流波 rūpa ……詩と小説099・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈06
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またそのような一部表現によってあるいは傷つけてしまったとするなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
あるいは、
楓は死んだ
だからね、≪流沙≫
きみは生まれた
ぼくも、死んだ?
君が死んだ
だからね、≪流沙≫
きみは生まれた
ぼくだけ、死んだ?
その口に
口蓋に焰を
燃やすのはだれ?
ぼくは、死んでた?
みんな死んだ
だからね、≪流沙≫
きみは生まれた
ぼくさえ、だからなぜこんな回想。蝶にまつわる回想。回想とも言えない挿話に、——忘れただろう。忘れ、たぶん、もう楓も、≪流沙≫も。みんな忘れて仕舞っただろう。その欠片さえも。忘れ、すでに楓は楓でさえ、とはいえ≪流沙≫。その…いつの?≪流沙≫でさえ、…どの?こんな、だからとは云えしかし、こんなふうにして≪流沙≫、いとしいひと。…だれ?こんなふうにかれの物語を
傷。あなたは
舐めて
はじめなければならないのは
明晰な、それは
れろれろ。そのままずっと
なぜ?この挿話は、結局は
傷。あなたが
舐めていて
なにを暗示するのでもなく、象徴してるでもなく、≪流沙≫。いとしいひと。ただもう泣き伏したくなるほどにいとしいひと。…たぶん、なにも言い足りてさえ…どうやれば?どうやればいない、いない、言いた得りるの?どうやれ…ね?いない、いない、言い足りることなどない挿話。なかった、わたしには、言い足りたことなど。これらがかけがえのないものだったことさえも。なかった。まして、なかった。あの見られ、見い出され、たしかに見られていた風景。息吹き。風景。風景の
ひらく…いま?
孔。きみは
息吹き?蝶の舞う…息吹きの
もう、すでに
ひらいた
風景?仮定。それは、だから
ひらいていたよ。もう
ひらいた
仮定された、いとおしさ
わたしは孔
恥ずかしい孔
溢れ。蝶の仮定された?だから溢れ、溢れだし、これら…いつ?風景に対する愛も、…だれ?なつかしさも…なに?まさか。まして執着?ない。…なにも。ない。壊れたように、しかし思い出しつづけて、だれ?なぜ?わたしはいつも、…いつ?壊れたように?わたしのもう、壊れきって仕舞っていたかのように?意識さえ。もう、あきらかに意識さえも壊れ、壊され、壊れ、おのずから
傷。あなたは
したたるのかな?
壊れ、壊れはて自壊。破綻し、もはや
明敏な、それは
わたしの唾液
赤裸々な
傷。あなたが
花しずくのように
欠損。崩壊をのみさらしているかにもなんども、なんども、いつも…だれ?繰り返し、「ぼくたちは、でも、にもかかわらず、でも、…捧げるだろう」と。それがささやき。そうささやいた、だから聲。そのささやき。もはや≪流沙≫になりかけたその≪流沙≫は耳元に、…だれに?そう云って、だれ?だれ?だれ?わたしの。だから、わたしの耳、かならずしもかれのそんな聲をなど求めてはいなかった。まして待機?やわらかな、二十一歳の、やわらかな大気。それは≪流沙≫。空気。わずかにしめりけ。なぜ?そして二十一歳の楓。廃人。すでに楓でなくなった楓。こわれた?…の、まともなこわれた?意識のない、だから
いつも見ていた
翳りなす
死人の、こわれた?
それら
死者ら。それら
眼差しから、こわれちゃってた?
もう、あざやかなほどに
孔ひらく
なぜ?まじ?わたしは
色彩のない死者ら
翳りの
羞恥。どうしようもなく楓の、けっしてわたしをももう、≪流沙≫をももう、見ない眼差しをもう、ただ避けながら、——まぶしい?
見えなっ…
まぶしく、目をふいに
あっ…
ほそめたように?——まぶしい?
