流波 rūpa ……詩と小説094・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈01後半


以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



すなわち狂暴。だから単純にただの暴力。わたしは慥かに、しかもうつくしいから。そう見なされていたから。…だれに?狂暴。楓は慥かに、しかも…なぜ?うつくしいから。そう…いつ?見なされていたから。むしろ投げ捨てられていたかのように。そこに。投げ出されていたかのように。そこに。見い出され、…どこ?それら見い出し、見い出していた

   壊さない?

      なに?…いま

眼差しら。それらは

   ね?壊しちゃおうよ

      ね?…いま

被害者。それら

   壊されるしか、もう

      ささやいてたね

すべては

   すべがないから

      なに?…いま

被害者だった。傷む。被害者たち。わたしたちはすでに傷み、傷む。被害者たち。さいなんでいた。嗜虐的な被害者たちは傷み、さいなみ、傷む。それら、そんなものたち。だから、わたしたちは容赦なくもう、言葉もなくもう、容赦なくだからもう、明示。明示し、容赦なくだから、明示。明示されつづけていた狂暴。うつくしさは、ただ、ひたすらな狂暴。そうでしかあり得なかったにすぎないから、かさねて謂く、

   ささやき

      きれいだね

    それは、ね?

     きれいだから

   ひびきあい

      お願い

    ね、ね、ね、

     お願い。ね?…死んで

   言葉。それら無造作に

      きれいだから

    だから、怪物

     きれいだね

   群らがり


   あきらかに

      だって、て、てぃ…ぃん

    なにもない

     なちゃうよぅおぅ

   言葉

      きたっ

    知られなかったものなど

     きたなくなちゃうよ

   容赦なき

      なちゃ

    なにも

     だって、て、てぃ…ぃん

   響き


   つぶやき

      きれいだね

    だから、ね?

     きれいだから

   さわぎあい

      お願い。ね?…消え

    ね、ね、ね、

     お願い消えて

   言葉。もはやすてばちに

      きれいだから

    だから、化け物

     きれいだね

   群らがり


   あきらかな

      だって、て、てぃ…ぃん

    なにもない

     なちゃうよぅおぅ

   言葉

      きたなっ

    知られなかったものなど

     きたなく、く、っく、ぅくっ

   容赦なき

      なちゃ、あ、あ、ぅあんっ

    なにも

     だって

   響き


   ふれあったのだった

      ね、ね、だからね

    腕のなかには

     咬みしめ

   だから、わたし

      咬んで

    だから、怪物

     か、かんっ、か、がんっ、

   ふれあっていた

      咬みしめ

    すでに目醒めた

     ね、ね、だからね

   それら、わたしたち


   ささやき

      ね、ね、だからね

    あからさまな

     咬みちっ

   ひびきあい

      咬みちぎって

    それは、化け物

     ちぃ、ちっ、ちぃっ、

   言葉。それら無防備に

      ち。ぐぅぃ

    息遣い、ほら

     ね、ね、だからね

   群らがり


   他人の

      ね、ね、だからね

    あどけなさを知る

     なにしゃぶってんの、…なに?

   言葉

      咥えて

    こどもたち

     咥えて

   容赦なき

      しゃしゃ、しゃ、しゃっ、

    かつて、見ていた風景を

     ね、ね、だからね

   響き


   つぶやき

      ね、ね、だからね

    忘れていた

     わななき

   さわぎあい

      咬んで

    わたしたちは

     咬んで

   言葉。もはやなげやりに

      わななき

    その眼差しを

     ね、ね、だからね

   群らがり


   他人なす

      あーねもーねまー見ひらかれた

    すべてはすでに

     まぃんまぃんまばたきもせずに

   言葉

      つかつーかその

    見い出され終わり、すでに

     つかそのぉまなざしは

   容赦なき

      まばたきもせずに

    埋葬されてさえいたのに

     見ひらかれた

   響き。響きら群らがりあって


   言葉。寄り添いあう

      見てたかな?

    おはよう。いま

     海の上。その夕焼けも

   言葉。抗いあう

      いつか燃え上がる

    此のみずみずしい世界

     いつかぃいぃ…っん

   言葉。否定しあう

      海の上。そ

    はじめての、まばたき

     見てたかな?

