流波 rūpa ……詩と小説017・二十九の詩と散文による流波 rūpa 伽多


以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



以下は詩。もしくは、この10月から書いてる長い小説と、11月に書いた中編小説のシノプシス、或はテーマ。

小説の概要は、ベトナム在住のわたしが十六歳/十八歳の少年/少女に出会う。彼/彼女は売春をしている男/女で、その名前も素性も知れない。だから、わたしは彼/彼女を沙羅と名づけた。共通言語はなにもない。そしてわたしにさまざまな記憶が想起される。

般若經・中論・唯識論をベースにしたもの。

詩は、詩本編と、複声部のパーツふたつ、及び二声の詩と四声の詩。



十九偈の伽多//何故、沙羅/沙羅、何故/あなたはその/光の中に


何故、沙羅

沙羅、何故

あなたはその

光の中に


何故、沙羅

沙羅、何故

あなたはその

翳りの中に


それは、沙羅

それが木漏れ日

だから沙羅

それは木の葉の


それは、沙羅

それが葉の影

だから沙羅

頭の上には


見上げれば

もしも沙羅、それら

氾濫。葉の色ら

色彩ら散乱


見上げれば

もしも沙羅、それら

横溢。造花ら

模造花の擬態


匂いなど

花の、だからその

匂いは、沙羅

夢のように?


だから沙羅、樹木に光り

光と影に

つまさきだちの、だから

沙羅、なにを


沙羅、何を?

何を、沙羅、その鼻

沙羅、鋭敏な

あなたをつらぬく


その孔に、沙羅

ブーゲンビリアはいま匂い立ち

ブーゲンビリアはいま匂い立ち

その孔に、沙羅


あなたをつらぬく

沙羅、鋭敏な

何を、沙羅、その鼻

沙羅、何を?


沙羅、なにを

つまさきだちの、だから

光と影に

だから沙羅、樹木に光り


夢のように?

匂いは、沙羅

花の、だからその

匂いなど


模造花の擬態

横溢。造花ら

もしも沙羅、それら

見上げれば


色彩ら散乱

氾濫。葉の色ら

もしも沙羅、それら

見上げれば


頭の上には

だから沙羅

それが葉の影

それは、沙羅


それは木の葉の

だから沙羅

それが木漏れ日

それは、沙羅


翳りの中に

あなたはその

沙羅、何故

何故、沙羅


光の中に

あなたはその

沙羅、何故

何故、沙羅



〇1

巢をつくり

その

巢をつくり


巢に隱れ

その

巢に隱れ


巢を隱し

その

巢を隱し


巢を壞し

その

巢を壞し


巢に巢をかさね

その

巢に巢をかさね


えぐるような

事實、えぐった


つきさすような

事實、つきささった


掘り拔くような

事實、掘り拔いた


孔ぼこだらけ

どこも

なにも


無謀な孔。孔

孔。無防備な孔。孔

無慚な孔。孔



〇2

おののいたのだ

色彩がいま褪せた気がして

繊細すぎた沙羅


悲しんだのだ

色彩は猶もあざやかすぎて

さびしがりやの沙羅


老婆は魔物

沙羅は知っていた

かがみこんだ老婆


ふとっちょは魔物

沙羅は知っていた

なにか言いかけたふとっちょ


樹木は魔物

花さえ

葉々さえ魔物


空さえ魔物

光りさえ

翳りさえ魔物


気配

魔物たちの貪り。その

気配


それは瞼

ふるえたのは

傷つきやすい沙羅


痛んだ

その心

沙羅の心は


怯えた。沙羅は

すべてが無防備

すべてが



●二聲の伽多

何故、沙羅

 巢をつくり

沙羅、何故

 その

あなたはその

 巢をつくり

光の中に


何故、沙羅

 巢に隱れ

沙羅、何故

 その

あなたはその

 巢に隱れ

翳りの中に


それは、沙羅

 巢を隱し

それが木漏れ日

 その

だから沙羅

 巢を隱し

それは木の葉の


それは、沙羅

 巢を壞し

それが葉の影

 その

だから沙羅

 巢を壞し

頭の上には


見上げれば

 巢に巢をかさね

もしも沙羅、それら

 その

氾濫。葉の色ら

 巢に巢をかさね

色彩ら散乱


見上げれば

 抉るような

もしも沙羅、それら

 巢

横溢。造花ら

 事實、えぐった

模造花の擬態


匂いなど

 つきさすような

花の、だからその

 巢

匂いは、沙羅

 事實、つきささった

夢のように?


