流波 rūpa ……詩と小説049・流波 rūpa 癡多 citta ver.1.01 //なぜ?/だれ?/なぜ?/いま、あなたは
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
まるで
眼玉からついばむってこと
窓とベッドの間、華奢な女の
なにも見ていなかったかのように
知ってた?その朝
横向きひとりぶんの
事実
ただもう、かけがえもない
纔かな隙間にその
いつかに夢見た
その朝日の中で
身を上手に滑り込ませ、窓の
眼差し以外、もう
静かにそっとただ
向こうに海を
眸をさえ持っていないあなたは
もう干からびていくだけの
見ていた。…たぶん。
がらんどうの
死者の肉体の
そこで、わたしに
眼窩をさらし
ほら、その
背をむけて立てば
なにを?
その音よ。音ら
見えるのは海と
なにを見ていましたか?
その音よ。音ら
空と、…海。すこしの椰子の
なにを?
おおらかに響いた、それら
樹木。そして…空。それら以外に…海。あるはずもなかった。だから
そこで
ぼくらすべてを
横たわったまま
もう、すべて
愚弄するような
九鬼と久しぶりの相談を樂しむわたしには
燃え盡き、だから
おおらかに響いた、それら
見えるはずのない、しかし、もう
ものの翳りさえないその
羽搏きの音らよ。むしろ
見たにもひとしい既知の
虛空のなかに
ぼくたちの
風景を、——見慣れた…ただ
あなたの
なに?…こころの
ひとりだけ——見慣れた…彼女は
不在の眼。ほら
だれにも見つけられなかった奥底に
息遣う——見慣れ…
それでも何を
どこ?…ひとりで
呼吸音さえ——見…聞き取らせずそこに、
見ていましたか?
いつまでも、さあ、鳴り響くがいい。もう
どこか茫然と?
わたしたちは、いまや
ぼくたちは
見ていた。九鬼がせき込んだ。その瞬間、それが耳に聞こえでもしたかのように沙羅は「…ごめん、じゃ」返り見、——え?
なに?
どぃひっ…
風邪?
はぁばっ…
わたしをだけ「準備しとくよ。俺の方も」見つめた。その「でもさ、」表情は——え?
なに?
るぃんぼっ…
コヴィッド?
ぃりんぱっ…
逆光の「知ってる?…あれから」中でわたしの眼差しには「かれが不在の十年の間に」消滅していた。
「いよいよ話、膨らんでるからね」
と、九鬼は言った。
「膨らんでる?」
「知らない?」
龜頭に百合さえ咲くらしいぜ
祈禱?
「≪流沙≫の?」
「見てみ」
肛門には蛇が
祈ろう、ただ、われわれは
「ネットで?」
「やばいよ」と。
幸あれ
人にも、すべてのイノチにも
幸あれ
死者たちにも、未生のものたちにも
もとからそうだった、もとから(…その時、沙羅は)かれは去年、原因不明の(思い出したように、不意に)熱病で半身不随に(聲を立てて、)発作の爲、もはや(深い、まるで)投薬ミスに依って(アルト。ややフラットな)回復の見込みは(うわづった)ない。もう(だから、變聲期前の少年のような?)毎日、四度(笑い聲)それは(深い、ややフラットな)嘔吐し、人事不詳の(アルトで、その)植物人間になったらしいね(笑った聲を、そっと)脊椎損傷の爲に(だから、笑んでいた。沙羅は、そこで)自殺未遂?…また?(笑い聲を立てて、まるで)なんども舌を咬んで(笑みなど)内臓、ぼろぼろらしい(そっと)骨格の溶解する奇病(かすかにだけ、口元にだけ)突然變異した新型癩菌のせいで(笑みなどもとからすこしも浮かべていなかったかのように)血便1リットル?(笑い聲を立てて)殺されかけたらしい。不意に有名になったその、あきりたりな(あくまで曖昧な)すでに死んでるらしい。いまの音源は(…ね?)拘束されて、隔離され(曖昧ながら、でも)脳が真っ白になっていく新発見の(…ね?)疾患(あざやか)DNAが壊れすぎてるらしい(好き?)実は、美貌(どうしようもなく)もう、這うしかないんだって(と、そんな呟きを)替え玉、いるらしいよ(曖昧で)八歳の時の写真がアン・オフィシャルに(逆光の中に)加工でしょ?(あざやかな)ファースト出た時に、実は(言葉もなく、——好き?)申し出るんだよ。だから(気配、その)あの記者会見(…好き?)つじつま合ってなかったじゃん(むしろ)骨格まで(逆光の中の)もうぼろぼろ(言葉ではなくて)母親ってまだ(見る。