般若理趣分(般若經理趣分)5
底本は大正大藏般若07。(※)はその校異。
又、◎は『國譯大藏經經部第三卷』の書き下し文。※はその註釋。譯者椎尾辨匡識の署名有り。
又奧書云、大正七年四月廿八日印刷、同三十日發行。昭和十年十二月廿八日四版發行。發行所國民文庫刊行會。
■10
爾時世尊復依一切能善調伏如來之相。爲諸菩薩宣說般若波羅蜜多攝受智‘密調伏有情甚深理趣智藏法門。
(※密字宋明本作蜜字)
‘謂一切有情平等性即忿平等性。一切有情調伏性即忿調伏性。
(※謂字三本俱作爲字)
一切有情眞法性即忿眞法性。一切有情眞如性即忿眞如性。
一切有情法界性即忿法界性。一切有情離生性即忿離生性。
一切有情實際性即忿實際性。一切有情本空性即忿本空性。
◎
爾の時、世尊は復、一切能善調伏如來の(之)相に依りて
諸の菩薩の爲に般若波羅蜜多、智密を攝受し有情を調伏する甚深の理趣、智藏の法門を宣說したまふ。
謂ゆる一切の有情平等の性、即ち忿平等の性なり。
一切の有情調伏の性、即ち忿調伏の性なり。
一切の有情眞法性、即ち忿眞法性なり。
一切の有情眞如の性、即ち忿眞如の性なり。
一切の有情法界の性、即ち忿法界の性なり。
一切の有情離生の性、即ち忿離生の性なり。
一切の有情實際の性、即ち忿實際の性なり。
一切の有情本空の性、即ち忿本空の性なり。
※正宗分第十調伏章。
密に摧一切魔菩薩理趣品に作くる。
※攝受智‘密。明本には「密」の字を蜜に作くる。
※忿平等。忿怒身を以てせば此こに一切法を攝受し調伏するを云ふ。
人空ならば忿も空なり。
一切有情無相性即忿無相性。一切有情無願性即忿無願性。
一切有情遠離性即忿遠離性。一切有情寂靜性即忿寂靜性。
一切有情不可得性即忿不可得性。一切有情無所有性即忿無所有性。
一切有情難思議性即忿難思議性。一切有情無戲論性即忿無戲論性。
◎
一切の有情無相の性、即ち忿無相の性なり。
一切の有情無願の性、即ち忿無願の性なり。
一切の有情遠離の性、即ち忿遠離の性なり。
一切の有情寂靜の性、即ち忿寂靜の性なり。
一切の有情不可得の性、即ち忿不可得の性なり。
一切の有情無所有の性、即ち忿無所有の性なり。
一切の有情難思議の性、即ち忿難思議の性なり。
一切の有情無戲論の性、即ち忿無戲論の性なり。
一切有情如金剛性即忿如金剛性。所以者何。
一切有情眞調伏性即是無上正等菩提。亦是般若波羅蜜多。亦是諸佛一切智智。
◎
一切の有情如金剛の性、即ち忿如金剛の性なり。
所以は(者)何ん。
一切の有情眞調伏の性、即ち是れ無上正等菩提なり。
亦、是れ般若波羅蜜多なり。
亦、是れ諸佛の一切智智なりと。
佛說如是能善調伏甚深理趣智藏法已。告金剛手菩薩等言。
若有得聞如是調伏般若理趣智藏法門。信解受持讀誦修習。能自調伏忿恚等過。
亦能調伏一切有情。常生善趣受諸妙樂。現世怨敵皆起慈心。
能善修行諸菩薩行。疾證無上正等菩提。
◎
佛、是の如く能善く調伏する甚深の理趣、智藏の法を說き已りて金剛手菩薩等に告げて言たまはく、
「若し有得聞如是の如きの調伏般若の理趣、智藏の法門を聞くことを得て信解受持し讀誦修習するもの有らば、能く自ら忿恚等の過〔咎〕を調伏し、亦能く一切の有情を調伏して常に善趣に生じて諸の妙樂を受け、現世の怨敵皆、慈心を起こして能善く諸の菩薩の行を修行し疾く無上正等菩提を證せん。」
■11
爾時世尊復依一切能善建立性平等法如來之相。爲諸菩薩宣說般若波羅蜜多一切法性甚深理趣最勝法門。
謂一切有情性平等故甚深般若波羅蜜多亦性平等。
一切法性平等故甚深般若波羅蜜多亦性平等。
一切有情性調伏故甚深般若波羅蜜多亦性調伏。
一切法性調伏故甚深般若波羅蜜多亦性調伏。
◎
爾の時、世尊は復一切能善建立性平等法如來の(之)相に依りて諸の菩薩の爲に般若波羅蜜多一切の法性、甚深の理趣、最勝の法門を宣說したまふ。
謂ゆる一切の有情、性平等なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦性平等なり。
一切の法、性平等なるが故に甚深般若波羅蜜多も亦性平等なり。
一切の有情、性調伏なるが故に甚深般若波羅蜜多も亦性調伏なり。
一切の法、性調伏なるが故に甚深般若波羅蜜多も亦性調伏なり。
※正宗分第十一性平等建立章。
密に降三世敎令輸品と云ふ。
※前章は有情のみに就て云ふ。
今は人法に就て平等の義を明かし般若を説明する。
一切有情有實義故甚深般若波羅蜜多亦有實義。