   言葉。差異しあう


   言葉。それらは

      見てたかな?

    おはよう。いま

     下痢便の上。その朝焼けも

   戯れ、群らがり

      いつか燃え上がる

    此のみずみずしい世界

     いつかつーか

   だからわたしたちはもう

      波だちの上。その朝焼けも

    はじめての、あくび

     見てたかな?

   容赦しなかった


   もう、知っていた

      いいよ、もう

    こどもとは

     もう、…ね?

   この世界の

      ささやかないで

    こどもへの擬態

     ささやかないで

   もう、あなたたちの

      もう、…ね?

    …だれが?

     いいよ、もう

   その、悲惨ささえも


   もう、ぜんぶ知っていた

      いいよ、もう

    おとなとは

     もう、…ね?

   この世界の

      つぶやかないで

    こどもへの忘却

     つぶやかないで

   もう、すべてなど

      もう、…ね?

    …だれが?

     いいよ、もう

   その、高貴ささえも


   もう、ぜんぶ知っていた

      いいよ、もう

    こどもとは

     もう、…ね?

   この世界の

      ひそめないで

    こどもへの自覚

     ひそ

   もう、すべてなど

      もう、…ね?

    …だれが?

     いいよ、もう

   その、悲しささえも


   もう、ぜんぶ知っていた

      いいよ、もう

    こどもとは

     もう、…ね?

   この世界の

      だから

    こどもへの容認

     だから

   もう、すべてなど

      もう、…ね?

    …だれが?

     いいよ、もう

   その、よろこばしさらそれらぜんぶそれらことごとくをさえも


   ささげていたもの

      死ねだからくせぇから

    おとなとは

     殺す?

   だから、わたしたちの

      っていうか、…は?

    あくまでも擬態

     …は?

   ささげもの

      殺す?

    …だれが?

     死ねだか

   それら。それらは


   軽蔑。ぶしつけな

      おれ殺す?

    存在した瞬間さえない

     どびっ

   屈辱。あえて親密な

      おれら殺す?

    この世界は

     おれらららららぃ…ぃんっ

   眼差したちへの

      どびっ

    未知のものとして

     おれ?

   侮辱。あきらかな


   ゆるされたもの

      滅びねぇ?まじくそ

    すべてはすでに

     滅びね?むしろ

   だから、わたしたちの

      カスだからくそ

    知られていたから

     カスだらかそく

   なすべきもの

      滅びね?むしろ

    だれの目にさえも

     滅びねぇ?まじくそ

   それら。それらは


   あざけり

      かけがえないよね

    存在した瞬間さえない

     いのちのかがやき

   容赦なき

      滅ぼさね?おれら

    この世界は

     滅ぼささ、さ、さ、

   冷笑。眼差し

      いのちぃいぃ…んっ

    未知のものとして

     かけがえないよね

   このうえなく不遜に


   ののしられるべきだった

      あのさでねあーね

    すべてはすでに

     証しとして、ぼくらは

   凡庸なひとびとは

      埋葬しておこう。ぼくらが

    埋められていたから

     埋葬しておこう。ぼくらが

   えらばれなかったものら

      証しとして、ぼくらは

    すでに果たされた

     あのさでねあーね

   だから、見い出された生き物らすべて


   平凡というその悲劇のかたわらに

      ぼくらがここにいたことの

    その埋葬は

     ぼくらを

   恍惚とともに

      証明として埋葬

    …だれ?

     証明そして埋葬

   あきらかな確信

      ぼくらを

    その目はいま、なぜ

     ぼくらがここにいたことの

   すべて奪われるに違いないこと


   やがて、すべてを

      あのさでねあーね

    おどろいたのだろう?

     証しとして、ぼくらは

   えらばれていたものたちは

      未生のものというものの存在はない

    この、あたらしい世界

     未生の

   ただ、わたしたちは

      証しとして、ぼくらは

    目をみはり、なぜ

     あのさでねあーね

   わたしと楓は


   捧げていた

      ぼくらがここにいたことの

    おののいたのだろう?

