流波 rūpa ……詩と小説043・流波 rūpa 癡多 citta ver.1.01 //なぜ?/だれ?/なぜ?/いま、あなたは
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
「わたしと遇った事」それは月。
でっぷり太った
白い、まるでひらいた
月。見い出された
太った月
孔のような
満月の、「後悔してるんでしょ?」
「何?」
「わたしとあった事」それは月。
仲秋の。
吸い込む?
たぶん。
孔。ほら
二十年前の。…だから「やめて」
じゅびじゅば
「何を?」
「そういう眼、するの、」その月は、あんなにも?テレビで
でっぷりふ
しろい、まるでひら
言っていた、仲秋、
ふとったつ
あなのよ
たぶん、それからお月見フェア。…なんの?
「やめて」
どこの?
「なにを?」
コンビニ?
「後悔とか、いまさら、それ…ひ、」…なに?「卑怯だからね」
ひ、ひ?
ぼくらが、ね?
なぜ?——記憶。「後悔してる、眼、してる」
ひひ、ひ?
ぼくらが、いつか
「くりぬきたい?」
ひぃ、ひ、ひっ
うしなったもの。ぼくら
「わたしが一番傷ついてるんだよ」と、その
ひっひぃ
がね?ぼ、くら
女——水月瑠璃、と。店ではそう名乘った。そのころ六本木のクラブで働いていた。しゃぶしゃぶ屋の系列の。ささやく。
「自分だけ?」
「なんで?」
月。それは
なぜ?
交差点近く、五丁目の
「ね?」
「すっごい、俺」
金色を暗示していたはずの
なぜ?…いま
旧防衛庁の横の方…敎会がある、小さな
「そう思ってるんじゃない?」
「いま、すげぇ」
月。それは
見えるはずなどなかったのに
驚くほど閑静な住宅地
「違う?あんた」
「すっげぇ、つめたい。からだ、」
いまや、あきらかに
見えたはずなどなかったのに
瑠璃の借りたマンションの近く
「自分だけ犠牲者な気じゃん」
「半分?…からだ」
白く。ただ
孔ぐらにすぎない眼窩が猶も?
敎会の敷地その
「ちがうから」
「半分だけが?」
ひたすら、白く
猶も?
土の上に
「あんたより、分かる?」
「ね、…おれ、」
だからその
いまだからこそ?
横たわる。たぶん
「ね?…やられるよりやってるほうが傷つくことだって」
「確認してくんない?まだ」
色彩をなくしてゆく月を
なぜ?
ガソリンの匂いと
「知らないんだよ」
「おれの体、ぜんぶ」
月を見ていた
なぜ?
燒けた肉、皮膚、そして
「あんた、所詮」
「揃ってる?はんぶん、」
…噓?
その太った
髮の毛の匂い、あるいは
「自分の痛みしか」
「ぶった切れてない?…おまえ、」
本当に?
金色の月
蒸発する血の?それら
「違うからね。だれが」
「お前ら?…」
その月を
なぜ?
生き物の匂いを?
「一番傷ついた?今夜」
「燒いたよね?…あれ、もう」
見ていた
見えるはずもないのに
彼女は嗅いだのか。まるで
「だれが、今」
「燃えちゃった?…え?」
…噓?
見えたはずもないのに
自分にふれる死角などないかのように
「一番傷ついた?…ね」
「おれ…え?」
本当に?
瞼も無い眼窩
ぎりぎりの距離をすれすれに
「勘違いしないで。…ね?」
「まじ?…え?半分、もう」
まばたきもせずに
まばたきもせずに
死守して、あくまで
「あんたじゃないから、だから」
「燃えつきて?…え?」
なぜ?
その金色の
わたしに寄り添いながら。すでに麻痺したわたしの嗅覚にとっては、単なる空白にすぎなかったはずなのに、その、それ。だからあざやかな臭気。他の実行犯たちはすでに姿を消していた。立ち去った(…て、いた)。いつ?…もう。——どこに?
きれいです
闇の中に?
明け方見えた、その
と。
月は、とても
思った。何時なのだろう。
きれいです。もう、そっと
瑠璃との待ち合わせは十時だった。夜の。
かたむいて
だから、リンチが一時間だっとする(——もっと、)もし、そう(もっと短かった。ふつう)だったとして、それから(人体は、苛酷な)一時間(リンチには、)失神していたとして(苛酷な…三十分以上耐えられは)なぜ、…と。わたしは(苛酷な、…しない。よほど)横たわったその(集中力の無い、苛酷な、…緩慢な)仰向けの眼差しの(リンチ?)正面に見ていた(本気のリン)真っ白い閃光の(は、苛酷な)横溢を(ンチ)疑っていた。
横たわっている事実にさえも気づかずに(——僞りの。だからこれらは)わたしは(すべて僞りの)耳を澄ます。…なぜ?(後に類推された)せめて事実の(後の、だから)痕跡を(後の記憶にすぎない。事実)聞き取るために。あるいは(…知らなかった、そこが)嗅いだ。せめて(敎会の庭であることも。知らなかった、たぶん)事実の(そこに)痕跡を嗅ぎ取る爲に。ひとり(瑠璃が——瑠璃。いることも。だから)疑い続けた。いまは(知らなかった。自分が)夜明けに(瑠璃。…)遠い、夙夜の(瑠璃に話しかけていたことも。なにも)入口にさえ(…だれ?)至らない(知らなかった。新鮮すぎ、)深い(あざやか過ぎた閃光の群れらそれら塊りあい群れあうそれら閃光の炸裂の群れらそれら塊りあう以外には、まばゆい)真夜中に過ぎない筈だと(その圧倒的なまばゆい、はくだ)その(白濁)光りの中で。
いいんだ、きみは
生きて!
