流波 rūpa ……詩と小説0012・二十九の詩と散文による流波 rūpa 伽多


以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



以下は詩。もしくは、この10月から書いてる長い小説と、11月に書いた中編小説のシノプシス、或はテーマ。

小説の概要は、ベトナム在住のわたしが十六歳/十八歳の少年/少女に出会う。彼/彼女は売春をしている男/女で、その名前も素性も知れない。だから、わたしは彼/彼女を沙羅と名づけた。共通言語はなにもない。そしてわたしにさまざまな記憶が想起される。

般若經・中論・唯識論をベースにしたもの。

詩は、詩本編と、複声部のパーツふたつ、及び二声の詩と四声の詩。



二十四偈の伽多//すべて生きられた/すでに/すべて/なにもかも


すべて生きられた

すでに

すべて

なにもかも


沙羅、轉生とは

沙羅

散沙羅、沙羅

なにものでもなかった


沙羅、轉生とは

沙羅

散沙羅、沙羅

時間の從僕でさえなかった


沙羅、轉生とは

沙羅

散沙羅、沙羅

すべてでしかなかった


わたしはすべて

生きられた。すでに

その須臾にさえ

あなたはすべて


沙羅、轉生とは

沙羅

散沙羅、沙羅

イノチでさえない


沙羅、轉生とは

沙羅

散沙羅、沙羅

かたちさえもない


沙羅、轉生とは

沙羅

散沙羅、沙羅

轉生さえなかった


沙羅、轉生とは

沙羅

散沙羅、沙羅

すべてであった


見られなかったなにものもない

知られなかったなにものもない

過去も未來も

生滅も持続も


すべてすでに見られていたから

すでにすべて知られ

わたしにはすでに

何もなく、あり得ず、目醒め


何もなく、あり得ず、目醒め

あなたはすでに

すでにすべて存在し

すべてすでに生きられていたから


生滅も持続も

過去も未來も

知られなかったなにものもない

見られなかったなにものもない


すべてであった

散沙羅、沙羅

沙羅

沙羅、轉生とは


轉生さえなかった

散沙羅、沙羅

沙羅

沙羅、轉生とは


かたちさえもない

散沙羅、沙羅

沙羅

沙羅、轉生とは


イノチでさえない

散沙羅、沙羅

沙羅

沙羅、轉生とは


沙羅、もはやなにもかも

生きられなかった須臾さえも

散沙羅、沙羅

すでに沙羅


すべてを生きた

散沙羅、沙羅

すべてはもはや

散沙羅、沙羅


あなたはすべて

その須臾にさえ

生きられた。すでに

わたしはすべて


すべてでしかなかった

散沙羅、沙羅

沙羅

沙羅、轉生とは


時間の從僕でさえなかった

散沙羅、沙羅

沙羅

沙羅、轉生とは


なにものでもなかった

散沙羅、沙羅

沙羅

沙羅、轉生とは


なにもかも

すべて

すでに

すべて生きられた



〇1

未生の極樂鳥

いま羽搏いた極樂鳥

死滅の極樂鳥


未生の鶯

いま淚した鶯

死滅の鶯


未生の雲雀

いま唾吐いた雲雀

死滅の雲雀


未生の緊那利

いま舞いあがった緊那利

死滅の緊那利


なにも得ないまま

飛び立ったものら

翼なすもの


未生の虎

いま駆け去った虎

死滅の虎


未生の獅子ら

いま吼えた獅子ら

死滅の獅子ら


未生の犀ら

いま步み來た犀

死滅の犀ら


未生の緊那羅

いま踊る緊那羅

死滅の緊那羅


なにも得ないまま

貪ったものら

足なすものら


這うものたち

融けるものたち

裂けるものたち



〇2

わたしはすでに

その色彩

誰れかが見た


わたしはすでに

その温度

誰れかがふれた


わたしはすでに

その甘み

誰れかが舐めた


わたしはすでに

その息吹き

誰れかが聞いた


光りに

ゆらぐ

翳りに


わたしはすでに

その痛み

誰れかがふるえた


わたしはすでに

その歓喜

誰れかが怯えた


わたしはすでに

その叡智

誰れかが歎いた


わたしはすでに

その香り

誰れかが嗅いだ


ひたすらな全能

ただなすすべもなく

万象



●二聲の伽多

すべて生きられた

 未生の極樂鳥

すでに

 いま羽搏いた極樂鳥

すべて

 死滅の極樂鳥

なにもかも


沙羅、轉生とは

 未生の鶯

沙羅

 いま淚した鶯

散沙羅、沙羅

 死滅の鶯

なにものでもなかった


沙羅、轉生とは

 未生の雲雀

沙羅

 いま唾吐いた雲雀

散沙羅、沙羅

 死滅の雲雀

時間の從僕でさえなかった


沙羅、轉生とは

 未生の緊那羅利

沙羅

 いま舞いあがった緊那羅利

散沙羅、沙羅

 死滅の緊那羅利

すべてでしかなかった


