流波 rūpa ……詩と小説096・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈03
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またそのような一部表現によってあるいは傷ついたとするなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただし、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
あるいは、
あくまでもささげた
わたしは、あなたに
あなたにだけ
あの日の蝶を
あくまでもささげた
わたしは、あなたに
あなたにだけ
あの、羽搏きを
けむりのように
ふるえのように
ゆらめきのように
かげろいのように
あくまでもささげた
わたしは、あなたに
あなたにだけ
あの、だからいずれにせよ蝶、と、そうささやかれたのだからそれは…いつ?夏だったに違いない。たぶん、…いつ?それは七月の…いつ?終わりだった…いつ?見上げた空は
泣かなくていい
燃え上がるのだろう?もう?
さびしくないよ
燃えていた?…に、違いない。夏休みだったはずだ。八月でないのは、わたしが…いつ?八月が嫌いだから。だから、…いつ?八月であるべきではない。朝だった。慥かに。空気に…いつ?見上げた空は
泣かなくていい
せつないくらいに
燃え上がるのだろう?もう?
もう死んでるよ
すてきな朝に
燃えていた?いまだ新鮮な息吹きがあったように記憶するから。もちろんそれは僞造された記憶のいつかのいたずらだったかもしれない。≪流沙≫に、わたしはいつでもかれにみずみずしさをのみ見い出していたから。わたしと楓との対比のうちに。わたしにも楓にも、欠落しているのはぜんぶ!ぜんぶ!あるべき新鮮さだった。いさぎよい、だからぜんぶ!清冽さ?ぜんぶこわれてんじゃんぜんぶ…手垢にまみれているとぜんぶ!思っていた。なにに?それら、大人たちの色と思惑と
見ないで
燒け。燒きつく
見い出された未來とのある
もう、なにも
焰たち。ほ
まなざしに。または
けむりさえ、消え
燒きつく
女たち——少女たちの、きたっ色のついたきたねっまなざしにも。きたねーよな?独占欲?軽蔑に似た?
オナペット
嗜虐的な?
ぼくたち、かわいい
自虐的な?
オナペット
支配されていたい?
こわされてーの?
したい?しかし、
ぶちこわ
あり得ないほどとるにたらない気配に、「見なかった?」その≪流沙≫は云った。あくまでもささやき。それはあまりにもあくまでも、ささやき。見事に少年らしいあくまでも、ささ活気とともに。
「蝶?」
ね、ねね
波動
「…そこ」
見な、な、な、
その色彩は
「どんな?」
ね、ねね
もはや
そうつぶやき、ふいにんー…っと急激に眼差しをんー…っとね?えっ昏らませた≪流沙≫、そのんー…っんとね?えっ?罪に唐突な罪に唐突にとわれたかの翳り。翳り、翳り、…に、わたしは翳り。翳り、翳り、…に、言葉をうしなった。花に翳り、花。いたいたしい、ただいたっ痛いだけの、無数の花に。たっ傷み。花たちの相互に。いたっ…なぜ?
