちにも射精してさえもして仕舞いそうな、そんな、そんなにも、高まり?「…どんな、感情?」と、昂揚?瑠璃は言った。それは
知っていた。もう
好きっ。す、す、
ささやき。れ、
その気持ち
すぃいぃ…んっ
冷淡に?
そこにふるえた、あなたの
好きっ。す、ず。
やさしく、慰めをくれたけぃっ
気持ち
ずぃいぃ…んっ
気配。その冷淡なまでの鮮明さ。…で?
「感情?」
「D、…の#。それから、D、D。…ふたたび、Dの、…#。また、D、D。…もういちど」
なに?…だから、
「際限ないんだよ」
「際限ない、…感情?」
気づいていた。そのわたしは、ふと、…二十一?最初の≪流沙≫。笑んでいた。笑んでいた自分には気づいた。その頬。はぐらかすように?慰めようとしていたのはむしろその照れたように?口元。わたはにかんだように?わたしのほうだった。そうに違いなかった。笑いかけて、だれを?その瞼。瑠璃を?…そこにいなかった。だから楓を?その至近に、その壊れた魂を?距離。隔たり。寄り添う距離に、しかも至近に。その距離。隔たり。瑠璃はもう泣きそうな、ただ思い詰めたまなざしを距離。隔たり。そこに
もっと。もっと、もっ
ふれないで
慥かにさらしていたから。なぃっ
限りなくちかく
穢らしい手で
なぜ?
もっと。もっと、ぼっ
近づかないで
「そうかな。…もっと、稀薄な、言葉にならない、感情、そんな気がするけど、な」
「感情なんてないよ」
「じゃ。どんな風景?」それは瑠璃。もう、たぶん十歳ちかく年上の…色っぽいじゃん。瑠璃。…莫迦。鮮明な「なにを、見てるの?」老いの…エロエロじゃん。息吹き。莫迦。
見つめてよ
ほしい、かな?
からかわないでよ。その
発情してよ
やさしいひびきが
芽生え。老いが無造作に
そしてそこで
ほしい、かな?
生起しはじめ、目覚めはじめ、うごめきはじめて
なにもしないで
あたたかなひびきが
あくびふわぁあ…た、ばかりの
見つめていてよ
ほ
…安心して。ね?はじまり。…なにも。
「お前以外、」なにも。「…見てないよ」と、安心だよ。…じゃん?わたしはなにも。ね?もうなにも。心のなかにだけ瑠璃のために噓を…じゃん?ね、つぶやき、だから聞き取りはし、…じゃん?ね、だから瑠璃は永遠に聞き取りはし、…じゃん?、ねだから瑠璃には聞き取るすべはない、謂く、
笑う。笑いそう。ね?
笑っていい?…なんで?
あなたはすぐ、ね?
すぐに汗ばみ
しめりを放つ。放つ
匂いを放ち、放つ
うるおいが籠る。籠る
病んでるの?ひとり、そこ
それ、ふるわす女
その瞼。…なぜ?
引き攣らす女
なぜ?…怯えていたね
勝手に、ね?
わがままに、…なんで?
あなたはすぐ、ね?
すぐに可笑しくなって、そこ
しめりを放つ。放つ
匂いを放ち、放つ
うるおいがはじけ、散る
病んでるの?ひとり
置いてかないで
ひとりにしないで
好き勝手なその
他人の狂気がまじこわい。…かも。…ね?
漏らしそう?
莫迦?壊れそう?
莫迦?無能なの?
垂れちゃいそう?
他人の狂気がまじこわい。…かも。…ね?
好き勝手なその
ひとりにしないで
置いてかないで
病んでるの?ひとり
うるおいがはじけ、散る
匂いを放ち、放つ
しめりを放つ。放つ
すぐに可笑しくなって、そこ
あなたはすぐ、ね?
わがままに、…なんで?
勝手に、ね?
なぜ?…怯えていたね
引き攣らす女
その瞼。…なぜ?
それ、ふるわす女
病んでるの?ひとり、そこ
うるおいが籠る。籠る
匂いを放ち、放つ
しめりを放つ。放つ
すぐに汗ばみ
あなたはすぐ、ね?
笑っていい?…なんで?
笑う。笑いそう。ね?
すなわちあるいは母胎。瑠璃は、たしかに、あくまでも、だからそのあきらかな母胎。≪流沙≫。許さなかった。いちども。ひとりの男にさえも。一瞬にさえも。そのからだを赦すことなど。瑠璃。琥珀の虹彩。肌を。髮の毛の一本さえもを。赦すことなど。針金まみれの瑠璃。琥珀の虹彩。その瑠璃は母胎。わたしと≪流沙≫。その知らないところで、勝手に母胎。宿していた。勝手に母胎。産み落としていた。勝手に母胎。育てた。だから母胎。瑠璃。琥珀の虹彩。かの女が男だったとしてもなにもかわらない。事実、事実として瑠璃は母胎。瑠璃こそ。あくまでも、かさねて謂く、
笑う。笑いそう。ね?
求めてない
それは瞼
必要ないから
笑っていい?…なんで?
男なんか、…ね?
ささやきあい、至近
男なんか、…ね?
あなたはすぐ、ね?
必要ないから
そこに
求めてない
すぐに汗ばみ
しめりを放つ。放つ
その虹彩は
それが瞼
わたしに、そこで
匂いを放ち、放つ
赤裸々に発情
ほのかに兆す
赤裸々に発情
うるおいが籠る。籠る
わたしに、そこで
白濁
その虹彩は
病んでるの?ひとり、そこ
それ、ふるわす女
好きじゃない
日射し、ななめに
莫迦になるの嫌
その瞼。…なぜ?