わたしはすべて

 なにも得ないまま

生きられた。すでに

 飛び立つものら

その須臾にさえ

 翼なすもの

あなたはすべて


沙羅、轉生とは

 未生の虎

沙羅

 いま駆け去った虎

散沙羅、沙羅

 死滅の虎

イノチでさえない


沙羅、轉生とは

 未生の獅子ら

沙羅

 いま吼えた獅子ら

散沙羅、沙羅

 死滅の獅子ら

かたちさえもない


沙羅、轉生とは

 未生の犀ら

沙羅

 いま步み來た犀

散沙羅、沙羅

 死滅の犀ら

轉生さえなかった


沙羅、轉生とは

 未生の緊那羅

沙羅

 いま踊る緊那羅

散沙羅、沙羅

 死滅の緊那羅

すべてであった


見られなかったなにものもない

 なにも得ないまま

知られなかったなにものもない

 貪ったものら

過去も未來も

 足なすものら

生滅も持続も


すべてすでに見られていたから

 這うものたち

すでにすべて知られ

 融けるものたち

わたしにはすでに

 裂けるものたち

何もなく、あり得ず、目醒め


何もなく、あり得ず、目醒め

 裂けるものたち

あなたはすでに

 融けるものたち

すでにすべて存在し

 裂けるものたち

すべてすでに生きられていたから


生滅も持続も

 足なすものら

過去も未來も

 貪ったものら

存在しなかったなにものもない

 なにも得ないまま

生きられなかったなにもない


すべてであった

 死滅の緊那羅

散沙羅、沙羅

 いま踊る緊那羅

沙羅

 未生の緊那羅

沙羅、轉生とは


轉生さえなかった

 死滅の犀ら

散沙羅、沙羅

 いま步み來た犀

沙羅

 未生の犀ら

沙羅、轉生とは


かたちさえもない

 死滅の獅子ら

散沙羅、沙羅

 いま吼えた獅子ら

沙羅

 未生の獅子ら

沙羅、轉生とは


イノチでさえない

 死滅の虎

散沙羅、沙羅

 いま駆け去った虎

沙羅

 未生の虎ら

沙羅、轉生とは


あなたはすべて

 翼なすもの

その須臾にさえ

 飛び立ったものら

生きられた。すでに

 なにも得ないまま

わたしはすべて


すべてでしかなかった

 死滅の緊那利

散沙羅、沙羅

 いま舞いあがった緊那利

沙羅

 未生の緊那利

沙羅、轉生とは


時間の從僕でさえなかった

 死滅の雲雀

散沙羅、沙羅

 いま唾吐いた雲雀

沙羅

 未生の雲雀

沙羅、轉生とは


なにものでもなかった

 死滅の鶯

散沙羅、沙羅

 いま淚した鶯

沙羅

 未生の鶯

沙羅、轉生とは


なにもかも

 死滅の極樂鳥

すべて

 いま羽搏いた極樂鳥

すでに

 未生の極樂鳥

すべて生きられた



●四聲の伽多

すべて生きられた

   わたしはすでに

 未生の極樂鳥

  誰れかが見た

すでに

   その色彩

 いま羽搏いた極樂鳥

  その色彩

すべて

   誰れかが見た

 死滅の極樂鳥

  わたしはすでに

なにもかも


沙羅、轉生とは

   わたしはすでに

 未生の鶯

  誰れかがふれた

沙羅

   その温度

 いま淚した鶯

  その温度

散沙羅、沙羅

   誰れかがふれた

 死滅の鶯

  わたしはすでに

なにものでもなかった


沙羅、轉生とは

   わたしはすでに

 未生の雲雀

  誰れかが舐めた

沙羅

   その甘み

 いま唾吐いた雲雀

  その甘み

散沙羅、沙羅

   誰れかが舐めた

 死滅の雲雀

  わたしはすでに

時間の從僕でさえなかった


沙羅、轉生とは

   わたしはすでに

 未生の緊那利

  誰れかが聞いた

沙羅

   その息吹き

 いま舞いあがった緊那利

  その息吹き

散沙羅、沙羅

   誰れかが聞いた

 死滅の緊那利

  わたしはすでに

すべてでしかなかった


わたしはすべて

   光りに

 なにも得ないまま

  翳りに

生きられた。すでに

   ゆらぐ

 飛び立つものら

  ゆらぐ

その須臾にさえ

   翳りに

 翼なすもの

  光りに

あなたはすべて


沙羅、轉生とは

   わたしはすでに

 未生の虎

  誰れかがふるえた

沙羅

   その痛み

 いま駆け去った虎

  その痛み

散沙羅、沙羅

   誰れかがふるえた

 死滅の虎

  わたしはすでに

イノチでさえない


沙羅、轉生とは

   わたしはすでに

 未生の獅子ら

  誰れかが怯えた

沙羅

   その歓喜

 いま吼えた獅子ら

  その歓喜

散沙羅、沙羅

   誰れかが怯えた

 死滅の獅子ら

  わたしはすでに

かたちさえもない


