流波 rūpa ……詩と小説062・流波 rūpa 癡多 citta ver.1.01 //…見て/なにを?/見ていた/いつ?
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
こう聞いた。
その女、——名前は忘れた。彼女は(…わたし、ね?)十四歳の時に(空、ね?)最初の(空、とんだこと、ね?…あるんですよ)妊娠をした。相手が(…空?)誰であるのか、少女は(——むし?)だれにも(あたまんなか、蟲、)かたくなに云わなかった。それによってむしろ(…いるの?…蟲)父親の容赦ない詰問、更には激昂した数度の殴打と、あるいはは母親の(…と、わたしは)容赦ない折檻、更には(その女に云った。だから)答える暇もない矢継ぎばやの詰問にいたぶられることになろうとも。そして敎師たち。担任敎師は、また生は活指導敎員も、または担任・生活指導敎員・母親の四者面談の時にも、それぞれにそれぞれの口に同じ中学校の生徒なのかどうか尋ねた。おのおの、その時々のそれらさまざまな言葉づかいと流儀、息遣いと眼差し、気配とたたずまいと聲色とで。少女は…なに?ただ同じ沈黙を…なに?くれた。伏し目になるでもなく、恥じて…なにが、その時、そのこころにふれた?言葉をうしなうでもなく、反抗のポーズをことさらに取るでもなく、挑発するでも…なに?なく、まして…なに?哄笑するでもなく、…え?
知った
理解できる?いつか
なに?
からだには、血。だから
有り得た風景。その
それ、日本語?
血が流れるんだよ
不意打ちの雨
例えば、そんな?これら殆どはもちろんわたしの想像であって、事実のありさまは知らない。そして彼女は…いま、ね?知っている、ささやき聲の…いま、ね?
聞こえたのは騒音。
それら轟音。群れ。ささやき聲の群れ。知っていた、少女のいないときに、だからその影のふれないどこか別の明るい場所で(…ひかり、光り、光)クラスメート、上級生、下級生、それぞれに(…光り差す場所?)それぞれの(光りあたる場所?)敎師がそれぞれの(光りふれふりそそぎぶちあたりくだけ散ってさんさ)さまざまな言葉づかいに、流儀に、それぞれ問いただし、——知ってる?
知った。…わたしは
理解できる?いつでも
…いやぁ…
体中を、血が
有り得なかった風景。かつ
違うの?
満たしてるんだ
見飽きたその、雨
はぁ…彼等の中に父親がいないことを確認したことを、知っていた、少女は、また、だれもだれかとの交際の情報をなど知っている事実のないことをも、知っていた、少女は、事実、彼氏などいなかったから。問いただせば問いただすほどに、少女の相手が誰かという肝心の情報以外の情報のみが、だから無数の口に無造作に(…慎重に、…ためらいながら、…恥らいながら、怯えながら、悲しみながら、憐れみながら、軽蔑しながら、
おびえてる?
なぜ?
あざけりながら、)こぼれはじめた。小学校の時に
なぜ?
ふるえてる?
知能障害のあった同級生を虐めた。それにはクラスの大半が多かれ少なかれ関わっていた。ただし主犯とされるべきは少数の、——無実。だから、特出した優等生グループの——無実。だから、犯行で、周りが——無実。だから、…ね?
凡庸なぼくたちわたしたち、みんな無実。口をはさむ雰囲気ではなかった。裸にして用具室で放尿させた。そのあと、自分で職員室に失禁を報告させに行かせた。下着を
埃りって、…さ
くさっ…は?
脱がせ、学校の裏の
なんで?…さ。あんなに
くさっ、…は?
家の庭の樹木に引っかけて
匂いが、あったの?…あんなに、
粉っぽ。舌に、…くさっ、
さらした。口臭が匂うと云って
あんなにちっちゃいくせして、さ
は?…粉っぽ
呼吸をしないことを
あんなに、さ。あんなに、
は?…埃りって
強制した。腋の下用の
鮮明な
くさっ、…は?
