流波 rūpa ……詩と小説018・二十九の詩と散文による流波 rūpa 伽多


以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



以下は詩。もしくは、この10月から書いてる長い小説と、11月に書いた中編小説のシノプシス、或はテーマ。

小説の概要は、ベトナム在住のわたしが十六歳/十八歳の少年/少女に出会う。彼/彼女は売春をしている男/女で、その名前も素性も知れない。だから、わたしは彼/彼女を沙羅と名づけた。共通言語はなにもない。そしてわたしにさまざまな記憶が想起される。

般若經・中論・唯識論をベースにしたもの。

詩は、詩本編と、複声部のパーツふたつ、及び二声の詩と四声の詩。



十六偈の伽多//ふりそそぐ/沙羅、その肌/あざやかに/照らし出し


ふりそそぐ

沙羅、その肌

あざやかに

照らし出し


沙羅、光りは

与えるもの

沙羅、色彩を

沙羅、光は


ふりそそぐ

沙羅、そのまぶた

褐色の沙羅

それら色彩


沙羅、光は

与えるもの

沙羅、色彩を

色めきを


沙羅、色彩は

燃え尽きた、すでに

光の中に

ふれた光に


だから沙羅

奪うもの、沙羅

壞すもの、沙羅

光ら。容赦なく


ためらいもなく

留保もなく

例外も

おののきもなく


沙羅、褐色の沙羅

色彩は燃えた。すべてもう

沙羅、燃え尽きた

その色彩は


だから色らは

沙羅、燃え尽きた

燃え広がった。すべてもう

沙羅、白濁の沙羅


おののきもなく

例外も

留保もなく

ためらいもなく


光ら。容赦なく

壞すもの、沙羅

奪うもの、沙羅

だから沙羅


ふれた光に

光の中に

燃え広がった、すでに

沙羅、色彩は


色めきを

沙羅、色彩を

与えるもの

沙羅、光は


それら色彩

褐色の沙羅

沙羅、そのまぶた

ふりそそぐ


沙羅、光は

沙羅、色彩を

与えるもの

沙羅、光りは


照らし出し

あざやかに

沙羅、その肌

ふりそそぐ



〇1

その笑った聲

ふるわすのはそれ

笑う沙羅


何故?

うつむいたまま老婆がひとりで笑っていたから

何故?


昏い綺羅

ふるえたのはそれ

ふたつの虹彩


何故?

傾く老婆が笑いを隱していたから

何故?


いく千の目を持つ

何も見ないから

魔物たちは


聞いたのだった

あふれかえる息吹きを

魔物たちの


淚を流した

一滴だけ沙羅は

恥じらいもなく


何故?

魔物たちはしあわせに息吹いていた

何故?


ひらき満ちたり誘う花たちのように

魔物たちはしあわせに息吹いていた

ひらき満ちたり誘う花たちのように



〇2

猫。ほら

猫。その背後に

沙羅、いま走り抜けたのは


黑猫。そして

瘠せた三毛の

あびていた


光りを

立ち止まった三秒

誰?…と


お前なんか呼ばなかったよ

誰れ?そこに

無様な躯体をさらすのは


翳る

雲は

日差しを隱しはじめていたから


目のない少女が失神しかけたのを

すでに

知っていた


その耳に

鋭利な耳に

或は鼻にも


立ち止まったいた事実などないに等しい

すでに

走り去ったことさえ忘れ去られたから



●二聲の伽多

ふりそそぐ

 その笑った聲

沙羅、その肌

 ふるわすのはそれ

あざやかに

 笑う沙羅

照らし出し


沙羅、光りは

 何故?

与えるもの

 うつむいたまま老婆がひとりで笑っていたから

沙羅、色彩を

 何故?

沙羅、光は


ふりそそぐ

 昏い綺羅

沙羅、そのまぶた

 ふるえたのはそれ

褐色の沙羅

 ふたつの虹彩

それら色彩


沙羅、光は

 何故?

与えるもの

 傾く老婆が笑いを隱していたから

沙羅、色彩を

 何故?

色めきを


沙羅、色彩は

 いく千の目を持つ

燃え尽きた、すでに

 何も見ないから

光の中に

 魔物たちは

ふれた光に


だから沙羅

 聞いたのだった

奪うもの、沙羅

 あふれかえる息吹きを

壞すもの、沙羅

 魔物たちの

光ら。容赦なく


ためらいもなく

 淚を流した

留保もなく

 一滴だけ沙羅は

例外も

 恥じらいもなく

おののきもなく


沙羅、褐色の沙羅

 何故?

色彩は燃えた。すべてもう

 魔物たちはしあわせに息吹いていた

沙羅、燃え尽きた

 何故?

その色彩は


だから色らは

 ひらき満ちたり誘う花たちのように

沙羅、燃え尽きた

 魔物たちはしあわせに息吹いていた

燃え広がった。すべてもう

 ひらき満ちたり誘う花たちのように

沙羅、白濁の沙羅


おののきもなく

 恥じらいもなく

例外も

 一滴だけ沙羅は

留保もなく

 淚を流した

ためらいもなく


光ら。容赦なく

 魔物たちの

壞すもの、沙羅

 あふれかえる息吹きを

奪うもの、沙羅

 聞いたのだった

だから沙羅


ふれた光に

 魔物たちは

光の中に

 何も見ないから

燃え広がった、すでに

 いく千の目を持つ

沙羅、色彩は


色めきを

 何故?

沙羅、色彩を

 傾く老婆が笑いを隱していたから

与えるもの

 何故?

