蚊頭囉岐王——小説36
以下、一部に暴力的な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
亂序ノ散牟
かク聞きゝ爾に斗璃摩沙成餘ノ美蕃登に蕃登ノ血を知りき故レ爾に斗璃伎與躬に孔ナす孔のことごトくに蕃登の血を知りきかクて伎與麻沙祇樹古藤園を詣ヅるにそレ雪降らす日ノ雪わずかに積もりテ未だ虛にも散り舞うにも笠原小聲にさサやけらくは朝より斗璃伎與その全身より出血ありきとさサやきて又さサやけらくはそノ所以我等知らズと又知り得ズと又知らムとするすべモなしト故レ哿沙波良ノ比布美爾に蚊我ノ斗璃と俱なリて娑娑彌氣囉玖
巡回の時に…
何?
朝の…早朝の…
これ、何なんですか?
疾患?…なんなんだろうね?
何が起こったの?
全身からな…
何が起こってるの?
最初斑点でもできたのかと
血まみれじゃない?
匂うのよ。血が
死ぬの?
湿疹なんかじゃないよと
まだ生きてるの?
だた、理由が…
息は?
輸血はまだ必要ないだろうと
いつから…
片岡先生がね
ずっとなの?
止まらないようなそれも必要だけれども
連絡してよ
止血するにも
普通じゃないでしょ
あまり藥とかはいれたくないからな
死ぬんじゃない?
もたないかもしれないから
…ね?
躰が
見てるよ
とりあえずは静観するしかないと
あの目
そのうち止まるんじゃないかと
意識ある?
いまは見てるしか
あるのかな?…この子
ガーゼで拭ってあげてな
意識あるのかな?
見てるしか
他には?
熱が心配だけどな…
血だけ?
40度越えてな…
熱だけ?
理由が…
それだけなの?
細菌でもヴィルスでも入って、それでなんかなったのかと
病気ってこと?
切れた?
腫瘍のせいで?
毛細血管が?
なんのせいで?
だからにじみだした?
止まるの?
心配だけどな
血
かくて伎與麻沙
大丈夫?
爾に都儛耶氣良玖
思っていた。
あるいはそれでよいのかと。
このまま死ぬのが?
それこそが?
入れ替わりにうろつく。
彼等。
遠まきの職員ら。
祇樹園の西棟の病室に。
職員たちは無能をさらした。
取り寄せた防護服代わりの合羽を着た彼等は四人で。
水泳用のゴーグルとたゞの市販のマスク。
たぶん秘かに怯えながら。
血に染まったシーツはすでに二回取り換えたと。
ビニールシートの上に三枚目のシーツを。
呼吸器のチューブにしずかな逆流。
その血の。
ひざしに薄らいだその紅の色を垣間見た。
かすかに綺羅らぐ。
薄まった色を。
かクてその二月ほボ一週間の出血もすデに登唎摩沙は畢てき故レその二月ほボ一週間の出血もスでに登唎伎與は畢てき故レすでにして伎與麻沙がこコろ平穏なるにそノ日夙夜に斗璃摩娑爾に體に兆ス發熱にめ覺めきかクて指先は知りきソれ指先のふルえを故レ手首は知りきソれ手首の極度に冷えタる低温を故レ足首は知りき冷え切りたるそノ体温ノ骨にまで沁ミるその体温の冷血の触感のうちにまサに骨髄に兆ス極度の苦痛を故レ背骨のけゾりその骨の内に知りきトよむ苦痛のさまザまの痛みノみとよみトよんで叫き聲なスそれ苦痛をシ知りて苦痛をシ知りたれば斗璃摩沙はひトり部屋にめを覺まさせテも人を喚ぶ聲だに喉は知ラず故レ呻くとも叫ぶトもナく開かれた大口と鼻開かレた鼻と大口の孔に息ヲ吸いて且つは吐くをは忘レき故レ目を剝き斗璃摩沙娑ひとり娑彌氣囉玖
葉の色は
とををををををと
木漏れの光に
ろををををををと
葉の翳り
なにの音が?
木漏れの光は
ほををををををと
向こうに啼いた鳥のうたにさえ
ろををををををと
ゆらぎもせずに
見あえげた眼差し
ふるえもせずに
わたしはこころに
さわさわと
知っていた
それはゆらいだ
なにの音が?
どこからか風に
あををををををと
それはふるえた
ろををををををと
なにかの足の
それはわたしの
その爪の尖りに
のどが吐く音
かくて斗璃摩沙
とををををををと
爾に都儛耶氣良玖
吹き出す。
液体が。
右の網膜を打ち破って。
散った。
なにかの液体が。
炎がすこし。
すでに肌には。
髮の先さえ。
すこしの焰が。
不意の發火
知っていた。
それらが躰の内にさえも散在していたのを。
気付いていた。
すでに。
燃え上がる熱が。
發熱?
体温の、——肉の?
発熱が。
筋肉と神經を発光させた。
色彩もなく。
血をさえすでに。
匂いさえなく。
匂う。
わたしはみずからの肌の纏う芳香のさわぎたつのを。
醗酵したにも。
腐りかけたにも。
いよいよ馨りを強烈にして。
私は掻いた。
心のうちに。
自分の喉を。
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