スプレーを咥えさせ口蓋中に自分で噴出させた。存在消滅ごっこと称して、…ごほごほ。見えないふりをして彼女を…ごほごほ。こづきまわした。埋葬ごっこと…ごほほほ。称して、公園の…ごほごほ。砂場を自分で彫らせ、自分で自分を埋めるように強制し、検便の瀟洒なビニール・シールを額にはらせて
傷み。それは
登校させた。体育館の、古い
なに?…これが
だれも使わなくなった和式便器に
傷み?それは
食べ殘したパンを置いて、敎育と称して食べさせた。若干ぬれて重くなったやつ。使い捨てカメラで撮影し、その輕いフィルムつきカメラ本体を呪い箱としてみんなに廻した。現像は…やばいよ、これ。しない。…やばすぎ、これ。足が
幻像?…ほら、いま
その翳り、きらっ
つくから。その他。とまれ、特定の
足元のさきに、日差しはななめに
その光り、きらっ
交際相手はいたためしがない。「…えーあの子って」小学校の
ゆらめいた、それは
きららっ…足元のさき
四年の時に、「…でも、そんな、うちらも別に、仲良くは、ないん、で…」Aくんという同級生に、バレンタインデーに「…ていうか、あんまり、話しする、とか、そういう子じゃ、ないん、で…」チョコレートを渡した。Aくんは「…でも、それなりに、話は、まあまあ、してた、ん。ですけど、な、感じ、で…」受け取ったあと、その夜、友人の男子学生を介して電話で断りを——ごめん。
あっ、なに?
ごめん、おれ、…
あっ、なに?告げさせた。翌日にはクラスの大半が少女の告白と失敗を知っていた。Aくんがあっ。気持ちあっ。惡がってあっ。る、と、ふいに眼の前に群れた女友達の、そのひとりが「…すっげっぇきもちわりぃーまじうぜぇーとかゆってるようなかんじのやつだからさあいつ」深刻な顏で「…あいつのことやめといたほうがよくなくない?」アドバイスしていた。あいつ、
大丈夫
泣かないで。だって
まじ、さ…あたま
大丈夫だよ。もう
昨日、世界は
まじ、さ…おかしいよね、と。その
絶望しかないから
滅びたからね
女はそう、わたしに云った。「その子、…ね?一番、…ね?仲、…ね?良かった。…から、…ね?気を、…ね?使って、…ね?」
「からかわれただけじゃん?」
「忠告?…みたな」
「おもしろがられただけじゃん?ぼろくずみたく捨てられちゃったからね。おまえ、…せめて哀れみ的な?まだ糞餓鬼でしかも人生はじまったばっかなのに、殘念。いきなり人生終了。鼻かんだ後のティッシュみたく、お前、ポイ捨てられてんの。うざいから、ぴって」
「そこまでひどくない」女は笑って、故意に煽ってみせた不遜な…なぜ?わたしの顏の前で、…なぜ?泣かせようと?だから不意に、…いまさら泣くわけないのに。怒らせようと?息を…なぜ?いまさら怒る吸い込んだ。女は。ささやく、——眞沙夜って、…ね?いい匂い、…ね?する、…ね?六年の時、…ね?卒業式間際に失禁した。国語の授業の時に。それからの二時間、昼休みまで椅子に座り込み、机を押さえさえして決して席を立たなかった。内股に、ぬれた肌のぬれた感覚が、乾いたそれに完全に變わるのを待つ。激しく…變わる、よ、みんな。まばたき、周囲を…變わる、よ、みんな。監視し、青い顏色で、必死に…變わる、よ、みんな。ごまかしてはいたが匂いでだれもが——あっ、くさ。気付いていた。その——あっ、くさ。前後から少女は——あっ、くちょっとおかしくなっていた。…なにが?
まばたく
綺羅きら
今日は、ね?
ん…
ななめに侵入した
深い午前は、いつも
今日も、ね?
どんなところ?
窓越しの
綺羅きら
今日は、ね?
だから、全体的に、「…じゃないっすか?」成績は良かったが、勉強しているところをだれも「…じゃないっすか?」見たことがない。小学校の五年生から「…じゃないっすか?」宿題さえしなくなった。云った。友達に、もう、大人に「…じゃん?」從うの、「…じゃん?」嫌だから、と。「反抗期入ってる、…じゃん?…わたしら、」中一の時、バスケ部のBくんに(——忘れた、その)告白した時、ごめん(女がわたしの耳元に、昨日のことのようにそっと告げた名前は、ただ)おれ、もう(わたしの耳たぶを)彼女いるから、と(慰撫しようとしたかに息を吹きかけ、だから笑うようにそっとあたたかな吐かれた息の温度)みんなはだからささやいた、あの子(だからその、ふれていた)心、ないよね、と。あの子(温度だけが。そして)友達の(匂い。…)彼氏に、さ、(猫の口のそれのような)なんで、さ、(かすかな?…口臭)なんでいきなり告れるの?…それでもニンゲン?どの面さげて?——それでも
息を飲んだ
だれ?
