流波 rūpa ……詩と小説102・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈09
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またそのような一部表現によってあるいは傷つけてしまったとするなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
あるいは、
それはたぶん、…ね?
きみの奇蹟。…ね?
ひとりで立って
飛び降りるなんて
それは稀有な、…ね?
赤裸々な奇蹟。…ね?
ふたたび壊れて
ふたたび死んだ
死んでなかった?
生きてたんだ…
意識あったの?
息づいてたんだ…
かろうじて、しかもあやうく
人間だった?
恥ずかしすぎない?
二度目の失敗。その楓。その自殺未遂。あり得ない。認識など。滅びた頭脳。ずたぼろの頭脳。あり得ない。更に認識など。そのあきらかな認識など。わたしたち。その事象。それをつまり、わたしと≪流沙≫。泣かないで。わたしたち。それが怯えないで。たしかに自殺だったと?まさにかれのふたたびのおののかないで。自殺だったと?楓の自殺。その自殺未遂。たしかに自殺。須臾にさえそれをそうとだれ?認識し…だれ?あり得ない。一度でも。ない。ない。な、想えな、…なに?なかった。ましてしかも莫迦げたいまさらのしくじりとは。失敗。自殺失敗。なんの権限で?あえてしくじり?なんの必然で?なに?むしろ莫迦なの?だから不当。わたしは…たち?…たち、は?鮮明に。だから紛いようもなく、だから間違いようもなくなぜ?ただただ自己破壊をだけ志向しつづけた楓。いつから?単純に謂って仕舞えばいつから?早く、早く、早く、ただの破滅型?もっと早く、早く、早く、生得的なできそこない。楓。生得的ななに?うつくしいひと。くちびる。うすい、うすい、うすいせせら笑わないでよ。唇。せせら
泣かないよ
眼球に新芽
笑らわらな破滅するひと?
ただ、いま
おおきな、おおきな
虹彩は綺羅。…喉に燃えた
叫ぶだけ
向日葵。新芽
違和。どうしてもふさわしいとは思えなかったのだった。わたしには、その使い古された定型句。破滅型という言葉。だからどうしても燃え笑わららわな上がる違和。なぜ?その違和感。なぜ?事実かれは破滅型だった。だから燃えながら墮ちるひと。悲鳴もなく墮ちるだけのひと。だれ?墮、だからどうしよもない墮ち、違和感。燃えながら墮、さいなまれ、墮ちさいなまれ、咬まれ、咬み、さいなまれさいっ、さ、つづけてかつ言葉。破滅するという動詞。まるで
内臓吐いた?
種散らせ
自明のことのように
結腸吐いた?
散らせ。散らせ
楓。その眉間にさえもあきらかに規定されてその身の前。突如ひろがっていたのはその破滅。破滅するという事象。事象。もはやただ穢いだけのその言葉のいたましいひびきそのものをさえ呪わしく…いやだ。厭わしく、…ややや。想いながらも…いやだ。口にし、…いややだだからねむしろ
墮ちた
燃えながら、…ね?
見ろ!
墮ちた
火を撒きながら
しあわせにならない?夢のなかに
墮ちた月。ぐへっ
れろれろれ…ね?
太陽に咬みついた獏。名。楓。かれに仮りにここであえてそう名づけておこう…だれ?だれ?それは破滅型。だれもが。墮ちた!山田楓の墮ちた!その事件はあくまでもいま、獏さえ、いま、もう、ひとり勝手に燃えながら、…ね?自己破壊の実験室。なに?精神解体中。…なに?かれの人生それ自体あるいは自己破壊その不断の実験だったと?…かの、ように、かの、ように、かのすくなくともわたしは…だれ?思っていた。わたしたちを
獏ばくっと獏
一度も夢など
穢したの、だれ?≪流沙≫も
獏さくっと獏
きみの夢だけは見なかった
わたしたちを壊したの、だれ?そうだったに違いない。確信はない。とまれ破滅。墮ちた!なんども思い出す。楓のその墮ちた!自己破壊を他ならぬ≪流沙≫。かれに、その当時の携帯電話のショート・メール。知らされたのだった。文字情報。…なに?楓の二度目の自殺を、しかもフォント。絵文字。その失敗を文字制限何文字だっけ?そのときの、緊急通知。その
なぐさめなんて
好きだよ。…でも
正確な緊急。文面は
ただの嗜虐だから
にもかかわらずに
覚えていない。とっくに緊急。博物館に入れられてしまった骨董的コミュニケーション・ツール。それが殘存していればその殘存の端末の数キロ・バイトのなかに殘存していたはずの…まだ?