見えなっ…
まぶしく、目をしかも
あぁっ…
逸らしたように?…と、なぜ?「楓に?」
「おれたちは、…ね?」
「なに?」
なぜ?…そんな
匂う、…よ
「かれに、…楓に、ふさわしい、…だから、」
「なにを、お前」
やさしい目を
やさしい目つきを
「捧げもの…」
「なに、云ってるの?もう」
≪流沙≫。きみは
ね?…匂う
「おれたちにできる、精一杯の、…さ」
「…死んでる」
流れてゆく砂
それは、薬品の匂い
「かれに、」
「もう、死んでるよ。もう、おれたちの眼の前で」
なぜ?…そんな
匂う、…よ
「楓に、だから、ふさわしい、」
「わからないの?」
なつかしい目を
なつかしい目つきを
「かれの、…いま」
「楓なら、もう」
≪流沙≫。きみは
ね?…匂う
「ひびかせるべき、そんな」
「ここに、ひとり、ここに」
流れてゆく砂
それは、点滴の匂い
「響き。…だから」
「死んでる。もう」
なぜ?…そんな
楓の匂いは
「音楽。ね、ね。ね?…かれの」
「壊れて、…わからない?壊れきって」
かなしみきった目を
かなしすぎる目つきを
「いま、鳴らすべき、かれの、…おれたちが」
「破綻。破綻しきって」
≪流沙≫。きみは
ひからびた匂い
「いま、おれたちが聞き取るべき、だから」
「…敎えてよ。むしろ」
流れてゆく砂
その皮膚は、すでに
「それは、もう」
「おれに、」
なぜ?…そんな
死人の匂い?…よ
「完全に、だから」
「…ね?これ」
澄み切った目を
澄みすぎた目つきを
「完璧に、だからそれは」
「なに?」
≪流沙≫。きみは
ね?…匂う
「楓の音楽。…」と、≪流沙≫。ささやき。そしてわたしは知った。≪流沙≫がそのとき微笑んでいた事実を。見はしなかった。なぜ?かたわら、至近の≪流沙≫をは。なぜ?もし、かれをこぼれるよ。もう、返り見て仕舞ったら、わたしはこぼるよ、もう思わず、もう堪えられないままにこぼれるよ、もう、だから泣き出して仕舞っていたに違いなかった。眼に慟哭。こころよ、映るものすべてが慟哭。たましいよ、かなしいと、そんなたましいよ。慟哭。なに?言葉でだけ知っていた言葉。慟哭というかなしい言葉そのひびきのひびき事実を、わたしはひびきあきらかにひびけ、もはや。眼差しに見い出していた。見い出すのだった。なんどめかにもあらためてすでにすべてはただ容赦なくかなしく、そしてかなしく、痛く、かなしい。悲痛な傷んだ花たちを、…だけだった。なにが癒すの?「好きだったんだ」
そう、ややあって≪流沙≫がささやいたとき、
傷んだ花たちを
流れるよ
わたしは、「…なに?」
「雅雪は、楓のこと、」
なにが癒すの?
淚のように
「…まさか」
「好きだったんだ」
ぼろぼの花
その蜜も
「…それ、」
「知ってた。…おれも」
ずたぼろの花を
いやらしい
「違うでしょ」
「おれね、実は、もう、おれも、ずっと。…ずっとまえから」
なにが?…ね、…な
淚のように
「お前が、でしょ」と。この、わたしのささやき。それは慥かに≪流沙≫の耳にもふれていた。聞こえていたはずだった。くちびるに、ふれた過失のような、わたしのささやき。…なぜ?ささやくと同時にわたしのささやき。ついに≪流沙≫を
傷みは、いつでも
見返しながら、その≪流沙≫。だれ?かれはただ、
なぜかなつかしく
茫然としたまなざしに、もはや
きみを咬んだね?
≪流沙≫。かれが楓ではない楓の殘骸を見ていた。病院。集中治療室。清潔な、管理の行き届いた厳重なベッドのさまざまな表情の白い色彩の散乱。その潔癖の上に、楓。装置。つながれ、イノチをかろうじて、しかも執拗につないだ装置。だからそれは
ね?
いま、窓越しの
あまたらしい…心拍音。枕カバー。いままで
いいんだよ
光りたち
さんざん…人工肺。使いまわされてきた、すこし
ね?
それら
疲れのあるシーツ。点滴。忘れたころに
ほほ笑んでいても
綺羅きら
ぼちょん。皴み。シーツ。皴みのあたえた
ね?
赤裸々
翳り。その…腕、どれ?さまざまな
いいんだよ
舞う散りさえも
昏み。それは…足、どれ?
ね?
いま、窓越しの
鐵パイプの…口にチューブ。組まれたベッド。その
せせら笑っても
光りたち
ところどころにぶちこまれた管。管。管。見えたペンキの剝がれのような
ね?
