流波 rūpa ……詩と小説087・流波 rūpa 癡多 citta ver.1.01 //…見て/なにを?/見ていた/いつ?


以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



      しかも

「だから」

   もう

      赤裸々に屈辱的な

「気付か、なかったん、だよ」

   こわく、ないよ

      …なぜ?

「だから」

   もう

      匂うのは

「怖かった、よ?…ちょっと」

   怖かった?

      なに?

「ちょっと、だよ。…ね?」

   もう

      籠るように

「誰も、…ね?気づかない、から」

   大丈夫だよ

      …どこに?

「…ね?ちょっと、…ね」

   もう

      置き忘れられているかの

「ながしてない」ユエンは、そう云った。その、だから、つぶやき。、独り言散た?…と、羞恥?なにもなく、煽情?なにもなく、自虐的な露惡?なにもなく。なにが?ただ、突き出された顎の上に、半開きの唇。

反射、光りら、鈍く、だから、不明確なかさぶたのように散る白濁。

鼻。

所謂、団子鼻。

ある人種であることの刻印。

さわればかたい。

眼。

少女じみた眼。

もう充分に無機的でありながら?

首から下にみじめなくらいに執拗に女じみた、鼻を衝く媚藥じみた体臭を…やりたい?

やって。掻き立てながら。恥ずかしいほどに淫靡な…舐めたい?

やって。体。

「…いいよ」わたしは云った。…流してくるから、と、…ぶちまけたい?

やって。「駄目だよ」

わたしが立ち上がりかけたときに、ややあって、ユエンは慌てて…めちゃくちゃになりたい?

やって。云った。

いままさに、ほんとうに我に返ったかのように。

わたしにしがみつき、留めようとした挙動のあるわけでもなく。

脱力のまま。

慥かに、腐敗した匂いがした。

シャワールームに。

慥かに、鼻孔は嗅いでいた。

本当?——鳥の生の内臓が日影にいつか腐っていたような。その便器の中に、元から溜まっていたはずの水に薄められているにちがいないにもかかわらず、なぜ?赤みさえ感じさせた金色。通常のそれではあり得ない、あるべき匂いなど想定しなくとも、異常であることだけ

   夢を見ていた

      生きて

それだけはわかる極端な

   溶ける

      ねぇ

臭気。なぜ?…異常な

   解ける

      生きて

色彩それはオレンジがかった照明のせい?

   融ける夢を見た

      ねぇ

まさか。

   いつ?

      だいじょうぶだから

   雨の中で

      心配ないから

   あわい桃色

      いいんだ

   はかないほどに

      生きてて

   あわい桃色

      いいんだ

   夢を見た

      なんでもないから

   雨の中に

      生きて

   すべてのかたちの

      ねぇ

   溶ける夢を

      生きて

   解ける夢を

      ねぇ

   融ける夢を

      資格、あるから

   梳きながら

      生きる

   その髮を

      資格、あるから

   背を向けた女

      生きてていいから

   女?

      いいんだ

   記憶さえ

      ねぇ

   見い出されていたのは

      存在していいから

   ただ髮の触感

      きれいだよ

   ただ、触感

      本当に、ただ

   夢を見ていた

      うつくしいよ

   雨の中に

      かけがえないよ

   すべてのかたちの

      眼がないよ

   溶けるのを

      もう

   解けるのを

      鼻さえも

   融けるのを

      花?

   ふりしきっていた

      耳、ないよ

   繊細な雨

      もう

   無際限な

      両手も

   果ても無い雨を

      足も

   夢を見ていた

      だから

   たぶん

      指先さえ

   わたし自身

      死ねないよ

   その女とともに

      もう

   女?

      死ねも

   溶けながら

      生きて

   音も無く

      ねぇ

   解けながら

      生きて

   響きも無く

      ねぇ

殺せよ

   融けながら

      イノチって

死んだ?

   その兆しも無く

      かけがえもない

殺したの?

   ふりしきっていた

      たとえば目覚めに

ちゃんと?

   あわい色彩の

      ゆれる葉に

殺せよ

   匂う雨の

      ゆれた雫たち

ぜんぶ、殺せばいいんだよ、と、その女はささやいた。まるでわたしを愚弄したように、…ってうそでしょ?バカ?侮辱したように、…ってうそでしょ?バカ?なじったように、…ってうそでしょ?バカ?軽蔑したように、…ってうそでしょ?バカ?さとしたように、…ってうそでしょ?バカ?強いたように、…ってうそでしょ?バカ?拒絶したように、…ってうそでしょ?バカ?あくまで猶も許しはしない、…ってバカ?——なにを?バカ?そんな——どんな?思い詰めた——こころは、どこ?

どこに?眼差しで、だからそれが眞沙美。つまりは母。

   ね?…その

いつ?

   額のてかり

ちいさな頃?

   きたなっ

何歳?

   ね?…その

知らない。記憶には、もう

   まぶたの色素沈殿?

だからたぶんあの、

   みにくっ

顔のない男がまだ母のかたわらに存在していたころだったに違いない。だから蛾、…と。眞沙美は云った。——どんな風に?

   ぼくはバグ

      …きれい…まじ?

ささやくように?

   失敗の文字ばけ

      …きれ、見てていい?

つぶやくように?

   ぼくはエラー

      …きれい…やばっ

さけぶように?

   できそないエラー

      …きれ、見蕩れていい?

本当に、はっきり

   ぼくは返品

      それは色彩

叫んで?大きな、…

   欠陥過剰

      ふるえつづける、

鋭い?むしろ

   ぼくは異物混入

      色彩のふるえ

茫然と?不意に我に返った蚊のように…は?

   黴つきケーキ

      …きれい…あっ

あれ?蝶、とは、だから彼女は云わなかった。わたしは、…は?

   ぼくは送信間違い

      …きれ、気絶していい?

あれ?その日(午前?…)部屋に…どの?(午後?…)侵入した蝶に、思わず(やわ)目を(やわらかな。だけど)しばたたかせながら。リビング。あるいはしばたた(あたたかな。だから)夫婦の(おん)寝室。だれと(温度のある、そんな)しばたただれの?(橫殴りの日差し。つまり)なに(まどご)言ってるの?…と(窓越しの)わたしはしばたたささやく。母に、(灼く。それら)だれに?(音もなく肌を)聲を(や、)しばたたたてることなく、だから(灼く——沙羅の)舌の上でだけしばたたその(褐色の肌。その)黑地に(しき)黃色(色彩に似せて?灼く。その)紫。色彩、(光り、——もう)散乱。それら(かたまりとしか、もう)色なす(お、)色たち。翅の(思えない、その)蝶。…だよ、蝶。…だよ此れ、

「殺して、その蛾」

云った。聞きもしないで。わたしの聲。聲そののない発話に

   聞け!

      われて砕けて

気付きもせずに。

   聞け!

      くずれてどっばー

眞沙美は。…蛾じゃない、と、「今すぐ、殺して」ユエンが

   轟音、おお!

      ぐっちゃしどっばー

帰ったあと、シャワーを

   いとしきこの空

      ばいびーびっぱー







Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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