流波 rūpa ……詩と小説078・流波 rūpa 癡多 citta ver.1.01 //…見て/なにを?/見ていた/いつ?


以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



どこへ、行くの?勝手にただ、共謀者としてすでにわたしを認めてしまったやさしい流し目。すこしも押しつけがましさの無い。にこやかな。強制などない、むしろ——いいんだよ。お前は、…と。

そのままでいいんだよ…と。

お前は、そのままで円山町のクラブにほんの数十分、そしてZIMAに錠剤?…なんの?あるいは夢路の常用の?それともかれのあの不意の疼痛の発作をともなう≪疾患≫を押さえる爲?だったら、特殊な?そんな藥、あったっけ?…まさか。

そんな、如何なる手段など。行き場所も

   あなたはあなた

      救済とは

告げない夢路は

   救われる手立てもなく

      欲望の充足

だから、いつもの普通に

   あなたは

      だったら神とは

戯れめかして…出ようよ。もう飽きクラブを出て、突然…飽きたよ。で笑いながら走りだし、その…でしょ?もう飽きネオン照明の…飽きたよね?下の(——橫の)路上の…でしょ?(——斜めの)…じゃない?

夢路は、わたしと(——向こうに)女を(——こっちに)置いてけぼりにする気など(——そこに)最初からない。弄ぶように、でも、なんの見下しも邪気も無くて彼は、赤裸々に笑う。舞うように走り、走るように嘲り、時に、立ち止まり、嘲るように荒れた息を、走り、愚弄するように走り、後ろ向きに二、三步、そして

   しあわせに、して

      その定義は?

傾き、身を傾け、伸ばされた長い

   しんじられないくらい

      その語の

その髮。照明に、一瞬

   しあわせに、し

      正確な定義は?

ピンク色の色を帯びた気が、「待ってよ」女は、たぶん廻りはじめた錠剤のせいで時に千鳥足になり、よたつき、ふらつきかけながら追った。わたしを、そして——だれ?慎重に、——見つめてるの、だ詰め寄られ過ぎない距離を——だれ?開けた微妙な——そのゆれるひらいた昏い綺羅めく虹彩に。夢路を。いつか

「どこ行くの?」

すでに女は

   ほほ笑みは

「ひどくない?」

わたしたちの

   世界をほらいま

「…ね?」

どちらにも

   きれいにしたよ

「夢っち…」

弄ばれながら

   すなおな笑みは

「…ね?まさか、さ」

公園通りを

   蛆さえ救う

「人間の屑?」

のぼった。倒れる寸前のやわらかな傾斜に知る、その時、自分の身体固有の確実な直立を…って

   知った。その

      ほら。それら

なに?見せて。軈て

   その時に

      取り殘され、存在

公園通りの…縫うように

   知った。もう

      人々の

走り?一番上の

   何度目かにも

      無数。通り過ぎ

平らな路。…かいくぐるように

   ふたたび知った。やさしく

      取り殘され

走り?ふらつく

   やわらかな

      すれ違い

女は。時に…迂回するように

   たたびいた

      取り殘し

走り?心配そうな

   雲たち。夜の

      追い抜かれ

笑うわたしたちの…あれ?

   うすい

      取り殘され

だいじゅぶ?眼差しの中に

   雲母の

      それら

それ違う、…身をかくすように

   向こうに、しろい

      返り見られ、存在

走り?人々の

   まるい月。それは

      人々の

眼差しに時に…おちょくったように

   金色の

      無数。いつから?

走り?見い出されつづけ

   輝く輪を

      あなたは、いま

垣間見られ?…ながら笑うようにあえぎながら

   描き、もう

      いつ?…あなた

走り?ふらつく

   あまりにも

      あなたたちは

ひっくりかえって、…えづくように

   いたましいほど

      存在。通り過ぎ

走り?たおれる寸前の

   かがやき

      取り殘され

女。まだ、神宮の杜まで二百メートル以上(…たぶん)ある。夢路は立ち止まっていた。だから、いつの間にかかれを、ほんの数歩だけ通り越し、振り返って、いきなり至近の夢路の髮の匂いをわたしは嗅いだ。女は、わたしたちの、むしろなんの邪気もないやさしいほほ笑みのなかに見つめられながらただ、夢路にだけ近づいたその緩慢な步み。目標の——やん。

   みだれ、ちゃった

もう立ち止まって眼の前に有る事実が——やん。

   髮さえ、ね

もう彼女を安心させたのか。それともちょうど、藥を沁み込ませた肉体のそんな——やん。

   みだれ、ちゃった

もう時期だったのか。女の瞳孔にもはや目の見える瞳孔の色はなくて、だから——やん。

   眉さえ、ね

もう赤裸々に虹彩は、その何処かの光りの何かの反射をだけ煌めか「…なにやってんの?」

   みだれ、ちゃった

ささやきかけた瞬間に、夢路は

   口さえ、ね

女を殴った。後頭部をその

   みだれ、ちゃった

髮ごとつかんで、いちばんやわらかな鼻の

   目さえ、…あれ?