それら、ななめに
鐵肌の気配。なぜ?…ただ、事実としてなら剝がれてなどいない。ただ、気配だけ。あるいは、ひそかな兆し?それだけ。なに?たぶん、二年後には剝がれはじめるのかもしれない。塗りかえろよ。いずれにせよ、白。
好き?…ね?
死者ら。そ
さまざまな、白。そ
あの日、見た
それら、孔ひ
それら、もはや白の
雪。雪の
ひらく、死者ら
横溢とでもいうほかない
ああたかさ
死者ら。そ
白。しかも決して統一されることのないさまざまな白の微細な差異の散乱に、楓。かろうじて、しかも明らかに清潔な白。それらの清潔のうえに、楓。もう楓でなくなった楓。その、…頭、どれ?だからそれが…瞼、どこ?殘骸。まったき…頸って、さ。ないの?殘骸。敗殘。敗殘の楓。のこりカス。…と、…は?抜け殻としての楓。その執拗な生体はそれでも慥かにそれが生き延びていることをまじ?たしかに、…まだ?生き延びるどころかまだですか?まざまざとまだですか?いまをまだでしたね?生きている強靭。…し、し、し。しぶとさの、むしろ殘酷。…死ねよ。苛烈さの、…しぃ。し、容赦ない鮮烈さの、…死ね。儚さの?…ん…。もろ…もろ?ろ、ろ、は?もろさの?…なに?わたしはなにを
やさしい風は
見ていたのだろう。さっきまで、なにを?
ぼくらを、しかも
すでにふたたび見つめられた≪流沙≫。その
もてあそぶように
まなざしのさらしていた茫然。その
やさしい風は
色をうしなった色。その
ぼくらを、猶も
…なに?こちらに、ただ置いてけぼりにされた孤独を…孤立。さえをも感じていながら、なにを?こ、…赤裸々に、孤立。なにを?なにを見ているのだろう?≪流沙≫。なにを見い出すべき?なにが
見てた。ごめん
愛はささやき
見い出されるべき?なにが?
きみだけを
ひそかなささやき
…と、「大丈夫?…≪流沙≫」
ずっと、ね?
みじかく、せつない
わたしはすでに、そうつぶやいていた。≪流沙≫を案じて?たしかに。こころから案じ、そしてもうこころさえ!耳もない畸形のもう、こころさえ!生き物に、かれにもう、こころさえ!聞こえないことの自明な音聲を、…わたしたちの聲。だから知ってる。それは独り言散て仕舞ったかの、そんなあなたの息吹き。知ってる。それはちいさな聲で。
「もう、行こう」
わたしはささやく。≪流沙≫に
見えますか?
やさしさが
「いま、お前は」
そっと、まるで
淚の色が
いたい
「まともじゃない…いや」
その耳に口づけでももくろんだ、そんな
見えますか?
なぜですか?
「おれも…おれだって」
至近に、よせられた唇に、あくまで
雨の色が
いつくしみが
「だから、…ね?」
かなしい≪流沙≫の
見えますか?
いたい
「おれたち、いま」
かなしすぎるこころを
海の色が
なぜですか?
「行こう。ここに」
刺戟しないように。わずかにも
見えますか?
共感が
「こうして、ここにいても」
ふれないように、その聲を
涎れの色が?
いたい
「かなしいだけ。おれたちが」
耳に吹きかけながら
見えますか?
なぜ?
「傷ついちゃうだけでしょ」
「…埋葬?」と、その時に
体液の
くさっ
ようやく思い出したような、そんなささやきとまなざし。はっとした気付き、…それは、だから、その≪流沙≫。
くさくない?
くさっ
いま、≪流沙≫になろうとしている、いわば
くさってない?
くさっ
孵化寸前の≪流沙≫。あるいは、共謀するわたしたちのくわだてのなかに、もうすぐ生み落とされ、かたちをなし、目覚めはじめようとする≪流沙≫。ひとり、ひとり、ひとりだけその息吹きを感じ、感じ取り、漏らされはじめた息遣いを聴き取っているべきだったひと。死んだ?まいそう、と。その、言葉。むしろ、
おはよう
死んだ?ひびき。きれい、と、
世界よ。だから
死んでた?…もう、わたしは
おはよう
ほほ笑み、思った。その聲。だれよりも、…ひとりほほ笑みかけ、鼻に、楓よりも、だからもちろん…笑った息を、そっと、わたしよりも、だれよりも、…立てて仕舞ったことを、過失?なぜか鮮明に≪流沙≫、あなたの聲は耳にいとしい…後悔しながらも、
「…まだ、死んでないよ」
「違う…おれたちは、」
なぜ誰も埋葬しないのだ?