沙羅、轉生とは

   わたしはすでに

 未生の犀ら

  誰れかが歎いた

沙羅

   その叡智

 いま步み來た犀

  その叡智

散沙羅、沙羅

   誰れかが歎いた

 死滅の犀ら

  わたしはすでに

轉生さえなかった


沙羅、轉生とは

   わたしはすでに

 未生の緊那羅

  誰れかが嗅いだ

沙羅

   その香り

 いま踊る緊那羅

  その香り

散沙羅、沙羅

   誰れかが嗅いだ

 死滅の緊那羅

  わたしはすでに

すべてであった


見られなかったなにものもない

   ひたすらな全能

 なにも得ないまま

  万象

知られなかったなにものもない

   ただなすすべもなく

 貪ったものら

  ただなすすべなく

過去も未來も

   万象

 足なすものら

  ひたすらな全能

生滅も持続も


すべてすでに見られていたから

   いなかったものたち

 這うものたち

  性差あるもの

すでにすべて知られ

   夢見られたものたち

 融けるものたち

  ひとつのものたち

わたしにはすでに

   化と幻たち

 裂けるものたち

  両性俱有者

何もなく、あり得ず、目醒め


何もなく、あり得ず、目醒め

   泳ぐものたち

 死なないものたち

  變化するものたち

あなたはすでに

   浮かぶものたち

 茂るものたち

  放つものたち

すでにすべて存在し

   湧き出すものたち

 蔓延るものたち

  壞すものたち

すべてすでに生きられていたから


生滅も持続も

   万象

 足なすものら

  ひたすらな全能

過去も未來も

   ただなすすべもなく

 貪ったものら

  ただなすすべもなく

存在しなかったなにものもない

   ひたすらな全能

 なにも得ないまま

  万象

生きられなかったなにもない


すべてであった

   誰れかが嗅いだ

 死滅の緊那羅

  わたしはすでに

散沙羅、沙羅

   その香り

 いま踊る緊那羅

  その香り

沙羅

   わたしはすでに

 未生の緊那羅

  誰れかが嗅いだ

沙羅、轉生とは


轉生さえなかった

   誰れかが歎いた

 死滅の犀ら

  わたしはすでに

散沙羅、沙羅

   その叡智

 いま步み來た犀

  その叡智

沙羅

   わたしはすでに

 未生の犀ら

  誰れかが歎いた

沙羅、轉生とは


かたちさえもない

   誰れかが怯えた

 死滅の獅子ら

  わたしはすでに

散沙羅、沙羅

   その歓喜

 いま吼えた獅子ら

  その歓喜

沙羅

   わたしはすでに

 未生の獅子ら

  誰れかが怯えた

沙羅、轉生とは


イノチでさえない

   誰れかがふるえた

 死滅の虎

  わたしはすでに

散沙羅、沙羅

   その痛み

 いま駆け去った虎

  その痛み

沙羅

   わたしはすでに

 未生の虎ら

  誰れかがふるえた

沙羅、轉生とは


あなたはすべて

   翳りに

 翼なすもの

  光りに

その須臾にさえ

   ゆらぐ

 飛び立ったものら

  ゆらぐ

生きられた。すでに

   光りに

 なにも得ないまま

  翳りに

わたしはすべて


すべてでしかなかった

   誰れかが聞いた

 死滅の緊那利

  わたしはすでに

散沙羅、沙羅

   その息吹き

 いま舞いあがった緊那利

  その息吹き

沙羅

   わたしはすでに

 未生の緊那利

  誰れかが聞いた

沙羅、轉生とは


時間の從僕でさえなかった

   誰れかが舐めた

 死滅の雲雀

  わたしはすでに

散沙羅、沙羅

   その甘み

 いま唾吐いた雲雀

  その甘み

沙羅

   わたしはすでに

 未生の雲雀

  誰れかが舐めた

沙羅、轉生とは


なにものでもなかった

   誰れかがふれた

 死滅の鶯

  わたしはすでに

散沙羅、沙羅

   その温度

 いま淚した鶯

  その温度

沙羅

   わたしはすでに

 未生の鶯

  誰れかがふれた

沙羅、轉生とは


なにもかも

   誰れかが見た

 死滅の極樂鳥

  わたしはすでに

すべて

   その色彩

 いま羽搏いた極樂鳥

  その色彩

すでに

   わたしはすでに

 未生の極樂鳥

  誰れかが見た

すべて生きられた






Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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