ニンゲン?頭、おかしいの?——それでも
なぜ?
いま、ほほ笑みかけたの
…じゃない?
前ぶれもなく、あなたは
なぜ?
ちがうよ。意外に根性、腐ってるの。女の(…わたしが出逢った時には、——つまり)家族構成は、両親と(女がはじめて)及び兄ひとりと(店に來たときは、ということだが、彼女は)及び妹(二十歳、と)それから祖父?(そう連れに紹介されていた。とは言え、たぶん)…知らない。その正確な(見たところ二十五、六の)生存の有無は、祖母の(なぜ、そんなサバを読んだのだろう?女は)生存の有無も、女は(まるで、はじめて)それには片言しかふれなかった。まるで(ホストという生き物を、だからはじめて)生死を規定しない遠く(見たような、)淡い思い出話(…ね?)の、ような、片言の(…知ってる?)とまれそもそもわたしは(…ガチで、わたし)ほとんど(ヴァ、ヴァ、ヴァ、)興味が(ヴァージンだから、…正眞正銘、血統書つきの)なかった。彼女の(さ、と。)私生活には。
「かつ、子持ち」
「おまえが?」
花の言葉は
「意外じゃない?」
「…そうでもない、よね?」
花言葉
「なんで?」
「おっぱい埀れ気味だから」
心の言葉は
「見てないじゃん。まだ。見る?」
「皴さえよってたりする?」
こころ模様
「見たいんだ…」
「よれよれでしょ?」
風の言葉は
「それ、もはや、すっごい」
「ちがうの?」
それ、…もはや
「訴訟レベルのセクハラなんですど」と、女はわたしが笑みかける前に、ひとりすでに笑っていた。その神経質な聲。笑う聲はいつも、そう。わたしは
いつですか?その眼
孵化した蝶の
十九歳だった。だから、女のほうが
目覚めたのは
唐突な死。ほら…
年上だった。女が本当に
いつですか?そ
あの、嵐の朝に
二十歳だったとしても、少なくとも数か月は。見立てどおり二十五、六だったとしても五、六年は。千駄ヶ谷のアパレル系の小さな会社の従業員だった。ごくごく細い客。一か月に一度
会いたかった?
なぜ、あなたは
ぱーりぃ…
來るくらい?会社の先輩と一緒に。そして
まじ?
舌の先を咬むように
ぱぱぱ、ぱっ
店の雰囲気の中で、その
ちゅうしていい?
先っぽだけを咬むように
ぱぁーりぃー…
ふたりだけがあきらかに
噓
あやうい、その
ぱっぱっぱっ
≪浮いて≫いた。女は云った、付き合っている男がいる、と。
「…これ、でも、秘密だからね、」と、つまりその
でもね?
ってか
ぱっ
連れの女のほうには。だから
でもでもでも
っていうか
ぱぱっ
連れのかたわら、わたしにこれみよがしに身を押し付けるように、そして
でもさ、
てかてか
ぱはっ
耳元に唇を、その
なに?
上半身の匂い。なんというか、檜に油を塗ったような?(…なぜ?…どうして)香り。…なに?しかも
なんですか?その
香水など(そんな)使ったことは…なに?ない(難解な
耳にこぼれる群青色の蔦
連想をわたしは?)。しぃぃぃぃ…
「秘密?」
「だってさ」
「いいよ。…別に」
「口、固い?」
「めちゃくちゃ、おれ」
「まじ?」
「お前に興味ないもん」
「…妬いちゃうから、さ」
「だれ?」
「後ろのやつ」
「連れの?」
「あの人、まじ」
「そもそも、…さ」
「ああ見えてさ、すっごい、」
「まじ興味なさそうだけどね」
「…不幸だから」と、連れは三十のくせに男も知らないで竹下通りの
昏い光りが
ゆらいだ睫毛
ショップに卸ろすゴス・ロリの服を
だから朝から
その、瞼がかすかに
仕立てている。そう謂った。いままで満たされた
昏いしずくが
動くたび
記憶もなければこれからも
光りとともに
きらっ、とゆらいだ
満たされるべき可能性もない。そんな、本当かどうかも知らない、本当ともウソとも言えない「タイヤ・メーカーの御曹司で、」
「彼氏?」
なに?
かわいいね
「結婚前提なんだけどさ」
「なんでタイヤなの?」
なに言った?
みんな、ぼくらは
「知らないから、実際」
「いつ?」
なに?…いま
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