     ぼくらを

   すべもなく

      証明。そして

    この、見慣れない風景

     証明として埋葬

   軽蔑。そのかれらには

      ぼくらを

    目をひんむいて、たぶん

     ぼくらがここにいたことの

   侮辱。その世界には


   うつくしいものは

      それが、ぼくのこころだからね

    知ってたからね

     ほほ笑みは

   生きられない。だから

      きみにささげた

    おどろくべき、と

     きみにささげた

   ただ、咬め

      ほほ笑みは

    おののくべき、と

     それが、ぼく

   咬み碎け


   赦されたかぎりの狂暴を

      それが、ぼくのやさしさだから

    知ってたからね

     目ん玉ばっくし

   殘酷を

      きみにささげた

    見い出すすべも

     きみにささげた

   いたましさを

      きん玉ばっくし

    見い出されかたも

     それが、ぼくのやさしさだから

   不穏を


   だから、…ね?

      れろれろれろれれ

    こう考えてみて

     ぼくは生きたい

   もう、月は咬みちぎられただろう

      あなたの幸福。そのために

    この世界を埋葬するため

     あなたの

   もう、おおった雲は泣きさ、さ、さ、

      ぼくは生きたい

    ぼくらは生まれた、と

     れろれろれろれれ

   …あ?


   …ば?

      生きたい

    ぼくらは生まれた、と

     れろれろれろれれ

   もう、おおっ、おぉぅっ。おおお泣き叫んだだろう

      あなたの幸福。その

    この世界を埋葬するため

     あなたの幸福。そのために

   もう、月は咬みちぎられただろう

      れろれろれろれれ

    こう考えてみて

     ぼくは生きたい

   だから、…ね?


   不穏を

      目ん玉ばっくし

    見い出されかたも

     それが、ぼくのやさしさだから

   いたましさを

      きみにささ、ささ、さっ

    見い出すすべも

     きみにささげた

   殘酷を

      それが、ぼくのや

    知ってたからね

     目ん

   赦されたかぎりの狂暴を


   咬み碎け

      ほほ笑みは

    おののくべき、と

     それが、ぼくのここここ

   ただ、咬め

      きみにさぃっ…

    おどろくべき、と

     きみにささげた

   生きられない。だから

      それが、ぼくのこころだからね

    知ってたからね

     ほほ笑みは

   うつくしいものは


   侮辱。その世界には

      ぼくらを

    目をひんむいて、たぶん

     ぼくらさえここにいたことの

   軽蔑。そのかれらには

      証明として埋葬

    この、見慣れない風景

     埋葬

   すべもなく

      ぼくらさえもが

    おののいたのだろう?

     ぼくらを

   捧げていた


   わたしと楓とは

      証しとして、ぼくらを

    目をみはり、なぜ

     あのさでねあーね

   ただ、わたしたちは

      かつて存在したものというものの存在はない

    この、あたらしい世界

     かつて存在し

   えらばれていたものたちは

      あのさでねあーね

    おどろいたのだろう?

     証しとして、ぼくらをも

   やがて、すべてを


   すべて奪われるに違いないこと

      ぼくらを

    その目はいま、なぜ

     ぼくらがここにいたことの

   あきらかな確信

      証明として埋葬

    …だれ?

     証明と

   恍惚とともに

      ぼくらがここに

    その埋葬は

     ぼくらが

   平凡というその悲劇のかたわらに


   だから、見い出された生き物らすべて

      証しとして、ぼくらは

    すでに果たされた

     あのさでねあーね

   えらばれなかったものら

      埋葬しておこう。ぼくらは

    埋められていたから

     埋葬しておこう。ぼくら

   凡庸なひとびとは

      あのさでねああーね

    すべてはすでに

     証しとして、ぼくらを

   ののしられるべきだった


   このうえなく不遜に

      いのちのかがやき

    未知のものとして

     かけっ

   冷笑。眼差し

      滅ぼさね?おれら

    この世界は

     滅ぼさね?

   容赦なき

      かけがえないよね

    存在した瞬間さえない

     いのちの

   あざけり


   それら。それらは

      滅びね?むしろ

    だれの目にさえも

     滅びねぇ?まじくそ

   なすべきもの

      カスだからくそ

    知られていたから

     すてきじゃねいつもそのケツの孔の襞の皴のよらせかた

   だから、わたしたちの

      滅びねぇ?まじくそ

    すべてはすでに

     滅び

   ゆるされたもの


   侮辱。あきらかな

      どびっ

    未知のものとして

     おれ殺すんすか?