もう、すでに
ぼくらは覚醒
まさか。もう、もう、すでに
わたしたちは
すでに、あざやかに
もう、夢の島の
目覚めはじめた
ぼくらの覚醒
最下層に黴びて
あたらしい生き方に
月で泳ぐよ
朽ちているだけ…再利用?に、違いない。地球を、文面は護れ。地球をただ、≪楓が、ふたたび壊れた。連絡して≫と。意味が壊れた地球をぼくらはぼくらの地球を分からなかった。あきらかな文面。そのあきらかな意味だけが。そのときにはすでに無意味。無意味。山田楓はもはや、無意味。わたしたちかつてのかれを知っている無数の無意味。人間たちにとって、すでに墮ちた!
あっ…
全地球的イノチの
燃えながら?
あっつっ…
巨大なる荘厳の
壊れた楓ならざる楓
あっ…
息吹きを聞けコラ
そのひとにほかならなかった楓。だから。…なに?それは…なぜ?たぶん…だれ?わたし。…と≪流沙≫。…と楓、…とわたし。わたしたちがそれぞれに二十五歳になろうという年…いつ?まだ太陽があたたかかったころ。の、その…いつ?まだ、月が凍てついていたころ。の、そ。の、二月のおわりごろ。慥かそうだったはずだ。だから雪は?その日。その時はあの神話的な雪きらきらゆき西暦、千九百九十九年の雪は?やがて雪ちらちらゆき夏に恐怖の大王が雪は?降ってくるかもしれないものの、もう大半のいわば燃えたかな?雪は。だから人類一挙滅亡確信世代たち、…なに?燃えたかな?莫迦?もう、かつてどうしてもわたしたちはほとんどいっせいにタイムラグなく死滅して仕舞うだろうと信じるのではなく当然の
接続しようか
必然的事実として…って、さ。そんな
樹木たちと
滅亡をのみしか見られなかったって、さ。だれが?だれ?空。——ないよ、と。空。空は綺麗。そして澄んで、ないよ。どこにも恐怖の大王など、空。空はないよ、よ。いつか…ね?過去の思春期的で…ささやきあお…っか。夢見がちな神話の…ささやきあお…っか。如きひびきしかもう殘もう、燃えたよ。雪は。だれも持ち得なくなっていた、…救われた雪ふらふらゆき…命拾いしたなに?わたしたちは、…ささやきあお…っか。救済さえされることなくもう、燃えたよ。雪は。どこ?救済されていた。その…いつ?殲滅からいま、…ね?まじ?雪らゆらゆら死滅から。まじなの?破滅から。うそでしょ?「なに?」
「雅雪?」
と、あわてて着信を入れたその二回目か三回目かのコール。もう、聲。いつものやさしい聲。聲。≪流沙≫。気づかないうちに≪流沙≫になろうとしていたその≪流沙≫。やさしいが上にもさらにやさしさを塗りこめた聲。かれ。それは
接続しようか
≪流沙≫。はからずもすでに
バクテリアたちと
≪流沙≫になっていた≪流沙≫。その事実に眼を逸らしあるいはただ楓のために楓の運命の苛烈をひとり嫌悪していた自己破壊すれすれの≪流沙≫。だからかれ。その聲はやさしさの息吹きをのみそこに聞かせて≪流沙≫。それは朝。≪流沙≫。わたしがその「めずらしいじゃない?…最近、おまえのほうから、」
「メール、見た?」
女——もう、年齢も、だから名前も
あげる。やさしさ
できる、から
「見たけど、…」
「あの…さ、」
もちろんの姿かたちも記憶しない、もう
あげる。精一杯の
あきらめなければ
「でも、ね?…ごめん」
「なに…」
だから存在しなかったにもひとしく思われる女、かの女の
やさしさ。だって
できる、から
「…ん?」
「なにから、話せばいいんだろ…おれ」
おおいかぶせた腕をおしのせながら
きみがひたすら
生きていられる
「なに?」
「って、いうか、…ごめん」
光り。しかも淡い。カーテン越しの
やさしかったから
できる、から
「あやまらないで。…ね?」
「意味、わからなかったよね、あれ」
光り。その淡さにわたしだけがひとり身を起こそうとして
…ね?だから、…ね?