「かれ、…ね?楓…」
「おれたち、みんなを」
消え去った風を
「なんで?」
「埋葬しよう。楓のために、もう」
なぜ誰も埋葬しないのだ?
「なんで、こんなにいじらしいの?」
「生きることをやめた楓のために」
碎けた海の飛沫
「すっげぇ、もう、一生懸命、」
「おれたちのための」
なぜ誰も埋葬しないのだ?
「すっげぇ、いま、生きてる。…なんで?」
「埋葬として、その」
ひからびた落葉
「こんなに、なんでいとおしいの?…すっげぇ」
「だから、」
なぜ誰も
「いま、はっきりと、すっげぇ、楓は」
「葬送の音楽を…」謂く、
猶もやさしく
せつないほどに
きよらかに
しかもあたたかく
集中治療室。だから
生きる細胞たち
機材との交配
ただ赤裸々な荒廃と
その肉体。だから
イノチなす肢体
装置の息づき
強いられた生き延びしかも
無理やりに
…生き延びてる?
あなたは
そこに
監視のうちに
…生き延ばされてる?
あなたは
そこに
死んでもいいよ
殺さないけど
死んでもいいよ
与えないいけど
死など。もう、見捨てられ
だれにも絶望され
あきらかに見殺され
猶も無防備に
しかもやさしく
せつないほどに
きよらかに
たしかに、あたたかく
窓越しに光り。だから
ななめに射し込み
四方に散乱し
綺羅らさえ散るも
そのあかるさに
悲惨な肉体
人間の滅び
精神的崩壊の
その肉体。だから
生きている肢体
装置の息づき
強いられた生き延びしかも
容赦ない
…燃え滓だよね?
あなたは
そこに
これみよがしに
…燒けのこりだよね?
あなたは
そこに
死んでもいいよ
殺さないけど
死んでもいいよ
与えないけど
死など。…もう、見捨てられ
すでに、絶望され
あきらかに見殺され
猶も無防備に
まだ、生きてるの?
それでもまだ、生きてるの?
それでもまだ、死なないの?
まだ、死にたくないの?
抜け殻だから
亡き骸だから
息づく肢体
完璧な死体
楓。生きて
目をあけて
口をひらいて
楓。生きて
完璧な死体
息づく肢体
亡き骸だから
抜け殻だから
まだ、死にたくないの?
それでもまだ、死なないの?
それでもまだ、生きてるの?
まだ、生きてるの?
猶も無防備に
あきらかに見殺され
だれにも絶望され
死など。…もう、見捨てられ
与えないけど
死んでもいいよ
殺さないけど
死んでもいいよ
そこに
あなたは
…燒けのこりだよね?
これみよがしに
そこに
あなたは
…燃え滓だよね?
容赦ない
強いられた生き延びしかも
装置の息づき
生きている肢体
その肉体。だから
精神的崩壊の
人間の滅び
悲惨な肉体
そのあかるさに
綺羅らさえ散るも
四方に散乱し
ななめに射し込み
窓越しに光り。だから
たしかに、あたたかく
きよらかに
せつないほどに
しかもやさしく
猶も無防備に
あきらかに見殺され
だれにも絶望され
死など。もう、見捨てられ
与えないいけど
死んでもいいよ
殺さないけど
死んでもいいよ
そこに
あなたは
…生き延ばされてる?
監視のうちに
そこに
あなたは
…生き延びてる?
無理やりに
強いられた生き延びしかも
装置の息づき
イノチなす肢体
その肉体。だから
ただ赤裸々な荒廃と
機材との交配
生きる細胞たち
集中治療室。だから
しかもあたたかく
きよらかに
せつないほどに
猶もやさしく
すなわち臭気?…匂い。芳香とはどうしても言い得ない臭気?…匂い。なにか。そんな臭気?…匂い。惡臭とさえも、その臭気?…匂い。病室にも光りは窓から。それでも…窓から。射すのだった。その…窓から。薄い清潔なカーテンを…窓から。透いて、…窓から。光りはあかるくそしてその薄い清潔なカーテンを漉いて光りはやさしく、やさしく、感情の気配のあるはずもないやさしさ、だからやさしく、赤裸々などうしようもない
もっと!