突起を。

倒れもしない。

眼を閉じさえしなかった。女は、——なぜ?その加えられたさまざまなうちのいちばん苛酷な暴力の瞬間にも。むしろなにも見えてさえいなように、眼を

   見てるよ。ほら

      硬いよねかたっ

はっきりと

   あれは樹木、だから

      アスファルト。いま

見開いたまま、——こいつのせいだよ、と。夢路はそう

   街路樹。黃色の

      硬いよねかたっ

言った。女のかたちを、そのイノチをは奪わないように

   幹の青白い

      コンクリのブロック。いま

破壊していく辛辣な

   葉の群れ

      硬いよね。かっ

暴力、むしろただ夢路本人の爲だけの中休みのみじかい一瞬に、「お前に手、出そうとしたから。」ささやいた。ふと、思い出したように、わたしの耳元に。そのくせ、その捥にわたしを抱きしめもしないで。女はその手を——手のひらを。地にふれない。それが許されざる——指先を。禁忌でさえあったかのように。時に——爪を。髮の毛先と、いつもの——指の股を。足の裏以外には。倒れかければその度ごとに捉まれ、羽交い絞めにされて、そして夢路にぶちのめされたから。夢路の…血は?拳に、掌の底に、かかとに、足の…血は?スニーカーの甲に、肱に。そっとうしろから抱きついた?…すきっそんな

   血は?その

      見えないよ。見え

わたしの腕の中で。あるいは、側頭を兩方から押さえた

   鼻孔の吹き飛ばすべき

      見えなもうなにも

掌のなかで。悲鳴も無くて、叫び、だから、叫びも無くて、叫んでいた。わたしは

   血潮は?…血

      なにも見え…噓。なにかは

泣き、泣き叫び、だから、叫び聲も無くて、叫んでいた。わたしはむしろだからその

   血は?その

      見えないよ。見え

痕跡に。その、…あるいはだからこそ、その

   唇の吹き飛ばすべき

      見えなもうなにも

あざやかすぎた移り香。痕跡、

      なにも見え…噓。なにかが

   血潮は?…血

      見えな…くらっ

…抜け殻のような?風化しかけの?滅びかけ?砂になりかけ?…吹き飛ぶ?だからもはや、実際には

   血は?その

      昏いからかな?

もはや、もはや不在の、もはや

   兩目網膜が吹き飛ばすべき

      見えな…くらっ

痕跡。それら、足跡の群れやわらかな、ひたすら水平に

   血潮は?…血

      足りないの光り?

果ても無く、盡きること

   血は?その

      見えな…く

無く、地平線さえあらわさない奇蹟の

   毛根付け根に生息したバクテリアが吹き飛ばすべき

      目、ないとか?

眼差しの中にだから

   血潮は?…血

      見えないよ見え

如何なる果ても容赦なく無く。

   血は?その

      見えなもうなにも

ふみつけられ、だから、やわらかな

   歯ぜんぶのエナメル質たちの恥ずかし気なかがやきが吹き飛ばすべき

      なにも見え…噓。なにかを

土は踏みつけられて、——だれ?

誰が?

土を、…だれ?

誰に?うつくしい、雄の。

その、うつくしい色彩の乱舞たち。

彼等、無数の牙と、狂暴な爪のある雄の孔雀たちが(つまり、彼等は、稀有な畸形だったのだ)踏みつけ、——痕跡。

紫色の色彩。その群れを香りのようにどこか、空間になごらせたままたちさった、…もう。

すでに、もう立ち去って、そんな無数の、際限ない足跡に、溜まった

   とどおこる

      滞留

雨。雨の、その、

   こおる?とど

      停滞

雨。

   とどこおり

      さざなみ

しずく。

   こおり?

      微細な

雨。

散る。

もう散った。

限りもない飛沫。

もう降った。

散った雨の…雨。

厖大なそれら水たまり。

の、群れ。

群れ。

群れら。

群れそれらに映る、——なに?

すさまじい数の、——なに?

かたち。

   きらきら

かたちら。

   きら

光り。

   きらきら

光りら。

   きら

色彩。

   きらきら

色ら。

   きら

かたちたち。

かぞえるべきもくない無数の白い、——色彩。

銀いろの月。

…厖大な。

それら無数のつきることない音のないきらめきの大量。

すべての水たまりの水面は月。

そのすべての所詮すでて幻像のすべてに、ゆらいだ。

ゆらぎ、それらのそれらゆらぎ。

色彩の無い、その。

それら。

翳ろう月の綺羅。

水面、それぞれのひとつづつのひとつづつは翳ろう月の綺羅。

だからだたそれらは

月。すべて、ただ

   きらら

ひとつの。だからだた

   きら

それらは

   きらら

月。だからそれぞれにただ

   きら

ひとつの頭をわたしは、やがて

   きらら

つっぷし。







Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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