流波 rūpa ……詩と小説075・流波 rūpa 癡多 citta ver.1.01 //…見て/なにを?/見ていた/いつ?


以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



      ら、ららっ

くぐり抜けた

   みづからの

      さ、さ

バリケード

   ひとりで

      らら、っ

鐵の棒、…たぶん褪せた青。そして

   形姿には

      さ、っら

コンクリート・ブロック?そして

   返り見もせずに

      ら、ら

プラスティックのなにか

   もう、たぶん、いま崩れ

      さらっ

寄せ集めの造形。それら

   ただ、そっと

      ら、らら

かたち。さまざまな

   見上げるのだった

      るらっ

くぐり、ひとり、避け

   流沙は

      さ、さ

くぐり抜け

   たぶん、いまくずれ

      らさっ

翳り、その

   すでに

      るらっ

バリケードの

   くずれかけの

      さ、さ

投げた、長い

   もう、鳥さえたぶん

      さらっ

朝の翳り

   いま、流沙は

      るぃ、ら

息を、…その時

   すべての

      さら、る

止めて?

   鳥たちさえ

      るぃ、ら

その須臾に

   最後にたぶん

      さらら

息をさえ止めて?

   いま、鳥たちさえも

      らら、っさ

くぐり、その

   わたしたちを

      さらら

翳りを

   流沙は

      ら、ら

アスファルト

   最後のたぶん、いまその鳥葬に

      ららさ

白濁の…散乱

   鳥たちさえも

      さらっ

綺羅めきの

   弔うべき

      ら、ら

上を踏んで…容赦なく

   鳥たちさえ

      るぃらら

くぐり抜けた

   くずれかけたぶん、

      さらっ

光り。見上げれば

   いま滅びたあとの

      るぃら、さ

あざやかなそれら

   月に開いた

      さぃら

青の、深い…わずかな霞

   ひとりで

      らさ、さ

しかもただ深い

   金色の

      ぃるら

青。時に流れる

   流沙はたぶん

      るぃるらっ

雲の…静止した、

   いま燃え上がる孔に

      さ、るぃ

かたち。陽炎のような

   だから流沙は

      さら、る

燃えあえがる

   流れ落ちる夢を見ていた

      ぃいるらっ

色彩のない、その、「陽炎のような、…」と、わたしはつぶやき、その「…でも大丈夫」と、「助けにきたよ」言って笑むやさしい眼差しのユエンの、やわらかな唇を見ていた。聞く、そのつぶやきの聲を、心の中に、つぶやかれた「陽炎のような、」と、——なにが?

   でも、ね?

      なに?

なにも。

   ん?…ね、

      どうしたの?

もはや、陽炎など、

   なに?

      …ん?

なにも、と。知っていた。すでに、結局その正体が、あるいは何の因だったのか明示しないままだったとしても、それに不思議に惹かれる謎めきを感じつづけていたとしても、もはやなにをも暗示さえしないそれ、それら、もう、だから天井のそれら陽炎は、だからそれらはすでに失せていてそれら、…愚弄?

   だれですか?

      よいしょ

         じゃ

それは、だから

   そこで

      うんしょ

         じゃ、じゃ

愚弄?その意図もなく、もとから

   顏を洗ったのは

      こらしょ

         じゃ

意識さえ持ちあえわせない、なにかの、あるは何らかの事象の、——それはしかも愚弄?…まばたく。

見ていた。

至近に、まばたくユエンを。

そっと、音もなく立ち上がると——噓。

きしんだ。

なに?

ベッド。かすかに、…ユエンはわたしに近づいた後で、まばたき。

なんとも、ユエンはなんともつぶやきもしなかった。そして歪む。ながれるように、その、ユエンとわたしの間にすでに、ゆがみ流れるようにゆがむ。いつからか存在していた(前、…わたしたちの)翳り、ゆがみにじむようにゆがむ。その(前に、わたしたちの)色彩の無い(出生、その)死者のゆがみかさなりあう(遥かな以前から?)群れのゆがむのを、わたしは見ていた。かぶさるうように、ユエンに死者ら。

それら色彩のない死者ら。は、本当にかぶさりさえして死者ら。

それら色彩のない死者ら。かすかにさえ、ふれあいもしないくせに。ひらかれた口、のような開口。孔。あるいは、それは無数の肛門のひとつだったとでも?