あわい光りが
やさしさ。その
やさしさを、もっと!
そそいでいます
薄い清潔な
きみに、もう
きもち、よいですか?
カーテンを梳くようにして
暴力的なまでの
ここち、よいですぁ?
やさしく、だから、
やさしさをもっと!
そっと光りが
あわい、はかない、昏い、やや昏い、それら鮮明な光り。感じていたのはあなたの温度。まだ、ふれあいもせずに。それだけ、≪流沙≫。あなたのその体温。その唇の。かすかな発熱。なぜ?そんな破廉恥を、いま、なぜ?そんな不道徳を、いま、なぜ?そんな、まるで死にかけの廃棄物の猶も維持していたイノチの尊厳…って、なに?を、まるで愚弄するに似て、まるで、それでも、とうといよ。≪流沙≫、あなたの…とうといよ。くちびるはたわむれ、…とうといよ。それはくちびる。…とうといよ。押し付けられ、…とうとう、むさぼりあっていたわたしの、だからわたしたちのくちびる。もう、もはや、…なに?すべて、くちびる。わたしたちの、くちびる。ふいに貪るように。それだけ。ように?…事実、たしかに貪ってい、ぜんぶ、ぜんぶ、もうぜんぶくちびる、かさねて謂く、
猶もやさしく
ね?…閉じないで
光りは、…ね?
わたしたちは生きてる
せつないほどに
目を。まだ
猶もやさしく
その目を。まだ
きよらかに
わたしたちは生きてる
光りは、…ね?
閉じないで
しかもあたたかく
集中治療室。だから
まばたきさえ
それらはたわむれ
死んじゃうよ
生きる細胞たち
やめて、…ね?
よろこびもない
やめて、…ね?
機材との交配
死んじゃうよ
それらはたわむれ
まばたきさえ
ただ赤裸々な荒廃と
その肉体。だから
イノチの音を、聞こうか?
光りさえ、…ね?
聞こえないけど
イノチなす肢体
ひまつぶしに
危機なのだろうか?
ひまつぶしに
装置の息づき
聞こえないけど
光りさえ、…ね?
イノチの音を、聞こうか?
強いられた生き延びしかも
無理やりに
イノチの息吹きに、ふれようか?
ただ、あやういだけのあなたに
指もないけど
…生き延びてる?
しかたないから
その肉体に
しかたないから
あなたは
指もないけど
ただ、あやういだけのあなたに
イノチの息吹きに、ふれようか?
そこに
監視のうちに
目をあけたまま…ね?
知ってる?
挿入しちゃう?
…生き延ばされてる?
キスしてみよっか
知らない?
キスしてみよっか
あなたは
挿入しちゃう?
知り得ない?
目をあけたまま…ね?
そこに
死んでもいいよ
生きてごらん
清潔な空間
まばたいてごらん
殺さないけど
生きてていいよ
病室だから
生きてていいよ
死んでもいいよ
まばたいてごらん
白い空間
生きてごらん
与えないけど
死など。もう、見捨てられ
こわいものなど、なにもないから
知ってる?
好き勝手に?
だれにも絶望され
キスしてみよっか
知らない?
キスしてみよっか
あきらかに見殺され
好き勝手に?
知り得ない?
こわいものなど、なにもないから
猶も無防備に
しかもやさしく
吐いていい?
頭の横にやや離されたちいさなテーブル
吐いていいかな?
せつないほどに
吐きそうだから
使うすべのないコップは陶器
吐きそうだから
きよらかに
吐いていいかな?
わたしがあげた
吐いていい?
たしかに、あたたかく
窓越しに光り。だから
吐いていい?
知ってる?
吐いていいかな?
ななめに射し込み
口を閉じたまま
知らない?
口を閉じたまま
四方に散乱し
吐いていいかな?
知り得ない?
吐いていい?
綺羅らさえ散るも
そのあかるさに
閉じないで
たたまれた、白地にピンクの嫌味なタオル
謎めいていたい
悲惨な肉体
目を。まだ
枕の横に
その目を。まだ
人間の滅び
謎めいていたい
わたしがあげた
閉じないで
精神的崩壊の
その肉体。だから
まばたきさえ
知ってる?
せめてきみのこころの傷でありたいから
生きている肢体
やめて、…ね?
知らない?
やめて、…ね?
装置の息づき
せめてきみのこころの
知り得ない?