恋愛なんか、…ね?
まばたきに
恋愛なんか、…ね?
引き攣らす女
莫迦になるの嫌
綺羅
好きじゃない
なぜ?…怯えていたね
勝手に、ね?
その虹彩は
ふいに、ななめに
わたしに、そこで
わがままに、…なんで?
無造作に発情
返り見、須臾に
無造作に発情
あなたはすぐ、ね?
わたしに、そこで
翳り
その虹彩は
すぐに可笑しくなって、そこ
しめりを放つ。放つ
噓はない。なにも
綺羅
トラウマ?…まさか
匂いを放ち、放つ
たぶん、あなたのことばに
またたき
たぶん、あなたのことばに
うるおいがはじけ、散る
トラウマ?…まさか
翳り
噓はない。なにも
病んでるの?ひとり
置いてかないで
ほほ笑み。そっと
息づくように
眼の前で
ひとりにしないで
わたしに、そこで
目をそらしもせず
わたしに、そこで
好き勝手なその
眼の前で
翳り
ほほ笑み。そっと
他人の狂気がまじこわい。…かも。…ね?
漏らしそう?
瞳孔。ひらき
綺羅
知性の欠損
莫迦?壊れそう?
ひらききってもう
またたき
ひらききってもう
莫迦?無能なの?
知性の欠損
翳り
瞳孔。ひらき
垂れちゃいそう?
他人の狂気がまじこわい。…かも。…ね?
瞳孔。ひろげ
綺羅
瞳孔。ひらき
好き勝手なその
ひろげきってそれ
目をそらしもせず
ひろげきってそれ
ひとりにしないで
瞳孔。ひらき
傷み
瞳孔。ひろげ
置いてかないで
病んでるの?ひとり
トラウマ?…まさか
眼差しは
噓はない。なにも
うるおいがはじけ、散る
たぶん、あなたのことばに
なまなしくて
たぶん、あなたのことばに
匂いを放ち、放つ
噓はない。なにも
息づくように
トラウマ?…まさか
しめりを放つ。放つ
すぐに可笑しくなって、そこ
わたしに、そこで
翳り
その虹彩は
あなたはすぐ、ね?
無造作に発情
またたき
無造作に発情
わがままに、…なんで?
その虹彩は
綺羅
わたしに、そこで
勝手に、ね?
なぜ?…怯えていたね
莫迦になるの嫌
翳り
好きじゃない
引き攣らす女
恋愛なんか、…ね?
返り見、須臾に
恋愛なんか、…ね?
その瞼。…なぜ?
好きじゃない
ふいに、ななめに
莫迦になるの嫌
それ、ふるわす女
病んでるの?ひとり、そこ
わたしに、そこで
綺羅
その虹彩は
うるおいが籠る。籠る
赤裸々に発情
まばたきに
赤裸々に発情
匂いを放ち、放つ
その虹彩は
日射し、ななめに
わたしに、そこで
しめりを放つ。放つ
すぐに汗ばみ
必要ないから
白濁
求めてない
あなたはすぐ、ね?
男なんか、…ね?
ほのかに兆す
男なんか、…ね?
笑っていい?…なんで?
求めてない
そこに瞼
必要ないから
笑う。笑いそう。ね?
おびえながらいぶかるような?いぶかりなど知らずに無垢に無防備に投げ出すような?すでによろこんですべて受け入れているような?いぶかりながら嘲弄するような?逃げ場のない現状の遁れ難さに屈服を知った、そんな?シャワーの水滴。それら無数の色彩のない綺羅をさらす沙羅のほほ笑みに、結局どんな表情を読みとってやるべきなのかわたしは知らなかった。沙羅のその目つきのせいで?だからその絶望的なまでの昏さ。吼える聲もなく咬みつくに違いない狂暴さ。…なぜ?たとえばその複雑すぎる瞼の皴が?…なぜ?長いというよりは密集しすぎて感じられた睫毛の繁茂が?…なぜ?上下にも横にもおおきすぎた気がする眼への違和感が?その所以をは放置して沙羅のまなざしはなにをも明かそうしないままに昏かった。ほんの須臾、たぶん、わたしのまなざしのなかに、沙羅。その虹彩に気づきの一瞬があった。沙羅が鼻に聲を立ててわらった。みじかく、聞き逃しそうなほどにもみじかく、そして聞き取れないくらいのちいさな音で。沙羅のゆびがわたしの胸をかるく押した。そして、あやうい隙き間に沙羅はわたしのそこのあたりをさぐった。ショート・パンツの上から。気づいた。そのときにわたしは、わたしの性別を。抗う意味も感じられなかった。唐突な行爲の唐突の意味と必然がいまだ理解できないままだったから。沙羅のしたいように任せた。沙羅の、これみよがしに屈辱的な四つん這い。尻をことさらに、その肉づきさえもほとんどもない鋭利をだけさらして突き出し、煽情的な蠱惑の擬態?…もてあそぶ。沙羅が、ひとりで、舌に、唇に、口蓋に、歯に、そしてわたしの下腹部に額を擦りつけて見せながら。調敎。だれの?…アブノーマル好きの、さまざまな意味で差別的な外国人のための?あくまでも、欲望の火照りの欠落したサービス。沙羅の髪を下腹部に撫ぜた。他人の、しかもあまりの凄惨を鼻の孔にぶち込まれた気がした。思わず息を止めた。
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