それとも夥しい

   どうしたの?

数限りない毛孔の

   …ね?

特権的な

   なに?

畸形の一種?

   …ね?

肥大化した

   見てる?

稀に見る

   ね?

稀有な

   なに?

ただの孔

   …ね?

鼻孔のひとつ?

   なにを、…

拡げながら

   ね、いま

失しないながら?

   なに、見てる?

その、…ひろがりながら?かたちをさえも

   ね、なにが

失しないながら

   なに?

ゆがみ、纔かな

   なに、見える?

變化さえ見せずに

   なに?

ゆがみ、纔かな

   どうしたの?

崩壊さえ

   ね?

見せず、ゆがむ。なにも

   なに?

ほのめかしもせず

   …ね?

いままさに

   なに?

死者ら。それら

   どうしたの?

すでに

   …ね

わたしたちには(——だれ?)、なんの

   なに?

かかわりさえ

   …ね

すでに

   いま、なにを

なんのかかわりも無くすでに

   ね、…だから

死者ら。それら

   なにを?

眼醒めつづけていた

   ね?

それら

   いま

死者らの

   見てるの?と、ささやくユエンを無視し、その額に口づけた。知っていた。ユエンが、そもそもの当初から求めていたもの、…正確には、たぶん、当然の、あってしかるべきものとして、謂わば予測の対象でさえない以上、その意味では予測さえしていなかったやさしい、再会の、不意の口付けを、——やだ、と。

   いたいよ

      開けば?…ほら

なんの聲もなく。

   いたいだけだよ

      腐った蕾も

ただ、その気配、なんのかすかな身じろぎもない、…なら、その、だったら、気配。あざやかな、あきらかな、なぜ?…なら、どうしてこんなにも赤裸々に、と、それ。

あるいは、思ったのだろうか?(——だれ?)これこそが、と、求めつづけていた?…それ、ドアを(——なに?)あけてもらう直前の、閉められたドアを(——いつ?)見つめる瞬間にも?(——どこ?)もっと前、もっと、乘り込んだエレベーターの中でも?…嗅いだ。その…これ、何の匂い?…なに?もっと、

   ほら

      やわらかな

止めたバイクを返り見ず走るひとりだけの足音と息遣いの中にも?…汗。匂わない、まだ、でも汗、もっと、

   羽の

      あなたの頬に

久しぶりに走らせたバイクの上の風圧の音響の中でも?…そして匂う。排気ガスの…なつかしいの?もっと、

   音。羽

      慥かに

家を出る時、さらに、服を着替え始めた時にも?…ブラの跡がついた、そんな、ついた?実感?ついた?それはついもっと、

   の、音、あな

      瘠せかけた兆しを

朝の、日課のビタミン剤をミルクで飲み込むときにも?…血と、筋肉、それからもっと、

   たが、ふり

      見ていた。ほんとに

朝の目覚めの直前の時にも?…なぜ?かるい頭痛はもっと、

   む

      瘠せた?それとも

夜の眠りの、あるいは眠らなかった意識の向こうの鮮明な心の中にも?…夢。たぶん、でも、どんな?どんもっと、

   けば、左の

      思っていた、逢う前から

眠る前の洗う髮の飛沫の散った瞬間にも?…おもい。なぜ?濡れた、…なぜ?…重くもっと、

   ほうを、ふ

      たぶん、すこし、太った

明日、と、明日行かなきゃと不意に思い立つ瞬間の、唇のかすかな上下にも?…いる?…ね。まだ?…ね。まだいる?…ならもっと、

   り向け

      あなたを、しかも

ネット上に、外国人接種の告知を認めるまえにも?…スマホの背面のあたたかみは、指の腹にもっと、

   ば、そ

      なんら想像力の

暇つぶしにいつか、ひとりで開いた日本語の古いノートの誰かの落書きの端にも?…知らないから。だれも、かれらもっと、

   の羽

      行使もないまま

ワクチン接種の後に、飲みこもうとしたいつもビタミン錠、その舌にふれた触感にも?…いたみは?なぜ?わらわないの?いまもっと、

   音、奇蹟の

      やだ。ちょっと

久しぶりの音声通話にわたしの聲を聞いたいつかの午後の深いおだやかな日差しを見る眼差しの隅にも?…もういいよ。もう、無理してもうもっと、

   よ

      ふとっっちゃったよ、と









Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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