流波 rūpa ……詩と小説079・流波 rūpa 癡多 citta ver.1.01 //…見て/なにを?/見ていた/いつ?
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
き
ひれ伏すように、つっぷし。
懇願するように、つっぷ。
突っ伏し、すぐさまに、突っ込み、つっこ深く、首より、肩よりつっこ深く、あるいは、突き刺すように?
…さる、ように突っ伏し、突っ込み、その底の無い無間の水の無底の果てた一番下に見えたはずの月のその固有の実体を、——わたしは?
咥えようと?
咥え、飲み込み、飲み込み咥え、咥えト殺しようと?
転生、あるいはそれは花散る肛門からの。
ふいの花々の上昇に転生したわたしはだからふたたび水の面に首をつっこもうとし、やがて窒息するに違いない…と「どうしたの?」
その夢。
「見蕩れてる?」
それは醒めながら見た「おれのこと」と、その心にもない言葉の心に於く不在も赤裸々にささやく夢路の頬に、咬みつくに近い口づけを、わたしはくれた。見い出す。ふたたび、ずっと眼差しの捉え続けて居たに違いない、記憶の伴わない、継続する時間の中の継続する風景。公園通りの上の。昏さに慣れた眼にはむしろ、それらそれぞれの色彩をいよいよ濃くして前のめりに、突きあげた尻に顎で路面を這う女の形姿を
ぼくは吼え
こわれないで!
さらす。色彩の差異に於てしか
吼えていた。もう吼え
すべての月たち
知覚されない、ものとものとの
ぼくは無数の
銀いろの
区別。
月の上に
水の上の
境界。だからその
吼えた。餓えた獸
月たち、はかなく
背中。その
ぼくは胃袋もない
こわれないで!
二の腕。その
餓えた獸。吼え、ぼくは
だから
膝の方に投げ捨てられた、無力な、脱力しきった二本の、それら
口もない飢えた
それらただはかなくもうこわれさるよりほかにすべのないものたち
小刻みな
獸。ぼくは
こわれないでと
痙攣、——やめろよ、と。
思った。その時に、わたしは、「痛いふり?」
犠牲者のふりなんか、と、全身を傷めつけられた女に、わたしは不意に思いつかれた自分の言葉の冷酷さにおびた。腕にも体躯にも、殘した女の匂いと温度が感じられる中、まるで、はじめて見る暴力に怯え、怯えつつ嫌惡し、嫌惡しながら厭い、厭いながら憎み、憎みながら軽蔑し、軽蔑しつづけたにもかかわらず、そのなまなましい現前からは逃げ出しも、眼を背けもする気のない、…なに?
知れ
生きてる。…よ
気付けば女は殘酷で、
ぼくは
いま、あざやかに
無慚で、不憫で、むしろ
ぼくのいたみを
死にかけたいま
鮮烈なまでにただ
知れ
生きてる。…よ
きたならしい殘骸の形姿をさらした。
もはや女にその一瞥さえ投げず、わたしをだけ見つめていた夢路、わたしの眼差しの枠の外のかれのその気配、そして、わたしの足元のちかくに翳り。
昏い、ぜんたいが翳る夜のなかの一層あざやかに確実な、それら、なにかの——街路樹?翳りら。なに?
やがて、もうすぐ秋の、おそくなりはじめた日昇をやがてはるかな上方ななめに知るはずの地表に、それでも
朝は
人々は時に、なにごともなく
まさに朝は
通り過ぎた。駅の方は
夜を切り裂き
たぶん、もっと人通りは稀薄に
夕暮れのような
しらけながらも
その色を
多いのだろう。その
朝は
始発待ちの関係で。そこは人氣がないというにはあまりに、それら一組づつ、ひとりづつ、多くて二、三人づつの、それでも絶えない息吹き。人々。人間たち。だれを憚るともなくに、ただ纔かのささやき声しか立てなかった人間たちの流れは、途絶えることはなかった。
だから——なに?物音も——なんの?静寂?
