流波 rūpa ……詩と小説039・流波 rūpa 癡多 citta ver.1.01 //なぜ?/だれ?/なぜ?/いま、あなたは
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
なに?その
損害も大。骨格の一部さえ、…生き延びるべき——べき、とは?べきでは
イノチの定義も曖昧なままに
なかったかもしれない。そして、——べきとは何?ふれる。
死をのみ定義し得るという
なんども。ふれ、
此の欺瞞と
記憶の中にも。ふれ、
錯乱こそが
だから現実、…かつての現実にも、ふれ、——本当に?
見て!…ほら
なんてこと…
記憶には。
此の眞っ白い雪を
なんて
すくなくとも記憶にはふれ、ふれる。
降らせるのです
なんてあざやかに
女の唇は。ふれ、
ね?
押しつけがましいほどに(——何歳の?)やさしく、うざったいほどの(何歳の記憶なのだろう?)所謂慈愛、を、けばけばしく纏い、
んー…と、ね?
ふれないで。ぼくに
ささやく。何を?
だから、ね?
凍り付いちゃう。…もう
知らない。…記憶。
覚える価値さえなかったのだろうか。あるいは何度も繰り返された口づけの、そして付帯したそのたびに異なるささやきはだから、むしろなににでも代替可能などうでもいいものだったにむしろなににでも代替可能などうでもいいものだったにむしろなににでも代替可能などうでもいいものだったに過ぎない、…と?
あるいは、わたし自身がすでにむしろなににでも代替可能などうでもいいものだったに壊れていたのだろうか?
壊れそうなものばかり
笑えるの?お前
さだかではない。
ぼくらは必死にかきあつめ
顏もねぇのに?
燃えあがる燄、その
それでも必死に
腐ってんじゃん
かたちと色彩のように。
蛆喰った?
燄。
おれ?
燒け跡の破壊された殘骸の未だ生存し続けるヒト細胞組織体は、眞沙美の
蛆喰った?
父親と母親だった。…歯型等から照合。
いつ?
あざやかすぎた
なぜ?…歯型等から
いつ?
その朝燒けに
父親(…名前は達臣)は既に精神を破綻させていた。脳波に乱れはなし。意識はまともではない。あるいは理解しているかも知れない。発話能力をうしない、…あるいは≪健全な反応≫と他人が見なし得る顏面筋肉の反応能力を失しなっているだけなのかもしれない。あるいはもっと深刻かもしれない。あるいは水中の蛸に擬態していたもしれない。あるいは火星の千年前のバクテリアの夢を見つづけたかもしれない。コミュニケーションはすべて喪失された。目をひらいた。見た。聞いた。耳をひらいた?たぶん。どんな音か知るべくもない。とまれ、意識は健全だった。そう診断された。
母親(…名前は眞沙子)は夫よりはまともだった。アアでもイイでもウウでも口に発聲し(——かゆいんだよ)、だれか來れば頷き(…血管の中の)、極端に難解で(…ヘモグロビンの遺伝情報が、さ、)意味を成さない表情らしき(痛がゆいんだよ)運動を顏面にさらしたから。
兄(…名前は眞沙幸)は失踪した。会社にも帰らなかった。だれもが
拉致でしょ?
言った。親を
フリーメーソンじゃん?
金ほしさに(…推察にすぎない)殴り(正確には
北朝鮮工作員?
わからない。崩れた骨格が
闇の組織じゃない?
拳によるそれか、鈍器を用いたそれか、崩れ落ちた梁によるそれか定められたものではなかった)火を
花て!
口裂けた
放ち(他に
火を鼻て
裂けのこり
だれが?)結局は
花手ひを!
のこり酒
一銭つかめずに逃げた男。…あわれな?愚鈍な?精神疾患?単なる莫迦?ひとしれぬ事情?家のなかの事は他人にゃわからないからねその時安原眞沙美は十八歳だった。岡山の市内の大學にかよっていた。十九歳。だからふれた。
彼女は、動転して帰ってきたその実家で
心
ふれた。そのとき、それが生き延びるか死におおせるかもしれないふたつの燃え砕けた殘骸のその手、——おもにざらつく包帯に。
二十歳。ふれた。そのとき、母親のまぶた。そこだけ別の生命領域であるかにも、こまかな痙攣を曝し続けるその、二十一歳。包帯の切れ目のそれ、何年にも渡る介護——看護…看護婦任せの放置?
かさつく。
かさかさ
ひからびそう
包帯の切れ目のそれ、なぜ?