だから沙羅、樹木に光り

 掘り拔くような

光と影に

 巢

つまさきだちの、だから

 事實、掘り拔いた

沙羅、なにを


沙羅、何を?

 孔ぼこだらけ

何を、沙羅、その鼻

 どこも

沙羅、鋭敏な

 なにも

あなたをつらぬく


その孔に、沙羅

 無謀な孔。孔

ブーゲンビリアはいま匂い立ち

 孔。無防備な孔。孔

ブーゲンビリアはいま匂い立ち

 無慚な孔。孔

その孔に、沙羅


あなたをつらぬく

 なにも

沙羅、鋭敏な

 どこも

何を、沙羅、その鼻

 孔ぼこだらけ

沙羅、何を?


沙羅、なにを

 事實、掘り拔いた

つまさきだちの、だから

 巢

光と影に

 掘り拔くような

だから沙羅、樹木に光り


夢のように?

 事實、つきささった

匂いは、沙羅

 巢

花の、だからその

 つきさすような

匂いなど


模造花の擬態

 事實、えぐった

横溢。造花ら

 巢

もしも沙羅、それら

 えぐるような

見上げれば


色彩ら散乱

 巢に巢をかさね

氾濫。葉の色ら

 その

もしも沙羅、それら

 巢に巢をかさね

見上げれば


頭の上には

 巢を壞し

だから沙羅

 その

それが葉の影

 巢を壞し

それは、沙羅


それは木の葉の

 巢を隱し

だから沙羅

 その

それが木漏れ日

 巢を隱し

それは、沙羅


翳りの中に

 巢に隱れ

あなたはいま

 その

沙羅、何故

 巢に隱れ

何故、沙羅


光の中に

 巢をつくり

あなたはいま

 その

沙羅、何故

 巢をつくり

何故、沙羅



●四聲の伽多

何故、沙羅

   おののいたのだ

 巢をつくり

  繊細すぎた沙羅

沙羅、何故

   色彩がいま褪せた気がして

 その

  色彩がいま褪せた気がして

あなたはその

   繊細すぎた沙羅

 巢をつくり

  おののいたのだ

光の中に


何故、沙羅

   悲しんだのだ

 巢に隱れ

  さびしがりやの沙羅

沙羅、何故

   色彩は猶もあざやかすぎて

 その

  色彩は猶もあざやかすぎて

あなたはその

   さびしがりやの沙羅

 巢に隱れ

  悲しんだのだ

翳りの中に


それは、沙羅

   老婆は魔物

 巢を隱し

  かがみこんだ老婆

それが木漏れ日

   沙羅は知っていた

 その

  沙羅は知っていた

だから沙羅

   かがみこんだ老婆

 巢を隱し

  老婆は魔物

それは木の葉の


それは、沙羅

   ふとっちょは魔物

 巢を壞し

  何か言いかけたふとっちょ

それが葉の影

   沙羅は知っていた

 その

  沙羅は知っていた

だから沙羅

   なにか言いかけたふとっちょ

 巢を壞し

  太っちょは魔物

頭の上には


見上げれば

   樹木は魔物

 巢に巢をかさね

  葉々さえ魔物

もしも沙羅、それら

   花さえ

 その

  花さえ

氾濫。葉の色ら

   葉々さえ魔物

 巢に巢をかさね

  樹木は魔物

色彩ら散乱


見上げれば

   空さえ魔物

 抉るような

  翳りさえ魔物

もしも沙羅、それら

   光りさえ

 巢

  光りさえ

横溢。造花ら

   翳りさえ魔物

 事實、えぐった

  空さえ魔物

模造花の擬態


匂いなど

   気配

 つきさすような

  気配

花の、だからその

   魔物たちの貪り。その

 巢

  魔物たちの貪り。その

匂いは、沙羅

   気配

 事實、つきささった

  気配

夢のように?