くじけなければ
「なんか、そういうの、いま、おれ」
「あんな、短い、」
しかし、女に
あげる。やさしさ
できる、から
「すっげぇ、いやだった。…なんか」
「意味、わかった?」
妨げられた。…なぜ?仰向けのわたしを
あげる。もう、あきれるくらいに
生きていられる
「お前の?」
「あれ、…さ」
さびしいの?おしつぶそうと…さびしい感じ?したかにも身を
やさしさ。だって
できる、から
「メッセージ?…壊れたって?」
「だから、ね?」
のせ、恥ずかしげもなくその女。体重を
そういうの、欲しがってんじゃん。お前
へし折れなければ
「意味わかんなかった。もちろん」
「いま、おれが言える、精一杯の」
惜しげもなく…無造作に?上半身に
違う?違うの?
できる、から
「なに?」
「なんか、もう、限界の」
投げ与え、あやうくわたしは
うざくね?まじで
生きていられる
「限界?…お前が?」
「言葉…」
窒息しそうに?まさか。その、たぶん、莫迦馬鹿しいほど
…ね?だから、…ね?
できる、から
ゆたかだった胸に。楓。その極度の繊細さなどとは比ぶべくもない豊満。武骨なほどにこれ見よがしで、肥滿。過剰に、いやがうえにも過剰にしか想えなかった、だから、ぼよっ…て?その「楓が、どうしたの?」ばすっ…って?そんなぶへぇんっ…て?鳩胸。
「いま、あいつと、逢ってるの?」
わたしの聲に≪流沙≫はなにも答えず、だから自然さらされていたかれの沈黙は
「どこ?…いま、」
そこに
撒き散らせ!
しかし、たしかに
「なんで?」
やさしさ
蜜を。香りたつ
沈黙でさえない。沈黙を
「…もう、逢わないんじゃなかったの?…あいつとも」
ありますか?
黄金のきいろい蜂たちよ!
かれは選んでさえいないから。だから
「おれとも、…ね?」
そこに
撒き散らせ!
ただ、陥穽に不意にはまって仕舞った、そんな
「違う?…ね?」
愛って
花粉。そのべたつきを
発話の喪失。そのときに
「なに?」
きみの頬にも
なんで?…かな
「…いま、逢えない?」
きのうの雪は
泣きそうなんだ
「これから?」
溶けましたか?
なんで?…だろ
「逢えない?」≪流沙≫。かれはそう言った。ややどもりかけ、どもりきりはしない、それはゆらぐ聲。ささやき、引き攣るようにゆらぎ、聲。だからささやき、不穏。聲。舌を?舌を咬みそうな、舌に?舌にふれさえもしない、舌は?ただ不吉な聲。舌は、しかもなにも語らないままに≪流沙≫。かれは精神をかつ肉体を破綻させたでも、でも、でもまだ生きてるじゃん?楓という死んでないよ!不吉。それ以上か生きてんじゃん!それ以下か…なに?ともかく差異する不吉。そして不穏。それらのあるという事実をだけ敎えて、まさに敎えて、わたしにもはや鮮明に目。むしろ瞼。わたしの目にはすでに激しいまばたき。笑ってる?口元の皮膚だけ。笑っ痙攣?謂く、
二十一のきみは
燒身自殺
ガソリンをかぶり
死にきれなくて
その公園に
きみの背後に
散り墮ちる
花。その、さくら
二十五のきみは
投身自殺
引きちぎられた
管。延命装置は
その裏庭に
きみの体は
流れ墮ちる
淚?ちゃいろの
穢い淚?
