流波 rūpa ……詩と小説035・流波 rūpa 癡多 citta ver.1.01 //なぜ?/だれ?/なぜ?/いま、あなたは
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
話し始めた、と。これは、たぶん
あやうく
やわらかで
息子のほうだったろうか?後に読んだ書籍に
赤裸々に
あたたかな
証言があった。そして話をすぐに
世界そのものに。この
大気。ふれていた
具体化…つまり移住の日取りだの新幹線代だの何だのまで
壊れて行く世界に
すでに
自分勝手にひろげて、息子と
ふれていた
素肌は
娘のおびえさえした動揺をは余所に、…お前らに(——病気?…ね、)迷惑は(こわれた?)懸けられないからね、と、いきなり(——病気?…ね、)拒絶してしまうのが(なに?)常だった、と。ライターで陰部を燒く折檻のなんどめかの時に、唐突に身をのけぞらして失禁した。
それは加害者家族の自宅でのことだった。自分の家屋に損害が及んだかにも怒り狂った母が夫たちに折檻を命じた。夫たちは兄の方に折檻を命じた。兄弟の、拳等に依る直接的な暴力は此のときが初めてだったのではないか。ある書籍曰く、母親のほうはこの女をとかく厭い、目にも入らない物と無視しつづけていた、と。これは誰の供述だったか。オーナーへの暴力は常にその妻が代行し、妻への折檻はその夫の果たすべき仕事だったようだ。性器にも及ぶタトゥー以外は。
弟は、ふたたびその日、兄に電話で呼び出された。めずらく兄が≪落ちていた≫と、女に「…あいつ、めっちゃくちゃ、まじ、もう、めっちゃくちゃ」語った。だから、すぐ「ひとりで落ちてんの。もう、ひとり勝手に」帰って來いという兄に弟は從った。帰ると風呂場に連れて行かれ、そのバスタブの前で濡れてすけすけの着衣のまま全身を痙攣させる女を見た。全身みごとに水浸しだった。折檻してたら、壊れてもうた、と、兄はそう言って
ほほ笑みを
痛いんだ
笑った。そして耳打ちする、そんな気は
せめて
なにが?
なかったんだよ、と。こいつら、
最期に
見い出すものそれらすべてもう完璧ぜんぶの
このままじゃ、あまりに
ほほ笑みを
すべてが痛
かわいそうじゃん…
なに?
ささやくように言い、何をしたのか聞けばほんの二、三発
なに?
腹と頭を蹴っただけだ、と
ささやいたのは
そう言った。最後に
なに?
腹蹴った時、へんなスイッチ入ったんかな?…と、
「スイッチ?」
だれ?
いきなりよ。こいつ、ぶるぶる震えはじめて
「壊れたん?」
だれ?
…目、覚まさせてやらんと…じゃん?
「な?」
ささやいたのは
から…でも、水ぶっかけても
「どうするの?お母さんら、どうするって?」
だれ?
やるしかないんじゃない?もう、
「なんて云ってるの?お母さん」
いつ?
だってもう、手遅れでしょ?
「…違うか?」と、だから
いつ?
詰めるように言った兄を振り返って、——その時、感じたの。
なに?
最後に笑っていたのは
——俺、ことの重大さ。
なんの?
——入り口で、親父ら、あのパチのおっさんとしゃべってんじゃん。…から
そうなの?
——でも、こういうことなんじゃん?これ、また…
なに?
——また人、ひとり死ぬぞって…な!…だろ!
って、「まさに、そうだろ!」云うの。やつ、「…だろだろ!」だからさ、「…まじ、あいつ莫迦なの」笑った、と、女は(——少女は?)言った、こいつ、どこまで莫迦?なんでこんなに莫迦?結局また、自分が殺すんじゃん?どこまで莫迦?まじで莫迦?…と
聞かせて
口がないのに?
その時に。わたしは(それは記憶、
なにを?
耳もないのに?
…そんな、曖昧でしかも
あなたの見た、その
目などもう
慥からしく思われた、)女の(——少女の?)頭を
風景を
鳥に噉われた?
なぜてやった、その(あざやかな、こんな)とうとつな、そして(記憶、…だれの?)私にとってはだれもに対する日常的な(俺の?…不意の、その)けれど女には、あくまで不意の(正否など確かめようもない、記憶。正否の)予想だにしなかった(対象でさえもない、)はじめての「あんた、だれにでもやさしいでしょ?」
「…俺?」
これ、なに?
「みんなに、やさしいでしょ?」
言葉?
「なに?」
なに?
「わたしに、すごい、やさしいの。あんた…」
ひびき
「駄目なの?」
言葉?
「眞沙夜、ね…O型?」
だれの?
弟は首を絞めようかと思った。女は(——少女は?)言った、でも、水びたしで穢いじゃん、と。だからできなかった。手をふれないで殺す方法を考えた。妙案が浮かんだ——と、かれは(…だれ?)思った。故に弟は(…だれ?)兄に、包丁を持って來いと言った。そして、女の上の
だれ?
そこに、ほら
服を脱がせた。顏を
だれ?
そこ。ひかり、窓越しの、いま
掩う気だったのだ。その瞬間に
ささやくのは
あたたかな
かれは後悔していた。指先は女の痙攣しつづける肌にべたべたさわられ、水滴は散り、見たくもない醜い半裸を見せられる結果になった。諸惡の根源を弟は断たなればならなかった。故に、かれは背後の兄の包丁を奪い取ると、服を被せた顏面を何度も刺した。骨格に阻害され、何度もあやうく自分の手を、腕を傷つけそうになり、時に本当に傷つけながら。
「腹、やれよ」
だれ?
兄が言った。
「たぶん、腹、そいつの急所」
だれ?