だから沙羅、樹木に光り

   それは瞼

 掘り拔くような

  傷つきやすい沙羅

光と影に

   ふるえたのは

 巢

  ふるえたのは

つまさきだちの、だから

   傷つきやすい沙羅

 事實、掘り拔いた

  それは瞼

沙羅、なにを


沙羅、何を?

   痛んだ

 孔ぼこだらけ

  沙羅の心は

何を、沙羅、その鼻

   その心

 どこも

  その心

沙羅、鋭敏な

   沙羅の心は

 なにも

  痛んだ

あなたをつらぬく


その孔に、沙羅

   怯えた。沙羅は

 無謀な孔。孔

  すべてが

ブーゲンビリアはいま匂い立ち

   すべてが無防備

 孔。無防備な孔。孔

  すべてが無防備

ブーゲンビリアはいま匂い立ち

   すべてが

 無慚な孔。孔

  怯えた沙羅は

その孔に、沙羅


あなたをつらぬく

   沙羅の心は

 なにも

  痛んだ

沙羅、鋭敏な

   その心

 どこも

  その心

何を、沙羅、その鼻

   痛んだ

 孔ぼこだらけ

  沙羅の心は

沙羅、何を?


沙羅、なにを

   傷つきやすい沙羅

 事實、掘り拔いた

  それは瞼

つまさきだちの、だから

   ふるえたのは

 巢

  ふるえたのは

光と影に

   それは瞼

 掘り拔くような

  傷つきやすい沙羅

だから沙羅、樹木に光り


夢のように?

   気配

 事實、つきささった

  気配

匂いは、沙羅

   魔物たちの貪り

 巢

  魔物たちの貪り

花の、だからその

   気配

 つきさすような

  気配

匂いなど


模造花の擬態

   翳りさえ魔物

 事實、えぐった

  空さえ魔物

横溢。造花ら

   光りさえ

 巢

  光りさえ

もしも沙羅、それら

   空さえ魔物

 えぐるような

  翳りさえ魔物

見上げれば


色彩ら散乱

   葉々さえ魔物

 巢に巢をかさね

  樹木は魔物

氾濫。葉の色ら

   花さえ

 その

  花さえ

もしも沙羅、それら

   樹木は魔物

 巢に巢をかさね

  葉々さえ魔物

見上げれば


頭の上には

   なにか言いかけたふとっちょ

 巢を壞し

  ふとっちょは魔物

だから沙羅

   沙羅は知っていた

 その

  沙羅は知っていた

それが葉の影

   ふとっちょは魔物

 巢を壞し

  なにか言いかけたふとっちょ

それは、沙羅


それは木の葉の

   かがみこんだ老婆

 巢を隱し

  老婆は魔物

だから沙羅

   沙羅は知っていた

 その

  沙羅は知っていた

それが木漏れ日

   老婆は魔物

 巢を隱し

  かがみこんだ老婆

それは、沙羅


翳りの中に

   さびしがりやの沙羅

 巢に隱れ

  悲しんだのだ

あなたはいま

   色彩は猶もあざやかすぎて

 その

  色彩は猶もあざやかすぎて

沙羅、何故

   悲しんだのだ

 巢に隱れ

  さびしがりやの沙羅

何故、沙羅


光の中に

   繊細すぎた沙羅

 巢をつくり

  おののいたのだ

あなたはいま

   色彩がいま褪せた気がして

 その

  色彩がいま褪せた気がして

沙羅、何故

   おののいたのだ

 巢をつくり

  繊細すぎた沙羅

何故、沙羅








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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