流波 rūpa ……詩と小説037・流波 rūpa 癡多 citta ver.1.01 //なぜ?/だれ?/なぜ?/いま、あなたは
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
此れを聴き取ったのは、だからその妻?…母親?…子供たちとか?いずれにせよ、捜査にあたっていた警察は、このただ一度だけの発言を知らさせることになる。この経緯、できすぎていて私には不審が殘るが、どうだろう。
とまれ此の〇〇さんとは、例の十七歳の殺人者の生みの父の名字、——母親のかつて名乘っていた名字、だった。親族は事故・自殺はあり得ないとかたくなに主張していたから(事故なら、なぜ用もなくあんな山奥に行ったのか)警察に通報した。調べろ、と。
もっとも、強制されるまでも無かったかも知れない。
一人の女が二つの事件でその姿を、朧げにではあれ、慥かに現わした瞬間だったから。
故に、警官ふたりはその日、そこに出向いたのだった。しかし、あくまでそこはオーナー夫婦の自宅である。であれば、本当はもっと前からひそかに行動を見張っていた事実があったのかも知れない。此れは後のインターネット時代なら、目ざといだれかが盛んに陰謀論じみて語るべきところだったろう。
「お母さんは、…ね?」と。「ぜんぜん、惡くないんだって」女は(——少女は?)そう云った。
何度目かに、…五度目?六度目?(——十度以上は來なかった。店に。死んだから。彼女は、すくなくとも、)不意に彼女はもの思わし気な(わたしにとっては)しかしすぐに(…わたしに?)やや不穏な眉を(…だれ?)「…ほんと?」自分で云って、そして咄嗟にひとり、笑った。
聲もなく、だから唇でだけで。
「お前は、そう思ってないわけだ」
響き
「思ってるよ。けど、あいつがさ、」
を。それら
「逢ったこと、」
響きを
「…ないよ。…ないない」
そして
「…ね」
聞いていた、ぼくは
「面会行くじゃん。そしたら」
響き
「聞いていい?…おまえって」
を。その
「タトゥーの画集?…なにそれ?出したいんだって」
無数の
「さ、…その殺人マシーン、」
響き
「あいつひとりで云ってるからさ…」
を。それら
「そいつのことさ」
散乱
「知り合い、いない?…出版系」
する、散乱
「好きなの?…実際、おまえ」
し、散乱
「おかあさんは惡くないって、ひとりで」
する響き
「ホントのところ、さ」
を。それら
「手書きの、なんか、龍と花とかそれからなんかこう、ね?もっとかわいいのとかも」
ぼくらは聞いた。その
「お前、あんま、興味ないでしょ」
それら
「それって、どうなのって?」
息を
「違う?…お前は、」
吐き、吸い、吐き、生きてあり
「兄貴のせいだって。基本、だから」
または
「…ね。ごめん」
最初から
「云ったらしいよ。…だから、ほんと?」
いちども、ただ
「なんか、笑える。おまえって」
いちどさえも
「なんか、最近」
ただ息吹きさえもしなかった
「話すこと、ほかにないの?お前」
うごくもの
「弁護士に…」
ただ、うごき、ただ
「話すの、ぜんぶ、その」
発生し
「最近実際まじうざくてもううざすぎなんですけど」
うごき
「マシーン一家の話ばっかじゃん?」
響き
「俺、どうでもいいですから、おれ…」
を。それら
「それ、…は、ま、言い過ぎだけど、」
聞いていた。ぼくは
「犯罪者だって人間じゃん」
響き、それら
「…さ。でも80パー的な」
それらの中に
「俺のマザーさん、助けてやってくませんか。…あいつ」
ぼくらは
「ママでしょ?…そいつ」
聞いていた。響き
「罪って許されなきゃいけない的な?」
を。それら
「なに人?なに語?お前、」
響きの中にしか
「死刑?…っすかね。やっぱ…みたいな」
ぼくは
「なんで他人の話しかできないの?…実際」
存在しな
「それってどう?」
する。散乱
「マシーン一家とお前」
し、散乱
「泣ける?」
しながら、散乱
「関係ないよね。ほとんど」
し、すべて
「難しいよね。うざいけど」
の。発生しかつ
「むしろ完全に」
時には
「でも、あいつ、暇だから」
すぐさまにさえも
「赤の他人じゃん。お前だけ」
消滅する
「犠牲者、廃人じゃん?」
すべての
「お前の話にでてこない」
だれ?
「暇持て余して」
話しかけないで
「ごまかしてない?」
だれ?
「生きてるだけ…むしろ」
邪魔をしないで?
「なに?」
だれ?