さかさか
ひびわれそう
ひからびた?乃至
Citta 癡多
燃え滓だから?包帯の切れ目のそれ、生きていた。かれ等は。すくなくとも包帯の切れ目のそれ、此の、いま、此の時には、と。彼女は思った。生きて、と、彼女はせめても、と、生きて、と、そう思い、生きて、——いつまで?と、眞沙美は
生きて
苛酷で、だから絶望的なくらい?
思いそしてあるいは知る。いつ?…いつか、
生きて、ほら
苛烈で、だから無慈悲なくらい?
なにを?…かれ等の時が——いつまでも。
こんなにも
殘酷で、だから容赦なく?
終わりそうも——いつまでも。ないことを。
世界はいま、こんなにも
だからなに?
兩親の(——殘骸の?)生存の(壊れたの?)どうしようもなく——いつまでも。もはや(ひどく?もう)手の施しようもない(眼もあてられないくらいに?)継続。
なに?
脳みそ?
眞沙美は軈て二十一歳になった時に逃げた。兩親から(——殘骸の?)つまりは
なに喰ってんの?
ふりそそぐのだ
しかも干したの?
大学卒業と、そして(壊れたの?)偶然かさなった(ひどく?もう)結婚を機に(眼もあてられないくらいに?)もう、…縁を切ってるので。
知らなかった
それは
背後にそっと
親子の?
知らなかった
永遠。それは
傾いた花
あの人たち、もう赤の他人なので、そっちで
知り得るはずなく
無防備すぎた夏の日のように
花。その
好きなようにしてください、と。
事実として
それは、永遠
うす紅の
何があったの?
なに?
青春のひかり!
それはあの人たちに聞いて貰えますか?
だからなに?
そのかがやき!…おお
まともに言葉も話せない殘骸のかろうじてのヒト的生存的細胞的組成物的なものに?
角はえてない?
その息吹きも!
未だかれ等に(というか、眞沙美と)関係を持っていたわずかな(というか、)親族は(——主に父親の弟)は眞沙美に帰って來るように言った。彼女が結婚したのは東京在住の人間だったから。眞沙美は…たったひとりの、
ひとり?…は?
親ぞ?
拒否した。東京で夫の親族友人とだけ結婚式をあげた。大学の友人とは眞沙美はほとんど、交遊関係を絶っていたから(?それとも、友達には秘密で?)そこで彼女は田舎の親族になぶりものにされた身寄りのない犠牲者だった。彼女は
泣いちゃえよ
やん。ばか
保護されなければならなかった。千九百七十年、人が
もう
やん。ば
ひとり消息を絶つのは
泣いちゃ
かば。やん
た易かった。故に宮島からは眞沙美は消えた。捉える(…捕える、…虎得る、)すべもなかった。代々木の、八幡の近くに住んだ。自分の夫が怪物だとは知らなかったから、だか
癡多 citta
ら、ふれた。
生きて!
何に。
いきっ
生き物に。
いっ
どんな?
っ…きぃっ
夫に。——靜。
ふれた
やわらかな
父の名は靜。まるで少女のような
何に?
あたたかな
名前。少女達の屍に
あなたに
にぶい
かこまれ、少女のような名前で、少女達を強姦して
いとしいあなたに
その、指さきに
回ったからふれた。
もう
だから沁み込むような、その
かれは。その
ふれていた
…なに?
指先で。ふ
褐色の
だから
れた。
ほら
眼差し
どこに?ある
あざやかな色彩
この眼差しは
いは額に。
あざやかな
いま(…も?)
眉間。
褐色の
ふれた(…いま、も?)
やわらかな眉。
そして眼差しをいじめた
その色彩に
まぶたのふち。
その白濁
あざやかな(…こそ?)
鼻の付け根。
だから、それら
あざやか?(いまこそ?)
ゆるやかな、その上昇線。
ふしだらなほどに
うすよごれた
時にはそれを不意に落ち、頬に。
赤裸々な
よごれた?
やわらかな。
光りに
赤裸々な(きれー…)
うぶ毛の。
まだ——やばっ
なにが?
光り。
瑞々しい
なに?(きれっ)
たとえば窓越しの?
光りに
ふれた。もう
あるいは直射の。
だから——やばっ
その褐色の(きれー…)肌
綺羅めき。
白濁
さらされた
金の。
ね?(れっ)
息遣う
銀色の。…そう?
どう?
その腹部
ただ、純粋に白い?…ふれた。
敎えて
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