矛盾する記憶。わたしは
きみはきみ、だから
きみは
見ていた。横たわり、背中に
そのまんまで
生きて!
湿った土の(——なぜ?)触感とその(——まさか、)臭気を(それとも雨?…)そして——だれ?見ていた。もはや、耳元の——だれ?瑠璃の聲さえ聞かずに、その——だれだれ?月。兎が月を貪り、欠けてゆかせる前の、限界まで太ったオレンジ色の——なに?月。
そそぐ
光り
仲秋の月?
そそぐ
さらさら
「今日は」と。
音もなく
光り
わたしがささやく声を「月の綺麗な夜だろ。いまは」沙羅は「月の綺麗な夜の」まるで「…朝だろ?」すべて言葉の意味を聞き取り得ているかのように、あまりに自然にその昏い不穏な眼を、纔かにほそめてほほ笑み続けた。
その日、朝食は食べなかった。だから、假りにヤンの店のだれかがわたしたちの爲の二食分を用意していたのなら、それは無駄になったことなる。ふと気になった。ユエンがその経費を払っているのだろうか。かれ等に直接金銭を要求されたことは一度も無い。気のいい一家だったにしても、一か月を超えるロック・ダウンで、しかも市場さえ閉鎖され、ただでさえ配給の食材でまかなうしかない現状に見返りを要求しないでいられるとは
戦争なんだ。みんな
ナパームで、さ
想えず、またユエンが
これは、苛酷な
コヴィッド、さ
見返りも支払わずにいられる
戦争なんだ
人間ごと燒けばいいんだ
人間だとも想えず、いくらかでも懸かっている筈の経費を要求されないわけもないと思った。砂濱を、だから
戦争なんだ
太陽をに沙羅と
これは、苛酷な
歩いた。すでに沙羅は海にも、海の空気にも、その色彩、その臭気、その音響にも、もう、あるいは海辺をわたしと歩いている事実にさえも、もう、すでに飽きていた。もはや彼女の心がそれらに離れ、どこか自分勝手に彷徨っているのは見て取れ、その、なにを考えているのかもわからない、ただ昏い不穏な眼。
「帰ろう」と、わたしは…だれ?言った。
沙羅の反応をは待たなかった。あるいは、いちいち一瞥さえ送らなかった。だから、なにも
見えないよ。もう
ぼくらはね、ただ
見なかった。その
見えないよ。もう
こわれそうなやさしさを
一瞬の、沙羅の眼差しの色をは。
匂った。
執拗に、…なに?海の潮の臭気。陰湿で、どんな澄んだ海でも陰湿で、汚らしく、どんな澄んだ海でも汚らしく、どんな澄んだ海でも陰湿で、もうどうしようもなくみじめな
海。この
匂う。それは
臭気。塩気に空気が
巨大な臭気。海
すぐちかくの
淀む。生きながら生腐れになった
この巨大な
匂い。あなたの
腐りかけの体液を
色彩のない、あまりにも
例えばその
水で薄めたような?いかに透明な海水の
あざやかな
肌の?
晴れた日にでも。
そのまま部屋に帰って、九鬼に連絡した。九鬼蘭。まるで惡趣味な源氏名か、むかしのヴィジュアル系バンドのベーシストのような名前。事実、元、二人ユニットのベーシストだった。メイクをするわけでもない。飛びぬけた異彩を放ってみるのでもない。一部のカルト・ヒーローでもなく、十年後に再評価される類いでもなく。ごくごくありふれた、ごくごくメロディアスな、ごくごく日常の、ごくごく一般的な共感を狙った系の。ベースとドラムの變則編成。ドラマーが作詞し、九鬼が作曲した。歌詞がいいんだと、むしろそっちのほうを売りにされていた。九鬼のその心情は知らない。遇ったころには——再会?たぶん。そのユニットはすでに解散していた。ドラマーの薬物問題に依る。しかも精神疾患を併発していたようだ。ユニット名は≪明日の夢≫。略して≪あす・ゆめ≫曲名ではない。Lineで呼び出したものの九鬼は出なかった。だから、わたしはそのままベッドに横たわり、
だれ?
綺麗なのかな?
やべっ
温度があった。
あなたは
その陽光
聲、した、いま
なんの?
だれ?
窓越しの、その
目のなかに
窓越しの陽光、その
あれ?
あかるい陽光
やべっ
直射の。ふと思う、光りに
いたっけ?
綺麗?…なぜ?
あしたも晴れって
差され、このまま放置されつづければシーツは日燒けしつづけ、だから色褪せ、色をうしないつづけ、だから朽ち、朽ちつづけて行くに違いなかった。思う。太陽光が此の白い色彩を完全に色褪せさせるのに——それ、どんな?一体、いくらの——それ、どんな?時間が——色?それ、どんな?必要なのだろう?思ったよりみじかいのだろうか?あるいは、思いもよらないくらいに長いのだろうか。
帰って來るなりに、沙羅がバスルームに閉じこもったのは知っていた。彼女の浴室に籠る時間は
キスしていい?
ケツ?
長い。何をしているのかは
その瞼
むしろその毛?
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