   眼差したちへの

      おれら殺す?

    この世界は

     まじ殺す?

   屈辱。あえて親密な

      まじおれ殺すんすか?

    存在した瞬間さえない

     どびっ

   軽蔑。ぶしつけな


   それら。それらは

      殺す?

    …だれが?

     死ねだからくせぇから

   ささげもの

      っていうか、…は?

    あくまでも擬態

     どびっ

   だから、わたしたちの

      死ねだからく

    おとなとは

     殺す?

   ささげていたもの


   その、よろこばしさらそれらぜんぶそれらことごとくをさえも

      もう、…ね?

    …だれが?

     いいよ、もう

   もう、すべてなど

      だから

    こどもへの容認

     だから

   この世界の

      いいんだよ、もう

    こどもとは

     もう、…ね?

   もう、ぜんぶ知っていた


   その、悲しささえも

      もう、…ね?

    …だれが?

     いいんだっ、いいんだっ、いいんだっ、もう

   もう、すべてなど

      ひそめないで

    こどもへの自覚

     ひそめないで

   この世界の

      いいよ。もうぼふっ

    こどもとは

     もう、…ね?すてきじゃん

   もう、ぜんぶ知っていた


   その、高貴ささえも

      もう、…ね?

    …だれが?

     そこそこいいよ、もう

   もう、すべてなど

      つぶやかないで

    こどもへの忘却

     つぶやかないで

   この世界の

      もう、…ね?

    おとなとは

     いいんだよ、もう

   もう、ぜんぶ知っていた


   その、悲惨ささえも

      もう、…ね?

    …だれが?

     いいんだ、もう

   もう、あなたたちの

      ささやかないで

    こどもへの擬態

     ささやかないで

   この世界の

      いいんだよ、もう

    こどもとは

     だってすばらしいじゃんもう、

   もう、知っていた


   容赦しなかった

      下痢便の上。その朝焼けも

    はじめての、あくび

     見てたかな?

   だからわたしたちはもう

      いつか燃え上がる

    此のみずみずしい世界

     いつか燃え上がる

   戯れ、群らがり

      見てたかな?

    おはよう。いま

     下痢便の上。あの朝焼けも

   言葉。それらは


   言葉。差異しあう

      くされ糞の上。この夕焼けも

    はじめての、まばたき

     見てたかな?

   言葉。否定しあう

      いつか燃え上がる

    此のみずみずしい世界

     いつか燃え上がる

   言葉。抗いあう

      見てたかなかなか?

    おはよう。いま

     海の上に、夕焼けは

   言葉。寄り添いあう


   響き。響きら群らがりあって

      まばたきもせずに

    埋葬されてさえいたのに

     あーねもーねまー見ひらかれた

   容赦なき

      そのまなざしは

    見い出され終わり、すでに

     そのまなざしは

   言葉

      あーねもーねまー見ひらかれた

    すべてはすでに

     まばたきもせずに

   他人なす


   群らがり

      わななき

    その眼差しを

     ね、ね、だからね

   言葉。もはやなげやりに

      咬んで

    わたしたちは

     か、か、か、

   さわぎあい

      うざくね?

    忘れていた

     わなな、なな、ななき

   つぶやき


   響き

      なにしゃぶってんの?

    かつて、見ていた風景を

     ね、ね、だからね

   容赦なき

      咥えて

    こどもたち

     咥えて

   言葉

      ね、ね、らだかね

    あどけなさを知る

     なに、にぃ、ぃ、ぃ、…なに?