「なんか、だれか、そういうアーティスト系の」
響き、それら
「お前、なに勝手に病んでるの?」
の。中に
「死んで…ちがう。ごめん」
響き、それら
「壊れかけ?」
響きあう。響きの
「ほんとなの?」
の中に
「おかしくなりかけてたりする?」
ひ
「人間失格、わたし。ごめんね人類…」
びきの皹
「いまの男なの?…その」
きの日々
「なんで——」
きのな
「前歯、へし折ったの」
かにひ
「なんで知りたいの?」と、女は言った。思わずわたしにその顏の正面を向け、見つめ、ややって、ふと、笑った。諦めたように?…なぜ?匂った。女の、仕事上がりの石鹸の匂い。今日、何度、客と自分の体とを洗ったのか。そして見せた。だからその笑みに意図もなく、昏い口のなかの昏い欠損。めくれた唇に、抜けた前歯一本ぶんの黒い色彩を、白い歯並び一列の中に、あきらかに、そして不穏に。まるで見せ附けるように、むしろこれみよがしに、もう赤裸々に、
「笑える」女は、そう云った。…眞沙夜こそ、自分だけ赤の他人みたいな、そういう顏してんじゃん、と。わたしは女の(——少女の)髮をなぜてやり、そして
いつだって
空が、いま
彼女の爲にだけ笑ってやった。
わたしたちは
ほら
こう聞いた。(…だれから?)
ほほ笑みのうちに
砕けて散ります
その女は(——その少女?)その年の九月に(女を連れてきたホストから。聞いた。わたしの)交通事故で(恋人?…未満、)半身不随になった。どこから下が(かれ。あのマンションから)不随だったのか(飛び墜ちた)それは(かれ、…鳥に?)知らない。店に來もせず(さかさまに向いた天の)わたしに顏も見せず(頂きに)メールの(遠ざかりながら)ひとつもなければ(落ちる鳥)彼女は実質的に、私にとっては
空に、落ちよう
行くよ。ぼくらは
死んだ人間だった。聞いた、意識は
…ね。いま
ぼくらの永遠の
はっきりしていると。だから、「眞沙夜さんに、恥ずかしがってるんですよ」
空が落ちてくる前に
しあわせのほうに
そう優紀は言った。だから、
だから、ふたりで
いま、まさに
振り返りざまに「恥ずかしいって?」
いま
優紀は静かに、音も無く笑んだ。「…なんで?」
聞こえた?
「事故であの子、結構ぜんぶもってかれちゃって…いや、俺」
「恥ずかしいって別に」
いま、ぼくの笑んだ
「行ったんですよ。一応」
「いつ?…というか」
その頬になった
「あんまり、基本、面識ないんですけど…すみません、あれ」
「話とか、できるんだ…」
引き攣りの響き
「投げっぱなしでしたよね。眞沙夜さんに…」
「なんか」
聞こえた?
「恥ずかしいんですよ。やっぱ、女だから。顏も、それに」
「全身めちゃくちゃみたいな、」
いま、ぼくの笑んだ
「体も動かないでしょ。実際、結構」
「そんなこと言ってなかったっけ?」
その頬に叫ぶ
「痛々しい…」
「大した女じゃなかったじゃん」私は笑った。「元から…むしろ顏へちゃげても豚と猪くらいの違いじゃないの?」
ヴィルスの息吹き
「それ、」
「ひどい?じゃ、カマキリとバッタにしとくか?」
聞こえた?
「いや、うける」と、優紀は言って、耳元で笑い、わたしの至近にその
いつだって
散った?
体臭を殘した。たぶん、女に
わたしたちは
ほら、その
はじめて遇ったのは
ほほ笑みのうちに
花モドキ?
四月くらいか。…優紀に紹介された、その優紀の客のほうに、ほんの何日かまえに優紀とした花見の話をした記憶が…こいつさ、…
なになに?
ひとりで酔っぱらっちゃうからね…
まじ?それ、
ある。六本木の交差点近くに未だ旧防衛庁の跡地が殘っていたころ。跡地を見下ろせる向かいのビルの屋上に忍び込んで、そこでふたりで櫻を「…やばいね。これ」
「でしょ?」
「廃墟の櫻ひとりじめ状態じゃん?」
「ふたり…な?」見た。
夜。周辺の街燈。だからまちがっても自分の爲にではない他人の照明の群れに、間接的に照らし出されたにすぎない櫻の花。おぼろげて、しかし鮮明な白。色彩。夢のような、——その色のない廃墟に櫻。あざやか。うつろ。希薄。鋭利なほどの鮮度。足のはるか下の、だからそれら、色彩。
その色をだけ
きれい?
そんな話を。たぶん
わたしたちは見い出し
なに?
女は(少女は)最初の來店から
あたたかみだけを
なにが?
一週間も置かずに次は
感じたのだった。例えば、あなたの
見蕩れちゃう?
ひとりで來た。わたしを
その頬の
なに?
名指して。無口に、わたしに話しかける苦痛に必死で堪える、そんな壊れそうなそぶりを見せながら。優紀ふくめ、だれもがこの女が長続きする客でないこと知っていた。客として以前にそもそも、人間としてまだしもまともな人間としても。わたしにじゃれついて(——しっぽひとつ振るわけでもなくとも)來た以上、見取ってやるべき責任を、わたしはなんとなく感じていたのかもしれない。それとも、拒絶するさえ放棄してただ放置していたに過ぎなかったかも。
ともかく、女は(——少女は)それから三か月くらい、一週間に一度前後、店に來た。
唯一、彼女がもはや憂鬱と苦痛とに違わなくなった恋愛感情の沈黙、その気晴らしに自分で
堪えられない。もう
こわれていい?
話すのは先の
堪えられない。もう
いいかな?いま
≪殺人マシーン一家≫事件の話ばかりだった。最後の
堪えられない。もう
その眼差しの
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