蚊頭囉岐王——小説32
以下、一部に暴力的な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
爾に見き斗璃摩娑ハその目に葉と枝ト花の茂りを下りそソ盡きの果テに初めテひとつの姿ヲさらし出シたるその女陁麻美は頭から幹を這うテ腕を卷く蔦の如ス撒きつかせ幹に這うソの母の髪の剃レれたル頭部に刺す日の白濁陁麻美爾に幹ヲ降り地に手ヲ附きて且つは多摩美爾に幹ヲ降り地に足を附きテ故レ立ち上がり二足に立チ上がりたルに息遣ふその眼差しに笑ミたる色ノきざシたるをは斗璃摩娑ひトりすでに見き故レふタり俱なりテ娑娑彌氣囉玖
まだ?
唇に花の
まだ生きてたの?
花の汁の
まだ?
汁の汚れの
まだイキモノのふりをしていたの?
白い花
まだ?
なぜ花の汁は紫の
そこであなたは息遣い
あざやかな色を
まだ?
曝し得たのか
かくて
あなたは活きてあるふりをする
陁麻美爾に都儛耶氣良玖
ふれた。
わたしはあなたの姿を見詰めて。
ふれた。
まなざしに。
あなたの姿は。
ふれた。
顯らかに。
指先。
のばした指先に。
イノチあるその。
唇の。
幼く夭い。
日差しは照らした。
あなたの。
白濁。
だれ?
色。
あなたは、と。
香る。
いつわたしはあなたを失ったのだろう?
肌の匂い。
目の前の肉の。
髪の。
かつて胎内に息づかせたそれ。
すでにあなたは。
もはや私の胎内を壊し。
すでにあたなは。
もはやわたしの胎内を亡ぼし。
あなたはそこに時のはじめから。
はじめからすでにそこにいたに違いなかった。
あなたに母躰など在りはしなかった。
最初から在りはしなかった。
ふれた。
生きて在るそのイノチのカタチに。
ふれた。
息て在るそのイノチののこす触感を。
齧む。
指先は。
齕みつかれたようにも。
ふれた触感。
齧む。
その触感を。
故レ斗璃摩娑爾にひとり娑娑彌氣囉玖
見ていた
くらい
その口
逆光のくらさ
微笑んだ形の
感じる
そのまゝにひらく
光りを
その口蓋の
むしろ
齒の密集に
くらい
踊り上がった
逆光のくらさ
舌の色彩
その中にこそ
かくて迦夜香
唾液の筋は
爾に都儛耶氣良玖
痛みなど。
突き刺さった、…それ。
感じられもしない痛みなど。
前齒はすでに。
感じられもしなかった。
その痛みなど。
額に。
すでに牙のように?
突き刺さった、…それ。
私の額に。
痛みなど。
咬みついた齒は。
感じられもしない痛みなど。
齒は噛み千切った。
感じられもしなかった。
その痛みなど。
飛びった?
血は?
痛みなど。
見なかった。
感じられもしない痛みなど。
玉散る血など。
感じられもしなかった。
その痛みなど。
あなたは咬んだ。
花と同じに。
わたしの皮膚と。
その肉と。
骨をそぐ。
痛みなど。
見なかった。
感じられもしない痛みなど。
玉散る血の珠。
感じられもしなかった。
その痛みなど。
すでにわたしの眼は見つめていた。
ひたすらに澄んだ白濁の光。
温度を以て。
熱狂した。
痛みなど。
冴え切った光。
感じられもしない痛みなど。
醒めた白濁。
感じられもしなかった。
その痛みなど。
聽く。
痛みなど。
耳は。
感じられもしない痛みなど。
感じられもしなかった。
口の。
わたしの口の上げるべきだった。
その痛みなど。
絶叫を?
痛みなど。
聞いた。
感じられもしない痛みなど。
叫ぶべきだった
感じられもしなかった。
口はまさに。
その痛みなど。
喉はまさに。
かくて陁麻美
その激痛を。
爾に娑娑彌氣囉玖
ほゝ笑みあったまなざしのなかに
それを愛と?
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