   他人の


   群らがり

      咬みちっ

    息遣い、ほら

     ね、ね、だからね

   言葉。それら無防備に

      咬みちぎって

    それは、化け物

     ちぎって

   ひびきあい

      ね、ね、だからね

    あからさまな

     ちっ

   ささやき


   それら、わたしたち

      咬みしめ

    すでに目醒めた

     ね、ね、だからね

   ふれあっていた

      咬んで

    だから、怪物

     咬んで

   だから、わたし

      ね、ね、だからね

    腕のなかには

     咬みしめ

   ふれあったのだった


   響き

      なっちゃうよぅおぅ

    なにも

     だって、て、

   容赦なき

      きたなくなちゃうよ

    知られなかったものなど

     きたなくな

   言葉

      だって、て、てぃ…ぃん

    なにもな、な、

     なちゃうよぅおぅ

   あきらかな


   群らがり

      きれっ

    だから、化け物

     きれいだね

   言葉。もはやすてばちに

      お願い。まじ消えて

    ね、ね、ね、

     お願い

   さわぎあい

      きれいだね

    だから、ね?

     きれいだから

   つぶやき


   響き

      なちゃうよぅおぅ

    なにも

     って、て、てぃ…ぃん

   容赦なき

      な、な、なぃん?

    知られなかったものなど

     きたなくなちゃうよ

   言葉

      って、て、てぃ…ぃん

    なにもない

     なちゃうよぅおぅ

   あきらかに


   群らがり

      きれいだから

    だから、怪物

     きれいだね

   言葉。それら無造作に

      お願い。いま死んで

    ね、ね、ね、

     お願い。すぐ死んで

   ひびきあい

      きれーれーれー

    それは、れ?

     きれいだから

   ささやき


   見て。白虹?

      おびえないで

    目醒めていたよ

     うつくしかった

   まるで、それは

      ぼくらは、すでに

    すべもなく

     ぼくらは、すでに

   なに?

      うつくしかった

    もう

     おびえないで

   白虹

  

   月を淡く、淡くだけ

      ほんとうにまじ

    目醒めるまえには

     くそまじ

   淡くかくし

      まじまじ

    すでに

     まじま、じま、じぃ…

   むしろ綺羅めかせた

      くそまじ

    目醒めるまえにも

     まじかくそ

   それは


   雲は、なびく

      うつくしかった

    もう

     おびえないで

   雲。かすみ

      ぼくらは、すでに

    すべもなく

     ぼくらは、すでに

   雲は、なすられた

      おびえないで

    目醒めていたよ

     うつくしかった

   雲。月に、もう

褐色の肌。そこに。ベッドにむしろ恥じらいもなくさらし、沙羅はひろげきって。じぶんの股を。ひろげきっていて、…なぜ?のぞき込み、十三歳の沙羅。背骨をまげて。…十三歳?だから、まるで不遜な猫のように。なぜか他人ごとの不遜をそこに見せつけて。…なに?と。返り見たばかりの須臾。わたしはふといぶかった。…自慰?と。いちどまばたく、その寸前のまなざしにはすでに知っていた。ふとした思いつき、…チェック?と。やがてわたしは、そして笑んだ。…なぜ?聲もなく。あるいは、そんな沙羅。かの女のために。笑み、あくまでも沙羅のまなざしのそとで。だから笑みもなくじぶんの陰毛の確認を、沙羅は。手入れされないそれ。そもそもその仕方など…または必要性さえ、…どうなのだろう?知っているのだろうか。まだ、ややまばらな、だからむしろ焰。肌に這った黑いあり得ない火焰の色彩に似て。と惑った。わたしは。その沙羅がいきなり顏をあげたから。まるでわたしの笑った聲を聞いたかのように。たとえば、その耳もとの至近に。「…なに?」と、思わずそうつぶうやきそうになるわたしに、唇。そのくちびるがひらきかける直前にはかの女は、いきなり笑った。あけすけに。無防備に。赤裸々に。しかもその喉には聲もなく。こころの底から素直に笑ったときに、いつも沙羅の顏はくずれる。これみよがしにも。容赦なく、むしろ痴呆じみた顏。知性などもう、いままさにとろけ、流出して仕舞った、と。…あんたも、わたしも、みんな、そうでしょ?白痴の沙羅。もともとみんな、そうじゃなかった?むごたらしいほど莫迦馬鹿しい笑顏。窓の外には海の綺羅。見なくてわかる。そこにはそんな風景しかすでに、最初からあり得はしないから。だからあえて見なかった。その綺羅。生滅の綺羅。その翳り。股の。その色彩。褐色の沙羅の褐色に蔓延ったあやうい黑。しかも時には白濁。窓越しの、その朝にただやわらかな光りに。








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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