沙羅、光は


それら色彩

 ふたつの虹彩

褐色の沙羅

 ふるえたのはそれ

沙羅、そのまぶた

 昏い綺羅

ふりそそぐ


沙羅、光は

 何故?

沙羅、色彩を

 うつむいたまま老婆がひとるで笑っていたから

与えるもの

 何故?

沙羅、光りは


照らし出し

 笑う沙羅

あざやかに

 ふるわすのはそれ

沙羅、その肌

 その笑った聲

ふりそそぐ



●四聲の伽多

ふりそそぐ

   猫。ほら

 その笑った聲

  沙羅、いま走り抜けたのは

沙羅、その肌

   猫。その背後に

 ふるわすのはそれ

  猫。その背後に

あざやかに

   沙羅、いま走り抜けたのは

 笑う沙羅

  猫。ほら

照らし出し


沙羅、光りは

   黑猫。そして

 何故?

  あびていた

与えるもの

   瘠せた三毛の

 うつむいたまま老婆がひとりで笑っていたから

  瘠せた三毛の

沙羅、色彩を

   あびていた

 何故?

  黑猫。そして

沙羅、光は


ふりそそぐ

   光りを

 昏い綺羅

  誰れ?…と

沙羅、そのまぶた

   立ち止まった三秒

 ふるえたのはそれ

  立ち止まった三秒

褐色の沙羅

   誰れ?…と

 ふたつの虹彩

  光りを

それら色彩


沙羅、光は

   お前なんか呼ばなかったよ

 何故?

  無様な躯体をさらすのは

与えるもの

   誰れ?そこに

 傾く老婆が笑いを隱していたから

  誰れ?そこに

沙羅、色彩を

   無様な躯体をさらすのは

 何故?

  お前なんか呼ばなかったよ

色めきを


沙羅、色彩は

   翳る

 いく千の目を持つ

  日差しを隱しはじめていたから

燃え尽きた、すでに

   雲は

 何も見ないから

  雲は

光の中に

   日差しを隱しはじめていたから

 魔物たちは

  翳る

ふれた光に


だから沙羅

   目のない少女が失神しかけたのを

 聞いたのだった

  知っていた

奪うもの、沙羅

   すでに

 あふれかえる息吹きを

  すでに

壞すもの、沙羅

   知っていた

 魔物たちの

  目のない少女が失神しかけたのを

光ら。容赦なく


ためらいもなく

   その耳に

 淚を流した

  或は鼻にも

留保もなく

   鋭利な耳に

 一滴だけ沙羅は

  鋭利な耳に

例外も

   或は鼻にも

 恥じらいもなく

  その耳に

おののきもなく


沙羅、褐色の沙羅

   立ち止まったいた事実などないに等しい

 何故?

  走り去ったことさえ忘れ去られたから

色彩は燃えた。すべてもう

   すでに

 魔物たちはしあわせに息吹いていた

  すでに

沙羅、燃え尽きた

   走り去ったことさえ忘れ去られたから

 何故?

  立ち止まったいた事実などないに等しい

その色彩は


だから色らは

   立ち止まったいた事実などないに等しい

 ひらき満ちたり誘う花たちのように

  走り去ったことさえ忘れ去られたから

沙羅、燃え尽きた

   すでに

 魔物たちはしあわせに息吹いていた

  すでに

燃え広がった。すべてもう

   走り去ったことさえ忘れ去られたから

 ひらき満ちたり誘う花たちのように

  立ち止まったいた事実などないに等しい

沙羅、白濁の沙羅


おののきもなく

   或は鼻にも

 恥じらいもなく

  その耳に

例外も

   鋭利な耳にも

 一滴だけ沙羅は

  鋭利な耳にも

留保もなく

   その耳に

 淚を流した

  或は鼻にも

ためらいもなく


光ら。容赦なく

   知っていた

 魔物たちの

  目のない少女が失神しかけたのを

壞すもの、沙羅

   すでに

 あふれかえる息吹きを

  すでに

奪うもの、沙羅

   目のない少女が失神しかけたのを

 聞いたのだった

  知っていた

だから沙羅


ふれた光に

   日差しを隱しはじめていたから

 魔物たちは

  翳る

光の中に

   雲は

 何も見ないから

  雲は

燃え広がった、すでに

   翳る

いく千の目を持つ

  日差しを隱しはじめていたから

沙羅、色彩は


色めきを

   無様な躯体をさらすのは

 何故?

  お前なんか呼ばなかったよ

沙羅、色彩を

   誰れ?そこに

 傾く老婆が笑いを隱していたから

  誰れ?そこに

与えるもの

   お前なんか呼ばなかったよ

 何故?

  無様な躯体をさらすのは

沙羅、光は


それら色彩

   誰?…と

 ふたつの虹彩

  光りを

褐色の沙羅

   立ち止まった三秒

 ふるえたのはそれ

  立ち止まった三秒

沙羅、そのまぶた

   光りを

 昏い綺羅

  誰?…と

ふりそそぐ


沙羅、光は

   あびていた

 何故?

  黑猫。そして

沙羅、色彩を

   瘠せた三毛の

 うつむいたまま老婆がひとるで笑っていたから

  瘠せた三毛の

与えるもの

   黑猫。そして

 何故?

  あびていた

沙羅、光りは


照らし出し

   沙羅、いま走り抜けたのは

 笑う沙羅

  猫。ほら

あざやかに

   猫。その背後に

 ふるわすのはそれ

  猫。その背後に

沙羅、その肌

   猫。ほら

 その笑った聲

  沙羅、いま走り抜けたのは

ふりそそぐ







Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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