一切法有實義故甚深般若波羅蜜多亦有實義。
一切有情即眞如故甚深般若波羅蜜多亦即眞如。
一切法即眞如故甚深般若波羅蜜多亦即眞如。
◎
一切の有情、實義有るが故に甚深の般若波羅蜜多も亦實義有り。
一切の法、實義有るが故に甚深の般若波羅蜜多も亦實義有り。
一切の有情、即ち眞如なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち眞如なり。
一切の法、即ち眞如なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち眞如なり。
一切有情即法界故甚深般若波羅蜜多亦即法界。
一切法即法界故甚深般若波羅蜜多亦即法界。
一切有情即法性故甚深般若波羅蜜多亦即法性。
一切法即法性故甚深般若波羅蜜多亦即法性。
◎
一切の有情、即ち法界なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち法界なり。
一切の法、即ち法界なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち法界なり。
一切の有情、即ち法性なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち法性なり。
一切に法、即ち法性なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち法性なり。
一切有情即實際故甚深般若波羅蜜多亦即實際。
一切法即實際故甚深般若波羅蜜多亦即實際。
一切有情即本空故甚深般若波羅蜜多亦即本空。
一切法即本空故甚深般若波羅蜜多亦即本空。
◎
一切の有情、即ち實際なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち實際なり。
一切の法、即ち實際なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち實際なり。
一切の有情、即ち本空なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち本空なり。
一切の法、即ち本空なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち本空なり。
一切有情即無相故甚深般若波羅蜜多亦即無相。
一切法即無相故甚深般若波羅蜜多亦即無相。
一切有情即無願故甚深般若波羅蜜多亦即無願。
一切法即無願故甚深般若波羅蜜多亦即無願。
◎
一切の有情、即ち無相なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち無相なり。
一切の法、即ち無相なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち無相なり。
一切の有情、即ち無願なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち無願なり。
一切の法、即ち無願なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち無願なり。
一切有情即遠離故甚深般若波羅蜜多亦即遠離。
一切法即遠離故甚深般若波羅蜜多亦即遠離。
一切有情即寂靜故甚深般若波羅蜜多亦即寂靜。
一切法即寂靜故甚深般若波羅蜜多亦即寂靜。
◎
一切の有情、即ち遠離なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち遠離なり。
一切の法、即ち遠離なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち遠離なり。
一切の有情、即ち寂靜なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち寂靜なり。
一切の法、即ち寂靜なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦即ち寂靜なり。
一切有情不可得故甚深般若波羅蜜多亦不可得。
一切法不可得故甚深般若波羅蜜多亦不可得。
一切有情無所有故甚深般若波羅蜜多亦無所有。
一切法無所有故甚深般若波羅蜜多亦無所有。
◎