まばたきさえ
強いられた生き延びしかも
容赦ない
心臓の音を、聞いてあげようか?
頭のなかが、昏くなる
耳がないけど
…燃え滓だよね?
ふれあって
なぜ?
ふれあって
あなたは
耳がないけど
頭のなかが
心臓の音を、
そこに
これみよがしに
きみのまぶたに、ふれようか?
あしたは食べやすいお菓子を買ってこよう
きみがそこにいること
…燒けのこりだよね?
確認のために
そのふさがれた口に
確認のために
あなたは
きみがそこにいること
わたしがあげる
きみのまぶたに、ふれようか?
そこに
死んでもいいよ
生きてごらん
なにが、聞きたい?
まばたいてごらん
殺さないけど
生きてていいよ
耳がないけど
生きてていいよ
死んでもいいよ
まばたいてごらん
なにを、聞きたい?
生きてごらん
与えないけど
死など。…もう、見捨てられ
どうしてだろう?
あなたには、…ね?
色彩もなく
すでに、絶望され
頭の中が、昏くなる
すぎたもの。あなたの
頭の中が、昏くなる
あきらかに見殺され
色彩もなく
得るべきあなたの死など
あっ…
猶も無防備に
まだ、生きてるの?
どうしてだろう?
なにに、ふれたい?
色づきもなく
それでもまだ、生きてるの?
頭の中が、翳ってしまう
皮膚がないけど
頭の中が、翳ってしまう
それでもまだ、死なないの?
色づきもなく
なにを、ふれたい?
どうしてあっ…
まだ、死にたくないの?
抜け殻だから
生きてごらん
たしかに愛されているという実感を感じたい?
まばたいてごらん
亡き骸だから
生きてていいよ
脳みそ腐ったけど
生きてていいよ
息づく肢体
まばたいてごらん
たしかに愛さ
生きてごらん
完璧な死体
楓。生きて
莫迦みたい。…なんか
人間のふりしてみたい?
きみのくちびるに吸いこ
目をあけて
いま、ね?おれ、ね?
もう、イキモノでさえないけど
いま、ね?おれ、ね?
口をひらいて
きみのくちびるに吸いこまれたい
人間のふりしてみたい?
莫迦みたい。…なんか
楓。生きて
完璧な死体
色づきもなく
たしかに愛されてい
どうしてだろう?
息づく肢体
頭の中が、翳ってしまう
脳みそ腐ったけど
頭の中が、翳ってしまう
亡き骸だから
どうしてだろう?
たしかに愛さ、さ、さぃ…っ
色づきもなく
抜け殻だから
まだ、死にたくないの?
色彩もなく
なにを、ふれたい?
あっ…
それでもまだ、死なないの?
頭の中が、昏くなる
皮膚がないけど
頭の中が、昏くなる
それでもまだ、生きてるの?
どうしてだろう?
なにに、ふれたい?
色彩もなく
まだ、生きてるの?
猶も無防備に
まばたいてごらん
なにを、聞きたい?
生きてごらん
あきらかに見殺され
生きてていいよ
耳がないけど
生きてていいよ
だれにも絶望され
生きてごらん
なにが、聞きたい?
まばたいてごらん
死など。…もう、見捨てられ
与えないけど
きみがそこにいること
わたしがあげる
きみのまぶたに、ふれようか?
死んでもいいよ
確認のために
そのふさがれた口に
確認のために
殺さないけど
きみのまぶたに、ふれようか?
あしたは食べやすいお菓子を買ってこよう
きみがそこにいること
死んでもいいよ
そこに
耳がないけど
知り得ない?
心臓の音を、聞いてあげようか?
あなたは
ふれあって
知らない?
ふれあって
…燒けのこりだよね?
心臓の音を、聞いてあげようか?
知ってる?
耳がないけど
これみよがしに
そこに
せめてきみのこころの傷でありたいから
わたしがあげた
まばたきさえ
あなたは
やめて、…ね?
枕の横に
やめて、…ね?
…燃え滓だよね?
まばたきさえ
たたまれた、白地にピンクの嫌味なタオル
せめてきみのこころの傷でありたいから
容赦ない
強いられた生き延びしかも
謎めいていたい
知り得ない?
閉じないで
装置の息づき
その目を。まだ
知らない?
目を。まだ
生きている肢体
閉じないで
知ってる?
謎めいていたい
その肉体。だから
精神的崩壊の
吐いていいかな?
