流波 rūpa ……詩と小説074・流波 rūpa 癡多 citta ver.1.01 //…見て/なにを?/見ていた/いつ?
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
わからないよね、眞砂さん
不在の擬態
「ワクチン、だから」
まだだからね
息をひそめて?
「わたしもうったしね。もう」
まだ
沙羅。その
「ここらへんの、ひと、も、ももう」
眞砂さんは
あざやかな
「だから、ね」
痛いし、あれ
褐色の肌を
「インターネットで、たぶん明日」
おもい…——おもい?…あれ
さらし
「…か、明後日?…ワクチン」
ビタミン。いいよ
ユエンの
「眞砂さん、も、もう、だから」
わたし、だから
太ももの先に
「もう、外人も打つから、ね。注射」
買ってきた。ビタミン
さらし
「ワクチン、でも」
溶かして、飲むよ
息をひそめて?
「たぶんアスチャだよ…なに?」
鬱まえ、売って
擬態
「あれ、発音、…わかる?アスチャ?」
打ったあと
不在の擬態
「日本語の…発音、アスチャ?」
熱、ひどいよ
息をひそめて?
「登録しないと」
つかれて、でも
やわらかな
「だから、わたし」
わからないよね、まだ
日差しの
「ちょっと。待って」
眞砂さん、まだ
ななめの綺羅に
「明日、かな?」
これからだから
息をひそめて?
「もう、眞砂さんも」
わからないよね
擬態
「終わった?」とわたしが云った時、一瞬、そのユエンは聞こえないふりをして、そして、ややあって顏を上げ、しかも見るとも見ないともなく、不意に、だから…ん?やがて、わたしを…ん、んー?見、見つめて、二、三秒だけ…ん?見つめて、…あっ、と?…なに?顏の…ん?筋肉の、むしろ勝手に雪崩れるように、突然…ん?なんとかほほ笑むと「…まだ」つぶやき、——なぜ?
はぁ…と、その無意味な茫然自失。ユエンはひとり、そして聲を立てて笑った。
「すぐには、無理だったよ」と。
邪気などなにもなくて。沙羅はその
響き、ひび
き、ひび
笑い聲のふるえる
ひびき、罅
び、きひ
ソプラノ、甲高い
罅われ、われように
きび、ひび
笑い聲、——しあわせ?耳に
ひび、響き
ひ、きび
なぜか耳に殘り、…沁み込むように。沁み込ソプラノ
罅、響く
び、ひび
その下、纔かな
聲、わらう
き、びひ
その下に、
息?…聲
ひき、び
——ふれらるまま…光り。それら
吐かれる
びび、ひき
ふりそそぐままに?ゆれる
聲、群れ
きひ、び
響きが、…聲。ひび。聲?ひ。その
響きの
び、びひ
息遣い?…響きがもはや
群れ、罅
びきひ
微動だにせずにユエンは、見ていた。…なにを?見ひらかれた眼差しに(——だれ?)縮こまった、丸まった(——なに?)沙羅、わたしたちには背を向け、かたくなで、卑小な、卑屈な、自虐に染まった、陰湿な、救いようのない、ちっぽけな、病んだ、壊れかけの生き物にさえ、沙羅は、沙羅、その沙羅の背中の褐色の色は。
その白濁も。
息吹く。
綺羅のわななきも。
笑った?…わたしの…笑ってる?眼差しの中に
「大変だったって云ったよね?」
蜥蜴
「だれが?」
なぜ?
「ユエンさん、さっき」
壁に
「わたしが?」
白い
「ここまで來るの」
壁に
「いま?」
蜥蜴
「…じゃないの?」
這う
「すごく、大変」
ひとつ
「通れたの?…道」
ふるえ
「通れないよ。でも」
葉の
「じゃ、どうやって、…」
ふるえのような
「通れる、道も、でも、ある、よ」
ふるえ…うごめき?
「バイクで?」
その四肢の
「途中、まだ、半分くらい、」
蜥蜴
「一部?」
壁
「封鎖?」
白い
「…ロック・ダウン」
壁に
「英語?まだ、」
擬態。…にぶく
「終わってないよね?」
白。だから
「來週?…たぶん」
うすい
「いつ?」
黃いろみのある
「來週かな?…明日かな?…でも」
淡い、擬態
「どうやって來たの」
あなたの、だから
「來れないよ」
アジア人?
「許可証…ないの?」
その、あなたの
「弟は、でも」
白肌のような、その
「何で來たの」
ユエンの
「バリケード?…警察官、いなかったけど」と、操作を止めて、そのユエンはわたしを見ていた。困り果てた顏を素直に、いまさらにさらして。「でも、バイクじゃ、通れないから。だから」
大変だよ、けど
だから、でも
「どうしたの?」
けど、來ないと
手伝わないと
「バイク、置いてきた。」
だから、ほんと
だから
「どこに?」
本当は、でも
ひとりで
「ちょっと、向こう…五百メートルくらい?」
來ないと。だって
眞砂さん
「歩いてきたの?」
困るよ?眞砂さん
困るよ?
「ちがうよ」
ひとりで
できないよ?
「じゃ、どうやって」
困るよ?
だから、
「走ったんだよ」故意に地団太を踏んで見せるユエンを、彼女の爲にそっと笑った。「走ったの?」
「走ったんだよ」
「なんで?」…怖いからだ、と、ささやいた。かすかに唇をすぼめて、不意に、ユエンは、——なんで?そうわたしが、…なんで怖いの?口にする前には、…なんで?ユエンはすでに、…なんで?
だって、…ね?
なんで?
翳り。あなたの踏んでいた
と、だれも、いま
こわいの?
アスファルトに
だれもいま、ここ
あなたは
翳り。蹴りすてた、そこ
ロック・ダウン
なにが
橫殴りの
だから、だれも
こわいの?
翳り
道に、いない、から
まだ?
長い、ななめの
道に、だれも
こわいの?
翳り。返り見なかった
だから、と、——怖いんだよ。
なんで?
路面に、その
ユエンはそう云って、そして唇と——ぞろぞろ繁殖。舌にその最後の——ばらばら繁殖。母音のかたちを——びらびら繁殖。くずさないまま、…と、——くばくばだから、「なに?」
「…わかった?」不意につぶやき、彼女はわたしの爲にだけ笑んだ。
ひとりで。
その聲もないままに。ユエンは
流沙は
さらら
いずれにせよ、此処から
たぶん、いま
さらら
それなりに遠く、決して
ひとりで
ららっ
近くはない、ただ
流沙は
さ、ぃさら
遠すぎもしない
くずれかけの
ららっ
どこか、その
砂のように
さ、ぃら
はなれた、そんな、どこか
ひとりで
らぃら
そこ…どこ?…、に
たぶんいま、くずれかけの
らさっ
放置して
崩壊していく
さ、さら
彼女のバイク
たぶん、いま
ららっ
その、慥か
地上の沙漠の砂のように?
さ、さ
白い?…たぶん
どうして?
さ、さ
放置して、だから
流沙はたぶん
らさっ
走った。ひとり
いま、その形姿
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