一切の有情、不可得なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦不可得なり。
一切の法、不可得なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦不可得なり。
一切の有情、無所有なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦無所有なり。
一切の法、無所有なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦無所有なり。
一切有情不思議故甚深般若波羅蜜多亦不思議。
一切法不思議故甚深般若波羅蜜多亦不思議。
一切有情無戲論故甚深般若波羅蜜多亦無戲論。
一切法無戲論故甚深般若波羅蜜多亦無戲論。
◎
一切の有情、不思議なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦不思議なり。
一切の法、不思議なる故に甚深の般若波羅蜜多も亦不思議なり。
一切の有情、無戲論なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦無戲論なり。
一切の法無戲論なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦無戲論なり。
一切有情無邊際故甚深般若波羅蜜多亦無邊際。
一切法無邊際故甚深般若波羅蜜多亦無邊際。
一切有情有業用故當知般若波羅蜜多亦有業用。
一切法有業用故當知般若波羅蜜多亦有業用。
◎
一切の有情、無邊際なるが故に甚深の般若波羅蜜多も亦無邊際なり。
一切の法、無邊際なる故に甚深の般若波羅蜜多も亦無邊際なり。
一切の有情、業用有るが故に當に知るべし、般若波羅蜜多も亦業用有りと。
一切の法、業用有るが故に當に知るべし、般若波羅蜜多も亦業用有りと。
佛說如是性平等性甚深理趣最勝法已。告金剛手菩薩等言。
若有得聞如是平等般若理趣最勝法門。信解受持讀誦修習。
則能通達平等法性甚深般若波羅蜜多。於‘法有情心無罣礙。疾證無上正等菩提。
(※法字三本俱作諸字)
◎
佛、是の如く性平等性甚深の理趣、最勝の法を說き已りて金剛手菩薩等に告げて言たまはく、
「若し是の如きの平等の般若の理趣、最勝の法門を聞くことを得て信解受持し讀誦修習するもの有らば、則ち能く通達平等の法性、甚深の般若波羅蜜多に通達して法と有情に於て心罣礙すること無くして疾く無上正等菩提を證せん。」
※於法有情云々。明本には「法」の字を「諸」に作くる。
※罣礙。拘束せられ取著するなり。
■12
爾時世尊復依一切住持藏法如來之相。爲諸菩薩宣說般若波羅蜜多一切有情住持遍滿甚深理趣勝藏法門。
謂一切有情皆如來藏普賢菩薩自體遍故。
一切有情皆金剛藏以金剛藏所灌灑故。
一切有情皆正法藏一切皆隨正語轉故。
一切有情皆妙業藏一切事業加行依故。
◎
爾の時、世尊は復一切住持藏法如來の(之)相に依りて諸の菩薩の爲に般若波羅蜜多一切の有情、住持遍滿甚深の理趣、勝藏の法門を宣說したまふ。
謂ゆる一切の有情皆、如來藏なり、普賢菩薩の自體`遍ずるが故に。
一切の有情皆、金剛藏なり、金剛藏の灌灑する所なるを以ての故に。
一切の有情皆、正法藏なり、一切皆、正語に隨ひて轉ずるが故に。
一切の有情皆、`妙業藏なり、一切の事業の加行依なるが故に。
※正宗第十二住持藏法章。
密に外金剛會品と云ふ。
※勝藏。如來藏、金剛藏、正法藏、妙業藏を包括して云ふ。
即ち一切の有情を指す。
※如來藏。衆生佛性を有し普賢の妙德を具足す。
これ胎藏の法を擧ぐ。
※金剛藏。佛智を云ふ。
※轉ず。人若し正法藏ならずば佛化に浴するも隨順して迷を去る能はず。
※加行依。加行成業の所依處なり。
有情ありて業事成るを云ふ。
佛說如是有情住持甚深理趣勝藏法已。告金剛手菩薩等言。
若有得聞如是遍滿般若理趣勝藏法門。信解受持讀誦修習。
則能通達勝藏法性。疾證無上正等菩提。
◎
佛、是の如く有情住持甚深の理趣、勝藏の法を說き已りて金剛手菩薩等に告げれ言たまはく、
「若し是の如きの`遍滿般若の理趣、勝藏の法門を聞くことを得て信解受持し讀誦修習するもの有らば則ち能く勝藏の法性に通達して疾く無上正等菩提を證せん。」
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