まだ、人間ですか?
まだ、話せますか?
まだ、知性ありますか?
穢い血しぶき?
飛び散りました。でもね
まだ、生きてたよ
まだ、生き延びてたよ
致命的な状態
決断されたほうが、いいですよ
留保なき廃人
もう、…で、どうされますか?
あたえてください
かれに、イノチを
イノチのかがき
その綺羅めきを猶も
綺羅らきらきら
かがやけ!いっぱい
きらめけ!いっぱい
綺羅らきらきら
その綺羅めきを猶も
イノチのかがき
かれに、イノチを
あたえてください
もう、…で、どうされますか?
留保なき廃人
決断されたほうが、いいですよ
致命的な状態
まだ、生き延びてたよ
まだ、生きてたよ
飛び散りました。でもね
穢い血しぶき?
まだ、知性ありますか?
まだ、話せますか?
まだ、人間ですか?
穢い淚?
淚?ちゃいろの
流れ墮ちる
きみの体は
その裏庭に
管。延命装置は
引きちぎられた
投身自殺
二十五のきみは
花。その、さくら
散り墮ちる
きみの背後に
その公園に
死にきれなくて
ガソリンをかぶり
燒身自殺
二十一のきみは
すなわち傷みのある、それはうたがい。あま咬みに似た?傷みのある、それは懐疑。やわらかな棘の?傷みのある、それは懊悩?…いや、ただ、それは疑問。あの楓。その姉はあなたに、あなたに、≪流沙≫。まだ連絡を取るんだね?あなたに、…なぜ?かさねて謂く、
二十一のきみは
あげたいよ
嫉妬していた
…ね?どうしても
燒身自殺
お前に。お前にこそは
たぶん、わたしは
お前に。お前にこそは
ガソリンをかぶり
…ね?どうしても
あなたの幸福
あげたいよ
死にきれなくて
その公園に
あげつづけたいよ
赤裸々な幸福
…ね?なにがなんでも
きみの背後に
お前に。お前にだけは
嫉妬。剝き出しの幸福
お前に。お前にだけは
散り墮ちる
…ね?なにがなんでも
その幸福にだけに
あげつづけたいよ
花。その、さくら
二十五のきみは
絶望を、きみに
やさしいまなざし
容赦ないそれ
投身自殺
もう、逃げ場のない
そのぶさいくな姉
もう、逃げ場のない
引きちぎられた
容赦ないそれ
いつくしみ
絶望を、きみに
管。延命装置は
その裏庭に
苦痛を、きみに
無条件の
無慈悲なそれ
きみの体は
もう、悲鳴さえない
赦し
もう、悲鳴さえない
流れ墮ちる
無慈悲なそれ
いたわり
苦痛を、きみに
淚?ちゃいろの
穢い淚?
かなしみを、もっと
肯定
ふさわしい。…ね?
まだ、人間ですか?
きみに、きみには
いいんだよ
きみに、きみには
まだ、話せますか?
ふさわしい。…ね?
あなたは、いいんだよ
かなしみを、もっと
まだ、知性ありますか?
穢い血しぶき?
後悔を、もっと
いいんだ
ふさわしい。…ね?
飛び散りました。でもね
きみに、きみこそは
なにが?
きみに、きみこそは
まだ、生きてたよ
ふさわしい。…ね?
ぜんぶ、いいんだ
後悔を、もっと
まだ、生き延びてたよ
致命的な状態
生まれたことを後悔してよ
すばらしいんだ
生きていることさえ
決断されたほうが、いいですよ
ね?…ね、ね、…ね?
うつくしいんだ
ね?…ね、ね、…ね?
留保なき廃人
生きていることさえ
すてきなんだ
生まれたことを後悔してよ
もう、…で、どうされますか?
あたえてください
のたうちまわってよ
気絶しそうなくらい
穢い血をそのケツからながして
かれに、イノチを
ね?…ね、ね、…ね?
