般若理趣分(般若經理趣分)2


底本は大正大藏般若07。(※)はその校異。

又、◎は『國譯大藏經經部第三卷』の書き下し文。※はその註釋。譯者椎尾辨匡識の署名有り。

又奧書云、大正七年四月廿八日印刷、同三十日發行。昭和十年十二月廿八日四版發行。發行所國民文庫刊行會。



■01

爾時世尊爲諸菩薩。說一切法甚深微妙般若理趣淸淨法門。

此門即是菩薩句義。

爾の時に世尊は諸の菩薩の爲に一切の法、甚深微`妙、般若の理趣、淸淨の法門を說きたまふ。

此の門は即ち是れ菩薩の句義なり。

※以下正宗分、十六章あり。

 今第一に理趣法門菩薩句義を明かす。

 密に大樂不空初集會品と云ふ。

 二あり、一は理趣の體相を明かし、二は理趣聞持の功能を歎ず。

※般若の理趣。諸法實相を云ふ。

※菩薩の句義。前卷一一四頁大品般若第十二句義品は無所有を以て菩薩の要件とせり。

 今は積極的に句義を示す。

 文段六十九句義を擧ぐるも意一切法を示すに在り。


云何名爲菩薩句義。

謂極妙樂淸淨句義是菩薩句義。

諸見永寂淸淨句義是菩薩句義。

微妙適悅淸淨句義是菩薩句義。

渇愛永息淸淨句義是菩薩句義。

云何なるを名づけて菩薩の句義と爲す。

謂ゆる極`妙樂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

諸見永寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

微`妙適悅淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

渇愛永息淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※極妙樂。一切の苦永く無し。

 淸淨は所有なく取著なく不可得なるなり。

※諸見永寂。一切の邪見謬論盡く息む。(盡く息む儘)