わたしがあげた
吐いていい?
人間の滅び
口を閉じたまま
使うすべのないコップは陶器
口を閉じたまま
悲惨な肉体
吐いていい?
頭の横にやや離されたちいさなテーブル
吐いていいかな?
そのあかるさに
綺羅らさえ散るも
吐いていいかな?
知り得ない?
吐いていい?
四方に散乱し
吐きそうだから
知らない?
吐きそうだから
ななめに射し込み
吐いていい?
知ってる?
吐いていいかな?
窓越しに光り。だから
たしかに、あたたかく
好き勝手に?
白い空間
こわいものなど、なにもないから
きよらかに
キスしてみよっか
病室だから
キスしてみよっか
せつないほどに
こわいものなど、なにもないから
清潔な空間
好き勝手に?
しかもやさしく
猶も無防備に
まばたいてごらん
知り得ない?
生きてごらん
あきらかに見殺され
生きてていいよ
知らない?
生きてていいよ
だれにも絶望され
生きてごらん
知ってる?
まばたいてごらん
死など。もう、見捨てられ
与えないいけど
挿入しちゃう?
ただ、あやういだけのあなたに
目をあけたまま…ね?
死んでもいいよ
キスしてみよっか
その肉体に
キスしてみよっか
殺さないけど
目をあけたまま…ね?
ただ、あやういだけのあなたに
挿入しちゃう?
死んでもいいよ
そこに
指もないけど
光りさえ、…ね?
イノチの息吹きに、ふれようか?
あなたは
しかたないから
危機なのだろうか?
しかたないから
…生き延ばされてる?
イノチの息吹きに、ふれようか?
光りさえ、…ね?
指もないけど
監視のうちに
そこに
聞こえないけど
それらはたわむれ
イノチの音を、聞こうか?
あなたは
ひまつぶしに
よろこびもない
ひまつぶしに
…生き延びてる?
イノチの音を、聞こうか?
それらはたわむれ
聞こえないけど
無理やりに
強いられた生き延びしかも
死んじゃうよ
光りは、…ね?
まばたきさえ
装置の息づき
やめて、…ね?
猶もやさしく
やめて、…ね?
イノチなす肢体
まばたきさえ
光りは、…ね?
死んじゃうよ
その肉体。だから
ただ赤裸々な荒廃と
わたしたちは生きてる
ぼくらは知らない
閉じないで
機材との交配
その目を。まだ
きみがいつ、壊されるべきか
目を。まだ
生きる細胞たち
閉じないで
ぼくらは知らない
わたしたちは生きてる
集中治療室。だから
しかもあたたかく
生きてていい?…おれ
ぼくらは知らない
息、吐いてもいい?
きよらかに
呼吸していい?
きみがいつ、葬られるべきか
生きてていい?
せつないほどに
息、すっていい?
ぼくらは知らない
血、流れてていい?
猶もやさしく
沙羅。その頭を撫ぜようとした。あるいは知っている。ここでは、そうした行爲がある種、侮辱的な印象を与えるということは。わたしの指先がかの女の短い髮の毛のさきにふれそうになった。その瞬間に、まばたく。わたしが。なぜ?沙羅がふと、かすかにだけ頭を逸らせるそぶりを兆した気がしたから。本当かどうかはしらない。瞬きさえしなければ、知り得た?…沙羅。その、あったのかどうかも不確かな挙動。たとえば狎れた猫が、それでもあやうく撫ぜるゆび先に身を逸らそうとする須臾。そんな気配。沙羅は上目に、琥珀色のほうの虹彩に笑んでいた。昏い、どこか狂暴な印象のあるほうのまなざし。片方。爛れた半身にいつでもひらかれているほうの虹彩はただ無表情な?そのいつもの鉱物の表情に變化はない。いつも、その虹彩は理解可能な感情を兆さない。すくなくともひとの目に理解されて得るしかたでは。不可解なまでに澄んだ、ブルー。青く、向こうがそのまま透けて見えそうなブルー。健全な方の眼の笑みは、もうすこしつよい笑みに到ればそのまま痴呆の気配をそこにさらす、そのあやういあたりにふらつく。沙羅がふいにまばたきをした。わたしはその沙羅を見ていた。見蕩れたように?わたしはそんな陶酔のまなざしをちゃんと擬態していたかどうか、沙羅しか見い出さないまなざしのなかにそっと探っていた。
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