眼には)生きてるらしいよ(なに?)タヒチで目撃情報(気配を?…その、いま、首筋にふれるすれすれにまで近づいたかのような)脳手術の失敗で(じゃ、…)あれ、霊媒が降霊させて(見えない、眼には)一時十一分に東向きに鳴らすと(むしろ、かたちのない息吹として?)末期がん、治癒したらしい。あれ(…なに?)普通のうつ病の人らしいよね(気配を)ヒーリング効果、実証された(じゃ、それは)NASAがパイロットに(好き?と)胎敎に?(何が?)交通事故で、いま(あなたは、いま)首から下(…ね?)移植したんでしょ?(なにが?)畸形で指が(…好き?)六本ある、だから(…ね?)ローマ法王が(眼差しに)あれ、チベット音階でしょ?(好き?)実は普通に歩いて(そっとその)五本指じゃあり得ないコードを(なにが?)普通に電車に(あなたは)女だって謂う(…好きなの?——と)死んでるよ、もう(なにを?)記者会見直前に
「笑うぜ」
「フェイク?」
ひびくのはもはや
笑った。だれもが
「むしろ神話。…読んだら」
「興味ないよ」と。
羽搏きの轟音
なにもが吹き出して
あれ以上に話が拡大しているなら、逆にわたしにはもはやどうでも良かった。十年前にも、もう二度か三度≪流沙≫は死に、少なくとも五度以上十度以下、再起不能の状態になり、兩性俱有説から、性別未分化説から、手足がないとか、もはや、思い附くかぎり思い附かれていたはずだった。
沙羅は
「でもさ、お前」
陽炎を
なにを求めると言うでなく
「なに?」
ゆらぐ陽炎
なにを
「知ってる?俺たちが」
陽炎を
感じ、なにを
「≪流沙≫?」
焰のような
思ったというでもなく、わたしの
「あれ、手放してから、…」
陽炎
あお向けた
「フェイク?都市伝説?」
陽炎を
胸の上に覆いかぶさって、その
「あの音源、」
綺羅めく
体温と、首すじに
「お前が作ったやつ?」
陽炎
埀れる髮の
「おれたちの、」
陽炎を
夥しい触感に
「…で?」
翳る
彼女の存在を、もはや
「あれ、奇蹟の二十九分十六秒って」
陽炎
殊更にわたしに
「二十…なんで?」
陽炎を
あかした。そして
「プレイ時間合計。CDに」
微動だにせず?
なにをいまさらささやくでも、…だから、その
「奇蹟、…」
身じろぎもせず?
意味のわからない所詮
「表記されてるやつの」
息遣いさえ忘れ?
異人種の言葉に
「言い過ぎじゃない?」
そこに有ること
独り言でも、せめて
「なんか、感慨深い」
それさえ気付かず
つぶやくでもなく
「なんで?」
ただ、もはや
吐く、半開きの
「奇蹟の二十九分に、いま」
見蕩れたように?
唇の息さえ、その
「やめてよ」
恍惚と
音さえひそめ
「十年ぶりに、新しい」
見惚れたように?
見ていた。わたしは
「奇蹟が刻まれるって?…でも」
だれ?
天井の陽炎のこちらにか
「瑞々しいページが追加されて」
その眼差しは
それとも向こう。あるいは
「ね、…それって」
だれ?
眞ん中にでも?
「だれもが、さ、この」
陽炎を
色彩もない、まして
「それが假りに奇蹟だったとして」
とめどもない
名前などあるはずもない死者たちの
「十年の間に、此のつぎを」
陽炎
擦り付けられた翳りのゆがみ、
「だれの爲?」
陽炎を
まともな形態など
「想像してたんでしょ。その」
煙のように
須臾刹那だに維持できない
「だれの爲の…」
生滅をさらし
なすすべもない流動、謂わば
「想像に、やや近く、でも」
霞のように
重力の、そのしかるべき
「ひょっとして」
溶けあい
方向を見失った水の
「あやうく違う、それとなく」
色彩のない
ゆらめきのように?
「だれの爲のものでさえなかったら」
陽炎
形など、そんなもの
「想像を超えた、」
陽炎を
その意味さえ忘れてしまった
「…切る。いま、」
あざやかな蝶の
むごたらしいまでに自在で
「それって」
しかも、淡い
ばかばかしいほど赤裸々で
「いま、ごめん」
たやすく子供の息に吹き流されるほどにも淡い
無意味に自由で
「すごく、孤独で」
翅のふるえのような
ただ、ひたすらに
「ごめん、今」
陽炎
悲惨でしかないそれら
「純粋な」
陽炎を
礙るもののなにもない
「女、來た」と、そして九鬼は電話を切れば死者ら語らく、
0コメント