※渇愛永息。諸煩悩息すみて惑ひとすべきものなし。


胎藏超越淸淨句義是菩薩句義。

衆德莊嚴淸淨句義是菩薩句義。

意極猗適淸淨句義是菩薩句義。

得大光明淸淨句義是菩薩句義。

胎藏超越淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

衆德莊嚴淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

意極猗適淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

得大光明淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※胎藏。母胎の子を藏さむる如く因中果あり。

 因果不二を云ふ。

※衆德は果地の德を云ふ。

※意極猗適。内取著なき故に意安適なり。

※得大光明は外大光明無量なるを云ふ。


身善安樂淸淨句義是菩薩句義。

語善安樂淸淨句義是菩薩句義。

意善安樂淸淨句義是菩薩句義。

色蘊空寂淸淨句義是菩薩句義。

身善安樂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

語善安樂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

意善安樂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

色蘊空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※身善等。三善淸淨を擧ぐ。

※色蘊。色受想行識の五蘊空不可得を明かす。


受想行識蘊空寂淸淨句義是菩薩句義。

眼處空寂淸淨句義是菩薩句義。

耳鼻舌身意處空寂淸淨句義是菩薩句義。

色處空寂淸淨句義是菩薩句義。

受想行識蘊空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

眼處空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

耳鼻舌身意處空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

色處空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※眼處等。十二處不可得を明かす。


聲香味觸法處空寂淸淨句義是菩薩句義。

眼界空寂淸淨句義是菩薩句義。

耳鼻舌身意界空寂淸淨句義是菩薩句義。

色界空寂淸淨句義是菩薩句義。

聲香味觸法處空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

眼界空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

耳鼻舌身意界空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

色界空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※眼界等。十八界不可得を明かす。


聲香味觸法界空寂淸淨句義是菩薩句義。

眼識界空寂淸淨句義是菩薩句義。

耳鼻舌身意識界空寂淸淨句義是菩薩句義。

眼觸空寂淸淨句義是菩薩句義。

聲香味觸法界空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

眼識界空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

耳鼻舌身意識界空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

眼觸空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※眼觸等。六觸不可得を明かす。


耳鼻舌身意觸空寂淸淨句義是菩薩句義。

眼觸爲緣所生諸受空寂淸淨句義是菩薩句義。

耳鼻舌身意觸爲緣所生諸受空寂淸淨句義是菩薩句義。

地界空寂淸淨句義是菩薩句義。

耳鼻舌身意觸空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

眼觸を緣と爲して生ずる所の諸受、空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

耳鼻舌身意觸を緣と爲して生ずる所の諸受、空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

地界空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※眼觸を緣と爲して云々。六受身不可得を明かす。

※地界空寂云々。六界空不可得を明かす。


水火風空識界空寂淸淨句義是菩薩句義。

苦聖諦空寂淸淨句義是菩薩句義。

集滅道聖諦空寂淸淨句義是菩薩句義。

因緣空寂淸淨句義是菩薩句義。

水火風空識界空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

苦聖諦空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

集滅道聖諦空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

因緣空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※苦聖諦空寂云々。四聖諦不可得を明かす。

※因緣空寂云々。四緣不可得を明かす。


等無間緣所緣緣增上緣空寂淸淨句義是菩薩句義。

無明空寂清淨句義是菩薩句義。

行識名色六處觸受愛取有生老死空寂淸淨句義是菩薩句義。

布施波羅蜜多空寂淸淨句義是菩薩句義。

等無間緣、所緣緣、增上緣空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

無明空寂清淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

行識名色、六處觸受、愛取有生老死空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

布施波羅蜜多空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※等無間緣云々。因緣は親生果の法を云ひ、等無間は前後相續を云ひ、所緣は對境、增上は與力と不障の緣なり。

※無明空寂云々。十二緣起法不可得を明かす。

※布施波羅蜜多云々。六度不可得を明かす。


淨戒安忍精進靜慮般若波羅蜜多空寂淸淨句義是菩薩句義。

眞如空寂淸淨句義是菩薩句義。

法界法性不虚妄性不變異性平等性離生性法定法住實際虛空界

不思議界空寂淸淨句義是菩薩句義。

四靜慮空寂淸淨句義是菩薩句義。

淨戒、安忍、精進、靜慮般若波羅蜜多空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

眞如空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

法界、法性、不虚妄性、不變異性、平等性、離生性、法定、法住、實際、虛空界、不思議界空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

四靜慮空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※眞如空寂云々。實法不可得を明かす。

※四靜慮空寂云々。諸禪不可得を明かす。


四無量四無色定空寂淸淨句義是菩薩句義。

四念住空寂淸淨句義是菩薩句義。

四正斷四神足五根五力七等覺支八聖道支空寂淸淨句義是菩薩句義。

空解脫門空寂淸淨句義是菩薩句義。

四無量、四無色定空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

四念住空寂淸淨句の句義、是れ菩薩の句義なり。

四正斷、四神足、五根、五力、七等覺支、八聖道支空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

空解脫門空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※四念住空寂云々。三十七道品不可得を明かす。

※空解脫門空寂云々。八解脱乃至十一切處不可得を明かす。


無相無願解脫門空寂淸淨句義是菩薩句義。

八解脫空寂淸淨句義是菩薩句義。

八勝處九次第定十遍處空寂淸淨句義是菩薩句義。

極喜地空寂淸淨句義是菩薩句義。

無相無願解脫門空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

八解脫空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

八勝處、九次第定、十`遍處空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

極喜地空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※極喜地空寂云々。菩薩十地不可得を明かす。


離垢地發光地焰慧地極難勝地現前地遠行地不動地善慧地法雲地空寂淸淨句義是菩薩句義。

淨觀地空寂淸淨句義是菩薩句義。

種‘性地第八地具見地薄地離欲地已辦地獨覺地菩薩地如來地空寂淸淨句義是菩薩句義。

(※性字宋本作姓字)

一切陀羅尼門空寂淸淨句義是菩薩句義。

離垢地、發光地、焰慧地、極難勝地、

現前地、遠行地、不動地、善慧地、法雲地空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

淨觀地空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

種‘性地、第八地、具見地、薄地、離欲地、

已辦地、獨覺地、菩薩地、如來地空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

一切陀羅尼門空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※淨觀地空寂云々。菩薩の通の十地不可得を明かす。