静寂というにはあまりにも、…寂寞?無造作な程に…寂滅?音響に満たされていたことにはすでに——いつでも。気付いていた。車の——いつでも鳴りいつでも。音も、足音も、木立、葉の——いつでも鳴り響きいつでも。ゆれ。
ちいさな生き物の失踪。
どこに?
だから、…どこどこ?あるいは野生の…なになに?鼠の?
野生、半野生、ヒトに寄生した、それら猫?
猫。…にゃ
羽虫。
蠅?
いまさらの蚊?
もはや…蚊?血を吸おうとさえ…蚊?しない、…それともただ雄だったから?
音響。
ささやく
「こいつさ…」
聞こえるよ
知っていますか?
わたしたちは
「なんで?」
聞こえているよ
わたしの夢は
だから
「むかつくから」
耳があるから
やさしくなること
ふたりで
「なんで、こんな」
聞こえるよ
やさしく、もう
かならずしも
「お前のせいじゃない?」
聞こえているよ
せつないくらいに
ほほ笑み合い
「…なんで?」
耳さえないけど
やさしくなること
慈しみ合う
「お前が、ひとりで、…ね?壊したの」
聞こえるよ
みんなをそっと
そんなわけでもなくて
「やりすぎ」
聞こえているよ
あたためてあげよう
わたしたちは
「だってさこいつさ」
耳は噉われた。あの
知っていますか?
ふたりで
「かわいそうじゃん」
朝燒けの鳥に
わたしの夢は
響き
「お前に、ね?」
聞こえるよ
きれいになること
消え
「…まだ」
聞こえているよ
夢に見た
消え
「やらしい眼、するじゃん」
肛門の耳で
極樂鳥の白昼夢に
響く
「まだ、此の人」
聞こえるよ
見た、そんな
さまざま
「狙ってたんだよ」
聞こえているよ
あわい春の
もの音の
「生きてるよ。…まだ」
花に擬態した触手の無数に
木漏れ日のなかに
こちら、…
「飢えてたんだよ」
聞こえるよ
ふいに飛散った
唯中に?
「…ね?」
聞こえているよ
朝露の飛沫
どこかに
「きたっ…きっ…た、穢い顔に」
ぼくらはみんな
きらきらゆらら
此処に?
「まだ、此の人」
人間だから
ゆらゆらきらら
わたしたちは
「くっさい、体」
聞こえるよ
そんなふうに
ささやき、それら
「人間のふりしてる」
聞こえているよ
きれいになって
音の群れ
「くっさい、肌に」
口蓋の中の寄生花の交尾した蕊で
みんなをそっと
希薄な
「やめちゃえば?」
聞こえるよ
あたためてあげよう
かさなりあいなど
「うす汚れた」
聞こえているよ
知っていますか?
ふれあいさえ
「もう、…ね、」
眼球を喰む蔦草の歯に
わたしの夢は
ただ希薄な
「狙ってたんだよ」
聞こえるよ
ほほ笑むこと
響きの
「人間でさえ」
聞こえているよ
ふと返り見て
わたしたちは
「…變態なの」
虐めぬかれた骨髄に
あれ?って思う
知っていた。もうすぐ
「ヒトでさえ、もう」
巣食ったいつかの
なぜでしょう?
明るみはじめ
「…発情してんの」
翅の記憶に
どうしてでしょう?
明るみ始めた
「やめちゃえば?やめちゃ、やめ」
聞こえるよ
予想なんか、していなかった
空は
「俺みたいに」
聞こえているよ
そこにあるとは、知らなかった
もうすぐ
「やめちゃえば?まだ、生きてる」
ぼくを見なかった
あるかもねっても
さらす。もう、朝の
「お前みたいに」
あなたの耳に
思いさえも
どんな
「殺したげれば?」
聞こえるよ
そんな突然
どんな朝でも
「やりたいの?」
聞こえているよ
背後の日影に
さらすのだった。もう
「無慚じゃん」
あなたのひらいた
咲いていたのは
なすすべもない
「俺と、…」
やわらかな小腸その唇に
かわいい色を
気抜けした
「かわいそうじゃん」
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