きみを見つめるとき
まなざしは
「って、…一瞬だったから」と。わたしは
ぼくはそこで
ふいに
加害者であることは
罪を犯す
痛みを知って
明白だった。その≪流沙≫に、…なぜ?嗜虐。わたしは嗜虐。羞じた。嗜虐。自分を、その嗜虐。そのすべてを、謂く、
蝶を追いかけた
…ね?あなたに
あなたに
だから、いま
蝶を追いかけて
…ね?あなたに
わたしは
だから、いま
擬態させていた
…ね?わたしは
わたしに
だから、いま
その、眼差しのそとの
…ね?あなたを
わたしは
視野の、見られもしなかったすみに
蝶として舞う、そんなあなたを
…ね?わたしは
わたしは
さらに擬態させた
あなたに、蝶を
…ね?わたしは
あなたを
あなたにもはや完璧に一致した
その、見出されはしなかった蝶を
そうであるべき
黑にむらさき。そして金色
その蝶を
そのつがいを
黑にむらさき。そして金色
そうであるべき
その、見い出されはしなかった蝶たちを
あなたにもはや完璧に一致した
あなたを
…ね?わたしは
あなたに、蝶を
さらに擬態させた
わたしは
…ね?わたしは
蝶として舞う、そんなあなたを
視野の、見られもしなかったすみに
わたしは
…ね?あなたを
その、眼差しのそとの
だから、いま
わたしに
…ね?わたしは
擬態させていた
だから、いま
わたしは
…ね?あなたに
蝶を追いかけて
だから、いま
あなたに
…ね?あなたに
蝶を追いかけた
すなわち、ふれあっていた。あるいはたぶん、きみは気づきはしなかっただろう。蝶、と、そのささやきのきみは気づきはしなかっただろう。ささやき。でたらめなささやき。それはささやき。ありもしない蝶。蝶。その蝶は、それは蝶。架空のささやき。あくまでもその、それは≪流沙≫。そのまなざしに≪流沙≫。あなたは≪流沙≫。見い出し、蝶を。あり得もしなかった蝶を。ながれる砂たち。見い出していた蝶に、もう、いなかった。すでになにも。なにもいなかった。最初からなにも、そんなもの、≪流沙≫。そのまなざしには≪流沙≫。その虹彩に綺羅。もはや、綺羅。こころさえ?綺羅ら、その羽搏きにこころはふれあい、ふれあい、ふれあうままに、≪流沙≫。ながれ、ながれだす砂。ぴったりと、もう、ふれあって、だから、雪崩れる砂たち。ふれあっていた。≪流沙≫もう、わたしとあなた。わたしたち、だからわたしたちさえもが、かさねて謂く、
蝶を追いかけた
それはね
おんなたち
おとしいれた
…ね?あなたに
共謀。…ね?
それは、楓。ね?
共謀。…ね?
あなたに
おとしいれた
いつでも翳り
それはね
だから、いま
蝶を追いかけて
それはね
そうだよね?楓
おとしいれた
…ね?あなたに
楓を、…ね?
ぼくらには、翳り。ね?
楓を、…ね?
わたしは
おとしいれた
陰湿な、いたみ
それはね
だから、いま
擬態させていた
かれをひとり
いやらしくしないで
それはね
…ね?わたしは
はずかしめるために
もう、やらしくしないで
はずかしめるために
わたしに
それはね
舐めまわさないで
かれをひとり
だから、いま
その、眼差しのそとの
共謀。ぼくらの
だから、いま
さがす、楓の
…ね?あなたを
ぼくと、きみだけの共謀
ぼくらはすでに
ぼくと、きみだけの共謀
わたしは
さがす、楓の
滅ぼしてたよね?
共謀。ぼくらの
視野の、見られもしなかったすみに
蝶として舞う、そんなあなたを
その、まなざし
そのおんなたち、いま
殘像さえ
…ね?わたしは
蝶?…ね?
ぼくらはすでに
蝶?…ね?
わたしは
殘像さえ
滅びてたよね?
その、まなざし
さらに擬態させた
あなたに、蝶を
どこにも、…ね?
おんなたちの目
ぼくたちは
…ね?わたしは
だから、…ね?
それら無数の
だから、…ね?
あなたを
ぼくたちは
綺羅のこちらで
どこにも、…ね?
あなたにもはや完璧に一致した
その、見出されはしなかった蝶を
それはね
こわさないで
おとしいれた
そうであるべき
共謀。…ね?
ふれないで
共謀。…ね?
黑にむらさき。そして金色
おとしいれた
ね、ね、ね?
それはね
その蝶を
そのつがいを
それはね
こわれていたよ
おとしいれた
黑にむらさき。そして金色
楓を、…ね?
もう、すでに
楓を、…ね?
