般若理趣分(般若經理趣分)4
底本は大正大藏般若07。(※)はその校異。
又、◎は『國譯大藏經經部第三卷』の書き下し文。※はその註釋。譯者椎尾辨匡識の署名有り。
又奧書云、大正七年四月廿八日印刷、同三十日發行。昭和十年十二月廿八日四版發行。發行所國民文庫刊行會。
■07
爾時世尊復依一切無戲論法如來之相。爲諸菩薩宣說般若波羅蜜多甚深理趣輪字法門。
謂一切法空無自性故。一切法無相離衆相故。
一切法無願無所願故。一切法遠離無所著故。
◎
爾の時、世尊は復、一切無戲論法如來の(之)相に依りて諸の菩薩の爲に般若波羅蜜多甚深の理趣、輪字の法門を宣說したまふ。
謂ゆる一切の法は空なり、自性無きが故に。
一切の法は無相なり、衆相を離れたるが故に。
一切の法は無願なり、所願無きが故に。
一切の法は遠離なり、所著無きが故に。
※正しい宗第七無戲論輪字章。
密に文殊師利理趣品。
※輪字の法門。般若法輪の轉ぜらるるを云ふ。
一切法寂靜永寂滅故。一切法無常性常無故。
一切法無樂非可樂故。一切法無我不自在故。
一切法無淨離淨相故。一切法不可得推尋其性不可得故。
◎
一切の法は寂靜なり、永寂滅の故に。
一切の法は無常なり、性常無きが故に。
一切の法は無樂なり、樂しみ可きに非らざるが故に。
一切の法は無我なり、自在ならざるが故に。
一切の法は無淨なり、淨相を離るるが故に。
一切の法は不可得なり、其の性を推尋するに不可得なるが故に。
一切法不思議思議其性無所有故。一切法無所有衆緣和合假施設故。
一切法無戲論本性空寂離言說故。一切法本性淨甚深般若波羅蜜多本性淨故。
◎
一切の法は不思議なり、其の性を思議するに所有無きが故に。
一切の法は所有無し、衆緣和合にして假りの施設なるが故に。
一切の法は戲論無し、本性空寂にして言說を離るるが故に。
一切の法は本性淨なり、甚深の般若波羅蜜多本性淨なるが故にと。
佛說如是離諸戲論般若理趣輪字法已。告金剛手菩薩等言。
若有得聞此無戲論般若理趣輪字法門。信解受持讀誦修習。
於一切法得無礙智。疾證無上正等菩提。
◎
佛、是の如く離諸の戲論を離れたる般若の理趣、輪字の法を說き已りて金剛手菩薩等に告げて言たまはく、
「若し此の無戲論般若の理趣、輪字の法門を聞くことを得て信解受持し讀誦修習するもの有らば、一切の法に於て無礙智を得、疾く無上正等菩提を證せん。」
■08
爾時世尊復依一切如來輪攝如來之相。爲諸菩薩宣說般若波羅蜜多入廣大輪甚深理趣平等性門。
謂入金剛平等性能入一切如來性輪故。入義平等性能入一切菩薩性輪故。
入法平等性能入一切法性輪故。入蘊平等性能入一切蘊性輪故。
入處平等性能入一切處性輪故。入界平等性能入一切界性輪故。
◎
爾の時、世尊は復、一切如來輪攝如來の(之)相に依りて諸の菩薩の爲に般若波羅蜜多、廣大輪に入る甚深の理趣、平等性の門を宣說したまふ。
謂ゆる金剛平等性に入らば能く一切如來の性輪に入るが故に。
義平等性に入らば能く一切菩薩の性輪に入るが故に。
法平等性に入らば能く一切の法性輪に入るが故に。
蘊平等性に入らば能く一切の蘊性輪に入るが故に。
處平等性に入らば能く一切の處性輪に入るが故に。
界平等性に入らば能く一切の界性輪に入るが故に。
※正宗分第八輪攝如來章。
密に纔發意菩薩理趣品。
※廣大輪。勝法、大乘と云ふに同じ。
※金剛平等性。第二章參照。
今は第四の一切法平等性を廣く分別し列擧せるなり。
入諦平等性能入一切諦性輪故。入緣起平等性能入一切緣起性輪故。
入寶平等性能入一切寶性輪故。入食平等性能入一切食性輪故。
◎
諦平等性に入らば能く一切の諦性輪に入るが故に。
緣起平等性に入らば能く一切の緣起性輪に入るが故に。
寶平等性に入らば能く一切の寶性輪に入るが故に。
食平等性に入らば能く一切の食性輪に入るが故に。
入善法平等性能入一切善法性輪故。入非善法平等性能入一切非善法性輪故。
入有記法平等性能入一切有記法性輪故。入無記法平等性能入一切無記法性輪故。
◎
善法平等性に入らば能く一切の善法性輪に入るが故に。
非善法平等性に入らば能く一切の非善法性輪に入るが故に。
有記の法平等性に入らば能く一切の有記の法性輪に入るが故に。
無記の法平等性に入らば能く一切の無記の法性輪に入るが故に。
入有漏法平等性能入一切有漏法性輪故。入無漏法平等性能入一切無漏法性輪故。
入有爲法平等性能入一切有爲法性輪故。入無爲法平等性能入一切無爲法性輪故。
◎
有漏の法平等性に入らば能く一切の有漏の法性輪に入るが故に。
無漏の法平等性に入らば能く一切の無漏の法性輪に入るが故に。
有爲の法平等性に入らば能く一切の有爲の法性輪に入るが故に。
無爲の法平等性に入らば能く一切の無爲の法性輪に入るが故に。
入世間法平等性能入一切世間法性輪故。入出世間法平等性能入一切出世間法性輪故。
入異生法平等性能入一切異生法性輪故。入聲聞法平等性能入一切聲聞法性輪故。
◎
世間の法平等性に入らば能く一切世間の法性輪に入るが故に。
出世間の法平等性に入らば能く一切出世間の法性輪に入るが故に。
異生の法平等性に入らば能く一切異生の法性輪に入るが故に。
聲聞の法平等性に入らば能く一切聲聞の法性輪に入るが故に。
入獨覺法平等性能入一切獨覺法性輪故。入菩薩法平等性能入一切菩薩法性輪故。
入如來法平等性能入一切如來法性輪故。入有情平等性能入一切有情性輪故。
入一切平等性能入一切性輪故。
◎
獨覺の法平等性に入らば能く一切の獨覺の法性輪に入るが故に。
菩薩の法平等性に入らば能く一切の菩薩の法性輪に入るが故に。
如來の法平等性に入らば能く一切の如來の法性輪に入るが故に。
有情の平等性に入らば能く一切の有情の性輪に入るが故に。
一切の平等性に入らば能く一切の性輪に入るが故に。
佛說如是入廣大輪般若理趣平等性已。告金剛手菩薩等言。