聞く耳をもたなかった。突き刺しにくい、口蓋と眼窩以外に突き刺しようもない震える顏面で、弟はなんとか息の根を止めようとしていた。
ふれるのは
死んだ、と思った。かれは、…弟。かれは、
響く、鳴り
きらきら
もう死んだ、と、その死を確認することもなく、でも
鳴り響く、それら
いくつも
確認するより(まさか、脈でも取れと?)明らかに
響く、飛沫、散る
いくつも、もう
あざやかに
飛沫の、散る、その
かぞえられなどしないほどに
知った、と、思った、彼女の死、その、まぎれもない死、
響き、鳴り
無数の
かれも…兄も、思った、死んだ、と、だから、また
鳴り響く飛沫の
水たちの
殺した、と、思った、弟は、更に血に
こまやかな水の
きらきらと
汚れた手を更に血に、と、
それら無数の鳴り響き、
きらきらと、もう
その水の飛沫の玉散る中に。弟は
むしろ今、暴流にも似た
かぞえられなど
風呂場を出た。その手に持ったままの包丁は、想像するに、夥しい血に汚れていたのものか。紅の、透明な(…かつ澱んだ)気配のある、あの、血の赤。そのまま玄関近くの居間に行って(…意外にもかれ等は借家ぐらしだった。だから)一瞬、かれは我に返った(その借家はいま、どうなったのか、間違いなく)その瞬間にむしろ(事故物件として)ひとりかれは(更地に?)かれの時間と場所を(家屋もなにもかも取っ払われて、だから)見失しなった。だから(なにもなくなれば)ひとり、すぐさまかれは(血の痕跡さえ消えるのか。その)ふたたび我に返ると、…おれ(色彩さえ失しなわれれば)と、かれはささやく、——だれに?(匂いは?あるいは)始末してやったからさ…あれ(その土に沁み、)いらんかったんでしょ?と(大気にも、いつか)むしろ邪気も無く(沁みついていたかもしれない、その)表情も(それら?)ないまま(匂いは?)むしろ
散る。散る、光りの
みみをすませば
飛沫の光り、りり、りら
そのささやかな
散る。散る、光りら
くだけるおとさえ
きら、きららの光り、
きこえるかもと
光り、りり、散りら、りら
いつでも優しい子だった、と、そのテレビで近所のだれかが言っていた。やらせでなければ。フェイクでなければ。あるいは演出とでも?「お前、またやったんか!」と。女は(——少女は?)云った、あいつ、勝手に怒鳴りくさったらしいよ、と、激しい、肺を絞った聲に感情を精一杯こめて。それはたぶん、弟の言ったまま(…の、模倣?)だったのだろう(…擬態?)。無意識の共感?言った、不意に育ての父親の方が叫んだのだ、と——また殺しやがった!と
止めて。もう
すべての
聞いた。その、むしろささやかれた怒聲を、弟はいまや、
流れ出す、耳に
すべての、ほんの
一週間前に十八歳になった——おまえも
止めて。もう
ささやかな
もう一人前だから、おまえも…弟は
血さえ、また、その
あるかなきかの
聞いた。同じ男、自分にその時
止めて。いま
イノチのきざしたちさえも
ビールを勧めて、——飲めよ
耳に、血が
すべての
大人の儀式、よ、と、笑い、云った
すべての
それら
かれは、吐き捨てるように、その時、だから
あらゆるすべての轟音を
すべてのものは
いま、おまえ殺人マシーンか!…と
もはやだれも
いま
お前、だれがおまえみたいなんを
なにも。なんの
ようやくに
育てたんよ?だれよ!と、その
呼吸さえ
この
聲を聞いた。かれ、——弟は、背後に
胸の奥深くの
あさひのしたに
ざっくり言っといたからな、おれら
鼓動さえも
その
今日もざっくりと、——と笑い、ただ
止めて。もう
いろのこい
邪気も無く、——今日もばっくり、
流れ出す、耳に
ひかりとかげに
ざっくり言ってやっちゃったから…死刑にしてよって
止めて。もう
すべて、その
兄貴だけは死刑にしてよって、あいつ、何回も、何回も、ほら
血さえ、また、その
すべてのそれら
面会あるじゃん、あのとき…行くの?
止めて。いま
すべて、いま
なに?
耳に、血が
面会なんか…お前、
「行くよ」
行ったの?
「行くよ、だって」と、三回目に?…たぶん。店に來た二回目だか三回目だかに、女は(——少女は?)云った。「彼女さんじゃん。…だって、わたし」口を尖らせ、その「行かないわけには、…ま、いかないわけよ」まるで無限の慈悲を以て重労働を引き受けている、そんな。あるいは、敢えて苛酷を選ぶ、そんな。要するに殉敎者じみた、とでも?…そんな。いずれにせよ大して可愛くもない顏に精一杯のしなをつける。同じように大したものではないだれもと同じように、…女たち。
「何回も行った…あいつ、意外とね、」
「何?」
「子猫ちゃん系っていうか、」
「なにそれ?」
「子猫って基本、甘えないよね。愛想すっごい惡い」
「何回行ったの?」
「あいつ、甘えて來るから」
「甘やかしたの?」
「だって、さ。だって、だって、だって甘えるじゃん」…彼女さんだからさ、と、女はそう独り言散、「そもそも、お前、その殺人マシーンと付き合ってたの?」
「ひどっ…親公認。もう完全に」
「告ったのどっち?」
「どっちかな?…わたしかな?…どっちどっち?…って、やっぱむしろあいつかな?」
「お前、日本語話せてる?」
「じゃなくて、そもそも、やられたんだよね?」
「藥?」
「じゃなくて、もっと、きっついの、」
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