流波 rūpa ……詩と小説080・流波 rūpa 癡多 citta ver.1.01 //…見て/なにを?/見ていた/いつ?


以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



   聞こえるよ

      あわくさわがす

色褪せた

「許せないんだよ」

   聞こえているよ

      野原の花たち

風化した

「むごいじゃん」

   口から差し込む

      ピンクいろ。いろ

そのくせ、奇妙に

「此の女、さ」

   灼熱の鐵に

      青いろ。黄いろ

瑞々しい

「悲惨じゃん。もう」

   その鐵の

      ももいろ。いろ

新鮮な気配。…

「穢いから、さ」

   引き裂いた喉が

      草の花たち

その——それらの中に

「資格なんか」

   すでに知っていた屈辱のなかに

      むらさきいろ。いろ

さらのだった。這う

「やらしいから、」

   聞こえるよ

      しろいろ。いろいろ

這う?

「…さ」

   聞こえているよ

      いろいろないろに

女。この

「糞だよ」

   左脳にはえた

      いろいろにいろづく

這うように

「生きる資格なんか」

   いくつかの針に

      いろいろなはなたち

…這う?

「ゴミだよ」

   聞こえるよ

      あなたはおもわず笑むでしょう?

這うように見えていた、その

「殺したげたら?」

   聞こえているよ

      あなたは思わずほほ笑むでしょう?

引き攣る

「だから」

   殺されかけた

      じぶんの微笑に

女。引き攣りつづけ

「無意味じゃん」

   櫻色蛇の肌のざらつき

      気付かないまま

それは

「お前のせいだよ」

   そのあざやかな

      あなたはそれでも

だからむしろ

「意味なもうぜんぜん意味ないじゃん」

   泥水への擬態に

      ほほ笑むでしょう?

汚物じみた

「お前が、…こいつ」

   聞こえるよ

      そんなふうに

その形姿を

「死んだ方が」

   聞こえているよ

      ほほ笑んで

さらすのだ。わたしは

「ひとりで壊した。お前が」

   肺に這いよる

      みんなをそっと

夢路も?

「生まれなければ」

   あさっての日差しに

      あたためるでしょう

知っていた。もう

「お前のせいなんだよ。これ、」

   その陽光が照らし

      知っていますか?

わたしたちは

「…違う?」

   あばいたぼくの

      わたしの夢は

やがて

「知ってる?」

   昨日の腐った

      じょうずに

もうすぐ

「壊れてる」

   消化しのこされた殘骸

      すてきに

羽搏くのだった。その

「美しいものは」

   聞こえるよ

      うたうこと

それら

「もう」

   聞こえているよ

      なんのかなしみも

朝の鳥たち

「だれもより狂暴でなければならない」

   ぼくがちぎった

      もう、ないよ

朝の

「…ね?」

   あなたの襞に

      なんのいたみも

もうすぐ

「美しさとは狂暴さだから」

   紫いろの

      もう、ないよ

すぐにも

「人間の」

   花なす襞に

      なんのくるしみ?

啼き始めるのだった

「知ってる?」

   聞こえるよ

      もう、ないよ

それら

「…ない。もう、じゃな、完全」

   聞こえているよ

      なんにも、なんにも

朝の

「殺しちゃうかも」

   皮膚のすべてで

      せつないくらいに

右手の斜めに

「完璧、人の殘骸でさえ」

   聞こえるよ

      もう、ないよ

眞橫にさしはじめた

「お前を」

   聞こえているよ

      せつないくらいに

朝の

「…ない。もう、な」

   腐乱をそっと

      しあわせなのです

光りたち。もう

「俺」

   擬態しようとした

      だから、みなさん

もうすぐ

「純度百パーセントで」

   あなたのやさしい

      たのしいのです

それら朝日の中に

「お前のせいだよ」

   魚鱗の肌に

      なにをしてても

左手に

「壊れてるから」

   その巨大な

      ほら

たぶん

「好きすぎるから」

   毛孔の群れにも

      笑み、こぼれた

左手のななめを返り見れば、…やや

「廃棄物だから」

   聞こえるよ

      朝も昼も

見上げれば

「お前のせいだよ」

   聞こえているよ

      ほら

夜の色彩の持続。その

「むしろ。…って、」

   勝手に、じぶんで

      笑み、こぼれた

うすくなりはじめた色彩を濃くし

「ぜんぶ」

   燃え上がってしまった

      ふかい夜にも

だから青。それが

「産業廃棄物?」

   すべての髮の

      ほら

しだいにさらされて行く、それは

「指先の」

   煙りにさえも

      笑み、こぼれた

西の空。その

「殘骸でさえも」

   聞こえるよ

      そんなふうに

色彩。その

「ふれた」

   聞こえているよ

      わたしはじょうずに

黑の

「…ない。もう。な」

   もうすでに

      すてきに、かわいく

行き着く

「俺の指のふれたものはすべて」

   存在しない指に

      うたっていつも

黑の果てはだから慥かにあくまでも

「スクラップでさえ、な」

   芽生えた爪に

      みんなをそっと

青?

「壊れていかなければならない」と、「…何故なら」夢路は「俺が、そう決めちゃったから」笑った。かれはささやき、そしてその聲。ただ静かに、ただ短く、ほんの一瞬だけの、ささやかれたその響き。その夢路のうすい笑顏を見ていた。まるで不審なものを不意に見い出してしまったかに錯覚した、唐突な混乱にと惑いながら。キャバクラの女だった。その女は。わたしの係ではなかった。指名を入れるわけでもなかった。女がわたしに気があることに、わたしは気付かなかった。だから夢路の暴力的な嫉妬は、わたしにとって現実味がないばかりかかれの倒錯にさえ想えた。倒錯というのは、単なる錯誤かも知れないかれの思い込みは、にもかかわらずわたしの眼の前に、なにかあきらかな確信としてのみすさらされていたから。…知らないだよ。

気付いてない。

まだ、知らなまだ、気付かな終に、お前は気付かなかったんだよ。そんな、夢路の、わたしへのやさしくかつ辛辣な軽蔑の匂いに

   いつ、気付くの?

      だれ、いま

羞恥さえ

   いつ?…ほら

      ななめうしろで

感じさせて。すくなくとも

   その足元の

      笑ったの

わたしの眼に女は、

   わずかななめに

      だれ?

あからさまにも夢路にこそ

   落ちていた蝶

      とおりすぎる

のぼせあがっていた。すでに

   …蛾?もう

      早足に

いくら夢路に貢いだか

   死にかけて?

      ひとりで

知れなかった。週に何度も

   綺羅めきをなくした

      携帯で?

店に入り浸り、そして

   きたない殘骸

      夜明けに

他のホストに疎まれ、

   その足元の

      わずか

厭われ、夢路にさえも

   わずかななめに







Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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