若有得聞如是輪性甚深理趣平等性門。信解受持讀誦修習。
能善悟入諸平等性。疾證無上正等菩提。
◎
佛、是の如く廣大輪に入る般若の理趣平等の性を說き已りて金剛手菩薩等に告げて言たまはく、
「若し有得聞如是の如きの輪性甚深の理趣、平等性の門を聞くことを得て信解受持し讀誦修習するもの有らば、能(善)く諸の平等性に悟入して疾く無上正等菩提を證せん。」
■09
爾時世尊復依一切廣受供養眞淨器田如來之相。爲諸菩薩宣說般若波羅蜜多一切供養甚深理趣無上法門。
謂發無上正等覺心於諸如來廣設供養。
攝護正法於諸如來廣設供養。
修行一切波羅蜜多於諸如來廣設供養。
修行一切菩提分法於諸如來廣設供養。
◎
爾の時、世尊は復、一切廣受供養眞淨器田如來の(之)相に依りて諸の菩薩の爲に般若波羅蜜多一切供養甚深の理趣、無上の法門を宣說したまふ。
謂ゆる無上正等覺の心を發こすは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
正法を攝護するは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
一切の波羅蜜多を修行するは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
一切の菩提分法を修行するは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
※正宗分第九供養眞淨章。
密に虛空庫菩薩理趣品。
※供養甚深。衣食の供養よりも發心修行皆大供養たるを云ふ。
修行一切總持等持於諸如來廣設供養。
修行一切五眼六通於諸如來廣設供養。
修行一切靜慮解脫於諸如來廣設供養。
修行一切慈悲喜捨於諸如來廣設供養。
修行一切佛不共法於諸如來廣設供養。
◎
一切の總持等持を修行するは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
一切の五眼六通を修行するは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
一切の靜慮解脫を修行するは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
一切の慈悲喜捨を修行するは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
一切の佛不共法を修行するは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
觀一切法若常若無常皆不可得。於諸如來廣設供養。
觀一切法若樂若苦皆不可得。於諸如來廣設供養。
觀一切法若我若無我皆不可得。於諸如來廣設供養。
觀一切法若淨若不淨皆不可得。於諸如來廣設供養。
◎
一切の法、若しは常、若しは無常、皆不可得なりと觀ずるは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
一切の法、若しは樂、若しは苦、皆不可得なりと觀ずるは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
一切の法、若しは我、若しは無我、皆不可得なりと觀ずるは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
一切の法、若しは淨、若しは不淨、皆不可得なりと觀ずるは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
觀一切法若空若不空皆不可得。於諸如來廣設供養。
觀一切法若有相若無相皆不可得。於諸如來廣設供養。
觀一切法若有願若無願皆不可得。於諸如來廣設供養。
觀一切法若遠離若不遠離皆不可得。於諸如來廣設供養。
◎
一切の法、若しは空、若しは不空、皆不可得なりと觀ずるは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
一切の法、若しは有相、若しは無相、皆不可得なりと觀ずるは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
一切の法、若しは有願、若しは無願、皆不可得なりと觀ずるは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
一切の法、若しは遠離、若しは不遠離、皆不可得なりと觀ずるは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
觀一切法若寂靜若不寂靜皆不可得。於諸如來廣設供養。
於深般若波羅蜜多。書寫聽聞受持讀誦思惟修習。廣爲有情宣說流布。
或自供養或轉施他於諸如來廣設供養。
◎
一切の法、若しは寂靜、若しは不寂靜、皆不可得なりと觀ずるは諸の如來に於て廣く供養を設くるなり。
〔甚〕深般若波羅蜜多に於て書寫し聽聞し受持し讀誦し思惟し修習し、廣く有情の爲に宣說流布し、或は自ら供養し、或は轉じて他に施すは諸の如來に於て廣く供養を設くるなりと。
佛說如是眞淨供養甚深理趣無上法已。告金剛手菩薩等言。
若有得聞如是供養般若理趣無上法門。信解受持讀誦修習。
速‘能圓滿諸菩薩行。疾證無上正等菩提。
(※能字明本作得字)
◎
佛、是の如く眞淨供養、甚深の理趣、無上の法を說き已りて金剛手菩薩等に告げて言たまはく、
「若し有得聞如是の如きの供養、般若の理趣、無上の法門を聞くことを得て信解受持し讀誦修習するもの有らば、速やかに能く諸の菩薩の行を圓滿して疾く無上正等菩提を證せん。」
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