そうであるべき
おとしいれた
だから、そのぼくたちは
それはね
その、見い出されはしなかった蝶たちを
あなたにもはや完璧に一致した
だからこころは
だから、そのぼくたちは
ながしていたよ
あなたを
血をながしたよ
もう、すでに
血をながしたよ
…ね?わたしは
ながしていたよ
こわれていたよ
だからこころは
あなたに、蝶を
さらに擬態させた
おとしいれた
ね、ね、ね?
それはね
わたしは
楓を、…ね?
ふれないで
楓を、…ね?
…ね?わたしは
それはね
こわさないで
おとしいれた
蝶として舞う、そんなあなたを
視野の、見られもしなかったすみに
おとしいれた
綺羅のこちらで
それはね
わたしは
共謀。…ね?
それら無数の
共謀。…ね?
…ね?あなたを
それはね
おんなたちの目
おとしいれた
その、眼差しのそとの
だから、いま
ぼくたちは
滅びてたよね?
どこにも、…ね?
わたしに
だから、…ね?
ぼくらはすでに
だから、…ね?
…ね?わたしは
どこにも、…ね?
そのおんなたち、いま
ぼくたちは
擬態させていた
だから、いま
殘像さえ
滅ぼしてたよね?
その、まなざし
わたしは
蝶?…ね?
ぼくらはすでに
蝶?…ね?
…ね?あなたに
その、まなざし
だから、いま
殘像さえ
蝶を追いかけて
だから、いま
さがす、楓の
舐めまわさないで
共謀。ぼくらの
あなたに
ぼくと、きみだけの共謀
もう、やらしくしないで
ぼくと、きみだけの共謀
…ね?あなたに
共謀。ぼくらの
いやらしくしないで
さがす、楓の
蝶を追いかけた
それは共謀
ゆらぐように
ね?
舞うように
ぼくらは共犯
ほら、蝶は
だよね?
ほら、蝶は
知ってた?
舞って
ね?
ゆらぎ
だよね?
嗅ぐ。沙羅に。そのひらきかけたままの口にくちびるをあわせ、しかも沙羅。身じろぎもしない沙羅。抗いなど、まして。受け入れも。かならずしも。くちびる。その半分の触感には違和感がある。だから、爛れるに似て燒けた肌の変質。…いつの?その、痕跡。嗅いだ。沙羅の匂い。たとえば新鮮なパルメザン・チーズに火をつけて燃やしたような。だから、臭気。肌の匂い。かすかな汗?…まさか。つけっぱなしのエア・コンディショナーがちいさな騒音をたてつづける部屋で?しかし、窓越しの陽光の直射は、慥かに肌を潤わせるには違いなかった。しずかに、音もなく肌を灼きながら。褐色を、しかも更にだに褐色に染めながら。そして匂い。髪の匂い。少年のように刈り上げられたそれ。…なぜ?あるいは、もしもまなざしがもうひとつ存在して仕舞えば、それは見い出すのだろうか。老いが翳りをではなくて、あるいは完成をのみそこにもたらした奇蹟的な男。その白い肌。それら、いずれにせよ留保ないうつくしさと、褐色。あざやかな褐色。うつくしい?…みにくい?半身の崩壊。しかも半身の嘲弄に似た昏いうつくしさ。その交錯。交錯。交錯の交錯。光りに白濁し、肌。肉体。あるいは綺羅をながし、肌。肉体。そして息遣いに這う翳りに色彩を濃くさせ、沙羅のゆびはわたしの素肌を撫ぜた。その脇腹を。まだ、服を着ていなかった。どうでもよかった。どうせ、訪れるものはたぶん、いないから。ウクライナで戦争がはじまって、数日が経過した。そんな日。その朝。今日は、何人死ぬのだろう?それら死屍に鳥たちと、甲殻虫と、地のなかのやわらかな虫と樹木たち、更にはバクテリアとヴィルスたちをまでふくめれば、数うべくもない厖大なものになるにちがいない。くちるを、舌さえをも遊ばせない無抵抗なだけの沙羅の、その前歯のひとつに舌さきをあてた。
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