 前卷一八二頁(大品般若)初趣品を見よ。


一切三摩地門空寂淸淨句義是菩薩句義。

五眼空寂淸淨句義是菩薩句義。

六神通空寂淸淨句義是菩薩句義。

如來十力空寂淸淨句義是菩薩句義。

一切の三摩地門空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

五眼空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

六神通空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

如來の十力空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

※五眼。肉、天、慧、法、佛眼の空を明かす。

※六神通。天眼、天耳、神足、他心、宿命、漏盡の空を明かす。

※如來の十力云々。以下佛力諸法の空を明かす。


四無所畏四無礙解大慈大悲大喜大捨十八佛不共法空寂淸淨句義是菩薩句義。

三十二相空寂淸淨句義是菩薩句義。

八十隨好空寂淸淨句義是菩薩句義。

無忘失法空寂淸淨句義是菩薩句義。

四無所畏、四無礙解、大慈大悲大喜大捨、十八佛不共法空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

三十二相空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

八十隨好空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

無忘失法空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。


恒住捨性空寂清淨句義是菩薩句義。

一切智空寂清淨句義是菩薩句義。

道相智一切相智空寂淸淨句義是菩薩句義。

一切菩薩摩訶薩行空寂淸淨句義是菩薩句義。

恒住捨性空寂清淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

一切智空寂清淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

道相智、一切相智空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

一切菩薩摩訶薩行空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。


諸佛無上正等菩提空寂淸淨句義是菩薩句義。

一切異生法空寂淸淨句義是菩薩句義。

一切預流一來不還阿羅漢獨覺菩薩如來法空寂淸淨句義是菩薩句義。

一切善非善法空寂淸淨句義是菩薩句義。

一切有記無記法有漏無‘漏有爲無爲法世間出世間法空寂淸淨句義是菩薩句義。

(※漏字下元明本俱有法字)

諸佛無上正等菩提空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

一切異生の法空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

一切の預流、一來、不還、阿羅漢、獨覺、菩薩、如來の法空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

一切の善非善の法空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

一切の有記無記の法、有漏無‘漏の法、有爲無爲の法、世間出世間の法空寂淸淨の句義、是れ菩薩の句義なり。

(※漏字下元明本俱有法字)

※異生。法界の衆生なり。

※預流は須陀洹、一來は斯陀含、不還は阿那含、此の三、阿羅漢と合して聲聞の四果なり。


所以者何。以一切法自性空故自性遠離。

由遠離故自性寂靜。

由寂靜故自性淸淨。

由淸淨故甚深般若波羅蜜多最勝淸淨。

如是般若波羅蜜多。當知即是菩薩句義。諸菩薩衆皆應修學。

所以は(者)何〔如何〕ん。

一切の法は自性空なるを以ての故に自性遠離なり。

遠離に由るが故に自性寂靜なり。

寂靜に由るが故に自性淸淨なり。

淸淨に由るが故に甚深般若波羅蜜多最勝淸淨なり。

是の如きの般若波羅蜜多は當に知るべし、即ち是れ菩薩の句義なり。

諸の菩薩衆皆、應に修學すべしと。

※所以云々。上述諸法空寂淸淨不可得を以て菩薩の句義とする理由を明かす。

※自性遠離。性空なれば定實の自性を離る。


佛說如是菩薩句義般若理趣淸淨法已。告金剛手菩薩等言。

若有得聞此一切法甚深微妙般若理趣淸淨法門深信受者。乃至當坐妙菩提座。

一切障蓋皆不能染。謂煩惱障業障報障。雖多積集而不能染。

雖造種種極重惡業而易消滅不墮惡趣。

佛、是の如きの菩薩の句義、般若の理趣、淸淨の法を說き已りて、金剛手菩薩等に告げて言たまはく、

「若し此の一切の法、甚深微`妙の般若の理趣、淸淨の法門を聞くことを得て深く信受する者有らば、乃至當に`妙菩提の座に坐すべし。

 一切の障蓋皆、染すること能はず。

 謂ゆる煩惱障、業障、報障、多く積集すと雖も而も染すること能はず。

 種種の極重惡業を造くると雖も而も消滅し易くして惡趣に墮せず。

※佛、是の如きの云々。二に理趣の聞持の功德を明かす。

※妙菩提の座。道場即ち成佛なり。

※煩惱障は無明惑なり。

※業障は有漏業なり。

※報障は業果としての果報を云ふ。 


若能受持日日讀誦精勤無間如理思惟。

彼於此生定得一切法平等性金剛等持。於一切法皆得自在。

恒受一切勝妙喜樂。當經十六大菩薩生。定得如來執金剛性。

疾證無上正等菩提。

若し能く受持して日日に讀誦し、精勤無間に理の如く思惟せば、彼れ此の生に於て定んで一切の法平等性、金剛等持を得、一切の法に於て皆、自在を得て、恒に一切勝`妙の喜樂を受けん。

當に十六大菩薩の生を經て定んで如來の執金剛の性を得、疾く無上正等菩提を證すべし。」

※十六大菩薩。金剛界の慧十八尊とす。








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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