もう、いいんだ
ね?…ね、ね、…ね?
イノチのかがき
穢い血をそのケツからながして
本当なんだ
のたうちまわってよ
その綺羅めきを猶も
綺羅らきらきら
究極の苦痛
本当なんだ
苦痛の究極
かがやけ!いっぱい
永遠に、きみに
もう、いいんだ
きみに、永遠に
きらめけ!いっぱい
究極の苦痛
気絶しそうなくらい
苦痛の究極
綺羅らきらきら
その綺羅めきを猶も
無窮の地獄へ!
すてきなんだ
無窮ということ、その果てまで!
イノチのかがき
地獄の底へ!
うつくしいんだ
地獄の底へ!
かれに、イノチを
無窮ということ、その果てまで!
すばらしいんだ
無窮の地獄へ!
あたえてください
もう、…で、どうされますか?
絶望の究極
ぜんぶ、いいんだ
究極の苦痛
留保なき廃人
きみに、永遠に
なにが?
永遠に、きみに
決断されたほうが、いいですよ
苦痛の究極
いいんだ
究極の絶望
致命的な状態
まだ、生き延びてたよ
穢い血をそのケツからながして
あなたは、いいんだよ
のたうちまわってよ
まだ、生きてたよ
ね?…ね、ね、…ね?
いいんだよ
ね?…ね、ね、…ね?
飛び散りました。でもね
のたうちまわってよ
肯定
穢い血をそのケツからながして
穢い血しぶき?
まだ、知性ありますか?
生きていることさえ
いたわり
生まれたことを後悔してよ
まだ、話せますか?
ね?…ね、ね、…ね?
赦し
ね?…ね、ね、…ね?
まだ、人間ですか?
生まれたことを後悔してよ
無条件の
生きていることさえ
穢い淚?
淚?ちゃいろの
ふさわしい。…ね?
いつくしみ
後悔を、もっと
流れ墮ちる
きみに、きみこそは
そのぶさいくな姉
きみに、きみこそは
きみの体は
後悔を、もっと
やさしいまなざし
ふさわしい。…ね?
その裏庭に
管。延命装置は
ふさわしい。…ね?
その幸福にだけに
かなしみを、もっと
引きちぎられた
きみに、きみには
嫉妬。剝き出しの幸福
きみに、きみには
投身自殺
かなしみを、もっと
赤裸々な幸福
ふさわしい。…ね?
二十五のきみは
花。その、さくら
無慈悲なそれ
あなたの幸福
苦痛を、きみに
散り墮ちる
もう、悲鳴さえない
たぶん、わたしは
もう、悲鳴さえない
きみの背後に
苦痛を、きみに
嫉妬していた
無慈悲なそれ
その公園に
死にきれなくて
容赦ないそれ
この世界がもう、こわれても
絶望を、きみに
ガソリンをかぶり
もう、逃げ場のない
すてきだ!たしかに!
もう、逃げ場のない
燒身自殺
絶望を、きみに
世界中がただ、あざわらっても
容赦ないそれ
二十一のきみは
聲をたてそうになった。ふいに、その沙羅が。わたしが思わず、かの女の眼の前に膝をついたから。ひびき。床。膝頭と床。ひくい、にぶいひびき。沙羅はベッドに腰をかけたままに、だから、ふと、沙羅が昏いほほ笑みをくれた。かの女はそこで、ひとりで、だから見ていた?なにを?そのまなざしに、むしろ膝間づくようなその男を?…たとえば、あるいは男のからだ。そのほとんどをあやうく埋めかけた翳り。じぶんの投げていたその翳り。それを、翳り?…沙羅がまばたく。なぜ?その翳りはじぶんのものではない、と?東向きの窓だから。それは男の?…だれの?なんの?…しかも翳り。…と?なにを?沙羅はほほ笑み、昏く、昏く、昏い、もはや絶望的なまでに昏いまなざしにわたしを見ていた。沙羅のゆび先がそっと、わたしの額にふれた。なぜ?わたしがすでに笑んでいたから。たぶん。下品なくらいにだらしなく。赤裸々に。
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